講義内容詳細:制度会計論B

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年度/Academic Year 2023
授業科目名/Course Title (Japanese) 制度会計論B
英文科目名/Course Title (English) Legal Financial Accounting B
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 上枝 正幸
英文氏名/Instructor (English) UEEDA Masayuki

講義概要/Course description
 「制度会計論B」では、会計環境における人間(ヒト)の実際の行動に焦点を当て、それ(ら)研究・考察の概要を学習する。前期「制度会計論A」では制度会計の経済学的な側面―損得の世界―をみたが、本講では心理学的な側面―感情(≠勘定)の世界―を扱う。欧米においては、こうした行動会計学ないし判断と意思決定(JDM:Judgment and Decision Making)研究は脈々となされてきており、相当の研究知見の蓄積が存在する。
 関心のある受講生諸氏にとって、(1)会計環境にあるヒトがどのように会計情報を入手、分析・解釈し、意思決定するかの一般的な知識、および(2)会計実務の意思決定をより良いものとしうる方策の示唆を得ることは、有用であろう。
 なお、『心理会計学(サラ・ボナー著)』は、実務経験のない学部生にとって、決して易しい(+優しい)書籍ではない。したがって、講義では、(1)前期「制度会計論A/制度会計論Ⅰ」でみた制度会計の経済学的な側面をヒトの参加者で実際に検証する実験経済学、また(2)会計でない一般的な心理学の代表的な研究、さらに(3)会計制度をどのように設計するかというメカニズム・デザイン論などをも織り込みつつ、教科書『心理会計学』も併せて広く浅く扱うことにしたい。
達成目標/Course objectives
① 前期「制度会計論A」から継続して履修する場合、制度会計の経済学的な側面と心理学的な側面の双方の区分と概要を理解すること。
② 「制度会計論B」独自の達成目標としては、
  (1) 行動会計学ないし判断と意思決定(JDM)研究においてやろうとしていることを理解すること、
  (2) いかにして研究がなされ、現在までに何がどこまで理解されてきているかを理解すること、
  (3) いかなる制度設計が望ましいかについて考察を加えられるようになること。
③ 付随的な達成目標として、会計実務の現場での意思決定について一定のイメージをもてるようになること。
学部・研究科のディプロマポリシー(卒業認定・学位授与の方針)に基づき、当該科目を履修することで身につく能力 / Abilities to be acquired by completing the course in accordance with the faculty and graduate school diploma policy (graduation certification and degree conferral)
学部・研究科のディプロマポリシー(卒業認定・学位授与の方針)/ Undergraduate and Graduate Diploma Policy (Graduation Certification and Degree Conferral)
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
本講は3・4回生向けの「上級レベル」科目である。
特段難しい知識を直接的に要求するわけではないものの、初歩的な簿記・会計の知識を前提とする
なお、前期「制度会計論A・制度会計論Ⅰ」とは独立した別科目として履修可能である
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 第1回 オリエンテーション、前期科目「制度会計論A」とのつながりと本講のねらい、成績評価方法など【オンライン(オンディマンド型)】
2
授業計画/Class 経済学に基づく会計研究の実験経済学による検証①:前期「制度会計論A」との橋渡しも兼ね、かつメカニズム・デザイン論を紹介
3
授業計画/Class 経済学に基づく会計研究の実験経済学による検証②:前期「制度会計論A」との橋渡も兼ね、かつメカニズム・デザイン論を紹介,前回(第2回)と続けて実施
4
授業計画/Class 代表的な心理学研究①:本講で扱うのは、応用社会心理学であるため、その源流となる心理学を概観する(その1)
5
授業計画/Class 代表的な心理学研究②:本講で扱うのは、応用社会心理学であるため、その源流である心理学を概観する(その2)
6
授業計画/Class JDM研究のイントロダクション(教科書第1章):研究する理由・研究方法・本書の今後の展開の要約
7
授業計画/Class JDMの質(教科書第2章):質の定義・プロセスとパフォーマンスの視点,質の高いJDMや「熟練」の考察,研究の紹介
8
授業計画/Class 知識と個人的関与(教科書第3章):JDMの質の影響要因・プロセス,知識や個人的関与が及ぼす影響
9
授業計画/Class 能力、内発的動機づけ、その他の個人変数(教科書第4章):個人に属する変数がJDMの質に及ぼす影響
10
授業計画/Class 認知プロセス(教科書第5章):認知プロセスの研究方法,プロセス中の諸要素がJDMの質に与える影響
11
授業計画/Class タスク変数(教科書第6章):会計上のタスクがJDMの質に及ぼす影響(より具体的には、情報のレレバンス、フレーミング、情報の順序、表示様式と応答モード)
12
授業計画/Class 環境変数(原著第7章,未翻訳):JDMタスクを遂行する個人を取り巻く環境要因の影響(具体的には、金銭的インセンティブ、アカウンタビリティと正当化、設定目標、フィードバック、基準と規制など)
13
授業計画/Class JDMの質に影響する要因の理解(原著第8章,未翻訳):会計専門家のJDMを利用する第三者の側の理解に焦点をあてる
14
授業計画/Class JDMを改善する方法(原著第9章,未翻訳):どのようにしてJDMを改善するか(具体的には、教育・訓練,フィードバック,人事考課,意思決定支援など)
15
授業計画/Class 第15回 後期・通年(制度会計論A/Ⅰも履修した場合)の総括,授業アンケートの実施
 
事前学習/Preparation 以前の講義回の資料を読み返しておく。
(直)前の回に提示される、今回の講義のための文献を読んでおく。
事後学習/Reviewing 「CoursePower」を通じ今回の講義後の課題(理解を問う小テスト(問題演習))を提出し、かつ今回の学習内容を復習する。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
補足事項/Supplementary notes対面授業(通常型)(初回を除く)
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 30% 講義内に行う小課題の提出(「CoursePower」や「配布プリント」の利用を想定)による。
2 試験 Exam 70% 期末定期試験による。
教科書/Textbooks
 コメント
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1 なし―参考書らんの最初にあるサラ・ボナーの著書をベースにし、毎回(あるいは、数回分をまとめて)プリントを配布する。
参考書/Reference books
 著者名
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タイトル
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出版社
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出版年
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ISBN価格
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1 サラ・E・ボナー著・田口聡志監訳・上枝正幸・水谷覚・三輪一統・島津邦洋訳 『心理会計学―会計における判断と意思決定』 中央経済社 2012 4502453501 5,060 * 邦語では、監査分野に数少ない文献があるのみ(下記参照)である。特定の分野の文献に関心のある受講生は、教員に問うてもらいたい。
2 福川裕徳 『監査判断の実証分析』 国元書房 2012 4765805573 4,180
3 戸村智憲 『監査心理学―感じる監査』 税務経理協会 2012 4419057394 2,310
メッセージ/Message
現行会計制度・基準の単なる解説とはまったく異なる内容を扱う。
過去8年度は、おおむね好評であったが、履修にあたっては、講義内容はもちろんのこと、小課題の作成に時間が取れるかを確認しておいてください。