講義内容詳細:自己理解(個別科目)

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年度/Academic Year 2018
授業科目名/Course Title (Japanese) 自己理解(個別科目)
英文科目名/Course Title (English) Self-Understanding(Independent Courses)
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 古田 知章
英文氏名/Instructor (English) FURUTA, Tomoaki

講義概要/Course description
テーマ 「自己の存在の根幹としての思考、あるいは、論理」
 思考は我々を支える大きな力である。しかし、それは考えるということが、道具として我々の活動に役立つという意味だけではない。我々は、あらかじめ自身の思惟を無意識のうちに張り巡らすことなしに、何かを考えることも為すこともできない。それゆえ、各自の思考の働きこそが、各人の多様な個性、さらにはその活動を特徴づける根幹とも言える。そして、このように我々の活動を支える無意識と意識的という二重の思考には、集団的な規定によって根拠づけられる、言葉、概念、身体性といった様々なシステムが介在し、そのシステムが、そのなかで生きる我々の考え方や価値観を方向づける。したがって、思考や身体的活動によって形成される我々の存在そのものが、知らず知らずのうちに決められた枠内につなぎ止められていることになる。
 本講義では、このような我々の存在を支える見えない枠組みについて、論理学や哲学という学問の発展の歴史の過程での議論を参考にしながら検討していく。そして、論理的領域とはいったいどのような身分のものなのか、日常において言葉や論理の果たしている役割、論理学や哲学といった思考を巡る学問領域が現実社会に与える影響などの事柄に関して、身近な例を用いながら考察する。
達成目標/Course objectives
 上記のような見通しと内容のもとで、我々の私的な活動を支える思考の公共的な部分の構造と働きについて、論理という観点から検討することで、この領域についての知識を深めるとともに、この枠組みの理解を自分自身に重ねることで、我々自身の在り方そのものについて考える手がかりとしていくことを目標とする。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class ガイダンス(講義の目的と内容の概観、および、注意事項の説明)
事前学習/Preparation 我々が生きるなかでの「思考」が果たす役割を具体的にいろいろと考えておく。
事後学習/Reviewing ガイダンスとして示した講義の概観を参考に、「論理」と「生きること」との関係について、自分の日常に照らし合わせて考えてみる。
2
授業計画/Class 論理における学問性と日常性 -「ロゴス的動物」としての人間 -
事前学習/Preparation 前回の講義で説明した全体の概観と流れについて確認しておく。
事後学習/Reviewing 「論理」や「ロゴス」の語源的・思想史的意味を、自分の日常につなげて確認する。
3
授業計画/Class 「自己」の流動的なあり方と、それを把握することの難しさ
事前学習/Preparation 「ことば」と「こころ」の流動的な働きと、「自己」のあり方への影響について整理しておく。 
事後学習/Reviewing 「純粋経験」について、これまでの自分の経験を振り返って検討してみる。
4
授業計画/Class 周囲の「世界」との関係における「私」の本質的な能動性(1)- 認識の能動性とその形式 -
事前学習/Preparation 「私」の流動性と周囲との関係について整理しておく。
事後学習/Reviewing カントの「コペルニクス的転回」の意味と、「認識」の成立においての能動的な作用について、身近な具体例に則して整理する。
5
授業計画/Class 周囲の「世界」との関係における「私」の本質的な能動性(2) - 経験の受動性と能動性 -
事前学習/Preparation 日常において、何かを認識する際に従う諸「形式」について整理しておく。
事後学習/Reviewing 感覚や経験の能動性と、その限界について、身近な事柄を手がかりに考えてみる。
6
授業計画/Class 「ことば」とシステム(1) - 構造主義の時代背景 -
事前学習/Preparation 「こころ」と「ことば」による「自己」の内面性の表出のあり方の、「私的側面」と「公共的な側面」の両面について整理しておく。
事後学習/Reviewing 構造主義について、その時代背景と基本発想を、現代の社会状況と照らし合わせて検討してみる。
7
授業計画/Class 「ことば」とシステム(2) - システムが支える価値と認識 -
事前学習/Preparation 「構造」・「システム」と「時代性」・「集団性」との関係について整理しておく。
事後学習/Reviewing 「自己」の形成における、「受動性」と「能動性」との関係を、自分のあり方に照らし合わせて検討してみる。
8
授業計画/Class  世界の把握不可能性と因果性の成立
事前学習/Preparation 「構造」・「システム」と「意味」や「価値」との関係について整理しておく。 
事後学習/Reviewing 「出来事」の流動性、本来的な把握不可能性について、身近な具体例に則して考察してみる。
9
授業計画/Class 論理的思考を支える基本原理
事前学習/Preparation 「出来事」に対して「因果関係」が成立する過程について整理しておく。
事後学習/Reviewing 西洋論理の基盤となる「二分法的発想」を確認しておく。
10
授業計画/Class 西洋論理においての基本発想
事前学習/Preparation 「矛盾律」と「排中律」の意味と、両者の関係について整理しておく。
事後学習/Reviewing 「事態」と主張との関係を確認しておく。
11
授業計画/Class 知識の成立
事前学習/Preparation 対象としての「事態」と認識作用との関係を整理しておく。
事後学習/Reviewing 経験的知識の成立の過程について確認する。
12
授業計画/Class 「私」の「世界」への働きかけ(1) - 自分にとっての意味の集まり -
事前学習/Preparation これまでに扱ってきた「ことば」と「こころ」の働きの能動的側面やシステムとの関係について復習・整理しておく。
事後学習/Reviewing 自分にとっての、いまの「世界」とはどのようなものなのかを具体的に考えてみる。
13
授業計画/Class 「私」の「世界」への働きかけ(2)- 意味づけにおける束縛と自由 -
事前学習/Preparation 「自分にとっての世界」の成立の仕方について整理しておく。
事後学習/Reviewing 「意味(価値)づけ」において、どのような束縛があり、どのようにそれらから自由になれるのかについて、自分の状況に重ねて考えてみる。
14
授業計画/Class 幾何学的精神と繊細な精神
事前学習/Preparation 「意味(価値)づけ」においての「身体」や「感情」の役割について整理しておく。
事後学習/Reviewing 自分にとっての理想的な状況がどのようなものなのかを具体的に検討してみる。
15
授業計画/Class まとめ
事前学習/Preparation これまでのノートとプリントをもとに、全体の内容を整理しておく。
事後学習/Reviewing 我々の行動を制限・規定する思考の構造を意識したうえで、「自分らしさ」とは何かを考えていく。
授業方法/Method of instruction
上記の内容を、できる限り身近な事例を挙げながら検討し、自らの日常に重ねて、論理的枠組みの働きと意義について考察していく。
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 60%
2 平常点 In-class Points 40% 平常点は、授業終了時のレスポンスペーパーと受講態度で評価する。
教科書/Textbooks
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1 特に教科書は用いないが、各回の内容に関するプリントを配布する。
参考書/Reference books
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1 参考文献については、適宜、紹介する。