講義内容詳細:金融と法(2)

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年度/Academic Year 2018
授業科目名/Course Title (Japanese) 金融と法(2)
英文科目名/Course Title (English) Finance and Law (2)
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 大垣 尚司
英文氏名/Instructor (English) OHGAKI, Hisashi

講義概要/Course description
1.ファイナンスのさまざまな仕組みを、基本的なものから最先端のものまで網羅的にとりあげて、高度な数理は用いずにそれら本質をつかんでもらう。
2.金融は他の産業と違って、「お金」というかたちのないものを商品や仕組みに仕立て上げねばならない。ファイナンス理論や金融工学はそのためのアイデアを提供するが、これを実際に「売れる」商品や仕組みに変えるには、契約や制度のかたちに落とし込む必要がある。たとえば、証券化の仕組みで活用するSPVは倒産法の適用をいかにマネージするかという法的な工夫から生まれたものである。リース取引は税務・会計の知識なくしてなりたたない。このように法を活用して金融商品・仕組みを作り上げるプロアクティブな作業を「法技術(legal engineering)」という。そして、実務では金融にかかわる法技術の専門家として、弁護士や企業・金融機関に就職した法務博士保有者が重要かつ創造的な役割を果たしている。本講義ではそうした領域に興味を持つ者のために、金融の法技術のエッセンスを学び、高度専門職としてのバリューを高めてもらう。
3.ロースクール・ビジネススクール(ABS)共同開講授業であることのメリットを最大限に活かし、ロースクールで法曹をめざす者にとっては、ファイナンスの常識を、また、ビジネススクールでファイナンスの基礎的な知識を有する者には、ファイナンスのリーガルエンジニアリングを習得できるように配慮する。
4.授業では、ロースクール生とビジネススクール生がそれぞれの専門性を活かしてコミュニケーションできるようにインタラクティブな授業進行を行う。
5.受講生には、ウォールストリートジャーナルオンラインのアカデミックアカウントを供与し、本格的な金融英語にふれてもらう。希望者には、隔週水曜日の7時に開講している社会人向けWSJで学ぶビジネス英語講座の聴講を認める。

第一部(前期)では、ファイナンスの基礎的な概念や、ローン、株式、社債、信用補完といった基礎的な仕組みや担保・相殺その他信用補完のためのさまざまな仕組み、中小企業の事業承継等を学びながら、会社法や民法の関連部分の立体的な理解を図る。第二部(後期)では、金融工学やオプション理論の基礎、デリバティブ、新株予約権を用いたさまざまな仕組み、証券化、リース、リスクファイナンスといった先端的な仕組みを学ぶ。
達成目標/Course objectives
1.ファイナンスの基礎的な概念について理解する。特に現在価値とその応用、リスクの概念について理解する。
2.簿記・会計について、法律家として最低限理解しておくべき知識を身に付ける。
3.会社法の中で、株式評価やM&Aにおける企業評価、上場会社をめぐるさまざまな問題など、ファイナンスの背景知識が必要な項目について復習し理解を深める。
4.金融商品取引法の開示規制・行為規制について学ぶ。
5.融資契約の実際をその背後にある民法の規定や解釈と結びつけて理解する。
6.民法の担保物権や債権総論等で習った事項を、信用補完という切り口で再整理して理解を深める。
7.金融機関や金融商品取引業者の規制の枠組みについて理解する。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
特になし。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class デリバティブの基礎①
事前学習/Preparation 『金融と法』第8章を読む
事後学習/Reviewing 配布教材『金融と法2』を復習する。
2
授業計画/Class デリバティブの基礎②
事前学習/Preparation 配布教材『金融と法2』の指定部分を読む
事後学習/Reviewing 配布教材『金融と法2』を復習する。
3
授業計画/Class 法律家のための金融工学のつかみ
事前学習/Preparation 配布教材『金融と法2』の指定部分を読む
事後学習/Reviewing 配布教材『金融と法2』を復習する。
4
授業計画/Class 会社法とファイナンス⑨ 新株予約権の活用
事前学習/Preparation 『金融から学ぶ会社法入門』第17講6-8を読む
事後学習/Reviewing 配布レジュメで学習内容を確認する
5
授業計画/Class 会社法とファイナンス⑩上場企業とM&A
事前学習/Preparation 『金融から学ぶ会社法入門』第20講を読む
事後学習/Reviewing 配布レジュメで学習内容を確認する。
6
授業計画/Class 企業のリスク管理
事前学習/Preparation 配布教材『金融と法2』の指定部分を読む
事後学習/Reviewing 配布レジュメで学習内容を確認する。
7
授業計画/Class ポートフォリオ理論
商業信託と投資信託の仕組み
事前学習/Preparation 『金融と法』第13章を読む
事後学習/Reviewing 『金融と法』第14章を読む
8
授業計画/Class ストラクチャードファイナンス①
証券化の考え方
事前学習/Preparation 配布教材を読む
事後学習/Reviewing 配布レジュメで学習内容を確認する。
9
授業計画/Class ストラクチャードファイナンス②
証券化の法務:倒産隔離
事前学習/Preparation 配布教材を読む
事後学習/Reviewing 配布レジュメで学習内容を確認する。
10
授業計画/Class ストラクチャードファイナンス③
SPV、金融と税
事前学習/Preparation 配布教材を読む
事後学習/Reviewing 配布レジュメで学習内容を確認する。
11
授業計画/Class 匿名組合、クラウドファンディング
ファイナンスリース
事前学習/Preparation 『金融から学ぶ会社法入門』第13講4,5を読む
事後学習/Reviewing 配布レジュメで学習内容を確認する。
12
授業計画/Class 特殊なリース取引
リスクファイナンス入門①
事前学習/Preparation 配布教材を読む
事後学習/Reviewing 配布レジュメで学習内容を確認する。
13
授業計画/Class リスクファイナンス入門②
事前学習/Preparation 配布教材を読む
事後学習/Reviewing 配布レジュメで学習内容を確認する。
14
授業計画/Class 総括:金融の法技術序説
事前学習/Preparation 配布教材を読む
事後学習/Reviewing 配布レジュメで学習内容を確認する
15
授業計画/Class 期末試験解説
事前学習/Preparation 問題をあらためて考えておく
事後学習/Reviewing 解説内容に基づいて確認
授業方法/Method of instruction
基本的には講義形式で行う。金融と法シリーズを最初から読みこなすことは一般のLS生には難しいかもしれないので、会社法・民法の該当部分を出発点として、授業で難しそうな点を中心にフォローし、復習で講義レジュメ等を参考に金融と法シリーズの該当部分を読むことで理解の定着を図る。
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 80% 期末試験80%
試験問題は、ロー生、ビジネス生それぞれに配慮する。
2 その他 Others 20% 授業貢献で評価する。
教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
1 大垣尚司 『金融と法-企業ファイナンス入門』 日本経済新聞社 2010
2 大垣尚司 『金融から学ぶ会社法入門』 勁草書房 2017
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
 
1 大垣尚司 『金融から学ぶ民事法入門』 勁草書房 2013
メッセージ/Message
希望者があれば、各学期中に懇親会を持つ。ゼミに準ずるものとして位置づけるので、希望があれば面談等に応じる(役にはたたない可能性が高いが・・・)。研究室にいないことが多いので必ずメール等でアポイントすること。
その他/Others
金融と法の第2巻は未完だが、デリバティブ関連はほぼ完成しているので、受講者に私製版を配布する。ストラクチャードファイナンスは講師の専門領域だが、あまりにも広範囲にわたるのと、内容がかなり高度になるため、この講義では配布教材に基づいて基礎的な考え方のみを解説する。