講義内容詳細:国際人権法

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年度/Academic Year 2018
授業科目名/Course Title (Japanese) 国際人権法
英文科目名/Course Title (English) International Human Rights Law
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 申 惠手
英文氏名/Instructor (English) SHIN Hae Bong

講義概要/Course description
人権は基本的には各国の憲法によって保障されるものであるが、今日、そうした国内法による人権保障を補完するものとして重要な役割を果たしているのが国際人権法である。戦後、国連では人権の国際的保障のための多数国間条約(人権条約)が次々と作られ、日本もその多くを批准している。 
人権条約は締約国に対し、管轄下にある人の人権保障に関する様々な義務を課しているが、人権条約批准にもたらす重要な影響は、まず、立法面で現れる。条約規定に反する国内法規定の改廃や、条約規定を実施するための新たな国内法制定という、国内法整備がそれであり、日本でも国籍法や入管法などは人権条約の影響で重要な改正を経ているし、児童買春・児童ポルノ行為処罰法のような法律の制定も人権条約が背景にある。また、日本では国が批准した条約は国内的効力をもつから、裁判では、人権条約を援用した主張がなされ、人権条約の趣旨に合致するような国内法解釈が採用されることがあり、この側面では実務家の役割が特に重要である。この授業では、国内の立法・行政・司法に対する人権条約のインパクトと、生じている論点に焦点をあて、できる限り具体的な事案を交えて解説する。
達成目標/Course objectives
日本が締約国となっている人権条約であって実務でもしばしば援用される条約(国際人権規約、人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約、拷問等禁止条約、広義で人権条約に含まれる難民条約など)について基本的な知識を持ち、日本の国内法秩序におけるその位置づけについても理解した上で、裁判例をふまえ、様々な人権問題につき人権条約の規定を援用した主張ができるようになることを目指す。憲法の人権規定の解釈において人権条約適合的な解釈をとること、法律(例えば入管法)の解釈・適用においては条約(難民条約など)規定に合致した解釈・適用が求められることなどである。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
国際法を学んだことがあればなお良いが、必須ではない。必要な国際法上の知識については授業で解説する。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 国際人権法の概観と日本法へのインパクト
事前学習/Preparation 六法にある「国際人権規約」を読んでおく
事後学習/Reviewing 人権条約批准に伴って日本で行われた国内法整備の例を挙げられるようにする
2
授業計画/Class 日本の国内法秩序と人権条約
事前学習/Preparation 前回レジメの復習
事後学習/Reviewing 日本の国内法秩序における、条約と法律の関係、及び憲法と条約の関係について理解し、その具体的な表れとして裁判例を挙げられるようにする
3
授業計画/Class 人権条約の国際的実施制度と条約機関の設置
事前学習/Preparation 前回までのレジメの復習
事後学習/Reviewing 人権条約ではそれぞれ条約機関(委員会等)がおかれており、その任務遂行の中で条約解釈にかかわる文書を出している仕組みを理解する
4
授業計画/Class 普遍的(=国連の)人権条約における報告制度とその運用
事前学習/Preparation 前回までのレジメの復習
事後学習/Reviewing 委員会の出す「総括所見」と「一般的意見」とは何か理解し、日本に出された総括所見の例を挙げられるようにする
5
授業計画/Class 普遍的人権条約における個人通報制度とその運用
事前学習/Preparation 前回までのレジメの復習
事後学習/Reviewing 個人通報制度の先例において条約解釈が発展していることを理解する。また、日本がこの制度に加入するとした場合の論点を知っておく
6
授業計画/Class 人権条約の解釈・適用のあり方
事前学習/Preparation 前回までのレジメの復習
事後学習/Reviewing 条約の国内的「効力」と「直接適用可能性」の関係を理解する。また、人権条約の規定の直接適用が認められた裁判例を挙げられるようにする
7
授業計画/Class 条約のいわゆる間接適用(条約適合的な国内法解釈・適用)
事前学習/Preparation 前回までのレジメの復習
事後学習/Reviewing 不法行為の解釈に人種差別撤廃条約の趣旨を反映させた裁判例等、条約適合的な国内法解釈のあり方について論じられるようにする
8
授業計画/Class 人権条約の解釈・適用をめぐる諸問題
事前学習/Preparation 前回までのレジメの復習
事後学習/Reviewing 憲法の人権規定と人権条約の規定を自動的に同一視することの問題を理解する。また、委員会の「総括所見」等の法的意義に関する判例の立場を知っておく
9
授業計画/Class テーマ別検討(1)差別の禁止・平等―婚外子差別を中心に
事前学習/Preparation 前回までのレジメの復習
事後学習/Reviewing 日本法の婚外子差別をめぐる人権条約機関の「総括所見」、及びこれを違憲理由の一つとした2013年最高裁大法廷判決についてまとめておく
10
授業計画/Class テーマ別検討(2)人種差別の撤廃
事前学習/Preparation 前回までのレジメの復習
事後学習/Reviewing 人種差別撤廃条約の国内実施のための立法措置が不十分な現状において、司法的救済の可能性と限界を考える
11
授業計画/Class テーマ別検討(3)刑事手続における人権保障
事前学習/Preparation 前回までのレジメの復習
事後学習/Reviewing 代用監獄における未決拘禁・取調べにまつわる問題を中心に、日本の刑事司法制度が人権条約に照らして懸念されている点について理解する
12
授業計画/Class テーマ別検討(4)出入国管理手続における人権保障
事前学習/Preparation 前回までのレジメの復習
事後学習/Reviewing 難民認定手続の概要とそこにおける論点、退去強制と家族生活の保護や子どもの権利との関係等、入管関係手続における人権条約規範の意義について理解する
13
授業計画/Class テーマ別検討(5)人権条約と刑事裁判権
事前学習/Preparation 前回までのレジメの復習
事後学習/Reviewing 国家管轄権の行使に関する国際法の基本原則を理解した上で、拷問等禁止条約における普遍的管轄権のしくみについて知る
14
授業計画/Class 全体のまとめと論点整理
事前学習/Preparation レジメ全体を見直しておく
事後学習/Reviewing 試験の設問を想定し、記述に含めるべき論点が出てくるよう学習内容を整理する
15
授業計画/Class 期末試験問題の解説
事前学習/Preparation 記述が不十分だったと思われる箇所についてレジメを見直しておく
事後学習/Reviewing レジメとノートを保管しておき、必要な時に参照できるようにしておく
授業方法/Method of instruction
基本的に講義形式であるが、授業中は確認質問を頻繁に行い、双方向授業の要素を取り入れる。 
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 80%
2 平常点 In-class Points 20% 通常授業時の質疑応答で示される理解度や、授業に対する積極的な参加を評価として加味する。
教科書/Textbooks
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1 授業は、担当者がレジメを配布しそれによって行うので、教科書は用いない。レジメには通し番号が振ってあり、しばしばクロス・レファレンスを行うので、レジメはファイルして毎回持参する。人権条約が掲載された条約集が必要であるが、これもコピーして配布する。
参考書/Reference books
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1 特になし