講義内容詳細:所得税法

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年度/Academic Year 2018
授業科目名/Course Title (Japanese) 所得税法
英文科目名/Course Title (English) Income Tax Law
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 小林 裕明
英文氏名/Instructor (English) KOBAYASHI, Hiroaki

講義概要/Course description
 本講義では、所得税法に関する著名な判決を題材として、所得税法に関する重要事項について取扱う。所得税法は、所得区分の問題や各所得の取扱いに関する問題など、幅広い知識を問われる。これら諸問題を総花的に扱うのではなく、重要なテーマの理解を深掘りすることにより、全体的な理解を深めていく。
達成目標/Course objectives
 本講義は、所得税法に関する著名な判決を精読し、授業におけるディスカッションを通じて、所得税法に関する重要事項の理解を深めることを目的とする。課題作成、発表、討議を行うので、受講生各位には主体的かつ積極的参加が求められる。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
 「租税法各論」の履修又は所得税法に対する基礎的知識があることが望ましい。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class ガイダンス
 授業の進め方、成績評価、教科書・参考図書について説明を行う。また、課題判決の検索方法、参考文献の調査方法について説明を行う。
事前学習/Preparation  最高裁判所のウェブサイトから、「裁判例情報」の検索サイト(URL http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1)を試用すること。
なお、LEX/DBのアドレスを付与された者は、そちらを使用して差し支えない。
事後学習/Reviewing  授業内容の復習
2
授業計画/Class 判決の調べ方、読み方・報告資料の作成方法
 判決の調べ方、読み方について、伊藤[2014]を用いて概説的な解説を行う。また、報告資料の作成方法について説明する。
事前学習/Preparation 伊藤[2014]263-367頁を通読すること。
事後学習/Reviewing 授業内容の復習
3
授業計画/Class 「収入すべき金額」の意義について
 テーマに関する基本事項の解説を行う。その後、下記課題について、各受講生から報告資料に基づき発表及び質疑応答を行う。
【課題1】最判昭和40年9月8日、最判昭和49年3月8日、最判昭和53年2月24日を比較して、所得税法における所得の年度帰属に関する考え方を検討せよ。
事前学習/Preparation  報告資料の作成に当たっては、次の文献を参考とすること。
植松守雄「収入金額(収益)の計上時期に関する問題ー『権利確定主義』をめぐってー」『租税法研究』8号1980年
金子宏「所得の年度帰属ー権利確定主義は破綻したか」『日税研論集』22巻、1993年
坂本武志「判解」『最高裁判所判例解説刑事篇昭和40年度』178頁
佐藤繁「判解」『最高裁判所判例解説民事篇昭和49年度』198頁
遠藤博也「判批」『民商法雑誌』72巻1号
中里実「判批」『法学協会雑誌』96巻11号
越山安久「判解」『最高裁判所判例解説民事篇昭和53年度』22頁
事後学習/Reviewing 課題1の発表について、(他受講生の)報告資料の整理・検討
4
授業計画/Class 引き続き、課題1について報告資料に基づき発表及び質疑応答を行う。発表後、各受講生及び教員からコメントを行い、全般的な総括を行う。
事前学習/Preparation 課題1の発表に対するコメントの用意
事後学習/Reviewing 授業における指摘事項の確認、総括事項の復習
5
授業計画/Class 所得区分①-事業所得と給与所得の区分について-
 テーマに関する基本事項の解説を行う。その後、下記課題について、各受講生から報告資料に基づき発表及び質疑応答を行う。
【課題2】最判昭和56年4月24日、東京地判昭和43年4月25日、福岡地判昭和62年7月21日、那覇地判平成11年6月2日を題材として、事業所得と給与所得の区分についてどのような条件がメルクマールとなるのか考察せよ。
事前学習/Preparation  報告資料の作成に当たっては、次の文献を参考とすること。
園部逸夫「判解」『最高裁判所判例解説民事篇昭和56年度』275頁
高野幸大「判批」『別冊ジュリスト178号』63頁
水野忠恒「判批」『ジュリスト』704号
品川芳宣「判批」『TKC税研情報』9巻4号16頁
事後学習/Reviewing 課題2の発表について、(他受講生の)報告資料の整理・検討
6
授業計画/Class  引き続き、課題2について報告資料に基づき発表及び質疑応答を行う。発表後、各受講生及び教員からコメントを行い、全般的な総括を行う。
事前学習/Preparation 課題2の発表に対するコメントの用意
事後学習/Reviewing 授業における指摘事項の確認、総括事項の復習
7
授業計画/Class 所得区分②-給与所得と一時所得の区分について-
 テーマに関する基本事項の解説を行う。その後、下記課題について、各受講生から報告資料に基づき発表及び質疑応答を行う。
【課題3】ストック・オプションの課税関係(譲受人・発行会社)について整理するとともに、いわゆるストック・オプション事件について、最判平成17年1月25日と下級審判決東京地判平成15年8月26日、東京高判平成16年2月19日を比較して、給与所得説と一時所得説の論拠について比較検討せよ。
事前学習/Preparation  報告資料の作成に当たっては、次の文献を参考とすること。
増田稔「判解」『最高裁判所判例解説民事篇平成17年度』39頁
鳥飼重和「判批」『法学セミナー615号』6頁
酒井貴子「判批」『別冊ジュリスト租税判例百選[第6版]』228号74頁
本庄資「判批」『ジュリスト』1284号157頁
事後学習/Reviewing 課題3の発表について、(他受講生の)報告資料の整理・検討
8
授業計画/Class  引き続き、課題3について報告資料に基づき発表及び質疑応答を行う。発表後、各受講生及び教員からコメントを行い、全般的な総括を行う。
事前学習/Preparation 課題3の発表に対するコメントの用意
事後学習/Reviewing 授業における指摘事項の確認、総括事項の復習
9
授業計画/Class 所得区分③-一時所得と雑所得の区分について-
 テーマに関する基本事項の解説を行う。その後、下記課題について、各受講生から報告資料に基づき発表及び質疑応答を行う。
【課題4】いわゆる競馬勝馬投票券事件最判平成27年3月10日、及び下級審大阪地判平成25年5月23日、大阪高判平成26年5月9日を題材として、同事件の勝馬投票券に対する雑所得説と一時所得説の論拠について比較検討せよ。また、後続の東京事件(下級審東京地判平成27年5月14日、東京高判平成28年4月21日、上告審最判平成29年12月15日)の馬券購入方法を考慮しながら、前記最判の判旨を検討せよ。
事前学習/Preparation  報告資料の作成に当たっては、次の文献を参考とすること。
(大阪事件)
楡井英夫「判解」『法曹時報』68巻2号258頁
長島弘「判批」『月刊税務事例』47巻4号9頁
酒井克彦「判批」『中央ロー・ジャーナル』12巻3号99頁
(東京事件)
長島弘「判批」『月刊税務事例』48巻6号25頁
長島弘「判批」『月刊税務事例』48巻8号20頁
品川芳宣「判批」『TKC税研情報』25巻4号147頁
今本啓介「判批」『新・判例解説Watch(法学セミナー増刊)』19号249頁
事後学習/Reviewing 課題4の発表について、(他受講生の)報告資料の整理・検討
10
授業計画/Class  引き続き、課題4について報告資料に基づき発表及び質疑応答を行う。発表後、各受講生及び教員からコメントを行い、全般的な総括を行う。
事前学習/Preparation 課題4の発表に対するコメントの用意
事後学習/Reviewing 授業における指摘事項の確認、総括事項の復習
11
授業計画/Class 譲渡所得の取得費について
 テーマに関する基本事項の解説を行う。その後、下記課題について、各受講生から報告資料に基づき発表及び質疑応答を行う。
【課題5】譲渡所得の取得費に関する最判平成17年2月1日判決を読み、下級審判決(東京地判平成12年12月21日、東京高判平成13年6月27日)を参照しながら、法60条1項の課税関係を考察せよ。また、法38条の「資産の取得に要した金額」(取得費)について、上記最判及び東京高判昭和54年6月26日、最判平成4年7月14日(控訴審東京高判昭和61年3月31日)では、その意義及び範囲についてどのようにとらえられているか、説明せよ。
事前学習/Preparation  報告資料の作成に当たっては、次の文献を参考とすること。
(右山事件)
金子宏「譲渡所得における『取得費』の意義―若干の裁判例を素材として」『税法学の基本問題』1981年
品川芳宣「判批」『税研JTRI』25巻3号67頁
小塚真啓「判批」『別冊ジュリスト租税判例百選[第6版]』228号86頁
(平成4年最判)
福岡右武「判解」『最高裁判所判例解説民事篇平成4年度』266頁
増井良啓「判批」『法学協会雑誌』111巻7号
中里実「判批」『別冊ジュリスト租税判例百選[第6版]』228号84頁
事後学習/Reviewing 課題5の発表について、(他受講生の)報告資料の整理・検討
12
授業計画/Class  引き続き、課題5について報告資料に基づき発表及び質疑応答を行う。発表後、各受講生及び教員からコメントを行い、全般的な総括を行う。
事前学習/Preparation 課題5の発表に対するコメントの用意
事後学習/Reviewing 授業における指摘事項の確認、総括事項の復習
13
授業計画/Class 相続・譲渡における二重課税問題について
 テーマに関する基本事項の解説を行う。その後、下記課題について、各受講生から報告資料に基づき発表及び質疑応答を行う。
【課題6】いわゆる年金二重課税事件最判平成22年7月6日(一審長崎地判平成18年11月7日)について、控訴審福岡高判平成19年10月25日と比較し、「同一の経済的価値」とは何を指すと考えるか、明らかにせよ。また、土地の譲渡において譲渡益における二重課税の主張をして棄却された東京地判平成25年6月20日(同控訴審東京高判平成25年11月21日)、東京地判平成25年7月26日(同控訴審東京高判平成26年3月27日)を読み、所得税法9条15号(現16号)に関する上記最判の射程について検討せよ。
事前学習/Preparation  報告資料の作成に当たっては、次の文献を参考とすること。
(年金二重課税)
古田孝夫「判解」『最高裁判所判例解説民事篇平成22年度』431頁
村田敏一「判批」『民商法雑誌143巻6号』686頁
神山弘行「判批」『別冊ジュリスト租税判例百選[第6版]』228号64頁
(土地譲渡)
酒井克彦「相続した土地の含み益への譲渡所得課税の二重課税問題(上)」『月刊税務事例』45巻9号1頁
酒井克彦「相続した土地の含み益への譲渡所得課税の二重課税問題(下)」『月刊税務事例』45巻10号15頁
駒宮史博「判批」『月刊税務事例』46巻10号42頁
図子善信「判批」『新・判例解説Watch(法学セミナー増刊)』15号245頁
事後学習/Reviewing 課題6の発表について、(他受講生の)報告資料の整理・検討
14
授業計画/Class  引き続き、課題6について報告資料に基づき発表及び質疑応答を行う。発表後、各受講生及び教員からコメントを行い、全般的な総括を行う。
事前学習/Preparation 課題6の発表に対するコメントの用意
事後学習/Reviewing 授業における指摘事項の確認、総括事項の復習
15
授業計画/Class 全体の総括
 積み残しの学習事項について整理を行った後、これまでの学習内容を総括する。また、不明な点に関する質疑応答を行う。
事前学習/Preparation 課題1から6までの整理
事後学習/Reviewing 講義全般を通じた復習
授業方法/Method of instruction
 本講義は、6つのテーマを設定し、各テーマについて2週にわたり、①課題判決を精読し、②主要な争点に対する判旨、及びそれに対する評釈について報告資料としてまとめ、③作成した報告資料に基づき各自が発表を行い、④各自が発表に対するコメントを行う、というサイクルで行う。各テーマについて、講師より事前説明及び発表後にまとめ・講評を行う。
成績評価方法/Evaluation
1 100%  全6回の課題判決に対する報告資料の提出・発表時の説明(80%)及び授業への参加・貢献の度合(20%)による。
教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
1 伊藤義一著 『税法の読み方判例の見方改訂3版』 TKC出版 2014年
2 注解所得税法研究会 『注解所得税法5訂版』 大蔵財務協会 2011年
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
 
1 佐藤英明著 『スタンダード所得税法2版』 弘文堂 2016年