講義内容詳細:公共地域政策論(国際)

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年度/Academic Year 2019
授業科目名/Course Title (Japanese) 公共地域政策論(国際)
英文科目名/Course Title (English) Studies on Public and Regional Policies (International)
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 中川 辰洋
英文氏名/Instructor (English) NAKAGAWA, Tatsuhiro

講義概要/Course description
公正貿易(Fair Trade)の光と影
――コーヒー産業を事例にして――

物の本によると、公正貿易(Fair Trade)とは、「発展途上国の生産者を援助し、その自立を促し、また地球環境の持続可能性を促進することを目的とする国際協力活動であり、市場基盤の取組みないし運動」と紹介されている。しかも、公正貿易は「経済的、社会的に立場の弱い途上国の生産者に対して適正な価格で継続的に取引する」といったうえで、とくにコーヒー、ココア、砂糖、紅茶、バナナなどの発展途上国から先進国への輸出を重要視すると銘打っている。

それでは、公正貿易運動によって、途上国と先進国との経済取引は改善されたのであろうか、その結果として途上国の生産者の暮らしぶりは曲がりなりにも向上したのであろうか、さらにやがて途上国と先進国とは対等な経済協力関係を築くことができるのであろうか。この講義は、コーヒー産業を中心に公正貿易によって実現した成果を評価し、公正貿易の将来のありようを展望する。
達成目標/Course objectives
コーヒーは、小麦、大豆、トウモロコシ、カカオなどの農産物はもちろん、鉄鉱、銅、アルミニュウム、石油・天然ガスなどの鉱物資源と同様に一次産品であり、「世界商品(World Commodities)」ともいわれる。その際立った特徴の一つは大手商社や大手投資会などが価格決定に強い影響力を行使する点にあるが、いずれも価格変動が著しく、一次産品を主要輸出産品とする途上国は世界市場における価格の乱高下によってつねに不安定にさらされている。つまり、輸出産品の価格下落によって、その産業は大きな打撃を受け、下落した価格での輸出の拡大はかえってその国の経済的利益を損なうことになる。

公正貿易は、貿易助成金の供与やダンピングといった不正貿易を排して、輸出国である途上国と輸入国の先進国との間で公正な貿易体制を構築することを目指したものであり、1980年代のウルグアイラウンドこのかたさまざまの取り組みがなされてきた。しかも、これらと並行して、多くのNPO(非営利団体)や NGO(非政府組織) が途上国の生産者を中心に生産、品質管理、流通の各分野の活動をサポートしてきた。だが、ここで取り上げるコーヒー産業は、生産から消費の各段階にあって、低賃金や強制労働、透明な価格設定、焙煎・メーカー業者の寡占化、大手小売店(スーパーマッケトや百貨店など)の間の熾烈な価格競争など、公正貿易の理念と相反する動きが目撃される。

こうした事態に直面するとき、はたして公正貿易の理念とは何か、はたしてそれは有効か、有効であるとすれば通常の商取引とどのような程度、形態で維持発展されるべきか――といったより立ち入った問題につき当たることになる。しかし、コーヒー産業の立ち入った紹介・分析を扱った研究はことのほかすくない。

以上を明確にし意識しつつ、この講義では公正貿易のケースタディーとしてコーヒー産業をルポルタージュした、ドイツ有力週刊誌『デア・シュピーゲル(Der Spiegel)』をはじめとする欧文の新聞や雑誌のレポートや記事を通して公正貿易の実態に迫り、その意義と問題点を学習することを目標とする。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
現代社会の時事問題、政治・経済問題、さらには文化・文芸に関心のある学生の受講が望ましい。ただし、講義では、英語のほか、フランス語、ドイツ語、ラテン語を使って解説する予定なので、外国語に自信のないか不得手と見付けた学生諸君は受講しないに如くはない。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 第1回 オリエンテーション:講義テーマ、学習目標の説明
事前学習/Preparation 「公正貿易」に関連するテキストや参考図書として紹介した書籍を読んでおくこと。
事後学習/Reviewing 講義の要点の確認、字句のチェック、問題点の整理。次回講義対象パートに目を通す。
2
授業計画/Class 第2回 講義テキストの講読(1):コーヒーと公正貿易
事前学習/Preparation 講義教材に目を通し概要を理解する。できれば、疑問点や問題点をノートに書き留めておく。
事後学習/Reviewing 講義の要点の確認、字句のチェック、問題点の整理。次回講義対象パートに目を通す。
3
授業計画/Class 第3回 講義テキストの講読(2):コーヒー豆の収穫(サプラーチェインのスタートライン)
事前学習/Preparation 講義教材に目を通し概要を理解する。できれば、疑問点や問題点をノートに書き留めておく。
事後学習/Reviewing 講義の要点の確認、字句のチェック、問題点の整理。次回講義対象パートに目を通す。
4
授業計画/Class 第3回 講義テキストの講読(3):コーヒー豆の加工(焙煎)
事前学習/Preparation 講義教材に目を通し概要を理解する。できれば、疑問点や問題点をノートに書き留めておく。
事後学習/Reviewing 講義の要点の確認、字句のチェック、問題点の整理。次回講義対象パートに目を通す。
5
授業計画/Class 第5回 講義テキストの講読(4):最終消費財としてのコーヒと消費者
事前学習/Preparation 講義教材に目を通し概要を理解する。できれば、疑問点や問題点をノートに書き留めておく。
事後学習/Reviewing 講義の要点の確認、字句のチェック、問題点の整理。次回講義対象パートに目を通す。
6
授業計画/Class 第6回 講義テキストの講読(5):公正貿易の「不公正性」
事前学習/Preparation 講義教材に目を通し概要を理解する。できれば、疑問点や問題点をノートに書き留めておく。
事後学習/Reviewing 講義の要点の確認、字句のチェック、問題点の整理。次回講義対象パートに目を通す。
7
授業計画/Class 第7回 講義テキストの講読(6):コーヒー産業
事前学習/Preparation 講義教材に目を通し概要を理解する。できれば、疑問点や問題点をノートに書き留めておく。
事後学習/Reviewing 講義の要点の確認、字句のチェック、問題点の整理。次回講義対象パートに目を通す。
8
授業計画/Class 第8回 講義テキストの講読(7):消費者
事前学習/Preparation 講義教材に目を通し概要を理解する。できれば、疑問点や問題点をノートに書き留めておく。
事後学習/Reviewing 講義の要点の確認、字句のチェック、問題点の整理。次回講義対象パートに目を通す。
9
授業計画/Class 第9回 講義テキストの講読と解説(8):公正貿易認証シールの信頼性
事前学習/Preparation 講義教材に目を通し概要を理解する。できれば、疑問点や問題点をノートに書き留めておく。
事後学習/Reviewing 講義の要点の確認、字句のチェック、問題点の整理。次回講義対象パートに目を通す。
10
授業計画/Class 第10回 講義テキストの講読と解説(9):コーヒー貿易改善プロジェクト
事前学習/Preparation 講義教材に目を通し概要を理解する。できれば、疑問点や問題点をノートに書き留めておく。
事後学習/Reviewing 講義の要点の確認、字句のチェック、問題点の整理。次回講義対象パートに目を通す。
11
授業計画/Class 第11回 講義テキストの講読と解説(10):まとめ
事前学習/Preparation この間の講義内容の整理をつうじてコーヒー貿易の「公正性」を評価する。
事後学習/Reviewing 次回講義テキストに目を通す。
12
授業計画/Class 第12回 ケーススタディー 公正貿易の旗手(1):ネスレ
事前学習/Preparation 講義教材に目を通し概要を理解する。できれば、疑問点や問題点をノートに書き留めておく。
事後学習/Reviewing 講義の要点の確認、字句のチェック、問題点の整理。次回講義対象パートに目を通す。
13
授業計画/Class 第13回 ケーススタディー 公正貿易の旗手(2):スターバックス
事前学習/Preparation 講義教材に目を通し概要を理解する。できれば、疑問点や問題点をノートに書き留めておく。
事後学習/Reviewing 講義の要点の確認、字句のチェック、問題点の整理。次回講義対象パートに目を通す。
14
授業計画/Class 第14回 ケーススタディー 公正貿易の旗手(3):JAB ホールディングズ
事前学習/Preparation 講義教材に目を通し概要を理解する。できれば、疑問点や問題点をノートに書き留めておく。
事後学習/Reviewing 講義の要点の確認、字句のチェック、問題点の整理。
15
授業計画/Class 第15回 まとめ:公正貿易の将来
事前学習/Preparation これまでの講義内容の整理
事後学習/Reviewing コーヒーのほかの世界商品(一次産品)の貿易問題を考えてみる。
授業方法/Method of instruction
授業では、テーマに関連する欧文のレポートをテキストとして用い、毎回そのテキストの中身をレクチャーする方式とし、時に応じて参考資料を配布したり、関連するテキストを紹介する。

受講生は、課題図書に一応目を通し内容を理解しておくこと、また講義後はその要点を整理・分析して、そこで知り得た政治や社会に関する思想や信条、国内外の事件やエピソードなどに思いを致し、それらが後世にどのような影響を及ぼしたかを理解することが望ましい。
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 100% 期末試験による成績評価。試験問題は15回の講義で取り上げたテーマをもとに3問を出題、そのうち1問に答えるものとする。解答は論文形式、1500字程度とする。

なお、毎回出欠を取る愚かしい真似はしないが、自発的長期欠席者や学業怠慢の受講生を対象とする追試やこれに準ずるレポートの提出といった、およそ教育的配慮とは無縁の救済措置はこれを一切講じない。
教科書/Textbooks
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1 とくに指定せず、開講時にプリントを配布する。
参考書/Reference books
 著者名
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タイトル
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出版社
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出版年
Published year
価格
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1 臼井隆一郎 『コーヒーが廻り世界史が廻るーー近代資金社会の黒い血液』 中公新書 1992年 734円
2 レイ・オルデンバーグ 『サードプレイス――コミュニティの核になる<とびきり居心地よい場所>』(忠平美幸訳) みすず書房 2013年 4200円