講義内容詳細:ジェンダーと法

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年度/Academic Year 2019
授業科目名/Course Title (Japanese) ジェンダーと法
英文科目名/Course Title (English) Gender and Law
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 井上 匡子
英文氏名/Instructor (English) INOUE, Masako

講義概要/Course description
 ジェンダーとは、性別に関する新しい見方・視点のことである。
 本講義では、ジェンダーの視点から法を捉えなおす。
 ジェンダーという語の多義性とともに、ジェンダー/セックス/セクシュアリティなどの概念の違いを学ぶ。 
 もっとも、法律の世界や、法律の条文の中に性別があるのか? 
 憲法では男女の平等がうたわれているし、契約は女性が締結しても、男性が締結しても、その効果は同じはず。 
 法学は男女の区別をしないことで、平等や中立性を実現しようとしてきたのではないか。 
 他方で、現実には女子学生の就職にせよ管理職や議員の女性比率にせよ、男性と女性の格差にはなお深いものがある。 
 講義では、これら二つの相反する考え方を架橋する。 
 見慣れた法の世界が全く違ってみえることになる。 
達成目標/Course objectives
 ジェンダーという言葉自体は、現在では聞いたことのない人は殆どいないと思われる。しかし、その正確な内容については、必ずしも多くの人が理解しているとは言えない。本講義では、ジェンダー/セクシュアリティ概念やその展開、法との関係について理解し、ジェンダーの視点から法の世界を見直すことを目指す。それを通じて、無意識・無批判に内面化されているジェンダーバイアスを意識し、それらを法的思考/解釈の中で対象化することを目的とする。併せてこれらのジェンダーバイアスが、法曹による二次被害を引き起こしかねないものであることを理解する。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
特になし。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class イントロダクション 
 シラバスや今後のススメ方についての確認を行う。履修者の関心やジェンダーに関する理解度を確かめるために、ショートエッセイを作成する。

事前学習/Preparation 『レクチャー ジェンダー法』の序章に目を通し、そのテーマについて発言できるように準備すること。
事後学習/Reviewing 講義の中で作成したショートエッセイにかかれていたテーマにつき、自分の考えをまとめる。
2
授業計画/Class ジェンダーとはなにか・・・ジェンダー論総論1
 なぜ、ジェンダー概念が必要だったのか
事前学習/Preparation 『レクチャー ジェンダー法』の序章・第一章の該当箇所に目を通し、授業中はそのテーマについて発言できるように準備すること。
事後学習/Reviewing 自分の身近にあるジェンダー問題について、ジェンダー構造の観点から、問題化してみる。
3
授業計画/Class ジェンダー概念の展開・・・ジェンダー論総論2
 ジェンダー/セックス/セクシュアリティ
事前学習/Preparation 『レクチャー ジェンダー法』・『セクシュアリティと法』の該当箇所に目を通し、授業中はそのテーマについて発言できるように準備すること。
事後学習/Reviewing 新しいジェンダーの概念やセクシュアリティ概念について、身近な問題に引きつけて考え、まとめる。
4
授業計画/Class ジェンダーと法の関係・・・ジェンダー論総論3
 法と性別
 構造としてのジェンダー
事前学習/Preparation 『レクチャー ジェンダー法』・『セクシュアリティと法』の該当箇所に目を通し、授業中はそのテーマについて発言できるように準備すること。
事後学習/Reviewing 講義の中で示した具体的な問題につき、自分の考えをまとめる。
5
授業計画/Class 性暴力とジェンダー 1 
 性暴力と性犯罪
事前学習/Preparation 『レクチャー ジェンダー法』・『セクシュアリティと法』の該当箇所に目を通し、授業中はそのテーマについて発言できるように準備すること。
事後学習/Reviewing 性暴力が構造的な原因をもつことを理解する。また、判例のなかにみられる問題についても、検討し、考えをまとめる。
6
授業計画/Class 性暴力とジェンダー 2 
 ストーカー・セクシュアル・ハラスメント
事前学習/Preparation 『レクチャー ジェンダー法』・『セクシュアリティと法』の該当箇所に目を通し、授業中はそのテーマについて発言できるように準備すること。
事後学習/Reviewing 講義の中で示した具体的な問題につき、自分の考えをまとめる。
7
授業計画/Class 性暴力とジェンダー 3 
 ドメスティック・バイオレンス
事前学習/Preparation 『レクチャー ジェンダー法』・『セクシュアリティと法』の該当箇所に目を通し、授業中はそのテーマについて発言できるように準備すること。
事後学習/Reviewing 講義の中で示した具体的な問題につき、自分の考えをまとめる。
8
授業計画/Class もう一度・・・ジェンダーとは何か
 法は、なんのためにあるのか。 
 グループワーク
事前学習/Preparation 『レクチャー ジェンダー法』・『セクシュアリティと法』の該当箇所に目を通し、授業中はそのテーマについて発言できるように準備すること。
事後学習/Reviewing グループワークの成果を文献などで、確かめ、自分の考えをまとめる。
9
授業計画/Class セクシュアリティと法 
 性同一性障害特例法の意義と問題点 
 GIDをめぐる諸問題
事前学習/Preparation 『レクチャー ジェンダー法』・『セクシュアリティと法』の該当箇所に目を通し、授業中はそのテーマについて発言できるように準備すること。
事後学習/Reviewing 講義の中で示した判例などの流れを復習し、自分の考えをまとめる。そのテーマについての解決法を、論理と正義に照らして、自分なりに導くこと。
10
授業計画/Class 家族内での紛争とジェンダー 1 
 婚姻・離婚、そして夫婦別姓

事前学習/Preparation 『レクチャー ジェンダー法』・『セクシュアリティと法』の該当箇所に目を通し、授業中はそのテーマについて発言できるように準備すること。
事後学習/Reviewing これまでの判例、最近提起されている訴訟について、検討し、考えをまとめる。
11
授業計画/Class 家族内での紛争とジェンダー 2
 親子関係
事前学習/Preparation 『レクチャー ジェンダー法』・『セクシュアリティと法』の該当箇所に目を通し、授業中はそのテーマについて発言できるように準備すること。
事後学習/Reviewing 生殖補助医療を前提とした親子法のありかたについて、具体的に検討し、考えをまとめる。
12
授業計画/Class 生殖をめぐるジェンダーと法
 中絶、代理母、死後懐胎
事前学習/Preparation 『レクチャー ジェンダー法』・『セクシュアリティと法』の該当箇所に目を通し、授業中はそのテーマについて発言できるように準備すること。
事後学習/Reviewing 生殖補助医療を前提とした親子法のありかたについて、具体的に検討し、考えをまとめる。
13
授業計画/Class 労働現場でのジェンダー問題 1
 均等法の理念と現実
事前学習/Preparation 『レクチャー ジェンダー法』・『セクシュアリティと法』の該当箇所に目を通し、授業中はそのテーマについて発言できるように準備すること。
事後学習/Reviewing 講義の中で示した具体的な問題につき、自分の考えをまとめる。
14
授業計画/Class 労働現場でのジェンダー問題 2
 間接差別をめぐる諸問題
事前学習/Preparation 『レクチャー ジェンダー法』・『セクシュアリティと法』の該当箇所に目を通し、授業中はそのテーマについて発言できるように準備すること。
事後学習/Reviewing 講義の中で示した具体的な問題につき、自分の考えをまとめる。また、法曹や司法制度の役割について、考えをまとめる。
15
授業計画/Class 期末試験解説
事前学習/Preparation 試験勉強を十分に行う。
事後学習/Reviewing 解説に納得できない箇所があれば徹底的に調べる。
授業方法/Method of instruction
1.受講生が『レクチャー ジェンダー法』・『セクシュアリティと法』の該当箇所を熟読したことを前提に、担当教員が解説を行う。また、最新の情報については、ブリントを配布、あるいは該当のURLなどを告知する。
2.各回の講義内容は上記のように予定しているが、時間や受講生の興味関心との関係で若干前後する場合もある。 
3.基本的に講義形式で行うが、グループワークあるいはリアクションペーパーを用いたディベートを実施する。 
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 70% 期末試験での評価
2 平常点 In-class Points 30% 提出物、授業への参加度、内容の説得力を評価する。
教科書/Textbooks
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タイトル
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ISBN価格
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1 犬伏由子, 井上匡子, 君塚正臣編 レクチャージェンダー法 法律文化社 2012.4 9784589034076 2500円+税 毎回使用する。
2 谷口洋幸, 綾部六郎, 池田弘乃編 ; 石田仁 [ほか] 著 セクシュアリティと法 法律文化社 2017.10 9784589038722 2500円+税 毎回使用する。
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
 
1 角田由紀子著 性と法律 岩波書店 2013.12 9784004314615 820円+税 蔵書情報 / Library information
2 辻村みよ子著 概説ジェンダーと法 信山社 2016.9 9784797286199 蔵書情報 / Library information
3 ジェンダー法学会編 講座ジェンダーと法全4巻 日本加除出版 2012
メッセージ/Message
自らのジェンダーバイアスと向き合うという辛い過程を経験することになる。また、これまで学んできた知識を相対化する作業は、とても厳しい。しかし、法曹として必須の作業・過程である。ぜひ、積極的に取り組んでほしい。
その他/Others
質問や意見は、大歓迎。是非、講義の中でも議論を展開したい。
キーワード/Keywords
ジェンダー     セクシュアリティ     ジェンダー平等