講義内容詳細:イスラム圏の社会と文化A

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年度/Academic Year 2020
授業科目名/Course Title (Japanese) イスラム圏の社会と文化A
英文科目名/Course Title (English) Society and Culture of the Islamic Area A
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 杉山 隆一
英文氏名/Instructor (English) SUGIYAMA, Ryuichi

講義概要/Course description
 中東地域は、「アラブの春」や「イスラーム国」(IS)の台頭、さらには域内諸国の対立などにより長きに渡る混迷の中にある。地域一帯のみならず世界規模で大きな影響を及ぼしているこの混迷は、イスラームの持つ独特の思想・行動様式がその要因として注目されがちだが、実際にはそれ以外にも自然地理や歴史が育んできた地域社会の特殊性や、近代以降の列強による地域の植民地化とその後の国民国家の形成過程、天然資源エネルギー生産の向上による新たな経済・産業構造の形成、さらには冷戦構造とその崩壊など、実に多様な要素が複雑に絡み合った結果であると言える。
 本授業では、中東という地域とそこに形成された国家の特殊性、および現在の混迷の要因を作り上げてきた上記のような要素が現在に至るまでにいかに形成されてきたか、そしてこれらの要素がどう地域を動かしてきたかについて考察し、中東地域の現在についての理解を深めていくことを目指す。
達成目標/Course objectives
 現在の中東地域の国家・社会を動かしてきた多くの要因の形成過程とその特徴についての理解を深め、当該の地域が抱える様々な問題について自らが考えていくための基礎固めを目標とする。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
 受講前に、高校の世界史レベルの初期イスラーム史および近代以降の中東地域に関する歴史についておさらいをしておくこと。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class イントロダクション
事前学習/Preparation 講義概要・履修条件に挙げた事柄の確認
事後学習/Reviewing 講義の概要・授業計画などを確認し、自身で知識が不足していると考えるテーマの箇所について、自発的に学習しておくこと
2
授業計画/Class 中東地域の社会の特徴:自然環境や暮らす人々から
事前学習/Preparation 中東地域の地理・暮らす人々の概要を把握しておく
事後学習/Reviewing 自然環境や民族・言語が地域に与えてきた影響について、各自で整理し考えてみる
3
授業計画/Class イスラームと政治(1) -イスラームの誕生、スンナ派の共同体の形成、イスラーム法-
事前学習/Preparation 初期イスラーム史の発展に関して確認しておく
事後学習/Reviewing イスラームにおける初期の共同体の発展過程と、法の形成に関して確認すること
4
授業計画/Class イスラームと政治(2) -最大の分派・シーア派をめぐって-
事前学習/Preparation シーア派の歴史をおさらいしておく
事後学習/Reviewing シーア派の独特の教義・慣習が、現代に至るまでの地域の政治にいかなる影響を与えてきたかについて各自考えてみる
5
授業計画/Class イスラームと政治(3) -イスラーム共同体における外圧への対応-
事前学習/Preparation ジハードという言葉の意味や18世紀以降に拡大したワッハーブ運動などを確認しておくこと
事後学習/Reviewing 外圧に対するイスラーム教徒の危機意識とは何かについて整理し、その現代的意義を各自考える
6
授業計画/Class 中東地域の近代化と国家形成 -アラブ地域を事例に-
事前学習/Preparation 近代以降の中東地域の植民地化の過程について把握しておく
事後学習/Reviewing 植民地化による中東地域の変容と成立した国民国家が抱えた問題を整理しておく
7
授業計画/Class 中東諸国の支配体制の特徴
事前学習/Preparation 中東地域の国家の統治のあり方とはどのようなものか、考えておく
事後学習/Reviewing 中東地域の権威主義体制、レント経済の特徴から、国家の支配のあり方が地域の安定にいかなる影響を与えているか、考えてみる
8
授業計画/Class パレスチナ問題
事前学習/Preparation パレスチナ問題とは何か、概略を掴み考えておく
事後学習/Reviewing パレスチナ問題の史的展開と現状について整理しておく
9
授業計画/Class 米国の中東政策
事前学習/Preparation 米国の中東への関与の歴史的変遷について、可能な限り学習しておく
事後学習/Reviewing 米国の中東政策が地域にいかなる影響を与えてきたのか、各自で考えてみる
10
授業計画/Class 中東の国家の外交 -事例としてのイランと、現在の域内諸国の対立-
事前学習/Preparation 国家の外交政策を規定する要因とは何か、考えておく
事後学習/Reviewing 事例として取り上げたイランの外交政策の根幹を踏まえて、現在の域内対立の要因について考えてみる
11
授業計画/Class 20世紀中盤の地域の変容 -イスラーム主義の台頭―
事前学習/Preparation イスラーム主義の台頭の契機となったものは何か、各自で考えておく
事後学習/Reviewing イスラーム主義の発展・拡大の要因について、各自で整理して考えてみる
12
授業計画/Class 20世紀末期の地域の変化 ーソ連のアフガン侵攻からアル=カーイダの台頭まで―
事前学習/Preparation 冷戦期、特に1970~80年代の米ソの中東地域への政策を調べておく
事後学習/Reviewing 冷戦構造が中東地域にもたらした影響を整理し、武装勢力形成の背景に関して理解を深める
13
授業計画/Class 武装イスラーム勢力の台頭 ―アル=カーイダの登場、9.11事件、その後-
事前学習/Preparation 武装イスラーム勢力が持つ思想や戦略について考えておく
事後学習/Reviewing 武装イスラーム勢力が拡大した背景として考えられる各要素について、各自で掘り下げて考えてみる
14
授業計画/Class 「アラブの春」をめぐって
事前学習/Preparation 中東諸国が抱えていた支配の脆弱性とは何かについて考えておく
事後学習/Reviewing 「アラブの春」によって生じた変化の諸要因、およびこの運動が各国並びに地域に与えた影響を検討してみる
15
授業計画/Class 「イスラーム国」(IS)の盛衰と地域のその後
事前学習/Preparation ISとはどういう組織なのか、各自で調べておく
事後学習/Reviewing ISの台頭・衰退の要因を考えてみる。また、中東地域の今後の展開に重要な役割を果たす要素とは何か、これまでの授業の内容をもとに、各自で検討してみる
授業方法/Method of instruction
 Course Powerを利用し、オンデマンド形式で行う。パワーポイントを元に作成した講義の映像資料を視聴してもらう形で授業を進める。理解の助けとなる配布資料は用意する。教科書は利用しない。各回の参考文献は授業内で適宜紹介する。
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 60%  レポートの作成・提出を必須とする。現段階では、授業の内容を踏まえた形で、入手可能な参考文献を参照してもらいながらレポートを作成してもらうことを想定している。但し、大学図書館が利用可能になるなど、今後の状況に変化があった場合には、変更もありうるので注意すること。詳細は授業内で指示する。
2 平常点 In-class Points 40%  ①各回の授業時に提示する課題、②授業に関する感想・質問・疑問など、この2点についてcourse power経由で回答を行ってもらう。内容のよいものにつき加点法で評価に加えていく。
メッセージ/Message
中東地域の現在に少しでも興味を抱いている学生さんの受講を歓迎します。