講義内容詳細:イスラム圏の社会と文化B

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年度/Academic Year 2020
授業科目名/Course Title (Japanese) イスラム圏の社会と文化B
英文科目名/Course Title (English) Society and Culture of the Islamic Area B
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 杉山 隆一
英文氏名/Instructor (English) SUGIYAMA, Ryuichi

講義概要/Course description
 本授業では、前近代のイスラーム化以後におけるイラン地域の歴史をテーマとする。イスラーム化以後のイラン地域は、実に多様な要素によってその発展が促されてきたと言える。この地域に成立した諸支配王朝は、その統治の面に関して、もちろん他の中東諸地域の王朝との共通点を有してはいるが、イスラーム以前のイラン地域の伝統の継承、遊牧集団の流入とその支配の影響、ペルシア語の行政用語化、16世紀に誕生したサファヴィー朝によるイスラーム・シーア派の「国教化」など、多くの点で異なった側面をも有している。長距離交易関連では、アルメニア人、ヒンドゥー教徒、英蘭東インド会社などがヨーロッパやアジア地域などとの物流を担い、絹や絨毯といった物資の輸出により、同地域の経済的な発展に寄与した。文化も、他地域とは異なった土壌において外来の物資・技術を受容しながら独自の発展を遂げてきた。ミニアチュール、コーヒー・お茶の文化などはその最たるものであろう。これらは一例にしか過ぎないが、こうして見るとイラン地域の歴史は、極めて多彩な要素が複雑に絡み合って展開してきたのである。
 この授業では、イラン地域の前近代史に関して、時系列に沿って説明するというよりも、政治・宗教・商業・文化などについて個々のテーマを設定して検討する。同地域の歴史を学ぶことはもとより、その学習を通じて中東・イスラームへの理解を深めることを目指す授業を行ってみたい。
達成目標/Course objectives
 イラン地域の前近代史につき、イスラーム化以後から19世紀初頭までの同地域を対象として(イランという地域設定は広く取ります。またテーマによっては20世紀初頭の事例を扱うこともあります)、上記のような政治・文化等に見られる多様な視点を取り上げて講義形式で解説を行い、受講生の皆さんにイラン地域の歴史、さらには比較の視点から中東の前近代史への理解を深めることを目的にします。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
 高校世界史のイラン地域の歴史、ならびに中東・イスラーム地域の歴史について、再度復習しておくこと。未履修者は高校世界史の教科書における上記の該当箇所について理解を深めた上で受講すること。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class イントロダクション
事前学習/Preparation シラバスを熟読し、どのような授業なのか、そしてどういった点に興味が持てそうか、各自考えておく
事後学習/Reviewing 授業の方針を聞いて、自身に不足していると思った知識について可能な限り早く学習しておくようにする
2
授業計画/Class イランの自然環境と支配権力
事前学習/Preparation イランの自然環境の特徴についてある程度知識を得ておく
事後学習/Reviewing イラン地域において自然環境がいかに支配権力のあり方に影響を与えたか、自分なりに考えてみる
3
授業計画/Class イラン前近代史とイスラーム(1)
事前学習/Preparation イランにおけるイスラームの受容と拡大の歴史をおさらいしておく
事後学習/Reviewing イラン地域において15世紀頃までのイスラームがどのような特徴を持っていたか考えてみる
4
授業計画/Class イラン前近代史とイスラーム(2)
事前学習/Preparation イランにおけるイスラームの受容と拡大の歴史をおさらいしておく
事後学習/Reviewing シーア派とその歴史的な展開の意義を各自が考えてみる
5
授業計画/Class 遊牧集団のイラン支配(1)
事前学習/Preparation トルコ系、モンゴル系遊牧集団のイラン地域への流入の過程を把握しておく
事後学習/Reviewing 遊牧部族の支配の正統性のあり方、統治の特徴について各自考えてみる
6
授業計画/Class 遊牧集団のイラン支配(2)
事前学習/Preparation トルコ系、モンゴル系遊牧集団のイラン地域への流入の過程を把握しておく
事後学習/Reviewing 遊牧集団による支配の限界について各自で考えてみる
7
授業計画/Class イラン地域とペルシア語
事前学習/Preparation ペルシア語とはどういう言語か、各自学習しておく
事後学習/Reviewing 前近代のこの地域における政治・文化面でのペルシア語の意義を各自で考えてみる
8
授業計画/Class イラン地域の都市(1)
事前学習/Preparation 中東の都市とはどういう空間か、その概略について各自学習しておく
事後学習/Reviewing イラン地域の都市の構成要素の持つ意義を各自で考えてみる
9
授業計画/Class イラン地域の都市(2)
事前学習/Preparation 中東の都市とはどういう空間か、その概略について各自学習しておく
事後学習/Reviewing 都市における宗教施設・商業施設の特徴、ならびに双方の存在によって成立する経済サイクルについて各自考えてみる。
10
授業計画/Class イラン地域の都市(3)
事前学習/Preparation 中東の都市とはどういう空間か、その概略について各自学習しておく
事後学習/Reviewing 映像資料を利用するので、実際のイラン地域の都市の構成や祝祭を見て、その意義を自ら考えてみる。
11
授業計画/Class 長距離交易をめぐって(1)
事前学習/Preparation イラン地域において長距離交易を担った勢力の概略について、各自学習しておく
事後学習/Reviewing 地域における英蘭東インド会社の活動の意義を各自で考えてみる
12
授業計画/Class 長距離交易をめぐって(2)
事前学習/Preparation イラン地域において長距離交易を担った勢力の概略について、各自学習しておく
事後学習/Reviewing マイノリティーが長距離交易に果たした役割・意義を各自で考えてみる
13
授業計画/Class 食文化:イラン地域におけるコーヒーとお茶の広がりを題材に
事前学習/Preparation コーヒー、お茶の歴史についてある程度知識を得ておく
事後学習/Reviewing コーヒー、お茶がイラン地域の文化の発展に果たした意義を各自で考えてみる
14
授業計画/Class イラン地域における絵画の発展
事前学習/Preparation 中東地域の絵画について、ある程度の知識を得ておく
事後学習/Reviewing イラン地域のミニアチュールの発展は、何によって促されてきたか、考えてみる
15
授業計画/Class 全体総括:イラン地域の歴史の特徴を考える
事前学習/Preparation これまでの授業を振り返り、印象に残った点などを挙げておく
事後学習/Reviewing イラン地域の前近代史に関して、地域の歴史の特徴や、他地域との共通点について考えてみる。
授業方法/Method of instruction
 Course Powerを利用し、オンデマンド形式で行う。パワーポイントをもとに作成した授業映像と配布資料を使用して、講義形式で授業を進める。授業映像と配布資料は毎回授業時間(金曜4限)開始までには閲覧可能な状態にとなるよう、担当者の方で準備を行う。実際の授業では、理解の助けとすべく、画像・映像資料も可能な限り使用する予定である。なお、教科書は利用しない。参考文献は授業内で適宜紹介する。
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 60%  レポートの作成・提出を必須とする。現段階では、授業の内容を踏まえた形でテーマを数点設定し、そのうちのひとつを選び、担当者が準備した参考文献を参照してもらいながらレポートを作成してもらうことを想定している。詳細は授業内で指示する。
2 平常点 In-class Points 40%  ①各回の授業時に提示する課題、②授業に関する感想・質問・疑問、この2点について、授業映像視聴後にcourse power経由で提出してもらう。これら2点の提出をもって授業の出席と見なすとともに、評価に加えていく。提出物に関するフィードバックは、原則としてその次の回の授業の冒頭で行う。課題未提出の回(欠席)が一定の割合を超えた学生に関しては、レポート提出があっても成績評価の対象から除外するので、注意すること。
メッセージ/Message
 イラン・西アジアをはじめとした中東地域の歴史や文化に興味を持ち、授業に主体的に取り組む意志のある学生さんの受講を歓迎します。