講義内容詳細:歴史と人間(個別科目)

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年度/Academic Year 2020
授業科目名/Course Title (Japanese) 歴史と人間(個別科目)
英文科目名/Course Title (English) History and Humankind (Independent Courses)
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 渡部 良子
英文氏名/Instructor (English) WATABE, Ryouko

講義概要/Course description
イスラームの歴史と文化
 西暦7世紀、アラビア半島に誕生した一神教イスラームは、アフリカから東・東南アジアまでの広大な領域に広がる世界宗教へと発展しました。そしてイスラーム信仰に基づく文化や制度は、各地の文化と融合して多様な形で発展し、現代のグローバル化とメディアの進化の中、さらなる進化を見せつつ社会に生きています。現在の国際社会の動きを知るうえで、イスラーム思想・文化についての正しい知識と理解は、欠かすことができません。
 本講義では、イスラームがどのような歴史を経てその制度・文化を形成してきたのか、現代イスラーム圏の社会・文化を理解する手がかりとなる重要な6つのトピック(イスラーム信仰と一神教的世界観、国家観、法思想・制度、民間信仰、宗派、近代化とのかかわり)の歴史に焦点を当てて学びます。
達成目標/Course objectives
現在、国際政治、経済の動向にも大きな影響を及ぼす世界宗教イスラームは、どのような思想や価値体系を持つ宗教なのか。その思想・価値体系が形成される背景には、どのような歴史があるのか。「イスラームの成立と聖典クルアーンの世界観」「イスラーム的国家思想の形成」「イスラーム法の思想と制度」「イスラーム神秘主義と多様なイスラーム文化」「少数派シーア派の歴史と思想」「近現代イスラーム思想とイスラーム主義運動の登場」の6つのトピックについて、その基礎知識と歴史を学び、現在のイスラーム圏の社会・文化を理解する力を身につける。

履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
高校で世界史の授業を履修しなかった人でも受講可能です。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class イスラームのとらえかた(1):イスラーム圏のひろがりと現代に生きるイスラーム

事前学習/Preparation 現代世界で「イスラーム圏」はどのような広がりを持っているのか、現代イスラーム圏の社会・生活の中にイスラームはどのように生きているのか、イスラーム信仰の根幹とされる「五行」を手がかりに学んでいきます。Course Powerで事前に配布するガイダンス資料を予習し、「五行」(信仰告白・礼拝・制度的喜捨,断食,巡礼)について自分がどの程度の知識を持っていたか,確認して下さい。
事後学習/Reviewing 教材で説明する、Course Powerによるオンディマンド形式授業の進めかた・受講方法をよく確認し、以後の受講に備えて下さい。
2
授業計画/Class イスラームのとらえかた(2):「イスラームへのまなざし」が持つ問題
事前学習/Preparation イスラームは、世界の約16億の人々の宗教として現代社会に生きる一方、急進的イスラーム主義勢力の活動などが国際社会を揺るがす中で、否定的なイメージでまなざされがちな状況に置かれています。このような「問題としてのイスラーム」像は、なぜ形成されていったのか、その背景を学びます。自分は「イスラーム」についてどのような情報・イメージを持ってきたか、考えてきて下さい。
事後学習/Reviewing 否定的な「イスラーム」像を作り上げてきた現代世界の「イスラームへのまなざし」が持つ問題を捉え直し、これからイスラームの歴史・文化について学ぶ姿勢について考えて下さい。併せて,イスラームの歴史と文化について学ぶための参考文献・リソース(資料)とそのアクセス方法について、学んでもらいます。
3
授業計画/Class 聖典クルアーン:イスラームの一神教的世界観
事前学習/Preparation イスラームはなぜ生まれたのか、イスラームの聖典クルアーンは何を伝える書物なのか。イスラーム成立の歴史的背景とイスラームの創始者・預言者ムハンマドの生涯をクルアーンのテキストを聴き/読みながら学び、その一神教としての世界観がどのようにして形成されたのかを学びます。事前にCoursePowerに上げたクルアーンのテキストと音源の資料も見ておいて下さい。
事後学習/Reviewing Course Powerで回答・提出する理解度確認小テストの答え合わせをし,正確に理解できていなかった箇所を、教材を見直してよく復習して下さい。
4
授業計画/Class ウンマとカリフ:「イスラーム的な国家」とは?
事前学習/Preparation イスラームにおいて、「国家」はいかなるものと考えられてきたのか?預言者ムハンマド没後のイスラームの歴史が、理想と現実の間でどのような「国家」をめぐる思想を作り上げてきたのか、ウンマ(イスラーム共同体)とカリフ(ムハンマドの代理・後継者)権という概念を手がかりに学んでいきます。CoursePowerの予習用資料(年表:イスラームの拡大・発展の歴史とカリフ権の変容)を読み、歴史の流れをつかんでおいて下さい。
事後学習/Reviewing 理解度確認小テストの答え合わせをし、正確に理解できていなかった箇所を、教材を見直してよく復習して下さい。
5
授業計画/Class イスラーム法(1):法の理念とシステム
事前学習/Preparation イスラーム信仰の規範として発展し、イスラームに基づく国家の重要な条件ともされた信仰実践のシステム、イスラーム法は、どのような「法」なのか?イスラーム法の形成の背景にある思想と、歴史の中で培われてきた法解釈のシステムを学びます。
事後学習/Reviewing 理解度確認小テストの答え合わせをし、正確に理解できていなかった箇所を、教材を見直してよく復習して下さい。
6
授業計画/Class イスラーム法(2):法の運用と担い手
事前学習/Preparation イスラーム圏の歴史の中で、イスラーム法はどのように運用されてきたのか、またその担い手は誰なのか?イスラーム法を運用する制度と法の専門家の教育・活動、そして近現代の法制度の近代化がもたらした変化について考えます。
事後学習/Reviewing 理解度確認小テストの答え合わせをし、正確に理解できていなかった箇所を、教材を見直してよく復習して下さい。
7
授業計画/Class イスラーム法(3):現代における問題と役割
事前学習/Preparation 20世紀後半から顕在化してきたイスラーム復興の中で、その施行をめぐり様々な議論が行われているイスラーム法。現代社会においてイスラーム法が持つ問題、可能性は何なのかを学び、科学とイスラームの関係や急進的イスラーム主義勢力の行動など、現代のイスラーム圏におけるイスラーム法が関わる問題・議論のとらえ方を考えます。
事後学習/Reviewing 理解度確認小テストの答え合わせをし、正確に理解できていなかった箇所を、教材を見直してよく復習して下さい。
8
授業計画/Class イスラーム神秘主義(1):その思想と発展の歴史
事前学習/Preparation 制度的なイスラーム法に対し、イスラームの内面的信仰の思想を深める契機となったスーフィズム(イスラーム神秘主義)。イスラームの広域への拡大を促進し、庶民的な信仰の発展にも影響を与えたスーフィズムについて、その思想と発展の歴史的背景を学びます。
事後学習/Reviewing 理解度確認小テストの答え合わせをし、正確に理解できていなかった箇所を、教材を見直してよく復習して下さい。
9
授業計画/Class イスラーム神秘主義(2):世界に広がる民衆のイスラーム
事前学習/Preparation スーフィズムはイスラームの拡大にどのような役割を果たしたのか。東アジア、南アジア、東南アジアへのイスラームの拡大の歴史を追い、地域ごとの多様なイスラーム文化の形成にスーフィズムが与えた影響を考えます。
事後学習/Reviewing 理解度確認小テストの答え合わせをし、正確に理解できていなかった箇所を、教材を見直してよく復習して下さい。
10
授業計画/Class 少数派シーア派(1):その起源と歴史
事前学習/Preparation イスラームの少数派シーア派は、どのような歴史のもと成立し、多数派スンナ派とは異なる信仰世界を発展させてきたのか?その起源と主流派12イマーム・シーア派の成立にいたる歴史を追います。
事後学習/Reviewing 理解度確認小テストの答え合わせをし、正確に理解できていなかった箇所を、教材を見直してよく復習して下さい。
11
授業計画/Class 少数派シーア派(2):その文化と近代へのあゆみ
事前学習/Preparation スンナ派とは異なる独自の思想・教義を形成したシーア派が築いた文化・イスラーム法と,その近代にいたる歴史のあゆみをたどります。
事後学習/Reviewing 理解度確認小テストの答え合わせをし、正確に理解できていなかった箇所を、教材を見直してよく復習して下さい。
12
授業計画/Class 近現代のイスラーム(1):20世紀のシーア派
事前学習/Preparation 本講義の最後のテーマは、近代におけるイスラームの変化と現代イスラーム思想の形成を考察します。最初は前回のテーマを引き継ぎ、20世紀のシーア派のあゆみを考えます。近現代の変化の中で、シーア派社会はどのような変革を経験したのか?現代最も多数のシーア派人口を擁するイランでシーア派イスラーム体制が形成されるに至る歴史を学びます。
事後学習/Reviewing 理解度確認小テストの答え合わせをし、正確に理解できていなかった箇所を、教材を見直してよく復習して下さい。
13
授業計画/Class 近現代のイスラーム(2):イスラーム改革思想の発展
事前学習/Preparation 20世紀後半以降、現代のイスラーム圏、国際政治に大きな影響を与えているイスラーム復興現象には、どのような歴史的背景があるのか?19世紀、ヨーロッパ列強によるイスラーム圏の侵略により引き起こされた変化に立ち向かっていった改革思想家たちの軌跡を通し、スンナ派世界の現代イスラームの思想的源流を学びます。
事後学習/Reviewing 理解度確認小テストの答え合わせをし、正確に理解できていなかった箇所を、教材を見直してよく復習して下さい。
14
授業計画/Class 近現代のイスラーム(3):20世紀のイスラーム主義運動
事前学習/Preparation 20世紀初までに打ち出された近代改革思想は、20世紀~21世紀、どのような形でイスラーム主義運動へと継承されていったのか?エジプト・ムスリム同胞団の軌跡を中心に、スンナ派世界のイスラーム主義運動の展開について学びます。
事後学習/Reviewing 理解度確認小テストの答え合わせをし、正確に理解できていなかった箇所を、教材を見直してよく復習して下さい。
15
授業計画/Class 21世紀の世界とイスラーム主義運動
事前学習/Preparation 20世紀に発達したイスラーム主義運動は、21世紀の世界の変動の中でどのような問題に直面していったのか,またイスラームに基づく政治運動に対する国際社会の反応は、イスラーム主義運動のあり方にどのような影響を及ぼしていったのか。イスラーム主義運動の現在を通し、第2回で提起した問い、現代世界の「イスラームへのまなざし」が持つ問題を、改めて考えます。
事後学習/Reviewing 理解度確認小テストの答え合わせをし、正確に理解できていなかった箇所を、教材を見直してよく復習して下さい。
授業方法/Method of instruction
本講義は、Course Powerによるオンディマンド形式授業で行います。各回の授業日1週間前から、Course Powerの各回授業フォルダの中に、資料(PDFファイル)と解説スライド(各回講義の内容に即した2〜3つのPower Pointファイル)の2教材を公開します。授業日当日には、授業フォルダ内に、その回の質疑用掲示板・理解度確認小テスト問題(テスト教材)・受講コメント提出コーナー(レポート教材)を公開します。受講者は、資料・解説スライドをダウンロードして授業を受講したうえで、必ず授業日当日中に、小テストへの回答と受講コメントをCourse Powerで提出して下さい(小テストとコメントは、授業日終了後は提出できないので、注意して下さい)。授業時間内には、掲示板で随時質問を受け付けます。小テスト正解は授業日以後に公開するので、自分でも答え合わせをし、復習・事後学習の手がかりにして下さい。掲示板は授業後1週間公開されているので、授業後も振り返りのための質問やコメントをすることができます(第1回・第2回のガイダンス回で、授業の進め方・受講方法をよく習得して下さい)。

 
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 65% 第3回以降,毎授業で行う理解度確認小テスト(全13回)を成績評価対象にします。
2 平常点 In-class Points 35% 第3回以降,毎回提出してもらう受講コメントから,授業テーマへの取り組み・独自の考察を評価します。
教科書/Textbooks
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1 毎授業Course Powerで教材を配布します。
参考書/Reference books
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1 毎回のテーマにあった参考文献、資料をその都度紹介します。