講義内容詳細:芸術文化論Ⅱ/芸術文化論

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年度/Academic Year 2020
授業科目名/Course Title (Japanese) 芸術文化論Ⅱ/芸術文化論
英文科目名/Course Title (English) Art and Culture Ⅱ/Art and Culture
学期/Semester 後期/通年 単位/Credits 2/4
教員名/Instructor (Japanese) 村島 彩加
英文氏名/Instructor (English) MURASHIMA, Ayaka

講義概要/Course description
本講義では、大正3年に第一回公演を行って以来、100年を超える歴史を紡いできた宝塚歌劇団(以下、宝塚)の歴史に着目します。

近年、宝塚には様々な角度から、関心が集まっています。不況でも安定した観客動員、女性が男性を演じることの魅力、セクシュアリティの問題…多種多様な切り口が存在するのは、同劇団が100年を超える歴史の中で、常に時代の流れに則し、観客の関心に応えようと変容を続けてきたからに他なりません。本講義では、宝塚が時代の潮流にどのように対応し続けて来たのか、先行芸能である歌舞伎や同時代の文化との比較を行いながら、理解を深めていきます。
達成目標/Course objectives
本講義の達成目的は、以下の通りです。
・現在、日本を代表する演劇ジャンルのひとつとして広く知られている宝塚歌劇団の歴史について理解を深める。
・宝塚は時代の流れに則し、時期毎に演目の傾向を大きく変えて来た。その変容に着目し、世相や人々の心性が、どのように演目に反映されてきたのかを検証する。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
特にありません。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 「始まりの年、1914」
宝塚少女歌劇(現在の宝塚歌劇団)が第一回公演を行ったのは、大正3年4月のことです。では、その大正3年=1914年とは、日本にとって、世界にとってどのような年だったのでしょうか?また、当時の日本の演劇界はどのような状況にあったのでしょうか。当時の新聞記事から、それを探ります。
事前学習/Preparation 初回なので、特にありません。
事後学習/Reviewing 授業で使用したプリントを振り返っておくこと。
2
授業計画/Class 「坪内逍遥の『新楽劇論』とその時代」
明治37年、日露戦争の最中に、坪内逍遥は戦勝後の日本における新しい「国民劇」の創成を目指した提言を行います。その『新楽劇論』とは、どのようなものだったのでしょうか。後の宝塚少女歌劇に大きな影響を与えたと思われる同論について学びます。
事前学習/Preparation 前回の内容を頭にいれておくこと。
事後学習/Reviewing 授業で使用したプリントを振り返っておくこと。
3
授業計画/Class 「誕生・宝塚少女歌劇」
創設者小林一三は、自身が経営する箕面有馬電気軌道の沿線開発の一環として、少女歌劇創設を思い付きます。その時代背景と、誕生の契機を学びます。
事前学習/Preparation 前回の内容を頭にいれておくこと。
事後学習/Reviewing 授業で使用したプリントを振り返っておくこと。
4
授業計画/Class 「第一回公演ーお伽歌劇の時代ー」
大正3年4月、宝塚少女歌劇は第一回公演を行いました。その内容と経緯に着目し「なぜ宝塚は生まれたか」「なぜ人々に受け入れられたのか」を考えます。
事前学習/Preparation 前回の内容を頭に入れておくこと。
事後学習/Reviewing 授業で使用したプリントを振り返っておくこと。
5
授業計画/Class 「第一回東京公演ー帝国劇場と女子校文化ー」
大正7年、宝塚少女歌劇は初の東京公演を行います。舞台は丸の内の帝国劇場。その成功のために小林一三が取った秘策とは?当時の演劇雑誌の記事からその作戦を読み解くと共に、帝国劇場という劇場、そして同時代の少女たちの眼差しを考えます。
事前学習/Preparation 前回の内容を頭に入れておくこと。
事後学習/Reviewing 授業で使用したプリントを振り返っておくこと。
6
授業計画/Class 「宝塚の舞踊」
今回の講義では、宝塚の「舞踊」に着目します。当初から、邦楽ではなく西洋音楽を用いる、というのが、創設者小林一三の方針でした。西洋音楽に合わせ、従来の舞踊をどうやって踊るのか。初期の振付家たちの工夫に着目すると共に、同時代の舞踊の傾向にも目を配ります。
事前学習/Preparation 前回の内容を頭に入れておくこと。
事後学習/Reviewing 授業で使用したプリントを振り返っておくこと。
7
授業計画/Class 「大劇場の時代」
大正13年、4000人収容の宝塚大劇場が開場します。折しもその約2ヶ月後には関東大震災が起こり、東京の演劇人・文化人が関西に一時的に避難することになりました。開場当時の宝塚大劇場の公演の様子と、震災がもたらした東京の演劇人たちとの交流に着目します。
事前学習/Preparation 前回の内容を頭に入れておくこと。
事後学習/Reviewing 授業で使用したプリントを振り返っておくこと。
8
授業計画/Class 「レヴュー誕生ー『モン・パリ』ーとその背景」
昭和2年、洋行帰りの演出家岸田辰弥の帰朝第一作として上演されたレヴュー『モン・パリ』は、日本にレヴューブームを巻き起こしたことで知られます。その創作の背景に着目します。
事前学習/Preparation 前回の内容を頭に入れておくこと。
事後学習/Reviewing 授業で使用したプリントを振り返っておくこと。
9
授業計画/Class 「レヴューの王様・白井鐵造」
岸田辰弥に師事し、レヴュー『パリゼット』で成功した演出家・白井鐵造は、元々は宝塚に男性を加入させるために作られた男子養成会の一員でした。彼の来歴を辿り、その作品のルーツを探ります。
事前学習/Preparation 前回の内容を頭に入れておくこと。
事後学習/Reviewing 授業で使用したプリントを振り返っておくこと。
10
授業計画/Class 「新国劇と宝塚」
宝塚少女歌劇とほぼ同時期に誕生し、大変な人気を誇った新国劇という劇団がありました。かたや少女ばかりの歌劇団、かたや男性中心・剣劇で人気…と、一見共通点の無さそうな両者ですが、同時代の人々に受け入れられたのには共通する魅力があったからです。その魅力を検証します。
事前学習/Preparation 前回の内容を頭に入れておくこと。
事後学習/Reviewing 授業で使用したプリントを振り返っておくこと。
11
授業計画/Class 「宝塚メロディージャズとシャンソンー」
現在でも宝塚の舞台で愛唱されているナンバーの多くは、すでに大正〜昭和戦前の舞台で歌われ、歌い続けられてきたものです。今回は、そうした独特の「宝塚メロディ」に着目します。
事前学習/Preparation 前回の内容を頭に入れておくこと。
事後学習/Reviewing 授業で使用したプリントを振り返っておくこと。
12
授業計画/Class 「戦争と宝塚」
第二次世界大戦の前後から、宝塚にも戦争の影響が色濃くなってきます。風雲急を告げる国際情勢の中で、宝塚はどのようにその時代を生き抜いたのでしょうか。昭和13年の第一回ヨーロッパ公演を皮切りに、戦争の時代へとなだれ込んでいった道程を振り返ります。
事前学習/Preparation 前回の内容を頭に入れておくこと。
事後学習/Reviewing 授業で使用したプリントを振り返っておくこと。
13
授業計画/Class 「戦後の宝塚1ー菊田一夫とミュージカルー」
大ヒットラジオドラマ『君の名は』、上演回数2000回を超えるロングラン作品『放浪記』…現在もその名を冠した演劇賞がある、戦後日本を代表する演劇人・菊田一夫。その菊田と宝塚の関わりに着目すると共に、戦後の宝塚における海外ミュージカル作品上演の始まりを、同時代の演劇界の流れの中で考えます。
事前学習/Preparation 前回の内容を頭に入れておくこと。
事後学習/Reviewing 授業で使用したプリントを振り返っておくこと。
14
授業計画/Class 「戦後の宝塚2ー『ベルサイユのばら』1974ー」
昭和49年、創立60周年の年に、宝塚は当時の人気少女漫画『ベルサイユのばら』を劇化し、大ヒットとなります。以後、同作は『ベルばら』の愛称と共に今日まで再演を重ねています。今回は、その上演の背景と魅力を探ります。
事前学習/Preparation 前回の内容を頭に入れておくこと。
事後学習/Reviewing 授業で使用したプリントを振り返っておくこと。
15
授業計画/Class 「戦後の宝塚3ー小池修一郎という演出家ー」
近年、宝塚で最も成功した作品のひとつである『エリザベート』の潤色・演出を手がけた演出家・小池修一郎は、宝塚初の韓流ドラマのミュージカル化やフレンチミュージカルの宝塚化も手がけ、時代に則した宝塚の形を、最も先鋭的に模索してきた存在のひとりと言えるでしょう。最終回はその小池作品に着目し、今後の宝塚を考える契機としたいと思います。
事前学習/Preparation 前回の内容を頭に入れておくこと。
事後学習/Reviewing 授業で使用したプリントを振り返っておくこと。
授業方法/Method of instruction
空欄のあるプリントを配布し、講義の内容を聞きながら、受講者が空欄をうめていくという形をとる。また、映像資料を見て理解を深める。別途資料プリントを配ることもある。
成績評価方法/Evaluation
1 100% 100%筆記試験の点数による。ただし、欠席過多の場合は回数に準じて減点する。
教科書/Textbooks
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1 教科書は指定しない。授業で使用したプリントがそのまま教科書となるようにする。
参考書/Reference books
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1 川崎賢子『宝塚というユートピア』(岩波書店、2005)
吉田弥生ほか『歌舞伎と宝塚歌劇ー相反する、密なる百年ー』(開成出版、2014)
その他、授業内で指示する。
メッセージ/Message
近年、多くの観客に愛されている宝塚。受講生の皆さんの中にも、興味を持つ人が多くいると思います。日頃観ている宝塚の舞台が、どのような歴史を持ち、また、日本の歴史や他の演劇ジャンルとどう関わるのか。広い視野を持つことで、現在私たちが楽しんでいる宝塚を見る眼差しに、より広がりと深みを持てるようになればと思います。
キーワード/Keywords
宝塚         近代日本演劇     ミュージカル