講義内容詳細:フランス文化研究Ⅰ/フランス文化研究

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年度/Academic Year 2020
授業科目名/Course Title (Japanese) フランス文化研究Ⅰ/フランス文化研究
英文科目名/Course Title (English) Research in French Culture Ⅰ/Research in French Culture
学期/Semester 前期/通年 単位/Credits 2/4
教員名/Instructor (Japanese) 軍司 泰史
英文氏名/Instructor (English) GUNJI, Yasushi

講義概要/Course description
 この講義では、フランス人の日常生活から現代史、政治・経済制度、社会問題などをテーマ別に概観しながら現代フランスへの理解を深めます。新型コロナウイルス感染症の影響で、本来の対面授業が当面オンライン授業に変わりますが、講義の概要に大きな変更はありません。
 フランスは「理念国家」と呼ばれることがあります。18世紀のフランス革命や人権宣言以来の理念、例えば自由、平等、博愛や人権、共和国、民主主義、ライシテ(非宗教性)などが理想や規範として掲げられ、人々の意識に浸透しています。政治や社会が大きく動く際にも、参照されます。
 こうした姿勢は、フランスという国家や文化の魅力の源泉となっています。一方で、現在では政治、外交、社会的にさまざまなあつれきを生む背景ともなっています。
 フランス語の習得や現代フランスを理解するためには、この理念、つまりフランスに特有な発想や世界観を知ることが欠かせません。
 前期は主に、フランスの歳時記や教育、食文化、メディア、映画、日本文化の浸透度など身の回りのことを中心に講義します。後期は女性運動や少子化対策、死刑廃止、フランスのイスラム教徒、移民の状況、独仏関係史などフランスについての個別テーマを深めます。フランスと欧州、フランスと日本などを比較しつつ、世界におけるフランスの地位、立ち位置についても理解できるようにします。
 私は1995年~99年、2008年~12年の2度にわたり、共同通信のパリ特派員を務めました。8年近くに及ぶフランス生活と取材を基に、できるだけリアルなフランスを見つめていきます。
 講義ではフランスの新聞・雑誌などの記事を適宜使用します。また、後期には受講生をグループ分けし、現代フランスを理解するのに不可欠なテーマについてグループ発表をしてもらいます。なおフランス関連のニュースに対応して、授業の順番や内容が一部変更になることがあります。
 一連の講義が終了した際に、これまでフランスに抱いていたイメージが変わり、より多角的な理解ができていることを願っています。
達成目標/Course objectives
 フランスの政治、社会、文化への理解を深め、フランスから伝わるニュースを分析する能力を高める。フランス語の新聞や雑誌、ネット情報などを読んで、フランスの実情が把握できることが目標となる。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
 フランス語の基礎的な知識。自分がフランスの何を知りたいかを事前に考えておいてほしい。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class オリエンテーション
事前学習/Preparation 授業で扱うテーマに目を通し、講義の流れをつかんでおく。後期のグループ研究発表のテーマにも目を通す。
事後学習/Reviewing 自分が関心のあるテーマについての書籍を読む。
2
授業計画/Class フランスの歳時記、学事歴が始まる9月からバカンスの8月までの1年間をたどる。大学生の生活を中心に。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、饗庭孝男著「フランス四季暦 春から夏へ」同「秋から冬へ」などを参照。
3
授業計画/Class フランスの教育制度。幼児教育から初等・中等教育の特徴、大学入試の仕組みとフランス特有のエリート教育。フランスの大学生活は。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、柏倉康夫著「エリートの作り方―グランド・ゼコールの社会学」などを参照。
4
授業計画/Class フランスの食文化。なぜ、フランスで美食文化が栄えたのか、歴史と現状を探る。ミシュラン・ガイドは、格付けをどう決めているのか。美食外交の精髄
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、玉村豊男著「パリのカフェをつくった人々」、同「パリ、旅の雑学ノート」、西川恵著「エリゼ宮の食卓―その饗宴と美食外交」
5
授業計画/Class フランスの農業。ワイン、チーズ、パン、野菜や肉の主要産地を概観する。トリュフやフォワグラなどの高級食材はどこが有名か。AOC(原産地統制呼称)とは何か。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには辻静雄著「ワインの本」「フランス料理の手帳」などを参照。
6
授業計画/Class フランスのメディア。新聞、テレビの状況とネットメディアの伸張。日本と同様な部分、フランスが際立っている部分を探る。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing ルモンド紙、フィガロ紙、パリジャン紙などをネットで閲覧してみよう。
7
授業計画/Class パリと地方のフランス①。「パリはフランスではない」と言われる。では、各地方にはどのような特色があるのか。世界一の観光大国であるフランスの地理を概観する。まず、北部と東部を中心に。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには辻啓一著「フランスの『美しい村』を訪ねて―パリから出かける小旅行」などを参照
8
授業計画/Class パリと地方のフランス②。「パリはフランスではない」と言われる。では、各地方にはどのような特色があるのか。世界一の観光大国であるフランスの地理を概観する。パリを見た後で、西部と南部を訪ねる。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、浅野素女著「パリ二十区の素顔」、ピーター・メイル「南仏プロヴァンスの12カ月」などを参照。
9
授業計画/Class フランスの日本文化。印象派のジャポニスムから、欧州最大の日本エンタメ文化見本市「ジャパン・エキスポ」まで。フランスでは、どのように日本文化が紹介され、理解されているか。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、宮崎克己著「ジャポニスム」、オギュスタン・ベルク著「日本の風景・西欧の景観」、清谷信一著「ル・オタク フランスおたく物語」などを参照。
10
授業計画/Class フランス映画の魅力。映画はフランスで始まった。その魅力とフランスの文化政策。カンヌ国際映画祭の現場はどうなっているか。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、中条省平「フランス映画史の誘惑」などを参照。授業で気になった映画をネットなどで検索してみよう。
11
授業計画/Class フランスのスポーツ。フランスの柔道人口は本家日本を上回っている。盛んなスポーツは何か。オリンピック運動の源流は。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing スポーツ紙レキップやフランス・フットボールのサイトを読んでみよう。
12
授業計画/Class フランスの政治制度。大統領、首相の役割は。選挙の仕組みとフランス独特の制度。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、奥島孝康・中村紘一編「フランスの政治」、薬師院仁志著「日本とフランス、二つの民主主義」などを参照。
13
授業計画/Class フランス外交の特色。多国間交渉のスペシャリスト。国連安全保障理事会の常任理事国、核保有国、先進国(G7)首脳会議を呼びかけた国として、世界でどのような地位にあるのか。日本との関係は。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、山田文比古著「フランスの外交力」、榊原英資著「フレンチ・パラドックス」、フランソワ=グザヴィエ・ヴェルシャヴ著「フランサフリック」などを参照。
14
授業計画/Class フランスの経済と産業。競争力のある産業は。軍事産業、原子力産業の実態とは。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、原輝史編「フランスの経済」、榊原英資著「フレンチ・パラドックス」などを参照。
15
授業計画/Class 前期のまとめと課題レポート(新型コロナ対応)。対面授業が可能になっていれば、期末試験の実施に振り返る可能性もある。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 興味のある方は、渡邊啓貴著「アメリカとヨーロッパ」などを読んでみよう。
授業方法/Method of instruction
 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、授業は当面オンラインで実施する。WebexとCourse Powerを活用し、毎回水曜5限の時間帯(午後4時50分~)にリアルタイムで行う。
 前期は、現代フランスの日常生活や政治・経済制度に関する講義が中心。教室の授業では、毎回パワーポイントで要点や写真などを例示したが、オンライン授業を実施する間は、学生側の端末で見やすいようにスライドをPDFに変換して教材として用いる。教材は毎回授業前にコースパワーに公開する。
 後期は受講生をグループ分けし、こちらで準備したテーマについて、30~60分で調査発表してもらう。発表をもとに、こちらから補足説明する。
 事後学習に参考図書を列記しているが、大学図書館が休館中の間はネット上での参考記事なども随時紹介していく。
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 20% 講義内小レポート提出、通年科目履修者の成績評価方法・・・10%
2 レポート Report 70% 課題レポート、通年科目履修者の成績評価方法・・・35%
3 その他 Others 10% 参加態度、積極性、貢献、通年科目履修者の成績評価方法・・・5%
教科書/Textbooks
 コメント
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1 講義で使うスライドをPDFに変換し、毎回コースパワーで公開する。授業はこのスライドに基づきながら進める。
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
 
1 小田中直樹著 フランス現代史 岩波書店 2018.12
2 軍司泰史著 シラクのフランス 岩波書店 2003.9 4004308534 700円+税 蔵書情報 / Library information
メッセージ/Message
 リアルタイム方式のオンライン授業は、私も初めての経験です。最初はスムーズに進まないかもしれませんが、回を追うごとに修正、改善していきたいと思います。
 授業では毎回小レポートの提出を求め、講義で特に印象に残った内容などを書き込んでもらいます。この小レポートの提出で授業に出席したと判断します。
 授業内での質問を歓迎しますが、オンラインでの質問が難しい場合は小レポートに質問を書き込んでください。次回授業の冒頭で回答します。
その他/Others
共同通信のパリ特派員として約8年間の在仏経験のほか、現在も年1~3回、フランス出張で取材を重ねており、フランスで何が起きているかを分析する講義に生かしていく。出席については、授業内の貢献度、参加度として扱う。
キーワード/Keywords
実務経験