講義内容詳細:行政法A/行政法Ⅰ

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年度/Academic Year 2020
授業科目名/Course Title (Japanese) 行政法A/行政法Ⅰ
英文科目名/Course Title (English) Administrative Law A/Administrative Law Ⅰ
学期/Semester 前期 単位/Credits 4
教員名/Instructor (Japanese) 大沢 光
英文氏名/Instructor (English) OSAWA, Hikaru

講義概要/Course description
  「行政活動に対する法的コントロールは、どのような考え方に基づいて、どのような法理を用いて行われているのかという観点から行政法総論を学ぶ。」ということが本講義のテーマです。

(1)行政法総論とは、行政に関する法の一般理論です。現代行政は市民の様々な権利利益にかかわる活動をしています。たとえば、税金の徴収、各種の営業許可・免許の付与や出店に対する規制、生活保護受給権にかかわる給付決定やそのための調査・相談活動、都市計画の策定、小中学校の設置や教員の配置、道路や河川の整備、ゴミの収集、労働基準の監督、車の排ガスの規制など、私たちの日常生活と密接な関わりのある活動が行われています。こうした行政活動の背後には、法律その他のルールがあります。それが行政法です。上記の通り、行政活動は多種多様に行われており、そうした行政活動を個々に規律する法律その他のルールも多種多様に存在します。行政法学は、市民の権利利益を守るために、こうした一見バラバラな多種多様な法律の集まりの中に存在する共通する原理原則を理論化し(これが行政法総論です)、その理論を用いて行政活動がいかに行われるべきかを考察・検討する学問といえましょう。

(2)行政法理論を用いると、具体的な行政法現象を分析してどこに問題があるのかを考察したり、行政上の紛争が起こった場合には、その問題を具体的に解決する道筋を考えることができます。例えば、近隣に廃棄物処理施設の設置が許可されて大気汚染や水の汚染が心配だ、職もなく生活保護の申請をしたのに拒否されてしまい、食べるものを買うお金もない、ガードレールが破損しているのに長い間修繕されておらず事故にあった、保育所に入りたい児童がたくさんいるのに保育所が作られず入所できなかった、残業代を支払わない会社がある、引っ越しをして自治会に入らなかったらごみを収集してもらえなかった等、様々な問題は、行政法の視点からどうあるべきか、どのように紛争が解決されるべきか、考えることができるのです。

(3)行政法学は、本講義の対象とする行政法総論の他に、行政活動によって市民の権利利益が侵害された場合にどのような救済を求めることができるかという問題を考察する行政救済法や、行政活動を行う担い手にはどのような法主体があり、とりわけ国や地方公共団体の組織はどのように作られ、規律されているのかという問題を考察する行政組織法という分野もあります。前者は行政法Bで、後者は行政法Cで、それぞれ学ぶことになっています。なお、行政法Cは、公務員法も一部含めています。

(4)みなさんが学ぶ行政法総論は、(1)で述べたように、様々な行政領域に適用される共通の法理論であり、それゆえ抽象度が高いものです。そこで、講義では、行政法理論がどのように用いられるのか、具体的なイメージをつかんでいただくために、3つの段階を踏んで解説をしていくことにしました。第一段階は、具体的な事例を素材にして、法律の規定を確認し、当該法律の規定の解釈を試みることで、行政法理論を学ぶ意味を考えるとともに、基本原理と行政機関概念などの最も基本的な事柄を学びます。第二段階は、行政法理論の枠組みの中心となっている各種の行為形式の概念を学ぶとともに、これらと行政手続法との関係を整理します。第三段階は、とりわけ行政行為論を深めるとともに、行政活動の実効性の確保の手段や情報の収集・管理・利用の制度などについて学びます。
(5)適宜判例を素材にして具体的な事実関係において法理論がどのように適用されたのかを考察して、行政法理論の用いられ方を具体的に学んでいきます。

達成目標/Course objectives
 この講義は、①行政法の基本原理と行政法総論の基本的な枠組みを正しく理解すること、②これまでの学説・裁判例の到達点を理解すること、③行政法総論を用いて、個別の法律を解釈し、様々な行政活動に関する問題に適用して、一定の解決を考えられるようになることを到達目標とします。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
 公共政策と法/行政と法を受講していることが望ましいです。行政法A/Ⅰと行政法B/Ⅱはセットで考えていただき、ぜひ行政法B/も受講していただければと思っています。また、問題を理解する前提として、少なくとも、憲法、民法を受講されていることが望まれます。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class はじめに―行政法学はどのような学問か(講義ガイダンス)
事前学習/Preparation とくになし。
事後学習/Reviewing 概念の復習をする。
2
授業計画/Class 行政・行政法の具体例と行政法の存在意義:行政法理論を学ぶ意味

事前学習/Preparation 具体例について考えておく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
3
授業計画/Class 行政活動のプロセスの分析と行為の類型化(行為形式論):基本概念、行政法理論の構造分析(事例を素材に)
事前学習/Preparation 講義ノートと参考書を照らし合わせて内容を確認しておく。
事後学習/Reviewing 用語の確認をする。
4
授業計画/Class 行政法学の理論枠組み:行政活動のプロセスの分析と行為の類型化(行為形式論):前回の続き
事前学習/Preparation 参考書を読んでおく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
5
授業計画/Class 法治主義(その1):法律による行政の原理:その内容、法律の根拠をめぐって
事前学習/Preparation 参考書を読んでおく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。課題について考える。
6
授業計画/Class 法治主義(その2):法律による行政の原理と不文の法原則
事前学習/Preparation 参考書を読んでおく。
事後学習/Reviewing 前回の内容と併せて、法治主義論について理解を深める。
7
授業計画/Class 行政体(行政主体)とその組織(その1)―行政組織法総論

事前学習/Preparation 参考書や資料を読んでおく。
事後学習/Reviewing 基本的な概念を理解する。
8
授業計画/Class 行政体(行政主体)とその組織(その2)―国と地方公共団体の組織

事前学習/Preparation 資料を読んでおく。
事後学習/Reviewing 参考書と照らし合わせて講義ノートを振り返る。
9
授業計画/Class 地方自治の本旨と条例―法律と条例

事前学習/Preparation 参考書や資料を読んでおく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
10
授業計画/Class 第1回小テストと解説
事前学習/Preparation 参考書を読み、講義ノートの振り返りをしておく。
事後学習/Reviewing 小テストの振り返りをする。
11
授業計画/Class 行為形式と行政手続・行政訴訟との関係
事前学習/Preparation 参考書を読んでおく。
事後学習/Reviewing 講義ノートを振り返り、参考書と照らし合わせておく。
12
授業計画/Class  行政処分手続(その1):行政手続法の解説(申請に対する処分と不利益処分の共通手続)

事前学習/Preparation 参考書を読む。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
13
授業計画/Class 行政処分手続(その2):行政手続法の解説(申請に対する処分と不利益処分特有の手続)
事前学習/Preparation 参考書を読んでおく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
14
授業計画/Class 行政裁量とは何か、行政裁量の統制論(その1)
事前学習/Preparation 問いについて考えておく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
参考文献を読む。
15
授業計画/Class 行政裁量の統制論(その2):実体的審査
事前学習/Preparation 問いについて考えておく。
事後学習/Reviewing 講義ノートと参考書、百選を照らし合わせて、何が論点となっているのかを整理する。
16
授業計画/Class 行政裁量の統制(その3):手続的審査
事前学習/Preparation 参考文献を読んでおく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
17
授業計画/Class 行政裁量の統制(その4):判断過程審査
事前学習/Preparation これまでの審査方法について理解を深めておく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
18
授業計画/Class 行政立法-行政立法の種類と許容性、意見公募手続
事前学習/Preparation 参考書を読んでおく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
19
授業計画/Class 行政指導
事前学習/Preparation 参考書を読んでおく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
20
授業計画/Class 行政契約
事前学習/Preparation 参考書を読んでおく。
事後学習/Reviewing 講義ノートと百選を照らし合わせて内容を復習する。
21
授業計画/Class 行政計画
事前学習/Preparation 参考書を読んでおく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
22
授業計画/Class 第2回小テスト+解説
事前学習/Preparation 第11回からの講義ノートを復習しておく。
事後学習/Reviewing 小テストの振り返り。
23
授業計画/Class 行政行為の実体的統制(その1):行政行為の瑕疵
事前学習/Preparation 参考書を読んでおく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。 
24
授業計画/Class 行政行為の実体的統制(その2):取消と撤回を制約する法理
事前学習/Preparation 問いについて考えておく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
25
授業計画/Class 行政の実効性確保(その1):行政上の強制執行と行政罰
事前学習/Preparation 参考書を読んでおく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
26
授業計画/Class 行政の実効性の確保(その2):その他の実効性確保の手段
事前学習/Preparation 参考書を読んでおく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
27
授業計画/Class 行政調査
事前学習/Preparation 講義レジュメと参考書を照らし合わせて内容を確認しながら、レジュメと参考書を読む。
事後学習/Reviewing 講義レジュメと参考書を照らし合わせて内容を復習する。
参考文献を読む。 
28
授業計画/Class 情報公開・個人情報保護

事前学習/Preparation 参考書を読んでおく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
29
授業計画/Class ステップアップ:委任立法の限界と委任命令の法律適合性-判例分析
事前学習/Preparation 第3回、第18回の復習をしておく。
事後学習/Reviewing 講義ノートの振り返り。
30
授業計画/Class おわりに―行政法理論を使って問題の解決を考える(小テスト)+解説
事前学習/Preparation これまでの復習をする。
事後学習/Reviewing 行政法理論の体系を見直す。
授業方法/Method of instruction
 講義ノート及び資料をCourse Power上で配布し、資料を使いながら講義ノートに沿った学びを進め、講義のテーマに沿った課題小レポートに解答してもらう形で進めます(自己学習型)。自己学習型を基本としつつ、必要があれば、Webex Meetingsを利用することも考えております(その場合は、事前にCourse Power上で通知します)。
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 100%  課題小レポート(毎回)の提出(60%)、小テスト3回(40%)
参考書/Reference books
 著者名
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タイトル
Title
出版社
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出版年
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1 曽和俊文・山田洋・亘理格 現代行政法入門[第4版] 有斐閣 2019 2,600円(税抜き) 講義中に適宜紹介しますが、さしあたり、講義案の検討の際にとくに参考にしたものを挙げておきます。なお、テキスト類は改訂される可能性があることに注意してください。
2 櫻井敬子・橋本博之 行政法〔第6版〕 弘文堂 2019 3,300円(税抜き)
3 深澤龍一郎・大田直史・小谷真理編 公共政策を学ぶための行政法入門 法律文化社 2018 2,500円(税抜き)
4 中原茂樹 基本行政法〔第3版〕 日本評論社 2018 3,400円(税抜き)
5 木村琢磨 プラクティス行政法[第2版] 有斐閣 2017 3,600円(税抜き)
6 野呂充・野口貴公美・飯島淳子・湊二郎 『行政法〔第2版〕』 有斐閣、 2020年 2,000円(税抜き) 初学者向けの最新の行政法学の教科書です。
7 下山憲治・友岡史仁・筑紫圭一 行政法 日本評論社 2017 1,800円(税抜き) 図書館データベース(eBook)で参照できます。
メッセージ/Message
 講義では、時事的な問題にも適宜触れたいと考えています。みなさんは、日常的に新聞等を読むなど、アンテナを張っておいてください。
その他/Others
主要な法律として、行政事件訴訟法、行政不服審査法、国家賠償法を参照するほか、適宜必要な条文を指示しますので、六法を必ず持っていてください(ポケット六法程度でかまいません)。ポケット六法に掲載されていない条文は、学生ポータルにて、資料として配布するか、ネット上で参照していただきます。
キーワード/Keywords
法治主義     行政行為     法規命令     行政規則     行政計画     行政契約     行政指導     行政手続     義務履行確保     行政調査     情報公開     個人情報保護     行政裁量