講義内容詳細:EU法

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年度/Academic Year 2020
授業科目名/Course Title (Japanese) EU法
英文科目名/Course Title (English) EU Law
学期/Semester 通年 単位/Credits 4
教員名/Instructor (Japanese) 申 惠手/LENZ,Karl F.
英文氏名/Instructor (English) SHIN Hae Bong/LENZ, Karl-Friedrich

講義概要/Course description
 本講義は、旧カリキュラムでは通年の「EU法」であったが、カリキュラム改訂によって新たに半期の「国際人権法」を開講する必要が生じたため、EU法の授業のコマを後期のみ「国際人権法」に読み替える形となったものである。カリキュラム移行期ゆえ、旧カリキュラムが適用される学年の学生に対しては不便をかけることになってしまうが、この授業の内容は前期はEU法(レンツ担当)、後期は国際人権法(申担当)であるので、留意してほしい。

<前期 EU法>
  第1章「EU法と国内法」 は、 国内法の各分野 (憲法、 私法、刑法の順)からEU法を説明する。憲法・民法などは日本法科目でもあるため、馴染みやすい、また、それらの課目の復習にもなる。消費者保護・労働法・刑法などの分野でEU法の影響を説明する。
 憲法・私法・刑法は、司法試験でも基本科目である。ひとつの講義でこれらの基本科目全部を別な角度から検討する内容であるから、基本科目の理解にも貢献できる。
 第2章 「EU運用方法条約の最も重要な条文」は、 EU法の各領域を扱う。その際、実務における最も重要なところを集中的に説明する。 輸入数量制限禁止、 EU独禁法、 EU裁判所の地位などの問題を扱う。

<後期 国際人権法>
 今日、国際人権法は、人権に関する国際基準として広く用いられる(国の義務というだけでなく、「ビジネスと人権」という文脈や、オリンピック憲章などにおいても)ほか、憲法などの国内法を補完するものとして国内でも重要な役割を果たしている。日本も、国連で作られた人権条約(国際人権規約、女性差別撤廃条約など)の多くを批准しており、そのための国内法整備(国内法の制定や改廃)は日本の法制度に大きな影響を与えているし、裁判で国際人権法が援用されることもある。他方で、国内法整備が不十分な点はまだ残っているし、国籍にかかわらず国の管轄下にあるすべての人の人権を保護する国際人権法の観点からすれば、例えば技能実習生や、入国管理局の収容施設に長期間収容されている人の人権など、外国人の人権状況には大きな問題がある。
この授業では、このような問題を含め、日本はもちろん広く世界に視野を広げて、様々な人権問題が国際人権法の観点から検討され国内法制の改善が議論されている状況について、具体的に取り上げて考えていく。細かな知識を身につけることよりも、実際に論点となっている事柄について自分自身で考え、それを発展させることが重要であるので、授業では、その時々の時事問題に関連する論点の検討や、ディスカッションも適宜取り入れる。
達成目標/Course objectives
<前期 EU法>
 この科目の目標は、 2009年12月発効のリスボン条約で大幅に改正された欧州連合(EU)法に関する概説である。また、EU法の最近の動きを紹介・議論することを通して、新しい問題に関する討論能力を養成することも目的の一つである。その際、日本で福島原発事故以降に注目されているエネルギー政策を重点的に題材とする。

<後期 国際人権法>
 国内外で実際に起きている人権問題に関連する様々な論点をめぐり、憲法はもちろん国際的な基準に照らしてどのように考えるべきか、その判断に至るにはどのような要素を考慮すべきかといったことを、自分で筋道を立てて考え、論じることができる基礎的な素養を身につけることである。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
特になし。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class  EU法の体系。EUとECの関係、リスボン条約、一次法と二次法。
事前学習/Preparation 以下のインターネット資料を見ること:
外務省「EU」ページ: k-lenz.name/k1715
EU在日代表部ページ: www.euinjapan.jp
事後学習/Reviewing 講義で示す「問題提起」について、自分で答えを考えて、答えを手書きノートに残す。
2
授業計画/Class  EU法と国内法の関係。EU法の国内法に対する優劣問題に関する判例。
事前学習/Preparation ドイツ連邦憲法裁判所2014年関連判例の担当者による日本語訳を見ること(無料PDFファイル): k-lenz.de/esm2
事後学習/Reviewing 講義で示す「問題提起」について、自分で答えを考えて、答えを手書きノートに残す。
3
授業計画/Class  EUの機関、立法手続き、民法主義。
事前学習/Preparation 日本語Wikipedia記事「欧州議会」を読む。
k-lenz.de/k587
事後学習/Reviewing 講義で示す「問題提起」について、自分で答えを考えて、答えを手書きノートに残す。
4
授業計画/Class  消費者保護。製造物責任、訪問販売、普通契約約款。
事前学習/Preparation Wikipedia記事「消費者」を読むこと。
k-lenz.de/k588
事後学習/Reviewing 講義で示す「問題提起」について、自分で答えを考えて、答えを手書きノートに残す。
5
授業計画/Class  労働法。男女平等、労働時間指令。
事前学習/Preparation Wikipedia記事「逆差別」を読むこと。
k-lenz.de/k589
事後学習/Reviewing 講義で示す「問題提起」について、自分で答えを考えて、答えを手書きノートに残す。
6
授業計画/Class  会社法。情報公開、欧州株式会社、国際会計基準。
事前学習/Preparation Wikipedia記事「欧州会社法」を読む。
 k-lenz.de/k590
事後学習/Reviewing 講義で示す「問題提起」について、自分で答えを考えて、答えを手書きノートに残す。
7
授業計画/Class  経済刑法。独占禁止法における過料処分。
事前学習/Preparation Wikipedia記事「欧州連合競争法」を読むこと。
k-lenz.de/k591
事後学習/Reviewing 講義で示す「問題提起」について、自分で答えを考えて、答えを手書きノートに残す。
8
授業計画/Class  エネルギー関連法。地球温暖化対策、再生可能エネルギー促進。
事前学習/Preparation 欧州連合在日代表部2019年12月関連記事を読むこと。
k-lenz.de/k1821
事後学習/Reviewing 講義で示す「問題提起」について、自分で答えを考えて、答えを手書きノートに残す。
9
授業計画/Class  国境を超える貿易の自由。EU運用方法条約34条に関する通常事例と判例。
事前学習/Preparation hayabaya.orgで形成する講義プリントを予め読むこと。
事後学習/Reviewing 講義で示す「問題提起」について、自分で答えを考えて、答えを手書きノートに残す。
10
授業計画/Class  EU裁判所の地位。EU運用方法条約267条に関する通常事例と判例。
事前学習/Preparation Wikipedia記事「欧州司法裁判所」を読むこと。
k-lenz.de/k593
事後学習/Reviewing 講義で示す「問題提起」について、自分で答えを考えて、答えを手書きノートに残す。
11
授業計画/Class  EU独禁法。EU運用方法条約101条に関する通常事例と判例。
事前学習/Preparation 公正取引委員会の「EU」ページを読むこと。
k-lenz.de/k597
事後学習/Reviewing 講義で示す「問題提起」について、自分で答えを考えて、答えを手書きノートに残す。
12
授業計画/Class  貿易の自由の例外。EU運用方法条約36条に関する通常事例と判例。
事前学習/Preparation Wikipedia記事「予防原則」を読むこと。
k-lenz.de/k717
事後学習/Reviewing 講義で示す「問題提起」について、自分で答えを考えて、答えを手書きノートに残す。
13
授業計画/Class  指令、規則と決定。EU運用方法条約288条に関する通常事例と判例。
事前学習/Preparation  Wikipedia記事「指令(EU」を読むこと。
k-lenz.de/k595
事後学習/Reviewing 講義で示す「問題提起」について、自分で答えを考えて、答えを手書きノートに残す。
14
授業計画/Class  労働者の自由移動。EU運用方法条約45条に関する通常事例と判例。
事前学習/Preparation Wikipedia記事「ボスマン判決」を読むこと。
 k-lenz.de/k596
事後学習/Reviewing 講義で示す「問題提起」について、自分で答えを考えて、答えを手書きノートに残す。
15
授業計画/Class 総復習。
事前学習/Preparation 特になし。
事後学習/Reviewing 講義で示す「問題提起」について、自分で答えを考えて、答えを手書きノートに残す。
16
授業計画/Class オリエンテーション/国際人権法の概要
事前学習/Preparation 社会で生起している様々な人権問題について、普段から、本や新聞、映画などにふれ、自分なりに問題意識を養っておく
事後学習/Reviewing 授業で扱った事柄について、配布資料も読みながら考えを深めておく
17
授業計画/Class 外国人の人権(1)人権条約と入管法
事前学習/Preparation 外国人の人権に関するマクリーン事件最高裁判決を読んでおく
事後学習/Reviewing 授業で扱った事柄について、配布資料も読みながら考えを深めておく
18
授業計画/Class 外国人の人権(2)難民認定・収容
事前学習/Preparation 日本は難民を受け入れているか調べておく
事後学習/Reviewing 授業で扱った事柄について、配布資料も読みながら考えを深めておく
19
授業計画/Class 外国人の人権(3)退去強制と家族
事前学習/Preparation 家族が保護を受ける権利や子どもの権利に関する人権条約の規定を見ておく
事後学習/Reviewing 授業で扱った事柄について、配布資料も読みながら考えを深めておく
20
授業計画/Class 人種差別の撤廃(1)社会生活上の差別
事前学習/Preparation 小樽入浴拒否事件について調べておく
事後学習/Reviewing 授業で扱った事柄について、配布資料も読みながら考えを深めておく
21
授業計画/Class 人種差別の撤廃(2)ヘイトスピーチ
事前学習/Preparation 人種差別撤廃条約の規定(特に1条、2条、4条、6条)を読んでおく
事後学習/Reviewing 授業で扱った事柄について、配布資料も読みながら考えを深めておく
22
授業計画/Class 人種差別の撤廃(3)日本法による対応の是非
事前学習/Preparation ヘイトスピーチ解消法の規定を六法で読んでおく
事後学習/Reviewing 授業で扱った事柄について、配布資料も読みながら考えを深めておく
23
授業計画/Class 女性差別の撤廃(1)性別役割分担思想の弊害
事前学習/Preparation 女性差別撤廃条約の前文を読んでおく
事後学習/Reviewing 授業で扱った事柄について、配布資料も読みながら考えを深めておく
24
授業計画/Class 女性差別の撤廃(2)性暴力・セクハラ
事前学習/Preparation 女性差別撤廃条約1項を読んでおく
事後学習/Reviewing 授業で扱った事柄について、配布資料も読みながら考えを深めておく
25
授業計画/Class 女性差別の撤廃(3)日本法とその解釈・適用における課題
事前学習/Preparation 性暴力に関する刑法の規定(強制性交罪、準強制性交罪など)を読んでおく
事後学習/Reviewing 授業で扱った事柄について、配布資料も読みながら考えを深めておく
26
授業計画/Class 障害者の権利―障害者権利条約を国内法制の変革に活かす(1)
事前学習/Preparation 障害者権利条約に目を通しておく
事後学習/Reviewing 授業で扱った事柄について、配布資料も読みながら考えを深めておく
27
授業計画/Class 障害者の権利―障害者権利条約を国内法制の変革に活かす(2)
事前学習/Preparation 前回同様
事後学習/Reviewing 授業で扱った事柄について、配布資料も読みながら考えを深めておく
28
授業計画/Class 子どもの権利(1)子どもの虐待防止
事前学習/Preparation 子どもの権利条約に目を通しておく
事後学習/Reviewing 授業で扱った事柄について、配布資料も読みながら考えを深めておく
29
授業計画/Class 子どもの人権(2)子どもの権利と予算
事前学習/Preparation 前回同様
事後学習/Reviewing 授業で扱った事柄について、配布資料も読みながら考えを深めておく
30
授業計画/Class 人権法と国内人権機関の意義
事前学習/Preparation これまでの授業で扱った、日本における国際人権法の実施状況を振り返っておく
事後学習/Reviewing 授業を通して深めた国際人権法の知見を、今後の勉強に活かしていく
授業方法/Method of instruction
 <前期>
 この講義はすべて日本語で行う。英語能力は前提でないが、ある場合に特に役立つ科目となる。

 新型肺炎のため、通常の講義ができない。遠隔事業として時差型(on demand)にして、受講者は予め録画した動画を見る。各講義は、複数の動画で構成する。各動画の最後のところ「問題提起」がある。学生は、当該問題提起をみて、自分で答えを考え、当該答えをノートとして残す。定期的に当該問題提起についてのレポートの提出をCoursePower経由で求まる。

 但し、最初は、学生が未だ遠隔事業の慣れてないこと、履修もこれからを配慮して、レポートの提出を求めない。

 CoursePowerおよびhayabaya.orgで示すURLで講義動画を公開。最初のプリント宛先は

 k-lenz.de/eu1

 にあります。

 <後期 国際人権法>
 Webex又はZoomを用いたリアルタイム型オンライン授業とする。なお、授業で取り上げる内容や順序は一応の予定であり、受講生の関心や時間配分に応じて変更する場合がある。
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 50%  本科目は、前期・後期の担当者が異なる。成績は、前期・後期の点数の合計で相対評価によって評価する。

 <前期>

CoursePower経由で提出されたレポートに基づいて採点する。
  
 総合的な成績は、前期・後期の平均となる。
2 平常点 In-class Points 50% <後期 国際人権法>
 平常授業時に、テーマについて設定した論点をめぐって意見交換やディスカッションを行い、それによって考えを深めた上で、その論点について小テストを行う。小テストでは、配布資料や自分のノートを見ながら論述してよい。評価は、小テストの平均点によって行う。
教科書/Textbooks
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1 申惠丰 国際人権入門―現場から考える 岩波書店 2020 800 <前期> 教科書は使用しない。必要な情報はプリントで提供し、更に、関連インターネットページを積極的に活用する。
<後期> 標記の通り
参考書/Reference books
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価格
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1 庄司 克宏 「はじめてのEU法」 2015
2 小林 勝(訳) 「リスボン条約」 2009
3 藤井 良広  「EUの知識」 2013
4 申 惠丰 友だちを助けるための国際人権法入門 影書房 2020 1900
その他/Others
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