講義内容詳細:法学入門/法学入門(再)

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年度/Academic Year 2020
授業科目名/Course Title (Japanese) 法学入門/法学入門(再)
英文科目名/Course Title (English) Introduction to Law
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 河上 正二
英文氏名/Instructor (English) KAWAKAMI, Shoji

講義概要/Course description
本講義は、いわゆる「法学概論」とは異なり、法学をこれから学ぼうとする者が、最低限身につけておいてほしい基礎知識と、法学諸分野によって扱われる法的考え方、法の解釈、法の適用、法の機能などについて裁判例を通じて具体的に学んでいただき、法学部での専門科目の講義への導入をはかるものであある。法の学習に必要な基礎知識や、法学を学ぶ上での基本姿勢あるいは作法とでも言うべきものを身につけていただ枸杞とを目的としている。併せて、社会科学の中で法学が果たすべき役割を理解し、法を学ぶことの楽しさや醍醐味も経験していただけると有り難い。


達成目標/Course objectives
基本的課題として、①「法と道徳」の関係および「法源」、②社会における「行為規範」と「裁判規範」、③実体法の構造としての「要件・効果」、④法の分類(「実体法・手続法」、「一般法・特別法」、「強行規定・任意規定」、「公法・私法」などカリキュラムとの関わり)、⑤法の階層性など(憲法の最高法規性、立憲主義、法の支配、違憲立法審査権)、⑥西洋法・日本法の成り立ちと歴史、⑦法の解釈の在り方、法的推論、⑧裁判所の在り方(審級制度・事実審・法律審など)、訴訟の当事者(原告・被告・訴訟代理人、被疑者・弁護人・検察官、控訴人・被控訴人、上告人・被上告人など)等についての基礎的観念を理解することがある。しかし、これに限らず、規範としての法の操作の持つ社会的意味や役割(裁判規範・行為規範など)についても理解できるようにする。本講義では、担当者の専門である民法との関係で、民事の問題を中心に、論を進める。

履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
参加者は、予め、道垣内弘人『プレップ法学を学ぶ前に<第2版>』(弘文堂、2017年)を購入・通読し、達成目標として掲げた事項についての情報をひとまず整理しておくこと。また、授業における基本テキストとして、河上正二『民法学入門<第2版・増補版>』(日本評論社、2014年)を用いるので、予め購入の上、事前に該当箇所を読んでくることが求められる。

授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class イントロダクション。
法の体系、法の種類、法の役割、民法の意義と機能について
*訴訟制度と訴訟当事者
*公法と私法、実体法・手続法、法の階層性など

事前学習/Preparation 道垣内弘人『プレップ法学を学ぶ前に<第2版>』を通読のこと
事後学習/Reviewing 講義内容についての復習
2
授業計画/Class 裁判例を読む(1)隣人訴訟(津地裁昭和58年2月25日判決)
  *生の事実・法的事実・認定事実、
  *損害賠償責任を導く2つの要因(契約と不法行為)を知る。
  *社会における法の役割。人々の行為規範との関係を考える。
  *条文の読み方。裁判例・判決資料の見方を学ぶ。
事前学習/Preparation 河上正二『民法学入門<第2版・増補版>』第1章
事後学習/Reviewing 講義内容についての復習
3
授業計画/Class 隣人訴訟判決を読む(続) 契約責任の意味
  *人は何によって拘束されるのか、法と非法の関係を考える。
  *法的推論および法の解釈について理解する。

事前学習/Preparation 河上正二『民法学入門<第2版・増補版>』第1章
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
4
授業計画/Class 隣人訴訟判決を読む(続) 不法行為責任の意味と役割
  *判決が社会に及ぼす影響、法規範と社会規範の関係を考える
  *「過失」や「注意義務」について学ぶ

事前学習/Preparation 河上正二『民法学入門<第2版・増補版>』第1章
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
5
授業計画/Class 裁判例を読む(2)宇奈月温泉事件(大審院昭和10年10月5日判決)
  *民法における「権利」の実現とその限界、物の支配、物権法の世界を考える
  *「権利」と「権利濫用」の関係を学ぶ
  *「所有権」の意味を学ぶ

事前学習/Preparation 河上正二『民法学入門<第2版・増補版>』第2章
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
6
授業計画/Class 裁判例を読む(3)阪神電鉄事件(大審院昭和7年10月6日判決)
  *「人の法」としての民法、家族と法の関係、「胎児の地位」を考える

事前学習/Preparation 河上正二『民法学入門<第2版・増補版>』第3章
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
7
授業計画/Class 裁判例を読む(4)酌婦ハルエ前借金事件(最高裁昭和30年10月7日判決)
   *公序良俗違反・不法原因給付と「クリーン・ハンズの原則」について
   *「人身の自由」について
事前学習/Preparation 河上正二『民法学入門<第2版・増補版>』第4章
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
8
授業計画/Class 酌婦ハルエ前借金事件を読む(続)
   *「公序良俗違反」ということ、
   *複数契約の結合、多角的契約関係について
   *社会規範を読み解く

事前学習/Preparation 河上正二『民法学入門<第2版・増補版>』第4章
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
9
授業計画/Class 裁判例を読む(5)マンション分譲契約交渉破棄事件(最高裁昭和59年9月18日判決)
   *法における「信義則」
      cf.古代ローマの2大学派について
   *民法を支配する「信義則」と「社会的行為規範」

事前学習/Preparation 河上正二『民法学入門<第2版・増補版>』第5章
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
10
授業計画/Class 法の解釈と適用において学説が果たす役割
 *イェーリンク(Jhering)の「契約締結上の過失」理論を例に
事前学習/Preparation 河上正二『民法学入門<第2版・増補版>』第6章
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
11
授業計画/Class 法の歴史について学ぶ。
   *ローマ法の継受と日本民法典の生成発展
   *日本民法典の歴史と比較法
事前学習/Preparation 河上正二『民法学入門<第2版・増補版>』第6章
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
12
授業計画/Class  立退料判決(最高裁昭和38年3月1日判決) と法の経済分析
  *法の背後にある経済的効率性への配慮と限界、法的正義とは何かを考える

事前学習/Preparation 河上正二『民法学入門<第2版・増補版>』第7章
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
13
授業計画/Class 制限超過利息返還請求事件(最高裁昭和43年11月13日判決)
  *一般法と特別法の関係
  *「法の解釈」と「裁判官による法創造」の問題について

事前学習/Preparation 河上正二『民法学入門<第2版・増補版>』第8章
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
14
授業計画/Class 自衛官合祀事件判決(最高裁昭和63年6月1日判決)を読む
  *宗教と法
  *民法によって体現される「憲法的価値」
  *あわせて、立憲主義・違憲立法審査権など

事前学習/Preparation 河上正二『民法学入門<第2版・増補版>』第9章
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
15
授業計画/Class まとめ
事前学習/Preparation 講義内容の整理
事後学習/Reviewing 講義内容に基ずく復習
授業方法/Method of instruction
裁判例を素材とした講述と、部分的に、学生との質疑・応答により講義をすすめる。

教科書・参考書
 道垣内弘人『プレップ法学を学ぶ前に<第2版>』(弘文堂、2017年)
 河上正二『民法学入門<第2版・増補版>』(日本評論社、2014年)
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 80% 提出されたレポートの内容による。
2 平常点 In-class Points 20% 講義への参加状況・発言状況等の積極性

教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
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出版年
Published year
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1 道垣内弘人 プレップ法学を学ぶ前に<第2版> 弘文堂 2017年
2 河上正二 民法学入門<第2版・増補版> 日本評論社 2014年
3 小六法 有斐閣・岩波・三省堂など 最新版 小六法であれば、特に出版社は問わない。普段の学習には、判例つきのものが望ましいが、試験には、判例・解説付きでないものが求められるので注意。2020年から改正民法が施行されるので、古い六法は使えない。
参考書/Reference books
 タイトル
Title
出版社
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出版年
Published year
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1 法律学小辞典 有斐閣 2019年 法律用語は、ある意味で外国語に近い。辞書を利用して、わかりにくい用語をその都度確認する習慣を身につけることは、今後の学習にとって非常に重要な姿勢といえよう。
メッセージ/Message
今回は、遠隔講義となり、私にも初めての経験です。うまくコミュニケーションが取れるように、力を合わせましょう。
 基本的には、オンラインのリアルタイプ型の形態でおこないます。