講義内容詳細:入門演習

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年度/Academic Year 2020
授業科目名/Course Title (Japanese) 入門演習
英文科目名/Course Title (English) Introductory Seminar
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 大沢 光
英文氏名/Instructor (English) OSAWA, Hikaru

講義概要/Course description
  条例を創るという作業を通じて、法律学の視点から、社会的な問題を考え、論じ、発表する(“書く”ことを含む)訓練をします。

 
(1)都道府県や市町村は条例を定めることができます。近年では、自治基本条例や議会基本条例といった、「大事なことなので条例で決めた」という趣旨の条例や、特産品の梅干しでおにぎりを食べよう、日本酒や焼酎で乾杯しようといった「特産品の消費をみんなで奨励しよう」という趣旨の条例など、必ずしも住民の権利を制限したり、義務を課したりする内容ではない条例が幅広く制定されるようになっています。もっとも、条例を通じてでなければ行うことができないと考えられているのは、住民の権利を制限し、義務を課す行政活動です。条例とは、住民の権利を制限し義務を課す行政活動を根拠づける規範である、ということをまずはしっかりおさえて置く必要があります(「“条例”による行政の原理」)。それゆえ、条例は、それを制定する必要性・正当性、つまり根拠づけがきちんとなければなりません(これを「立法事実」と言います)。演習では、皆さんが創ってみたい条例を自由に創っていただく予定ですが、どのような社会問題に対し、どのような立法事実があって、どのような内容の条例を創りたいのか(条例の目的)をしっかり考えていただきたいと思っています。といっても、いきなり一から創るのは難しいと思いますので、現在各地で作られている条例や裁判で争われた条例などをモデルにして、考えていきたいと思います。例えば、景観を保護するために建築物の高さや色等を規制したりする景観保護条例、水道水源を保護するために産業廃棄物を規制する水道水源保護条例、土地の開発による土砂災害を防止する条例、貧困ビジネスを規制する貧困ビジネス規制条例、パチンコ店やラブホテルの出店を規制する条例、タバコやゴミのポイ捨てを規制する条例、受動喫煙防止条例、ごみ屋敷条例や空き家対策条例、アマミノクロウサギを保護するために猫への餌やりを禁止する条例、放置自転車を防止するための条例、保育所を設置して保育を実施するための条例、水道事業を運営するための条例、新たに公園を作って管理する条例、個人情報保護や公文書の管理を適正にするための条例、住民投票条例など、さまざまな条例があります。

(2)演習は、次のような手順で進めていこうと考えています(皆さんの状況を見つつ、適宜修正します)。①まずみなさんに、こんな条例を創ってみたい、あるいは解決したい政策課題について、どのような立法事実があるのかを調査したうえで提案していただきます。それらを検討して、3~4人から成るグループに分かれます。②その後、グループごとに、改めて立法事実を調査し、先例や類似の条例、関係する裁判例や学者の議論などを調査して、条例の目的を実現するためにどのような手段(仕組み)を条例に置いたらよいのか、創った条例をいくつかの事例に当てはめてみて、目的を達成できるものになっているか、創ろうとしている条例によって生ずる法的な問題にはどのようなことがありそうか、それをどのように解決するかといった議論をしながら条例を練り上げていきます。③条例を制定する前に必要な知識(条例とは何か、憲法や法律との関係はどうなっているか、条例が違憲・違法とされた場合はどのような場合か、といった基本的な事柄)については、全員に一度は報告してもらうようテーマわけをし、全体で理解を共通にするという作業をする予定です。④どのような政策課題について、どのような条例を定めたのか、こういう問題が生じた場合には、行政はどのような対応を義務づけられるのかあるいはできるのか、条例自体に解決すべき問題はないか等について検討したことを、レジュメを作成して発表し、質疑応答を受け、条例の出来具合や残された課題について全員で検討する機会を設けます。⑤最後に、各自、自分のグループが創った条例の意義と課題について、③で得た知識も引用しながら、詳細な報告書を書き、提出してもらいます。こうした作業をする中で、議会資料・判例・法律文献等の法情報の探し方、法律文献や判例の読み方、テーマに沿って得た知識を整理し報告(発表)すること、法律の文言の解釈をすること、法律学的な議論をすること、整理した知識を文章にすること、といったことを学び、訓練します。

(3)上記④のグループ報告は後半に行います。③の作業として、判決文や論文を読むこと、文献検索の方法を学ぶことなどを前半に行っていきます。時間があれば、ディベートも取り入れてみたいと思います。

(4)上記⑤に書いたように、グループで報告した内容を、各自、詳細な報告書としてまとめて提出していただきます。その過程において、得た知識を整理し、それに基づいて論ずるという文章の書き方を学んでいただくことになります。

達成目標/Course objectives
 法律学の思考方法に慣れていただくとともに、学問をするための基本的な作法や力、すなわち、文献・資料の扱い方や発表の仕方、文献の読み方や文章の書き方等の基本を身につけることを目標にします。

履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
 受講生の皆さんには、基本的にグループで作業をしてもらいます。発表前にはサブゼミも行ってもらいます。報告書の提出は、仮提出と本提出の2回、やっていただく予定です。
 ◎どんな条例を創ろうか、条例が必要になりそうな社会問題とはどのようなものか、どんな条例が創られているかなど、様々な情報を収集して、どのような条例が創れそうか・創りたいか、いくつか案を考えておいてください。

授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class ガイダンス、創りたい条例を各自発表する。

事前学習/Preparation 各地の条例で関心があるものを探したり、創ってみたい条例を考えてみる。
事後学習/Reviewing 創りたい条例に類似する条例を探してみる。
2
授業計画/Class 文献・資料検索の実習(図書館のオリエンテーションを受講)

事前学習/Preparation ガクモンノススメを読んでくる。
事後学習/Reviewing 特になし。
3
授業計画/Class 創ってみたい条例を各自発表し、グループ分けをする。
事前学習/Preparation 関心を持つ条例に関わるテーマについて文献調査を行う。
事後学習/Reviewing 講義内容を復習する。
4
授業計画/Class 地方自治とは何か、地方自治の仕組みを知る。
事前学習/Preparation 幾つかの論点について文献調査をしてくる。
事後学習/Reviewing 講義内容を復習する。
5
授業計画/Class 条例とは何かについて学ぶ。
事前学習/Preparation 論文を読んでくる。
事後学習/Reviewing 講義内容を復習する。
6
授業計画/Class 創る条例を検討して確定する。

事前学習/Preparation 文献調査をする。
事後学習/Reviewing 復習する。
7
授業計画/Class 立法事実を整理する(グループワーク)。
事前学習/Preparation 文献調査をする。
事後学習/Reviewing 議論を整理する。
8
授業計画/Class 立法事実を整理する(グループワーク)。
事前学習/Preparation 立法事実について調査し、関連するテーマに関する参考文献・資料を読んでくる。
事後学習/Reviewing テーマについて理解を深めるとともに、演習内での議論を整理・復習する。
9
授業計画/Class 中間発表その1:グループごとの発表と議論。
事前学習/Preparation 文献資料の調査をする。
事後学習/Reviewing 演習内での議論を整理・復習する。
10
授業計画/Class 中間発表その2:グループごとの発表・議論。
事前学習/Preparation 文献資料の調査をする。
事後学習/Reviewing 演習内での議論を整理・復習する。
11
授業計画/Class 条例案を検討する(グループワーク)。
事前学習/Preparation 文献資料の調査をする。
事後学習/Reviewing 演習内での議論を整理・復習する。
12
授業計画/Class 条例案を検討する(グループワーク)。
事前学習/Preparation 文献資料の調査をする。
事後学習/Reviewing 演習内での議論を整理・復習する。
13
授業計画/Class 成果発表その1:グループごとの発表・議論。
事前学習/Preparation 文献資料の調査をする。
事後学習/Reviewing 演習内での議論を整理・復習する。
14
授業計画/Class 成果発表その2:グループごとの発表・議論。
事前学習/Preparation 文献資料の調査をする。
事後学習/Reviewing 演習内での議論を整理・復習する。
15
授業計画/Class 小論文作成のための再調査・再検討とグループディスカッション

事前学習/Preparation 文献資料の調査をする。
事後学習/Reviewing 演習内での議論を整理・復習する。
授業方法/Method of instruction
 授業計画の通りです。 進行計画は、皆さんの状況をみながら、適宜、変更していきます。
 毎回、Course PowerとWebex Meetingsを利用します。

成績評価方法/Evaluation
1 100% 文献調査・準備やグループワークへの取り組み度・議論への貢献度:30%、発表の内容:25%、発言回数:20%、報告書:25%

教科書/Textbooks
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コメント
Comments
1 青山学院大学法学部・法学会 AOYAMA LAW ガクモンのススメ 1年次に配布されたものです。学生ポータル上でも期間限定で掲載されています。 その他、演習中に適宜紹介します。
メッセージ/Message
 演習内容からすると、多様な行政領域の法(例えば、社会保障法、環境法、都市法など)を参照する必要が出てくることに加え、行政組織内部の問題から憲法や政治の問題、さらには日本社会のあり方にまで考察が及ぶことになるでしょうから、こうした問題にまで視野を拡げて問題を考えることにチャレンジしようという意欲をもって受講していただきたいと思います。なお、「公共政策と法」(1年次~:前期)は、行政法現象から社会問題を考えるきっかけになると思いますので、受講しておいていただくと、演習への参加がよりスムーズになると思います。