講義内容詳細:財務コンサルティング論Ⅰ/会計・ファイナンス特論Ⅰ

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年度/Academic Year 2020
授業科目名/Course Title (Japanese) 財務コンサルティング論Ⅰ/会計・ファイナンス特論Ⅰ
英文科目名/Course Title (English) Financial Consulting Ⅰ/Advanced Accounting and Finance Ⅰ
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 佐藤 靖
英文氏名/Instructor (English) SATO, Osamu

講義概要/Course description
[オンライン授業の進め方]
 財務コンサルティング論Ⅰでは原則的にリアルタイム型の授業を行います。具体的な進行方法については、下記の「授業方法 / Method of instruction」を参照してください。

[授業内容]
 本講義では、財務分析をベースとした経営コンサルティングについて論ずる。その内容は、理論編としての財務分析指標の解説と、実践編としての実際の財務データを用いた分析と意思決定の考察、から構成される。特に実践編では、現実に起こりうる課題を設定し、実際のコンサルティング現場の追体験ができるようしたい。例えば、「利益がでているのに、何故キャッシュが減少しているのか。これに対してどう対処すべきか。」といった課題に対して、受講者とともに検討していきたい。

 本講義では、経営コンサルティングという趣旨を踏まえて、財務分析および分析結果の活用の主体として経営者を想定する。また、分析領域としては、主としてキャッシュ・フロー分析を取り上げる。したがって、講義内容を端的に表現すれば、「キャッシュ・フロー分析を企業経営に如何に役立てるかについて、経営者の視点からの考察する」ということになる。ただし、経営者は株主や債権者といったステークホルダーを常に意識するため、本講義の内容は経営者以外の分析主体にとっても一定程度の有用性を有すると言えよう。

 なお、本講義は後期開講の財務コンサルティング論Ⅱと姉妹講義であり、財務分析論ⅠおよびⅡの上級科目として位置づけられる。そのような位置づけを持つ本講義においてキャッシュ・フロー分析を取り上げた経緯および講義概要は下記の通りである。

 日本において上場企業に対してキャッシュ・フロー計算書の作成・開示が義務づけられてから早や20年の時間が経過した。アメリカ合衆国における同計算書の制度化から起算すると、すでに30年を超える年月が過ぎている。
 
 時間の経過とともに、キャッシュ・フロー計算書の作成・開示実務については安定化してきたように見受けられる。しかし、それをいかに分析して経営意思決定に役立てるかという点については、現在に至っても検討途上にあると言ってよかろう。そのことは、財務分析(あるいは経営分析)のテキストにおいて扱われているキャッシュ・フロー分析関連の記述が、損益情報分析関連の記述と比較すると、量的にも質的にも見劣りがするという点に端的に現れている。また、経営意思決定の場(例えば株式会社における取締役会)においても、損益に関する議論に比べてキャッシュ・フローに関する議論の割合は相当程度低いように見受けられる。
 
 本講義では、まずはキャッシュ・フロー計算書の表示内容ないし計算構造について、主たる営業活動によるキャッシュ・フローの区分に焦点をあてて説明を行う。そのうえで、初めに利益とキャッシュの差異分析および分析結果の経営意思決定への活用について論ずる。その際には、実践的重要性の高い在庫管理に多くの時間を割くこととする。続いて、総額ベースのキャッシュ・フロー分析について言及する。当該分析はこれまであまり議論されてこなかった領域であるため、できるだけ丁寧な説明を心がけたい。
達成目標/Course objectives
キャッシュ・フロー情報(キャッシュ・フロー計算書の計算構造を含む)の内容を再考し、その上でその分析手法と経営意思決定への活用の仕方について理論的かつ実践的に理解する。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
複式簿記および財務諸表に関する基礎知識を習得しておくこと。
財務分析論ⅠおよびⅡを修得(もしくは履修中)していることが望ましい。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class プロローグ―財務コンサルティングとは何か―
財務領域でコンサルティングを依頼する企業(経営者)は何を求めているか。その概要について、実践経験を踏まえて論ずる。その際には、キャッシュ・フロー分析が経営者にとって、最も重要かつ直ちに行うべき事柄であることを財務分析理論に基づき説明する。
事前学習/Preparation 教科書の「はじめに」および69-70頁、101-102頁を読んでおくこと。加えて、参考書の第2章を通読しておくことが望ましい。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考にして、改めて、教科書の「はじめに」および69-70頁、101-102頁を読んで講義内容を確認すること。加えて、参考書の第1章を再度通読することが望ましい。必用に応じて、アカウンティング基礎Ⅰ・Ⅱ(ないし会計学基礎論)で学んだ内容を復習しておくこと。
2
授業計画/Class キャッシュ・フロー計算書はキャッシュ・フロー管理のために有効なツールとして機能するか(1)
実際の企業のキャッシュ・フロー計算書を提示して、その企業のキャッシュ・フロー管理の問題点と解決策を探る。その際には、キャッシュ・フロー計算書の概観(3区分と表示方法の違い)に関する理論的説明を加える。また、キャッシュ・フロー計算書を取得するために、EDINETの使い方も解説する。
事前学習/Preparation 教科書83-88頁を熟読し、疑問点を明らかにする。この事前学習を効率的に行うためには、参考書56-61頁を同時に熟読することが効果的である。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、教科書83-88頁を再度熟読する。加えて、EDINETから有価証券報告書をダウンロードして、実際の企業のキャッシュ・フロー計算書の内容を確認する。この学習を通じて、いまだ残る疑問点を明らかにし、次回の講義においてその疑問点を解消すること(講義で解消されない場合は、質問を行うこと)。
3
授業計画/Class キャッシュ・フロー計算書はキャッシュ・フロー管理のために有効なツールとして機能するか(2)
キャッシュ・フロー計算書の計算構造に関する理論的説明を行う。その際には、キャッシュ・フロー計算書が財務分析表として位置づけられることを明確にする。そのうえで、キャッシュ・フロー計算書がキャッシュ・フロー管理に有効か否かについて検討を加える。
事前学習/Preparation 教科書83-88頁を熟読し、疑問点を明らかにする。この事前学習を効率的に行うためには、参考書56-61頁を同時に熟読することが効果的である。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、教科書83-88頁を再度熟読する。加えて、EDINETから有価証券報告書をダウンロードして、単体ベースの財務諸表から営業活動によるキャッシュ・フローの値の計算を試みることが望ましい。この学習を通じて、いまだ残る疑問点を明らかにし、次回の講義においてその疑問点を解消すること(講義で解消されない場合は、質問を行うこと)。
4
授業計画/Class 間接法情報の実践活用―利益キャッシュ関係式―
 利益とキャッシュの差異要因の究明
事前学習/Preparation 教科書83-88頁を再度熟読し、間接法の計算構造を復習する。この事前学習を効率的に行うためには、参考書56-61頁を同時に熟読することが効果的である。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、教科書83-88頁を繰り返し熟読する。加えて、EDINETから有価証券報告書をダウンロードして、第3回の事後学習と同様に単体ベースの財務諸表から営業活動によるキャッシュ・フローを算出し、その計算プロセスから利益とキャッシュの差異要因を明らかにする。この学習を通じて、いまだ残る疑問点を明らかにし、次回の講義においてその疑問点を解消すること(講義で解消されない場合は、質問を行うこと)。
5
授業計画/Class キャッシュ・フロー管理のための指標としての各種回転期間とCCC
事前学習/Preparation 教科書88-98を熟読し、疑問点を明らかにする。この事前学習を効率的に行うためには、参考書62-64頁を同時に熟読することが効果的である。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、教科書88-98頁(特に69-72頁)を再度熟読する。加えて、EDINETから有価証券報告書をダウンロードして、実際の企業の各種回転期間およびCCCの計算を行い、分析対象となった企業の資金繰りの状況について検討することが望ましい。この学習を通じて、いまだ残る疑問点を明らかにし、次回の講義においてその疑問点を解消すること(講義で解消されない場合は、質問を行うこと)。
6
授業計画/Class 実際の企業の分析と戦略に関する検討(1)
 間接法情報を用いた分析と経営意思決定
事前学習/Preparation 教科書69-98頁を熟読し、これまでに学習した内容を復習する。また、設例3-1(77頁)と設例3-2(81頁)のデータをもとに、第5回授業までに財務分析指標(主営業CF、営業利益キャッシュ比率、各種回転期間、CCC)を算出する。そのうえで、99-100頁にまとめて提示している数式3-3~数式3-9の意味を再確認すること。
事後学習/Reviewing コースパワーを用いて分析プログラムを提示する予定である。このプログラムを活用して、受講者自身が選択した企業について自主的に分析を進めて欲しい。その際は、講義ノートを参考に、財務分析結果を如何に経営意思決定に活用するか(経営者にどのような助言を行うか)について留意すること。
7
授業計画/Class キャッシュ・フロー管理のための非キャッシュ資産管理の実際
事前学習/Preparation 第6回までの講義ノートを参考に教科書69-98頁を熟読し、これまで学習した内容を復習する。そのうえで、キャッシュ・フロー管理のための非キャッシュ資産管理の意義について自分自身の意見をまとめておく。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、キャッシュ・フロー管理と非キャッシュ資産管理の理論的意義に関する理解を深める。また、その実践手法についても復習を行い、企業の現場におけるキャッシュ・フロー管理について追体験する。この学習を通じて生じたを疑問点を明らかにし、次回の講義においてその疑問点を解消すること(講義で解消されない場合は、質問を行うこと)。
8
授業計画/Class 長期滞留在庫管理と恒常在庫管理の意義と実際
事前学習/Preparation 教科書89-98頁のうち特に棚卸資産回転期間に関する記述を熟読し、在庫管理とキャッシュ・フローの関係について復習する。この学習を効率的に行うためには、参考書147-163頁を同時に通読することが効果的である(参考書にはより詳しく在庫管理の意義について記述がなされている)。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、長期滞留在庫管理と恒常在庫管理の異同について復習する。その際、長期滞留在庫管理については廃棄に伴う利益に対する影響(税額に対する影響を含む)について、また、恒常在庫管理については売れ筋商品の在庫管理の意義について特に留意すること。そのうえで、教科書89-98頁を再度熟読し、在庫管理とキャッシュ・フローの関係に関する理解を深める。
9
授業計画/Class 適正在庫量の算出と発注方式
事前学習/Preparation 第8回の講義ノートを参考に、恒常在庫、特に売れ筋商品の在庫管理の意義について復習する。その際には、「在庫は無制限に持つべきか、極力減らすべきか」という問いを意識しつつ、教科書89-98頁を熟読して恒常在庫管理の意義をキャッシュ・フロー面から理解するように努める。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に適正在庫量の基本的考え方と算出式について復習する。発注方式については、特に、不定期定量発注方式と定期不定量発注方式の異同について留意して復習する。在庫管理は学際的学習が必要となるため、必用に応じて他の授業科目(統計学など)で学習した内容の復習を行うことが望ましい。
10
授業計画/Class 実際の発注システムとシミュレーション
 売れ筋商品の発注システムに焦点をあてて(発注点方式と定期発注方式)
事前学習/Preparation 第9回の講義ノートを参照して、発注システムの理論について復習する。その際には、適正在庫量算定のための数式の理解に努めること。
事後学習/Reviewing コースパワーを用いて、授業で用いた発注システムのプログラムを提示する予定である。このプログラムを活用して、企業の現場における発注および在庫管理の実践について追体験して欲しい。
11
授業計画/Class キャッシュ・フロー計算書の計算構造(2)
 総額ベースのキャッシュ・フロー情報としての直接法情報
事前学習/Preparation 教科書101-106頁を熟読し、直接法情報の内容およびその算出方法について理解するように努める。そのうえで、疑問点を明らかにする。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、教科書101-106頁を再度熟読する。その際には、①直接法情報と間接法情報の異同、さらには、②新たな会計情報としての直接法情報と既存の会計情報を編集した情報としての直接法情報の違いの理解に努めること。
12
授業計画/Class 直接法情報の誘導
 開示されている会計情報から直接法情報を算出する方法
事前学習/Preparation 第11回の講義ノートを参考にして、開示されている会計情報(貸借対照表や損益計算書に開示されている情報)から直接法情報を算出する計算構造について復習しておく。同時に、教科書101-106頁を熟読すること。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考にして、開示されている会計情報から直接法情報を算出する具体的プロセスについて復習する。加えて、EDINETから有価証券報告書をダウンロードして、実際の企業の開示データから直接法情報を算出することが望ましい。この情報は、現段階では、実務上あまり用いられていないが有用な情報である。疑問点が残る場合は、次回の講義において質問すること。
13
授業計画/Class 直接法情報の実践活用
 売上高売上収入比率と売上原価仕入支出比率の算出方法と経営意思決定への活用
事前学習/Preparation 教科書107-110頁を熟読し、疑問点を明らかにする。この事前学習を効率的に行うためには、教科書69-83頁(利益キャッシュ関係式)および101-106頁(直接法情報としてのキャッシュ・フロー情報)を同時に熟読することが効果的である。
事後学習/Reviewing 講義ノートを参考に、教科書107-110頁を再度熟読する。その際は、設例3-1(77頁)のデータをもとに、売上高売上収入比率と売上原価仕入支出比率の計算を自分自身で行うこと。加えて、EDINETから有価証券報告書をダウンロードして、実際の企業のデータを用いて当該財務分析指標の計算を試みることが望ましい。この学習を通じて、いまだ残る疑問点を明らかにし、次回の講義においてその疑問点を解消すること(講義で解消されない場合は、質問を行うこと)。
14
授業計画/Class 実際の企業の分析と戦略に関する検討(2)
 直接法情報を用いた分析と経営意思決定
事前学習/Preparation 第13回の講義ノートを参考に、売上高売上収入比率と売上原価仕入支出比率の算出方法について復習する。その際には、教科書101-110頁を熟読して直接法情報の算出方法についても理解を深めておくこと
事後学習/Reviewing コースパワーを用いて分析プログラムを提示する予定である。このプログラムを活用して、受講者自身が選択した企業について自主的に分析を進めて欲しい。その際は、講義ノートを参考に、財務分析結果を如何に経営意思決定に活用するかについて留意すること。
15
授業計画/Class 総合クイズ(期末試験代替)
事前学習/Preparation 第1回から第14回までの授業ノートを参考に、教科書の第4章(第2節まで)と第3章(全節)を再度熟読して本授業で学習した内容を総復習すること。その際には、第14回授業後に送信した財務分析プログラムを活用して、実際の財務分析と経営意思決定のプロセスを追体験することが有効である。なお、当該財務分析プログラムは一定の汎用性を有しているため、自分自身で選択した企業の財務分析に活用してほしい。
事後学習/Reviewing 試験の出題内容は授業のエッセンスでもある。その試験内容を踏まえて、改めて講義内容の総復習を行って欲しい。
授業方法/Method of instruction
 財務コンサルティング論Ⅰでは原則的にリアルタイム型の授業を行います。したがって、時間割に示された時間帯にWebexミーティングに参加してください(ミーティングのURLはコースパワーでお知らせします)。原則的に最初の60分程度で講義形式の授業を行います。その後、コースパワーで提出されたクイズ(小テストないし小レポート)を解答する時間を30分程度設けます。
 受講生の皆さんはコースパワーを通じてクイズの解答を提出してください。それによって、出席の確認と成績評価を行います。

 オンライン授業は私にとっても挑戦的な試みです。受講生の皆さんも不安を抱いているかもしれません。特に最初の段階では、試行錯誤の積み重ねになると思います。皆さんの意見を聞きながらオンラインの有効な活用方法を模索し、随時、進行方法および授業内容を改善していきたいと思っております。シラバスの内容が変更される場合には、その都度お知らせいたします。

 対面授業の場合と同様に、授業中に画面共有を行うことにより、資料提示やホワイトボードによる板書を行います。資料としては、エクセルの分析シートを用いたシミュレーションが含まれます。これは本講義の内容を理解してもらう上で非常に重要なアイテムとなります。
 スマホで授業を受講する場合には、画面が小さくて文字や数字が見づらいといった問題がでてくるかもしれません。これに対しては、必要に応じて①画面をフォーカスする、②資料をPDF化してダウンロードできるようにする、といった方法で対応する予定です。ただし、リアルタイムのオンライン授業では画面の制約がありますので、比較的画面の大きなデバイスを使用することを推奨いたします。

 上記の授業計画は、対面授業と同レベルのものとするために、対面授業の場合とその内容を大幅に変えることは行っておりません。ただし、シラバスに加えて、オンライン授業の特性(制約あるいは優位性)を意識した授業案内を、授業に先立って随時コースパワーに掲載します。授業への参加(Webexミーティングへの参加)のためのURLもこちらに示しますので、必ず参照してください。
成績評価方法/Evaluation
1 100% 平常点とクイズの点数で評価する。
配点割合については、オンライン授業の進行状況を確認しつつ決定し、授業中に開示する。
教科書/Textbooks
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出版社
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出版年
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ISBN価格
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1 佐藤 靖 『経営意思決定のための財務分析―利益とキャッシュの実践管理』 中央経済社 2013年 9784502474408 2,200円+税
参考書/Reference books
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出版社
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出版年
Published year
ISBN価格
Price
 
1 佐藤 靖 『経営者が知っておきたい実践財務分析―利益とキャッシュの増やし方』 中央経済社 2007年 9784502279805 2,200円+税
キーワード/Keywords
財務分析         経営分析     企業分析     企業経営     経営意思決定