講義内容詳細:流通論Ⅰ

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年度/Academic Year 2020
授業科目名/Course Title (Japanese) 流通論Ⅰ
英文科目名/Course Title (English) Marketing ChannelsⅠ
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 東 伸一
英文氏名/Instructor (English) AZUMA, Nobukazu

講義概要/Course description
 流通が果たす役割は生産と消費の間に発生する種々の隔たり(懸隔)を橋渡し、さまざまなサービスを生み出すことによって商品のもつ価値を高め、その効用をよりよく発揮させることにあります。生産と消費の隔たりが効果的に架橋されるためには、流通システムの中で流通活動とその補助的活動を担う機関の双方が適切に機能し、効果的に流通フローが生成する必要があります。流通フローの主なものとして、商流、物流、情報流、資金流を挙げることができます。これらのそれぞれの生成にかかわる一連の流通活動を流通機能とよびます。
 ある商品の流通フローがどのように編成されるかによって、流通システムの末端に位置する消費者(あるいは最終使用者)が知覚するサービス水準(流通サービス水準)が規定されます。このような視点に立つと、商品の類型ごとに、どのような流通経路構造がある一定の期間をかけて構築され、その中でどのようなメンバーによってどのような流通活動の組み合わせがおこなわれているのかを考えることができます。
 つぎに生産部門と消費部門の間に中間業者が介在するための条件について考えてゆきます。「中間段階が排除されれば、消費者の便益は高まる」ということをよく皆さんは耳にするかもしれません。本当にそうなのでしょうか?また、流通機能を担当する機関が流通経路の垂直方向で分化して卸売と小売段階が生まれたり、卸売が複数段階に分かれたりするのはなぜか。一方、従来は別々の担当者が果たしていた機能がひとつの機関によって統合されるのはどのような条件が揃ったときなのか。さらには、卸売段階・小売段階の双方で取り扱い品目の専門化による部門分化と事業所の属性の新たな組み合わせによって出現する形態分化は小売業の発展にどのように寄与したのだろうか。このようなポイントについて具体的な事例も踏まえて考察を進めてゆきます。
 とりわけ小売業の店舗形態(一般的に「業態」と呼ばれる)は小売商業の形態発展史を観察するためのコンセプトであるだけでなく、個々の小売商が自らの店舗フォーマットのフロントエンドとバックヤードの革新を図り、追随者を巻き込みつつ新たな小売形態の集団を生み出す、いわば小売形態盛衰の過程を読み解くためのキーとしてとらえることもできます。こうした観点から、小売形態発展にかんする代表的な仮説モデルの解説、昨今台頭する電子小売商(e-tailer)やネットモールなどを含むe-platformer(e-プラットフォーマー)などを含むさまざまな小売形態についての基本的知識の習得、そして小売フォーマット革新と小売形態の盛衰プロセスの代表事例を通した整理をおこなってゆきます。
 また、情報技術の発展や物流の展開は、流通システム全体の編成にも影響を与えています。これらについても、流通システムによって解決が望まれる現代の社会問題なども交え、前期の後半の部分で考えていきます。
 
達成目標/Course objectives
 社会保障制度や電気、ガス、水道などの社会的インフラストラクチャーと同様に、流通は私たちの日常の生活を支える社会的な仕組みです。また、私たちの日々の楽しみの多くも流通活動・流通システムによって支えられているといって過言ではありません。私たちは消費者として日々、多様な商品を購買し、使用しています。購買する商品の幅もいわゆるFMCGからスマートフォンなどの情報ディバイス、大型家電、自動車、あるいはサービス財にいたるまで多岐にわたります。これら消費活動が円滑におこなわれるためには流通のはたらきがかかせません。
 また、卸売業と小売業に従事する人々は労働人口の約20%を占めています。青山学院の経営学部の皆さんについても毎年約20-25%が流通業に就職しています。このように考えると流通は私たちにとって非常に身近な存在であることがわかります。この講義では日常的な経験から一歩踏み込んで、「流通とは何か」、「その構造はどのように変化しているのか」、「消費者の変化は流通の様式にどのような影響を与えてきたか」、「情報コミュニケーション技術はどのように流通のあり方に影響を与えているのか」、「経済活動の国際化はなぜ流通の重要性を高めるのか」、さらには「流通活動を担う企業の具体的な取り組みとは何か」といった一連のテーマについての理解を深めてゆきます。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 講義ガイダンス
▦講義概要、講義の目的、講義の進め方、成績評価の方法
▦2020年度前期のオンライン講義形式での開講について
▦イントロダクション「流通を学ぶことの意義」
▦受講環境アンケートの実施
▦クイズ
事前学習/Preparation 事前配布資料(Course Power)に目を通し、必要な準備を整えておいてください。
事後学習/Reviewing 初回講義内容の復習とオンライン受講環境の整備
2
授業計画/Class CHAPTER1 流通の社会的役割を理解する
1. 流通とは?
2. 商業者の存在意義
CASE 中央卸売市場と鮮魚の流通
課題
事前学習/Preparation テキスト第1章の2まで
事後学習/Reviewing 講義内容の復習と課題
3
授業計画/Class CHAPTER1 流通の社会的役割を理解する
3. 流通を通じて生み出される消費者の便益(流通サービス/流通産出)
4. 流通機能
5. 流通機能の担当者
6. 流通費用
課題
事前学習/Preparation テキスト第1章3-6
事前配布資料による準備
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
課題
4
授業計画/Class CHAPTER2 小売業の役割
1. 小売とその担い手
2. 小売業の社会的役割

CASE UNIQLO-Fast Retailing 
課題
事前学習/Preparation テキスト第2章2まで
事前配布資料にもとづいた準備
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
課題
5
授業計画/Class CHAPTER2 小売業の役割
3. 小売業の変化をとらえる視点
4. 小売業のさまざまな形態
CASE 日本のコンビニについて―発展の歴史から考えてみる 
課題
事前学習/Preparation テキスト第2章3-4
事前配布資料による準備
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
課題
6
授業計画/Class CHAPTER2 小売業の役割
5. 小売業における新潮流
CASE
― ZOZOの物流オペレーション
― AmazonとLast Mile Problem
課題(コラム参照)
事前学習/Preparation テキスト第2章5
事前配布資料による準備
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
課題
7
授業計画/Class CHAPTER3 小売フォーマットと小売店舗形態(小売業態)
1. 小売フォーマットと小売店舗形態(小売業態)
2. 小売フォーマットと小売店舗形態(小売業態)の関係
CASE ユナイテッド・アローズ(小売業と環境適応、小売フォーマットの変化)
課題
事前学習/Preparation テキスト第3章2まで
事前配布資料による準備
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
課題
8
授業計画/Class CHAPTER3 小売フォーマットと小売店舗形態(小売業態)
3. 小売店舗形態(小売業態)からみる日本の小売業の構造
4. ★事前学習確認のためのウェブテスト「代表的な小売店舗形態(小売業態)の特徴と小売店舗形態発展論」
課題説明 小売構造の分析
事前学習/Preparation テキスト第3章 
事前配布資料による準備
事後学習/Reviewing 講義内容の復習 
課題の作成
9
授業計画/Class CHAPTER3 小売フォーマットと小売店舗形態(小売業態)
課題「小売構造の分析」の解説
4. 代表的な小売店舗形態(小売業態)の特徴と小売店舗形態発展論 (1)
― もとは小さな小売店
課題 小売店舗形態の変化を説明する仮説について
事前学習/Preparation テキスト第3章
事前配布資料による準備
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
課題の作成
10
授業計画/Class CHAPTER3 小売フォーマットと小売店舗形態(小売業態)
課題「小売構造の分析」の解説
4. 代表的な小売店舗形態(小売業態)の特徴と小売店舗形態発展論 (2)
課題 
事前学習/Preparation テキスト第3章
事前配布資料による準備
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
課題
11
授業計画/Class CHAPTER3 小売フォーマットと小売店舗形態(小売業態)
課題「小売構造の分析」の解説
4. 代表的な小売店舗形態(小売業態)の特徴と小売店舗形態発展論 (3)
課題 
事前学習/Preparation テキスト第3章
事前配布資料による準備
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
課題の作成
12
授業計画/Class CHAPTER3 小売フォーマットと小売店舗形態(小売業態)
課題「小売構造の分析」の解説
4. 代表的な小売店舗形態(小売業態)の特徴と小売店舗形態発展論 (4)
課題★統計データをつかって変化を読み取ってみよう(授業内~事後課題)
事前学習/Preparation テキスト第3章
事前配布資料による準備
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
課題の作成
13
授業計画/Class CHAPTER4 プライベート・ブランドの意味を考える
1.プライベート・ブランド(Private Brand / Own Brand)とは?
2.小売業者がプライベート・ブランドを導入する理由
CASE PBの今昔
課題
事前学習/Preparation テキスト第4章2まで
事前配布資料による準備
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
課題の作成
14
授業計画/Class CHAPTER4 プライベート・ブランドの意味を考える
3.プライベート・ブランドの類型
4.メーカーにとってのプライベート・ブランドの意味合い
CASE SPAとは?
課題
事前学習/Preparation テキスト第4章3-4
事前配布資料による準備
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
課題の作成
15
授業計画/Class 前期の学習内容の振り返り
事前学習/Preparation テキスト序章~第4章
事前配布資料
事後学習/Reviewing 講義内容の復習
授業方法/Method of instruction
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 50% 各回講義における課題レポート(小レポート、クイズ、小テスト、レポートなど)
2 平常点 In-class Points 20% 各回の講義への参加貢献度
3 試験 Exam 30% 期末課題などによる評価
教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
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出版年
Published year
ISBN価格
Price
1 崔容熏・原頼利・東伸一 はじめての流通 有斐閣 2014 9784641150102 2052
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
 
1 鈴木安昭(著)東伸一・懸田豊・三村優美子(補訂) 新・流通と商業 第6版 有斐閣 2016 9784641164673 2484
2 田村正紀 業態の盛衰 千倉書房 2008 9784805109182 3024
3 田村正紀 セブンイレブンの足跡 千倉書房 2014 9784805110003 2700