講義内容詳細:マクロ経済学Ⅰ

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年度/Academic Year 2020
授業科目名/Course Title (Japanese) マクロ経済学Ⅰ
英文科目名/Course Title (English) Macroeconomics Ⅰ
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 仙波 憲一
英文氏名/Instructor (English) SEMBA, Ken-ichi

講義概要/Course description
 見えない敵との闘いは不安と焦燥感に満ちたマグマを社会に蔓延させています。 多くの方がその犠牲に、あるいは戦いに苦慮している最中です。我々の授業も予定の変更を余儀なくさせられました。まさにコロナ憎しです。
 社会の基軸に経済という一つの柱があり、その上に一定の公衆衛生に支えられた人間の命の重さがあり、それが我々社会にのしかかり、社会生活がもろくも沈下あるいは崩壊しつつあります。改めて我々の生き方や考え方を、また経済行動を問い直す時が来たことを実感させられます。
 世界の指導者は懸命にウイルスと戦い、自国社会のそして経済生活の健康を取り戻すべく戦っていて、その結果皮肉にも内向きになっています。人・物・金の動きが社会経済を動かすエンジンですが、今回特に人の移動を制限することが戦う有効な術であると必死になっています。しかしウイルスは国境を知りません。人種も性別も宗教も知りません。この時節柄、国を守り国民を先ず守るのは各国共通の認識です。しかし、対ウイルス政策には自国ファーストとは相いれないものがあります。地球規模の課題には共同対策を視野に入れて国を超えて協調を取ることが肝要なのではないでしょうか。もちろん人命を救うためのワクチンや治療薬の開発、医療崩壊への対策等喫緊の対策は必須です。同時にこの根底にある、そしてさらにはその先にある人類共通課題の解決を常に念頭に置いておく必要があるのではないでしょうか。
 これまでの国際社会は国家の安全保障を基軸とした社会体制が世界を特徴付けてきましたが、今回はっきりしたのは、社会の基軸とすべきは人間の安全保障であるということです。人間が健康で豊かで安全で安心して暮らせる社会を築く。国と国が、国と個人が、個人と個人がいかに協力して人間の生命と安心安全な社会生活を築いていくかが問われているのです。
 本講ではこのような視点に則り、「社会はどうあるべきか」 「人や国がそして世界がどのような経済的システムを新たに作っていくのが望ましいのか」という課題を設定し、経済学が経済活動を体系的にかつ専門的に深く研究する学問体系であることを理解しつつ、社会の処方箋としての有効性とその限界を理解できるようにしたい。
 前期のマクロ経済学Ⅰではマクロ経済学の基本的考え方と論理構造について学び、後期のⅡでは経済成長論、国際経済取引等の経済活動を分析して、通年でマクロ経済学全体を俯瞰する予定です。具体的にはマクロ経済学の初級から中級レベルまでを理解できるように説明します。一国のみならず世界の経済活動が安定的に発展しているか否かを問うとき、経済活動を特徴づける重要な要素である人・モノ・カネを取引する市場に注目することが重要です。
 特に、労働市場・財市場・金融市場での価格(賃金・物価・金利)と数量(雇用量・GDP・貨幣量)が、他市場との相互依存関係を調整して、世界の経済規模を決定するメカニズムを知ることが不可欠です。まず、各市場の特性を知ることから始め、次に市場間での相互関連のありようを知り、最終的には市場間の相互調整プロセスを通じて、経済全体がどのように調和的に推移していくかを検討します。またカレントなトピックを意識しつつ、マクロ経済理論が現実社会を理解するのに、特に経済政策の目的とその効果を考察するのに極めて有効な学問であることを議論します。

達成目標/Course objectives
マクロ経済学の基礎理論とその基本的枠組みを理解する。また政策論についても議論して、政策への批判的視点を持てるようにする。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
経済学入門(マクロ)、経済学入門(ミクロ)
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 導入:経済学全体の中でのマクロ経済学の位置づけを説明する
事前学習/Preparation 社会科学の中で経済学とはどのような分野なのかを調べる
事後学習/Reviewing マクロ経済学とミクロ経済学との基本的な違いをまとめる
2
授業計画/Class マクロ経済学の課題:国民経済の安定的な発展に向けてのマクロ経済学の課題について説明する
事前学習/Preparation 経済学が対象とする事項を調べる
事後学習/Reviewing マクロ経済学が対象とする事項をまとめる
3
授業計画/Class SNAとデータ:現実の日本や世界の経済データから世界経済の規模感をつかむ。またデータ算出の基礎となる国民所得経済計算の考え方について説明する
事前学習/Preparation 経済データと国民所得経済計算について調べる
事後学習/Reviewing 経済データと国民所得経済計算について理解したことをまとめる
4
授業計画/Class マクロ市場の構成:一国経済を把握するとき、どのような視点から考察するのが適切か。国民経済の構成要素について、一部門から多部門まで様々な捉え方がある。これらを比較考慮して、分析の視点を確認したい。
事前学習/Preparation 国民経済の構成要素について調べる
事後学習/Reviewing 国民経済の構成要素についてまとめる
5
授業計画/Class 市場機能への仮説Ⅰ:マクロ経済学の基本的枠組みについて説明する。時に注目すべきは、市場の調整変数である価格と数量である。両変数の調整スピードに関する見解の違いにより、経済規模や安定性等の解釈に大きな相違が出てくる。この違いを十分理解することが、現実経済の理解に通じる道である。まずは市場機能に対して絶対的な信頼を置く新古典的考え方から説明する
事前学習/Preparation マクロ経済学の新古典的考え方について調べる
事後学習/Reviewing マクロ経済学の基本的枠組みについてまとめる
6
授業計画/Class 市場機能への仮説Ⅱ:総需要不足からくる過少雇用均衡の考え方を取るケインズ的マクロ経済体系について説明する
事前学習/Preparation ケインズ的マクロ経済体系について調べる
事後学習/Reviewing ケインズ的マクロ経済体系について考え方をまとめる
7
授業計画/Class 消費行動と総需要分析:総需要の個別構成要素である、消費・投資・公的支出・海外取引等の変数の特徴について考察する。特に消費関数の導出について様々な分析視点を踏まえて説明をする
事前学習/Preparation 消費・投資・公的支出・海外取引等の個別変数の特徴について調べる。消費関数の決定要因について調べる
事後学習/Reviewing ケインズ的マクロ経済体系についてまとめる
8
授業計画/Class 投資分析:投資行動の分析を通じ、ストックとフロー、金利と企業行動について説明する
事前学習/Preparation 投資関数について調べる
事後学習/Reviewing 企業の投資行動についてまとめる
9
授業計画/Class 貨幣市場:金融資産の選択問題としての貨幣需要の分析を行い、貨幣市場の均衡分析を行う
事前学習/Preparation ポートフォリオセレクションについて調べる
事後学習/Reviewing 資産選択と金利との関係についてまとめる
10
授業計画/Class 総需要関数AD:財市場と貨幣市場の相互関連性について考察し、物価と金利、さらには総需要との関係を説明する
事前学習/Preparation 金利、物価と総需要との関係性について調べる
事後学習/Reviewing 価格変数としての金利と数量変数としての総需要との関係についてまとめる
11
授業計画/Class 労働市場:労働市場について説明する。特に新古典派とケインズ派との名目賃金の市場調整能力に関する見解の相違から、失業の存在問題に対する解釈の相違が発生することを説明する
事前学習/Preparation 失業の種類、実質賃金と名目賃金との違いについて調べる
事後学習/Reviewing 失業と労働市場均衡との関係についてまとめる
12
授業計画/Class 総供給関数AS:労働市場の均衡分析を通じて総供給関数を導出する。これから物価と失業率の関係について説明する
事前学習/Preparation 総供給関数の形状について調べる
事後学習/Reviewing 総供給関数について理解する
13
授業計画/Class AD-AS分析:総需要関数と総供給関数との相互作用から物価とGDPの決定メカニズムについて分析する
事前学習/Preparation 物価の決定メカニズムについて調べる
事後学習/Reviewing 物価の決定メカニズムについて理解する
14
授業計画/Class 政策編Ⅰ:マクロ経済の課題解消の視点からマクロ経済政策の目的、政策手法、政策ツール等の妥当性および有効性について考える
事前学習/Preparation 現下の日本の財政政策・金融政策の政策手段について調べる
事後学習/Reviewing 理論的側面から見た日本の財政政策・金融政策の政策手段についてまとめる
15
授業計画/Class 政策編Ⅱ:引き続き政策論を議論する。特に各政策の有効性について検討し、ポリシーミックスの役割について考える
事前学習/Preparation 現下の日本の財政政策・金融政策の政策手段について調べる
事後学習/Reviewing 理論的側面から見た日本の財政政策・金融政策の政策手段についてまとめる
授業方法/Method of instruction
オンライン方式で行い、リアルタイム型、オンデマンド型、自己学習型を適宜取り入れて、状況に合わせて弾力的に進めていく。教室での授業が可能になったらそれを優先的に行う。また初めてのオンライン方式なので内容を十分理解をするために復習を大事にしたいので、シラバスの実施内容の取捨選択や進めるスピードに遅れが出る可能性があることをあらかじめ承知しておいて欲しい。
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 100% 期末試験としての期末レポートにて成績を評価する。なお、状況を見て適宜レポートを課す予定である。成績は期末レポートを60%、適宜出すレポートを40%とする。
メッセージ/Message
教科書は受講生のレベルに応じて、適切なものを紹介する。大学院や公務員試験、各種資格試験等の試験対応を希望するのであれば、それに対しても適宜個別に対応する。