講義内容詳細:ヨーロッパ圏概論/ヨーロッパ圏概論Ⅰ

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年度/Academic Year 2020
授業科目名/Course Title (Japanese) ヨーロッパ圏概論/ヨーロッパ圏概論Ⅰ
英文科目名/Course Title (English) Introduction to Area Studies: Europe/Introduction to Area Studies Ⅰ:Europe
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 羽場 久美子
英文氏名/Instructor (English) HABA, Kumiko

講義概要/Course description
21世紀に入り、 リーマンショック、ユーロ危機、移民難民の増大、イギリスのEU離脱、アメリカでのトランプ政権の誕生、中国やインドの急成長,さらにポピュリズムの台頭や、香港デモ、新型コロナウイルスの拡大など、これまでの国際秩序をひっくり返すような大きな変化が起こりつつある。
 ひとつは、冷戦終焉後30年間続いてきた、グローバル化とアメリカ中心のネオ・コンサーバティズム、ユニラテラリズムが行き詰まり、先進国が自国ファーストに転換しつつあることである。
その象徴が、現在、世界各地で進展しつつある、ポピュリズム、ナショナリズムや移民排斥の動き、イギリスのEU離脱や、トランプの各国への軍事費の押し付け、環境会議からの離脱、移民や難民の増大と、緊張の激化である。欧州では各地で右翼政党が成長し、アメリカではトランプ大統領が、地球温暖化への対抗、紛争と対立の終焉を、次々にひっくり返し、ヨーロッパとの軋轢を強めている。
他方で、冷戦の崩壊による民主主義、自由主義とグローバリゼーション、民族地域紛争、ナショナリズムの拡大、グローバル化と貧困の拡大、また中国による一帯一路構想、AIIBなど、新しい動きが生まれてきている。 世界はどこに向かうのだろうか。
この授業では、冷戦終焉30年という政治面での根底的変化と、21世紀に入ってのリーマンショック、ユーロ危機を踏まえた世界の不安定化、歴史的大転換と呼ばれる、中国・インドの急成長と、イギリス・アメリカの衰退というベクトルを踏まえつつ、現代の国際政治、国際関係を、多面的に分析・検討する。
また、歴史的なパワーの転換期には、戦争を呼ぶ、という観点から、グレアム・アリソンの著書、世界政治や、米中戦争前夜、も取り上げ、第1次世界大戦のような偶発的戦争をいかに歴史の教訓から防ぎ、安定的な力の転換を実現することができるかを、皆さんとともに考える。
達成目標/Course objectives
 この授業は、ヨーロッパ圏にとどまらず、広く国際政治・国際関係の入門・概論として行う。ヨーロッパから始まった主権国家、国民国家体系を踏まえ、アジア、アメリカ、世界の中の日本を含む現代国際政治への変容の契機となる諸問題を扱う。学部専門への基礎科目として、国際社会、国際関係の諸問題について、歴史、方法論、現状分析とその検討を行なうことにより、国際問題への関心を高め、将来国際社会で活躍する人材を育成することを目的とする。
そのため、国際政治経済の基本知識を押さえつつ、ヨーロッパの国際関係を分析・解明できる手助けとなる作業を学ぶ。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
世界史、政治経済の知識は、基本的に身に着けておいてほしい。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 最初の授業で、受講生の皆さんへのアンケートを行います。皆さんの国際関係・国際政治に関する認識度、関心、現代社会との切り結び方、などを考慮に入れつつ進めたいと思います。
今年は、ヨーロッパの各国の大学教授や、大使、公使レベルの外交官を呼ぶ予定です。
大枠は次のような形で進めます。(変更の可能性はあります)

国際政治とは何か、国際関係とは何か。それにどのように主体的にかかわるか。 
第1次世界大戦後の世界―デモクラシー、ナショナリズム、社会規範、 
国民国家と国際社会――  国民国家と民族、エスニシティーなぜ民族問題は起こるのか?
事前学習/Preparation 関連文献を読んで参加
事後学習/Reviewing アンケート提出
2
授業計画/Class パワーシフト、パワートランジションと呼ばれる時代に、なぜ今世界危機が起きているのか考えます。
そのために、羽場久美子「拡大ヨーロッパの挑戦」「ヨーロッパの分断と統合」
アリソン『米中戦争前夜』などを検討します。
事前学習/Preparation 提示された参考文献の読破
事後学習/Reviewing レポート提出、関連文献の読書
3
授業計画/Class 2015-16年は、難民の年といわれました。
世界で6500万人にもおよび、第2次世界大戦後最大といわれた難民が、中東アジアにあふれ、
そのうち100万人が、欧州に押し寄せました。それはどのような問題を生みだしたのか、
そもそもなぜ21世紀に入り、このように大量の難民が拡大したのか、どう解決すればよいのか、
について考えていきます。
そうした中、日本では2015年11人、2017年でも28人しか難民を受け入れていない実態についても、その原因を考えていきます。
事前学習/Preparation 参考文献の読破
事後学習/Reviewing レポート提出、関連文献の渉猟、読書
4
授業計画/Class 移民・難民問題に関するディベート
2018年12月、入管法の改正が行われ、日本にも外国人労働者を受け入れる方向が選択され、2019年4月から、外国人労働者が旧来より自由度が高い形で働き始めることになります。すでに昨年の段階で、100万人の外国人労働者が日本企業に働いているといわれます。 また、このまま少子高齢化の人口問題を放置しておくと、40年後、ちょうど皆さんが58歳から59歳になるころ、65歳以上の人々が人口の半分になり、労働力人口が半減する(つまり国民総生産がほぼ今の半分になる)といわれます。その後は急速に人口が激減していく時代となります。40年後、皆さんが「老人」となる社会に向けて、どのように日本を再編していくか。それはまさに皆さんの課題です。それを踏まえながら、移民問題に関するディベートをしてみたいと思います。
事前学習/Preparation 参考文献の読破
事後学習/Reviewing レポート提出、関連文献の渉猟、読書
5
授業計画/Class 冷戦終焉30年。1989年の冷戦終焉から、30年がたちます。
冷戦体制の崩壊は、鉄のカーテンが開かれ、ベルリンの壁が崩れ、熱狂を持って迎えられました。しかし30年の間、民族、宗教、文化などの対立が、国際政治に吹き荒れています。20世紀は、戦争の社会、21世紀は紛争とナショナリズムの社会と言われますが、なぜ社会主義体制が崩れた後、民主主義自由主義の波が世界を覆い、その後、ナショナリズムに至ったか。なぜ世界は紛争が続くのか。これを、冷戦終焉の端緒に戻り、この30年を検討していきます。戦争を避ける道はあるのか。アリソンの『米中戦争前夜』を引用しつつ考えます。
事前学習/Preparation 参考文献の読破
事後学習/Reviewing レポート提出、関連文献の渉猟、読書
6
授業計画/Class 狭間の地域の国際政治ー拡大EUの挑戦
冷戦終焉後、新しい中東欧諸国は、拡大EUの最前線となった。
ユーゴスラヴィア、コソヴォ空爆紛争があり、EUNATOの拡大があり、EUは28か国に拡大しさらに拡大を推進しようとしている。
現在、中国のシルクロード構想や、シリア・中東問題においても、EUの最前線にある中東欧諸国の役割について、講義を行う。
事前学習/Preparation 参考文献の読破
事後学習/Reviewing レポート提出、関連文献の渉猟、読書
7
授業計画/Class ジェンダーを考える。日本は、ジェンダー指数において、世界140か国中、110位とされる。先進国では最下位である。他方で、ジェンダー研究は、この間、盛んになされてきた。今回、ジェンダー関係の専門家を呼びながら、日本のジェンダー問題がなぜ改善されないのか、なぜ女性格差はなくならないのかを考える。
事前学習/Preparation 参考文献の読破
事後学習/Reviewing レポート提出、関連文献の渉猟、読書
8
授業計画/Class 国連の役割ーSDGs 持続可能な発展を目指して。すべての人が参加し幸せになる世界の構築とは?
青山学院大学の向かいにある国連大学の学長、マローンさん、あるいは、
国連広報部より、根本所長をお招きし、不安定化する時代に国連と国連大学が果たす役割とは、貧困や格差是正に対し、国連はどう取り組んで行くのかを講義していただく。

併せて、青山学院大学で、国際問題を検討している学生さんたちにも報告をしていただき、国連からのコメントを受ける。
事前学習/Preparation 参考文献の読破
事後学習/Reviewing レポート提出、関連文献の渉猟、読書
9
授業計画/Class イギリスのEU離脱と、EUの変容
2019年3月末、イギリスは、もし再度の国民投票が行われなければ、期限切れで、EUから離脱することになる。EU から離脱したイギリスはどうなるのか、またイギリスが離脱した後、EUはどうなっていくだろうか。様々な要因を考えつつ、欧州の再編はどうあるべきかを考える。
事前学習/Preparation 参考文献の読破
事後学習/Reviewing レポート提出、関連文献の渉猟、読書
10
授業計画/Class 欧州のポピュリズムとその後の変容

欧州においてこの間、移民問題やEUとの軋轢の中で、ポピュリズムが急速に成長している。他方で、ポピュリズムとは若干性格を異にする、マクロン政権の下での、イエローベストのデモなど、地方や下層労働者のデモも各地で広がっている。アメリカのトランプや、ロシア・プーチン、イギリスや、イタリア・五つ星運動やリーグ(同盟)の行方を含め、国際政治におけるポピュリズムの運動や独裁化の動きを、どうとらえるべきかを考える。
事前学習/Preparation 参考文献の読破
事後学習/Reviewing レポート提出、関連文献の渉猟、読書
11
授業計画/Class 21世紀のグローバル・ガバナンスの意義と課題、 

21世紀に入り、先進国の貧困の問題が深刻化して来ている。それが、トランプ大統領に象徴されるような、自国中心主義的ナショナリズムをも生み出している。
ここでは、先進国と途上国における貧困の問題を明示し、現在の国際政治や選挙、中産層の動向の変化とも絡めて、貧困格差問題の解決の方向性を検討する。
事前学習/Preparation 参考文献の読破
事後学習/Reviewing レポート提出、関連文献の渉猟、読書
12
授業計画/Class 阪神大震災や、東北大震災のように、グローバル化の中、近年自然災害が相次いでいる。自然災害は、人間に何を教訓としてもたらしたか。福島原発事故とは何であったか。100年に1度、1000年に1度といわれる事故が頻繁に起こる中、国際政治における、自然災害の意味と解決方法について考える。
事前学習/Preparation 参考文献の読破
事後学習/Reviewing レポート提出、関連文献の渉猟、読書
13
授業計画/Class 国際社会と日本 、世界の中の日本
2019年は、明治開国150年、第一次世界大戦後101年、第2次世界大戦開始後80年、冷戦終焉後30年、まさに世界史の転換点であるということができよう。先進国の頭打ち状況と新興国の急速な発展の中、アメリカと中国のはざまにあって、どうすべきか。国際政治の中の日本について、皆さんの意見を聞きつつまとめる。
事前学習/Preparation 参考文献の読破
事後学習/Reviewing レポート提出、関連文献の渉猟、読書
14
授業計画/Class 授業内試験(半年間の授業を通して学んだことを、一つは事実としてマークシートで確認、
今一つは、授業で学んだトピックに関連して出題する内容に関して、レポート形式でその場で回答)
事前学習/Preparation 試験準備
事後学習/Reviewing 試験自己採点、チェック。質問など
15
授業計画/Class 補講レポート
テキストより、1冊を選んで、レポート作成。補講当日提出。
事前学習/Preparation 関連テキストを読む、レポートを作成

事後学習/Reviewing 正しく内容を把握できたか、自分の意見を記述できたかをチェック。
授業方法/Method of instruction
講義、模擬国連(全体での大ディベート大会)、レポート、試験などの組み合わせ。
ヨーロッパ関係者(特に今年は、セルビア、ハンガリーの大使・代理大使)を呼び、話を聞く。
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 100% 授業内評価
毎回のレポート   20%
質問、議論への参加 10%
授業内試験     50%
最終レポート    20%
教科書/Textbooks
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1 羽場久美子ほか。若松、大津留、下斗米、金子、など多数。 21世紀、大転換期の国際社会 法律文化社 2019、 9784120048173 2400円+税
2 羽場久美子 「ヨーロッパの分断と統合」「拡大ヨーロッパの挑戦―グローバルパワーとしてのEU」(新重版) 中央公論新社 2016、2014 授業の初めに購入し、読んでおいていただきたい。
3 「グローバル時代のアジア地域統合」 岩波書店 授業の初めに購入し、読んでおいていただきたい。
4 「アジアの地域統合を考えるー戦争を避けるために」「アジアの地域協力ー危機をどう乗り切るか」「アジアの地域共同ー未来のために」 明石書店 3冊のうち必ず1冊を購入し読んでおく。
参考書/Reference books
 タイトル
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1 拡大ヨーロッパの挑戦、ヨーロッパの分断と統合、グローバル時代のアジアの地域統合、アジアの地域統合を考える 上記の本は、テキストとして、必ず読んで参加して下さい。また、授業の前半に、ヨーロッパ国際政治に関連する文献表―50冊程度、を配布します。その都度文献を提示しますので、できるだけ積極的に読むようにして下さい。
メッセージ/Message
大教室の授業になりますが、質問、アンケート、毎回のレポートなど、できるだけ一方通行にならないような講義を試みます。
また、欧州のみならず、アジア、アメリカも含め、広義の国際関係、またグローバルガバナンスを理解する基礎として、多くの学生の受講を歓迎します。
今年はぜひ、大ディベート大会、あるいは、模擬国連を試みたいと思います。
できるだけ、主体的な参加を希望します。
その他/Others
大教室では、授業が始まったら私語は厳禁です。
特に本多国際会議場はとても声が響くので注意して下さい。
また途中入室、途中退出も避けてください。

毎回のレポートは、名前だけ記入してあるもの、2,3行のものは配点になりませんので注意して下さい。
問題意識の明確な授業を心がけたいと思いますので、皆さんからの質問も歓迎します。
関連文献はできるだけ読んで出席して下さい。
キーワード/Keywords
グローバリゼーションと国際関係         民主化     ナショナリズム     冷戦終焉     EU,NATOの拡大     移民     難民問題     地域統合     グローバル・ガバナンス