講義内容詳細:比較政治論Ⅰ

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年度/Academic Year 2020
授業科目名/Course Title (Japanese) 比較政治論Ⅰ
英文科目名/Course Title (English) Comparative Politics Ⅰ
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 竹中 治堅
英文氏名/Instructor (English) TAKENAKA, Harukata

講義概要/Course description
比較政治論Iの授業の目的は四つである。第1に各国の政治の仕組みの見方を紹介する。まず、政治のあり方を分類する概念である政治体制についての基本的な概念や民主主義のもとにおける政治の仕組みを紹介する。第2にその上で、政治体制の安定と変化に関係する要素を説明する。第3に主に東アジア主要国の政治の仕組み及び変化について理解を深める。第4にコロナウィルス感染症に対する各国の政策について理解すること。
本授業では先進国・途上国の区別は特に念頭におかず統一した観点から各国の政治を理解できるようにする。特に東アジア諸国に対する理解を深めることを目的とする
 この授業では以下のような形で受講者の積極的な参加を求めながら行う。
⑴授業は少人数形式でZoomで行う。
⑵受講者は主に東アジア諸国(中国、インド(例外)、インドネシア、シンガポール、ミャンマー、フィリピン、ベトナム、マレーシア、カンボジア)の政治のあり方及び近年の体制の変化について発表しなくてはならない。
①具体的な発表は次の三つである
(a)政治体制の現状、変化を把握
(b)変化がある場合は変化の理由、安定している場合は安定の理由を分析する。
(c)コロナ・ウィルス感染症に対する施策および施策に対する体制の性質の影響
②2人あるいは3人の班をつくり、上記10カ国を担当する。希望を受け付けるが最終的には教官の判断で班を作成する。
③班は発表内容について教官と相談しながら準備を進める。
(a)授業内容から明らかなように政治体制について受講者はまず理解する。したがって、政治体制の分類から作業を始めてもらう。その前提として担当国の政治の仕組みについても把握してもらうことになる。
(b)その後授業は政治体制の変化、安定について講義する。授業を踏まえて変化の過程、理由、安定の理由について把握してもらうことになる。
④受講者は班の発表を踏まえてレポートを作成する。
⑤発表およびレポート(レポートの書き方については授業中に改めて詳しく解説する)では下記の内容を盛り込むことが求められる。
・担当国の政治の仕組み ・担当国の政治体制の種類
・担当国の政治体制が変化した理由、あるいは政治体制が維持されている理由。
・コロナ・ウィルス感染症に対する政策
⑥アジア動向年報(各年)には詳細な各国についての情報が載っており、基本的にはこれを活用することで発表とレポートに必要なことは概ね把握できるはずである。オンラインで利用が可能である。
達成目標/Course objectives
講義概要に述べている通り、四つの目標がある。政治のあり方を分類する概念である政治体制についての基本的な概念や民主主義のもとにおける政治の仕組みを理解できるようにすること。第2に一部の先進国や新興国の政治の特徴を認識すること。第3に、主に東アジアの主要国の政治の仕組み及び変化について理解を深める。第4に各国のコロナ・ウイルスに対する政策について理解する。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
なし
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 5月5日 イントロダクション
授業の概要を説明する。
事前学習/Preparation 特になし
事後学習/Reviewing この講義の履修要件を考え、発表の準備、レポート作成について覚悟はあるか自省する。
2
授業計画/Class 5月12日 政治体制の紹介
民主体制、権威主義体制、全体主義体制など政治体制の基本的概念を説明する。その際、近年、注目をあつめる競争的権威主義態勢という概念に触れる。その上で、ことなる政治体制を生む要因は何か明らかにしようとした議論を紹介する。
事前学習/Preparation テキスト:
岸川毅「政治体制論」河野勝・岩崎正洋編.2002.『アクセス比較政治学』日本経済評論社, 19-34
事後学習/Reviewing どの国を担当したいか考える。
3
授業計画/Class 5月19日 民主主義体制の成立・安定条件
政治体制の中で特に民主体制に焦点をあて、民主体制を成立させ、また安定させる条件は何かについて議論する。
班分けと担当国を決める。

事前学習/Preparation テキスト:
岩崎正洋「政治発展論」『アクセス比較政治学』71-91.
参考:ダ−ル.1981.『ポリア−キー』三一書房.
事後学習/Reviewing 授業ノートの復習
4
授業計画/Class 5月26日 政治体制の変動と民主化
政治体制の安定化や不安定化をもたらす条件は何かについて議論し、その上で、現代の民主化について議論する。
事前学習/Preparation テキスト:
湯浅剛「政治変動論」『アクセス比較政治学』92-110.
オドンネル・シュミッター.1986.『民主化の比較政治学』未来社.23-124.
サミュエル・ハンティントン. 1995.『第三の波』三嶺書房. 31-106.
事後学習/Reviewing 授業ノートの復習
5
授業計画/Class 6月2日 民主主義の多様性と統治制度
一言で民主主義といっても、多様であることを議論する。また、民主主義の統治制度を議論し、大統領制と議院内閣制の違いについて説明する。また政党の果たす役割、選挙制度と政党システムの関係について議論する。
事前学習/Preparation テキスト: 
アレンド・ライプハルト. 2005.『民主主義対民主主義』勁草書房.7-38.
佐々木毅. 1999.『政治学講義』東京大学出版会.145〜172.
待鳥聡史.2015.『政党システムと政党組織』東京大学出版会. 63-104.
加藤秀治郎. 2003. 『日本の選挙』中央公論新社. 112-169.
事後学習/Reviewing 授業ノートの復習
6
授業計画/Class 6月9日 権威主義体制の安定
一部の権威主義体制はなぜ安定をつづけるのか。その理由を解説する。
事前学習/Preparation テキスト:
粕谷祐子. 2014. 『比較政治学』ミネルヴァ書房. 139-160. 
事後学習/Reviewing 授業ノートの復習
7
授業計画/Class 6月16日 民主主義体制の崩壊
民主主義体制、あるいは準民主主義体制はなぜ崩壊するのか。その要因を解説する。
事前学習/Preparation テキスト:
スティーブン・レビツキー、ダニエル・ジブラット.2018.『民主主義の死に方』新潮社. 29-53, 99-127, 180-215.
竹中治堅. 2002.『戦前日本における民主化の挫折』木鐸社.49-70.
事後学習/Reviewing 授業ノートの復習
8
授業計画/Class 6月23日 イギリスの政治
 イギリスの政治の概要を議院内閣制、二大政党制を中心に説明する。
事前学習/Preparation テキスト:
成瀬孝「イギリス」網谷龍介・伊藤武・成廣孝編, 2009,『ヨーロッパの政治』ナカニシヤ出版, 145-179 .
事後学習/Reviewing 授業ノートの復習。イギリスの違いについて考察。
9
授業計画/Class 6月30日 アメリカの政治
 アメリカの政治の概要を大統領制、二大政党制を中心に説明する。
事前学習/Preparation テキスト:砂田一郎「大統領制」久保文明・砂田一郎・松岡泰・森脇俊雅編, 2010,『アメリカの政治』有斐閣, 119-142.
森脇俊雅「議会」久保文明・砂田一郎・松岡泰・森脇俊雅編『アメリカの政治』 143-164.
事後学習/Reviewing 授業ノートの復習。イギリスの違いについて考察。
10
授業計画/Class 7月7日 中国の政治とシンガポールの政治
発表:中国の政治とシンガポールの政治についてプレゼン。なぜ権威主義体制は安定するのか。
事前学習/Preparation テキスト:
日本経済新聞社編. 2017『習近平の支配』日本経済新聞社.三宅康之「中国」片山裕・大西裕編, 2010,『アジアの政治経済・入門』有斐閣,91-114. 田村慶子「シンガポール:『超管理国家』の繁栄とジレンマ」清水一史・横山豪志・田村慶子,2018『東南アジア現代政治入門』ミネルヴァ書房、88-112.
事後学習/Reviewing プレゼンでのインプットをレポートに反映させる。
11
授業計画/Class 7月14日 インドの政治 インドネシアの政治 
発表:インドとインドネシアの政治についてプレゼン。インド政治の特徴は何か。インドネシアが民主主義に移行した過程をどう説明できるのか。
事前学習/Preparation テキスト:
堀本武功「現代インド政治の見取り図」堀本武功・三輪博樹,2012『現代南アジアの政治』放送大学教育振興会, 28-43. 近藤則夫『現代インド政治』2015「3章 政党システムの多党化と変容」名古屋大学出版会131-243.横山豪志「多様性の中の統一を目指して」『東南アジア現代政治入門』14-37.
事後学習/Reviewing プレゼンでのインプットをレポートに反映させる。
12
授業計画/Class 7月14日 タイの政治 カンボジアの政治
発表:タイとカンボジアの政治についてプレゼン:タイでめまぐるしく政治体制がかわるのはなぜか。カンボジアの政治体制の変化をどう説明するのか。
事前学習/Preparation テキスト:
永井史男「タイ−『国王を元首とする民主主義』国家」『東南アジア現代政治入門』113-139.
笹川秀夫「カンボジア- 内戦の傷痕、復興の明暗」『東南アジア現代政治入門』185-206.
事後学習/Reviewing プレゼンでのインプットをレポートに反映させる。
13
授業計画/Class 7月21日 フィリピンの政治 ミャンマーの政治
発表:フィリピンとミャンマーの政治についてプレゼン:フィリピンの政治体制はどう変化してきたか。ミャンマーの政治体制はどう変化してきたか。
事前学習/Preparation テキスト:
日下渉「フィリピン- 『争われる民主主義』の挑戦」『東南アジア現代政治入門』64-85.
伊野憲治「ミャンマー- 人間関係で動く政治のジレンマ」『東南アジア現代政治入門』209-228.
事後学習/Reviewing プレゼンでのインプットをレポートに反映させる。
14
授業計画/Class 7月28日 マレーシアの政治 ベトナムの政治
発表:マレーシアの政治とベトナムの政治についてプレゼン:マレーシアの政治体制は近年どう変化したか。
事前学習/Preparation テキスト:
篠崎香織「マレーシア-『民族の政治』に基づく民主主義」『東南アジア現代政治入門』113-139.
『東南アジア現代政治入門』113-139.
遠藤聡「ベトナム- 社会主義国家への生きる道」『東南アジア現代政治入門』140-158.
事後学習/Reviewing プレゼンでのインプットをレポートに反映させる。
15
授業計画/Class 8月4日 試験
事前学習/Preparation これまでの授業の内容の復習
事後学習/Reviewing 特になし。
授業方法/Method of instruction
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 40%
2 平常点 In-class Points 30% 発表
3 レポート Report 30%
教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
1 清水一史・横山豪志・田村慶子 『東南アジア現代政治入門』改訂版 ミネルヴァ書房 2018
2 アジア経済研究所 『アジア動向年報』 各年
メッセージ/Message
[受講希望者多数の場合]
次の二つによりセレクションを行う。
①関心を持っている国についての記述。
②民主主義の現状をどう認識するか。