講義内容詳細:憲法概論

戻る
年度/Academic Year 2020
授業科目名/Course Title (Japanese) 憲法概論
英文科目名/Course Title (English) Constitutional Law
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 飛田 綾子
英文氏名/Instructor (English) TOBITA, Ayako

講義概要/Course description
自衛隊の海外派遣から芸能界のスキャンダルまで、ネットやテレビや新聞では日々様々なニュースが伝えられています。こうしたニュースは、自分には縁遠いものに見えるかも知れません。しかし、日本の国際貢献のあり方や、表現の自由といった広い視点から見れば、決して無関係ではありません。もちろん憲法とは大いに関係があります。よって憲法を学ぶことは結局自分自身のためになるのです。一方で近年は特に、日本国憲法の改正の必要性が叫ばれています。改正の必要性を考察するには、憲法の基本知識を得ることが必要です。この授業では、生存権の保障や法の下の平等、三権分立の原則などの日本国憲法の主要なテーマを、著名な裁判例を多く取り上げながら説明してきます。適宜、他国との共通点や相違点、日本戦後史についても言及したいと思います。
達成目標/Course objectives
①憲法を支える思想である立憲主義や、日本国憲法が保障している人権に関する著名な裁判や学説についての基本的知識を身につけること。
②内閣、国会、裁判所の各々の役割や現在のルールについて理解し、改善策について考察できるようになること。
③権利と義務の規定の仕方や平和主義など、憲法改正で論点とされるトピックについて憲法の基本知識を踏まえつつ、自分の考えを説明できるようになること。
④日本国憲法が果たしている役割について自分の考えを持ち、文章で説明できるようになること。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
特にありません。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class ガイダンス 授業の目的、進め方、教科書・参考文献の紹介/立憲主義とは何か/人身の自由(刑事裁判について)/国務請求権(刑事補償請求権、請願権)
事前学習/Preparation 憲法という言葉で何を思い浮かべるかを簡単に考えておくこと。(無記名アンケートに記述してもらうため。)
事後学習/Reviewing レジュメを読み直して、授業の概要を把握する。立憲主義とは何か理解する。人身の自由の重要性について理解する。日々伝えられる事件や事故との憲法の関わりを考えてみる。
2
授業計画/Class 国務請求権(国家賠償請求権など)/参政権(一票の較差)/社会権①(存在意義、生存権)
事前学習/Preparation 前回のレジュメや参考書の該当箇所を読み直すこと。人身の自由がなぜ重要視されているのか、について思い出す。国家賠償請求が認められるのはハードルが高いと言われる。その理由を考えてみる。
事後学習/Reviewing 国務請求権の具体例を、レジュメを読み直しながら確認する。参政権の原則を確認する。一票の較差の何が問題なのかを理解し、自分の考えを持つようにする。疑問点は早めに解決することが望ましいので、授業前後や小テストの質問欄を活用すること。
3
授業計画/Class 社会権②(教育を受ける権利、労働基本権)/経済的自由権①(職業選択の自由)
事前学習/Preparation 「社会保障」としてどんな制度があるのか考えてみる。日本の労働環境の過酷さについてはニュースで耳にしたことがあると思うので、そうした現状の理由を考えてみる。経済的自由はなぜ保障されるのか、また社会権と経済的自由の関係について考えてみる。
事後学習/Reviewing 生活保護や年金など、社会保障制度の存在意義を考えてみる。労働者はいかなる権利を持つのか、また公務員の労働基本権について裁判所はどんな判決を下してきたのか、その概略を把握すること。また、憲法の重要な論点の一つである「違憲審査基準」について少しずつ理解を深めること。
4
授業計画/Class 経済的自由②(財産権)/思想・良心の自由(日の丸・君が代問題など)/信教の自由①(信教の自由の意義)
事前学習/Preparation 財産権が制約される理由を考えてみる。思想・良心の自由として近年何が問題となっているか。自分で考えてみたり調べてみること。
事後学習/Reviewing 財産権の制約に関する最高裁の考えを確認すること。また思想・良心の自由の重要性、判例について概要を把握すること。学校教育や労働の場における思想・良心の自由の意義について自分なりの考えを持つ。
5
授業計画/Class 信教の自由②(個人の信教の自由の判例、政教分離とは何か、内閣総理大臣の靖国神社公式参について)/表現の自由①(表現の自由の存在意義、大原則)
事前学習/Preparation 信教の自由についてレジュメや参考文献を読んで、裁判では何が問題となるかを予測しておくこと。「信教の自由」と立憲主義のかかわりについて考えてみる。表現の自由と民主主義、個人主義との関係について考えてみる。
事後学習/Reviewing レジュメを読み直して、信教の自由に関する著名な判決の概要を理解すること。地方公共団体の長や内閣総理大臣の神社参拝等で原告となる人々の主張を理解する。また、総理大臣の靖国神社参拝がなぜ論議を呼ぶのかを考えてみる。学問の自由が抱える新しい問題を理解する。
6
授業計画/Class 表現の自由②(性表現の自由・名誉毀損的表現など)/学問の自由(学問の自由は誰に保障されるべきか、など)
事前学習/Preparation 表現の自由はテーマが多岐にわたるので、事前にレジュメや参考文献を読み、表現の自由の全体像を把握しておくこと。近年、日本だけでなく海外でも「表現の自由」の問題として何があったのかを考えてみる。学問の自由が保障される理由、遺伝子治療などで生じうる生命倫理の問題について考えてみる。
事後学習/Reviewing 著名な判決の内容をレジュメ等を読み直して確認しておくこと。性表現や児童ポルノなど、一見「不快でしかない」表現の規制になぜ慎重な意見があるのか、を考えてみる。
7
授業計画/Class 包括的基本権(プライバシーの権利など)/法の下の平等(同性婚、女性の再婚禁止期間、夫婦別姓の是非など)
事前学習/Preparation 判例が多い分野なので、事前にレジュメや参考文献で概要を把握しておくこと。今まで授業で扱ってきた様々な権利を思い出し、相違点や類似点を考えておくこと。近年、多くの重要な判決が下されているので、確認しておくこと。
事後学習/Reviewing レジュメを読み直して、授業を復習する。最高裁による違憲判決の要旨を理解する。家族の在り方と法の関係について考えてみる。
8
授業計画/Class 外国人の人権/基本的人権の原理・その歴史、観念、憲法の私人間的適用の問題(憲法と国民の関わり方について)
事前学習/Preparation 今までの権利の話の総ざらいをしておくこと。レポートで取り上げる裁判について考え始めておくこと。
外国人の人権はどんな場面で問題となるのか、考えてみる。
事後学習/Reviewing レジュメを読み直して授業内容を復習しておくこと。また、人権のまとめとして、「公共の福祉」や「個人の尊重」といった言葉は結局は何を意味するのかを考えてみる。また違憲審査基準と実際の裁判とのつながりが理解できているか確認すること。
9
授業計画/Class 日本国憲法の原理/日本憲法史(日本国憲法の制定過程)/天皇制(象徴天皇制のあり方など)
事前学習/Preparation 今までのレジュメを読んで、日本国憲法が保障している人権のあり方を確認しておくこと。特に「立憲主義」との関わりを復習すること。また第二次世界大戦前と大戦後の大きな違いを、政治体制や人々の価値観など様々な面から考えておく。
事後学習/Reviewing 日本国憲法制定の際の日本側とGHQ側の対立点を理解し、日本国憲法の出発点を確認すること。また天皇制が果たしている役割について考えてみる。
10
授業計画/Class 平和主義(憲法9条の解釈、日本の国防・国際貢献について)
事前学習/Preparation 平和主義は、ニュースで多く取り上げられ関心も高いテーマなので、テレビや新聞でどのように取り上げられているか、何が論点とされているのか、を調べておくこと。
事後学習/Reviewing 9条の解釈や、自衛隊の合憲性についての政府解釈と憲法学説との違い、また9条と戦後史との関わりを理解する。2015年の平和安全法制の成立で何が変わったのかを理解すること。
11
授業計画/Class 統治機構 国会(権力分立の各国のタイプ、衆参両院の役割分担など)
事前学習/Preparation 事前にレジュメを読んでおくこと。イギリス、フランス、アメリカ等の17世紀以降の歴史を大雑把に思い出してみる。参政権(一票の較差など)の話を思い出しておくこと。
事後学習/Reviewing レジュメを読み直して、実際の政治ニュースと授業内容を照合してみること。統治機構の原則である「権力分立」とは何かを確認する。国会議員が果たすべき役割について考えてみる。
12
授業計画/Class 内閣(総理大臣の権限、権限強化の必要性など)
事前学習/Preparation 総理大臣の下、各大臣がどのように職務をこなしているのか、ニュースで把握する。また各国の大統領や首相の権限、その行使方法の違いを考えてみる。
事後学習/Reviewing レジュメを読み直し、内閣の役割を確認すること。また戦前と戦後の内閣の違いを理解すること。
13
授業計画/Class 裁判所(裁判所の役割、裁判員制度の問題点、司法の独立など)/違憲審査制度(各国との比較)
事前学習/Preparation 今までの人権の話で扱った裁判を思い出し、「違憲審査制度」の役割について自分の考えを持つ。「司法の独立」が問題になった裁判を思い出す。
事後学習/Reviewing レジュメを読み直し、日本での立法・行政・司法の三権の関係を理解する。違憲判決を総ざらいすること。
14
授業計画/Class 地方自治(道州制の是非など)/財政(日本の財政状況、予算の法律的性格、公金支出の禁止など)
事前学習/Preparation 地方自治に関するニュース、特に国と地方自治体の衝突の具体例について考える。財政をめぐる憲法問題、特に政教分離と関連付けて考えてみる。
事後学習/Reviewing 「地方自治の充実」には何が必要なのかを考える。日本の財政状況や、財政への国会のチェックのあり方等を理解する。また統治機構のまとめとして、戦後日本の歩みと日本国憲法の関係について考えてみる。
15
授業計画/Class 授業のまとめ
事前学習/Preparation 授業で学んだことについて自分の考えをまとめておくこと。日本国憲法が日本で果たしている役割について考えておく。
事後学習/Reviewing 日本国憲法の人権保障のありかた、権力分立の概要、それらを踏まえたうえで全体像を把握すること。授業全体を振り返り、日本国憲法が日本で果たしている役割について改めて考えてみる。
授業方法/Method of instruction
全てオンライン授業で行います。Webexを使用したリアルタイム授業を基本とします。通信環境等でつながらなかった場合は、授業を録画したものを後で見られる形(オンデマンド授業)で対応いたします。ご安心ください。
 毎回、教員が作成したレジュメを元に、講義形式で行います。レジュメは授業前火曜日12:00までにCourse Powerに教材の掲載先のアドレスをリンクいたします。教員の発言は積極的にメモしてください。
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 50% 重要な憲法判例の概要、判決の意義、判例への学界の評価、判例をもとに憲法全体について考えたこと等をまとめた1500字以上のものとします。Course Powerに提出してもらいます。
2 平常点 In-class Points 50% 適宜、講義内容の簡単な確認問題(○×問題や選択問題)を Course Powerに提出してもらいます。また、憲法に関するニュースの概要やそれについての自分の考えを、簡単に記述する機会を3回程度もうけようと考えています。これもCourse Powerに提出してもらいます。
教科書/Textbooks
 コメント
Comments
1 特に指定しません。
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
 
1 芦部信喜(高橋和之補訂) 憲法(第7版) 岩波書店 2019年 4000613227 3520円
2 安念潤司・小山剛・青井美帆・宍戸常寿・山本龍彦 論点 日本国憲法(第二版) 東京法令出版 2014年 4809063070 2860円
3 野中俊彦・江橋崇編著 渋谷秀樹補訂 憲法判例集(第11版) 有斐閣 2016年 4641091609 1100円
4 安西文雄・巻美矢紀・宍戸常寿 憲法学読本(第3版) 有斐閣 2018年 4641227616 2970円
メッセージ/Message
オンライン授業という慣れない環境の中で、心身ともに自己管理が難しいかと思います。授業方法・進行等で要望がある場合は、遠慮なく相談してください。
予習・復習として、日ごろからあらゆるニュースに関心を払うようにしてください。ニュースを見る媒体はネットや新聞など、複数の媒体から集めるようにして下さい。レジュメを読み直し、授業内容を思い出すのも非常に有用な予習・復習となります。
授業中は各自、積極的にメモを取ってください。
キーワード/Keywords
法学     基本的人権     政治制度     民主主義     戦後史