講義内容詳細:自己理解(個別科目)

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 自己理解(個別科目)
英文科目名/Course Title (English) Self-Understanding(Independent Courses)
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 古田 知章
英文氏名/Instructor (English) FURUTA Tomoaki

講義概要/Course description
テーマ 「自己の存在や生き方の根幹としての思考」
 思考は我々を支える大きな力である。しかし、それは考えるということが、道具として我々の活動に役立つという意味だけではない。我々は、あらかじめ自身の思惟を無意識のうちに張り巡らすことなしに、何かを考えることも為すこともできない。それゆえ、各自の思考の働きこそが、各人の多様な個性、さらにはその活動を特徴づける根幹とも言える。そして、このように我々の活動を支える無意識と意識的という二重の思考には、集団的な規定によって根拠づけられる、言葉、概念、身体性といった様々なシステムが介在し、そのシステムが、そのなかで生きる我々の考え方や価値観を方向づける。したがって、思考や身体的活動によって形成される我々の存在そのものが、知らず知らずのうちに予め決定された枠組みのなかにつなぎ止められていることになる。
 本講義では、このような我々の存在を支える見えない枠組みについて、論理学や哲学という学問の発展の歴史の過程での議論を参考にしながら検討していく。そして、論理的思考の領域とはいったいどのような身分のものなのか、日常において言葉や論理の果たしている役割、哲学や論理学といった思考を巡る学問領域が現実社会に与える影響などの事柄に関して、身近な例を用いながら考察する。
達成目標/Course objectives
 上記のような見通しと内容のもとで、我々の私的な活動を支える思考の公共的な部分の構造と働きについて、思考や論理といった観点から検討することで、この領域についての知識を深めるとともに、この枠組みについての自分自身に重ねての理解を通して、我々自身のあり方そのものについて考える手ががりとすることを目標とする。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class ガイダンス【オンライン(オンデマンド型)】
講義の目的と内容の概観、および、注意事項の説明
事前学習/Preparation 我々がそれぞれの日常を生きるなかで「思考」が果たす役割について、身近な事柄に重ねて具体的にいろいろと考えておく。
事後学習/Reviewing ガイダンスで示した講義の概観を参考に、「論理」と「生きること」との関係について、自分の日常に照らし合わせて考えてみる。
2
授業計画/Class 論理における学問性と日常性 -「ロゴス的動物」としての人間 -
事前学習/Preparation 前回の講義で説明した全体の概観と流れについて確認しておく。
事後学習/Reviewing 「論理」や「ロゴス」の思想史においての意義や語源的意味を、自分の日常な事柄につなげて確認する。
3
授業計画/Class 「自己」の流動的なあり方と、それを把握することの難しさ
事前学習/Preparation 「ことば」と「こころ」の流動的で多様な働きと、「自己」のあり方への影響について整理しておく。 
事後学習/Reviewing 「純粋経験」について、これまでの自分の経験を振り返って検討してみる。
4
授業計画/Class 周囲の「世界」との関係における「私」の本質的な能動性(1)- 認識の能動性とその形式 -
事前学習/Preparation 「私」の流動的で多様なあり方と、その思考を介した周囲との関係について整理しておく。
事後学習/Reviewing カントの「コペルニクス的転回」の意味と、「認識」の成立の仕方について、身近な具体例に則して整理する。
5
授業計画/Class 周囲の「世界」との関係における「私」の本質的な能動性(2) - 経験の受動性と能動性 -
事前学習/Preparation 日常において、何かを認識する際に従う諸「形式」について整理しておく。
事後学習/Reviewing 感覚や経験の受容においての能動性と、その限界について、身近な事柄を手がかりに考えてみる。
6
授業計画/Class 「ことば」とシステム(1) - 構造主義 -
事前学習/Preparation 「こころ」と「ことば」によって現実化される「自己」の内面性の表出のあり方の、「私的な側面」と「公共的な側面」の両面について整理しておく。
事後学習/Reviewing 構造主義について、その時代背景と基本発想を、現代の社会状況と照らし合わせて検討してみる。
7
授業計画/Class 「ことば」とシステム(2) - システムが支える価値と認識 -
事前学習/Preparation 「構造」・「システム」と「時代性」・「集団性」との関係について整理しておく。
事後学習/Reviewing これまでに講義で扱ってきた「自己」の形成における「受動性」と「能動性」との関係を、自分のあり方に照らし合わせて検討してみる。
8
授業計画/Class  世界の把握不可能性と因果性の成立
事前学習/Preparation 「構造」・「システム」と「意味」や「価値」との関係について整理しておく。 
事後学習/Reviewing 「出来事」の流動性とその本来的な把握不可能性について、身近な具体例に則して考察してみる。
9
授業計画/Class 知識の成立
事前学習/Preparation 対象としての「事態」と認識作用との関係を整理しておく。
事後学習/Reviewing 経験的知識の成立の過程について確認する。
10
授業計画/Class 目の前の「世界」の現れを支える論理的思考
事前学習/Preparation 以前扱った「カントのコペルニクス的転回」をはじめとした、思考の能動的な形式についての検討を復習しておく。
事後学習/Reviewing 本来は把握不可能な「出来事」に対して「因果関係」などの論理的な理解が成立する過程について確認する。
11
授業計画/Class 自身の思考作用を把握することの困難さ
事前学習/Preparation これまでに扱ってきた「ことば」と「こころ」の働きの能動的側面やシステムとの関係について復習・整理しておく。
事後学習/Reviewing 「思考作用」においての「志向性」の意味を自身の経験に重ねて確認する。
12
授業計画/Class 「私」の「世界」への働きかけ(1) - 自分にとっての意味の集まり -
事前学習/Preparation 自分の日常において働く「思考」と「対象」との関係について復習・整理しておく。
事後学習/Reviewing 自分にとっての、いまの「世界」とはどのようなものなのかを具体的に考えてみる。
13
授業計画/Class 「私」の「世界」への働きかけ(2)- 意味づけにおける束縛と自由 -
事前学習/Preparation 「自分にとっての世界」の成立の仕方について整理しておく。
事後学習/Reviewing 「意味(価値)づけ」において、どのような束縛があり、どのようにそれらから自由になれるのかについて、自分の状況に重ねて考えてみる。
14
授業計画/Class 幾何学的精神と繊細な精神
事前学習/Preparation 「意味(価値)づけ」においての「身体」や「感情」の役割について整理しておく。
事後学習/Reviewing 自分にとっての理想的な状況がどのようなものなのかを具体的に検討してみる。
15
授業計画/Class まとめ
事前学習/Preparation これまでのノートとプリントをもとに、全体の内容を整理しておく。
事後学習/Reviewing 我々の行動を制限・規定する思考の構造を意識したうえで、「自分らしさ」とは何かを考えていく。
授業方法/Method of instruction
本講義はオンライン授業(オンデマンド型)で実施します。
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 60% 学期終了時に実施する学期末レポートで評価します。
2 平常点 In-class Points 40% 平常点は、毎回のオンライン授業終了時のレスポンスペーパーで評価します(オンライン授業でも使用するCourse Power 経由での提出になります)。
教科書/Textbooks
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1 特に教科書は用いないが、各回の内容に関するプリントを配布する。
参考書/Reference books
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1 参考文献については、適宜、紹介する。
メッセージ/Message
自分自身や身のまわりのことについて、自由に考えてみましょう。