講義内容詳細:哲学B

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 哲学B
英文科目名/Course Title (English) Philosophy B
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 佐藤 拓司
英文氏名/Instructor (English) SATOH Takuji

講義概要/Course description
歴史哲学と政治哲学

 かつてナポレオンとゲーテが悲劇について語り合い、そのときナポレオンは古代と近代の悲劇の差を次のように語ったという。「われわれの時代には人間を屈服させるような運命がもはや存在しない、古代の運命にかわって政治が登場してきている」と(ヘーゲル『歴史哲学講義』)。悲劇における運命の役割を今日では政治が担っているというのである。悲劇における運命と現実の政治をそのまま直結させるわけにはいかない。しかし、歴史をみるならば、政治が運命的役割を果たし、悲劇的結末をももたらすことに疑問の余地はない。
 今日のわれわれは、歴史と政治、そして悲劇を同次元で語ることに躊躇せざるをえない。歴史学と政治学、そして文学および美学を一緒に論ずるのは乱暴にもほどがある。しかし、哲学的省察のなかでも、それらは決して互いに結びつかないものだろうか。歴史哲学者の高坂正顕は、カントの言葉をまねて、かつて次のように語った。「歴史哲学なき政治哲学は盲目であり、政治哲学なき歴史哲学は無力である」と(高坂正顕『歴史哲学と政治哲学』)。少なくとも現実の人間の生において、また私たちが現に生きている歴史的世界において、歴史と政治は別々にあるものではない。私たちはそれらすべてを一つの体験として過ごしている。
 ならば現に生きる私たちの生から哲学的思考をすすめるかぎり、私たちは、とりあえずナポレオンの言葉に従い、政治と運命、そして歴史を同次元から見直してみてもよいのかもしれない。この講義では以上の観点から、歴史哲学と政治哲学を考えていこうとする。
達成目標/Course objectives
 歴史哲学と政治哲学の必然的連関、および類型的理解を得ること、さらにその本来的意義を、自らの体験する「世界」に基づいて、自らの言葉で語れるようになること。この二つを達成目標とする。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
同講師による前期の哲学A、もしくは後期の自己理解(個別科目)をすでに履修していることが望ましい。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 歴史と政治の運命的連関について:講義導入編
(オンライン授業(オンデマンド型))
事前学習/Preparation ヘーゲル『歴史哲学講義』
高坂正顕『歴史哲学と政治哲学』
事後学習/Reviewing 資料熟読。coursepowerにレポートおよび小テストがあればそれを行う。疑問などがある場合は掲示板もしくは質問を使用する。
2
授業計画/Class なぜ哲学は政治に関わるのか:プラトン①
(オンライン授業(オンデマンド型))
事前学習/Preparation プラトン『プロタゴラス』
事後学習/Reviewing 資料熟読。coursepowerにレポートおよび小テストがあればそれを行う。疑問などがある場合は掲示板もしくは質問を使用する。
3
授業計画/Class なぜ国家に神話が必要か:プラトン②
(オンライン授業(オンデマンド型))
事前学習/Preparation プラトン『国家』
事後学習/Reviewing 資料熟読。coursepowerにレポートおよび小テストがあればそれを行う。疑問などがある場合は掲示板もしくは質問を使用する。
4
授業計画/Class 自然法哲学と封建制度:ノモスとピュシスの融和
(オンライン授業(オンデマンド型))
事前学習/Preparation 封建制度について
事後学習/Reviewing 資料熟読。coursepowerにレポートおよび小テストがあればそれを行う。疑問などがある場合は掲示板もしくは質問を使用する。
5
授業計画/Class カントの政治哲学:永遠平和のために
(オンライン授業(オンデマンド型))
事前学習/Preparation カント『永遠平和のために』
事後学習/Reviewing 資料熟読。coursepowerにレポートおよび小テストがあればそれを行う。疑問などがある場合は掲示板もしくは質問を使用する。
6
授業計画/Class ナポレオンとゲーテ:政治の新しい時代
(オンライン授業(オンデマンド型))
事前学習/Preparation ヘーゲル『歴史哲学講義』
事後学習/Reviewing 資料熟読。coursepowerにレポートおよび小テストがあればそれを行う。疑問などがある場合は掲示板もしくは質問を使用する。
7
授業計画/Class 歴史哲学の誕生:ヘーゲル①
(オンライン授業(オンデマンド型))
事前学習/Preparation 渡辺二郎『歴史の哲学』
ヘーゲル『歴史哲学講義』
事後学習/Reviewing 資料熟読。coursepowerにレポートおよび小テストがあればそれを行う。疑問などがある場合は掲示板もしくは質問を使用する。
8
授業計画/Class 人倫と歴史的世界:ヘーゲル②
(オンライン授業(オンデマンド型))
事前学習/Preparation ヘーゲル『法の哲学』
事後学習/Reviewing 資料熟読。coursepowerにレポートおよび小テストがあればそれを行う。疑問などがある場合は掲示板もしくは質問を使用する。
9
授業計画/Class 内在的歴史観と精神科学の誕生:ディルタイ①
(オンライン授業(オンデマンド型))
事前学習/Preparation ディルタイ『精神科学序説』
事後学習/Reviewing 資料熟読。coursepowerにレポートおよび小テストがあればそれを行う。疑問などがある場合は掲示板もしくは質問を使用する。
10
授業計画/Class 内在的歴史観と解釈学:ディルタイ②
(オンライン授業(オンデマンド型))
事前学習/Preparation ディルタイ『解釈学の成立』
事後学習/Reviewing 資料熟読。coursepowerにレポートおよび小テストがあればそれを行う。疑問などがある場合は掲示板もしくは質問を使用する。
11
授業計画/Class 内在から実存へ:ニーチェと歴史批判
(オンライン授業(オンデマンド型))
事前学習/Preparation ニーチェ『反時代的考察』
事後学習/Reviewing 資料熟読。coursepowerにレポートおよび小テストがあればそれを行う。疑問などがある場合は掲示板もしくは質問を使用する。
12
授業計画/Class ハイデガーにおける歴史性と政治的なもの①
(オンライン授業(オンデマンド型))
事前学習/Preparation ハイデガー『存在と時間』
事後学習/Reviewing 資料熟読。coursepowerにレポートおよび小テストがあればそれを行う。疑問などがある場合は掲示板もしくは質問を使用する。
13
授業計画/Class ハイデガーにおける歴史性と政治的なもの②
(オンライン授業(オンデマンド型))
事前学習/Preparation ハイデガー『存在と時間』
事後学習/Reviewing 資料熟読。coursepowerにレポートおよび小テストがあればそれを行う。疑問などがある場合は掲示板もしくは質問を使用する。
14
授業計画/Class 歴史的全体知に抗して:ヤスパースとハンナ・アレント①
(オンライン授業(オンデマンド型))
事前学習/Preparation ヤスパース『歴史の起源と目標』
アレント『全体主義の起原』
事後学習/Reviewing 資料熟読。coursepowerにレポートおよび小テストがあればそれを行う。疑問などがある場合は掲示板もしくは質問を使用する。
15
授業計画/Class 政治的なものと全体主義に抗して:ヤスパースとハンナ・アレント②
(オンライン授業(オンデマンド型))
事前学習/Preparation ヤスパース『歴史の起源と目標』
ハンナ・アレント『全体主義の起原』
事後学習/Reviewing 資料熟読。coursepowerにレポートおよび小テストがあればそれを行う。疑問などがある場合は掲示板もしくは質問を使用する。
授業方法/Method of instruction
・オンライン授業(オンデマンド型)
・講義用資料はcoursepowerのシステムを利用してpdfファイルで配信する。講義内容もその多くは文章化して配信する。
・疑問点などがある場合はcoursepowerの質問、および掲示板システムを利用する。
・レポートを数回提出してもらう。
・対面授業に切り替わった場合、レポート提出方法を変更することがある。
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 70% 課題レポートを2回提出してもらう予定。
評価基準は内容理解度と論述の論理性および説得力。

2 平常点 In-class Points 30% coursepowerおける授業参加度。質問・掲示板の内容。
教科書/Textbooks
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1 毎回、プリントを配布する。
参考書/Reference books
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タイトル
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出版社
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出版年
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ISBN価格
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1 渡邊二郎 [著] 歴史の哲学 講談社 1999.11 4061594060 1150円 蔵書情報 / Library information
2 ヘーゲル著 : 長谷川宏訳 歴史哲学講義 岩波書店 2003.5 4000072250 \1300 他にも邦訳がありますが入手が容易で読みやすいこちらをあげておきます。 蔵書情報 / Library information
3 ヘーゲル [著] ; 藤野渉, 赤沢正敏訳 法の哲学 中央公論新社 2001.11 4121600185 1350円 もとはヘーゲル自身の記した概要と学生のよる講義ノートによって構成されています。それゆえ邦訳でもさまざまなバージョンがありますが、ここでは最もオーソドックスで容易に入手できるものにしました。 蔵書情報 / Library information
4 高坂正顕 歴史の意味とその行方 こぶし書房 2002 4875591721 表題作の他に『歴史哲学と政治哲学』が収録されています。
5 カール・ヤスパース[著] ; 重田英世訳 歴史の起源と目標 理想社 1964.7 蔵書情報 / Library information
6 ハイデッガ― 存在と時間 ちくま書房 1994 4480081372 他にも新訳が多数あります。講義にて紹介予定。この講義ではとくに第2編第5章の「時間性と歴史性」を中心に論じます。
7 アレント 全体主義の起原 みすず書房
8 カント著 ; 宇都宮芳明訳 永遠平和のために 岩波書店 2009.12 9784003362594 500円+税 蔵書情報 / Library information
9 プラトン著 ; 藤沢令夫訳 国家 岩波書店 1979.4 4003360176 500円 蔵書情報 / Library information
10 フリードリッヒ・ニーチェ著 ; 小倉志祥訳 反時代的考察 筑摩書房 1993.10 4480080740 1400円 蔵書情報 / Library information
その他/Others
・事前学習で課されている参考書は、その多くが大部であり、事前に読みとおすことはむずかしい。それでも、どういうことが書かれた書物なのか、興味がわくくらいまで、少しくらいは目を通しておいてほしい。まえがきやあとがきなどでそれらの書物が出版された時代状況をつかむだけでもよい。講義の理解度が格段にあがるはずである。
・この講義の参考書はどれも古代哲学、および近現代哲学の古典的名著である。それゆえ現代ではそれらを理解するための入門書・解説書が数多く出版されている。それらについては講義中のプリントなどで紹介する。
キーワード/Keywords
歴史哲学     政治哲学     世界史