講義内容詳細:哲学の諸問題D

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 哲学の諸問題D
英文科目名/Course Title (English) Problems in Philosophy D
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 古田 知章
英文氏名/Instructor (English) FURUTA Tomoaki

講義概要/Course description
テーマ 新しい時代へ向かっての「自分」を巡る思索
 「我思惟する、故に我あり(コギト・エルゴ・スム)」(デカルト)や「人間は考える葦である」(パスカル)などの、現代においての「人間」や「自分」を巡る思索において引用される言葉の多くは、思想史的には近世に位置づけられる哲学者のものである。このデカルトやパスカルなどの哲学者たちが活躍した近世という時代は、「バロック」という言葉に象徴されるような現代的な人間観が形成され始めるとともに、科学の進歩、およびそれに伴う世界観の変化により様々な領域で伝統的な価値観の見直しが迫られていた、いわば変動の時代であった。そしてこの時代に属する哲学者たちは、「天才の世紀」の呼び名にふさわしく自然科学を始めとした学問の諸領域で偉大な足跡を残す。しかし、その一方で彼らは、自らを育んだ伝統的な価値観の理想を追い求め続けた。現在の我々が目にするのは、このように改革の旗手として新しい時代を切り開きながら、同時にそれに逆らうことをも望むという複雑な事態から生み出された言葉である。
 この講義では、現代の人間観・自己観の出発点ともなる17世紀から18世紀にかけての近世哲学の代表的な言説の含みもつ意義を、その哲学者の個人的背景や時代状況の特殊性を鑑みながら、現代に生きる我々の思索や生き方の指針とすべく考察する。
達成目標/Course objectives
 上記のような見通しのもと、ルネサンスや宗教改革といった変革期を経て、さらには近代経験科学の成立の渦中という、一つの歴史上の「断絶」の時期としての近世哲学における代表的な哲学者の言葉を、その言説の生まれた時代的あるいは個人的背景を含めて考察することによって、現代という新しい時代に生きる自分自身のあり方を顧み検討することを目標とする。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class ガイダンス【オンライン(オンデマンド型)】
講義の目的と内容の概観、および、注意事項の説明
事前学習/Preparation 現代社会の特徴と、そこで求められる「人間像」や「自己観」についての自分の考えをまとめておく。
事後学習/Reviewing 講義で扱った内容を手がかりに、自身が考える「自分」の独自性について検討してみる。
2
授業計画/Class 「自己観」の転換点としての近世
事前学習/Preparation 現代的な「自己観」の思想史的特徴を確認しておく。 
事後学習/Reviewing 「人間観」・「自己観」の分岐点としての「17世紀」の意義を確認する。
3
授業計画/Class 近世における経験科学の発展と世界観の変化(1) - 普遍論争の思想史的意義 -
事前学習/Preparation デカルトとパスカルの思想的および科学的な二側面とその時代背景を確認しておく。
事後学習/Reviewing 「普遍論争」の基本構図と歴史的展開について整理する。
4
授業計画/Class 近世における経験科学の発展と世界観の変化(2) - オッカム主義と帰納法 -
事前学習/Preparation 「普遍論争」の歴史背景や思想史的展開を整理しておく。
事後学習/Reviewing オッカムの「唯名論」とオッカム主義の歴史的意義を確認する。
5
授業計画/Class 近世における経験科学の発展と世界観の変化(3) - スピノザの世界観 -
事前学習/Preparation 「帰納法」の意味と、それに必要な世界観について確認しておく。
事後学習/Reviewing スピノザの「無限論」をノートとプリントをもとに整理する。
6
授業計画/Class 普遍的な法則的宇宙と多様な自律的自己という二つの極の現れ(1) - ライプニッツ「予定調和」 -
事前学習/Preparation これまで検討してきた近世哲学の黎明期においての「理論化の方法」と、それを支える「世界観」との関係を整理しておく。
事後学習/Reviewing ライプニッツにおいての基本発想を整理しておく。
7
授業計画/Class 普遍的な法則的宇宙と多様な自律的自己という二つの極の現れ(2) - バロック的主体の出現 -
事前学習/Preparation ライプニッツにおける「個」と「全体」との関係について整理しておく。
事後学習/Reviewing ライプニッツの「予定調和」の意味と、そこに現れる「バロック的人間観」の特徴を整理する。
8
授業計画/Class 近世における新しい自己観(1) - パスカル「考える葦」 -
事前学習/Preparation 「17世紀」における「全体の必然的秩序」と「人間」との関係を確認しておく。
事後学習/Reviewing パスカルにおいての、「近代性」の確立と、その理念への疑念という相反性を整理したうえで、現代の社会状況と比較検討してみる。
9
授業計画/Class 近世における新しい自己観(2) - 実存思想の萌芽 -
事前学習/Preparation 「考える葦」を巡る議論の意味についてノートとプリントをもとに確認しておく。
事後学習/Reviewing パスカルにおける「賭け」の意義と実存思想に対しての自分の考えを整理する。
10
授業計画/Class 自己の多様性・独自性の根幹(1) - デカルトにおける〈コギト〉の成立 -
事前学習/Preparation 実存主義的人間観の意味を確認しておく。
事後学習/Reviewing デカルトにおいての学問的探究の展開と時代的背景との関係を整理する。
11
授業計画/Class 自己の多様性・独自性の根幹 (2) - 〈コギト〉の二面性 -
事前学習/Preparation デカルトにおける科学的研究と日常性という二つの領域の関係について整理しておく。
事後学習/Reviewing 〈コギト〉の二面性の内容とその意義について確認する。
12
授業計画/Class 自己と社会(1) - ホッブズ「万人の万人に対する戦い」 -
事前学習/Preparation デカルトにおける「情念」、「情動」、「徳」の意義を確認しておく。
事後学習/Reviewing 「情念」と「行動基準」との関係についての自分の考えをまとめてみる。
13
授業計画/Class 自己と社会(2) - ホッブズ とルソーにおける「自然状態」と「社会状態」 -
事前学習/Preparation ノートとプリントをもとにホッブズの「自然状態」について確認しておく。
事後学習/Reviewing 「個人」と「集団」との関係についての自分の考えをまとめてみる。
14
授業計画/Class 多様な自己の共存 - ヒューム「人格」と「共感」 -
事前学習/Preparation 「自然状態」に関しての諸説を整理しておく。
事後学習/Reviewing 「個人」の共存という観点から、個人の感情と他者との関係や「社会的善」についての自分の考えをまとめてみる。
15
授業計画/Class まとめ
事前学習/Preparation これまでのノートとプリントをもとに、17世紀においての「人間観」・「自己観」と「世界観」の変化の内容と、その意義を整理しておく。
事後学習/Reviewing 講義で扱ってきた「近世的人間観」と、現代に生きる「自分」との関係について検討してみる。
授業方法/Method of instruction
本講義はオンライン授業(オンデマンド型)で実施します。
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 60% 学期終了時に実施する学期末レポートで評価します。
2 平常点 In-class Points 40% 平常点は、毎回のオンライン授業終了時のレスポンスペーパーで評価します(オンライン授業でも使用するCourse Power 経由での提出になります)。
教科書/Textbooks
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1 特に教科書は用いないが、各回の内容に関してのプリントを配布する。
参考書/Reference books
 タイトル
Title
出版社
Publisher
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1 西洋哲学の知 白水社 全般的な参考文献として二冊を挙げておく。また、各回において扱う哲学者やテーマについては、適宜、個別に文献を紹介する。
2 原典による哲学の歴史 公論社
メッセージ/Message
この講義は、「哲学の諸問題C」と同様に、哲学や歴史についての特別な知識は前提とせず基礎的な解説から始めるが、「哲学の諸問題C」で扱う哲学的思索の伝統の延長上に位置する内容となるので、予め「哲学の諸問題C」を履修しておくことが望ましい(履修の条件とはしない)。