講義内容詳細:日本社会史C

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 日本社会史C
英文科目名/Course Title (English) Social History of Japan C
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 真鍋 淳哉
英文氏名/Instructor (English) MANABE, Junya

講義概要/Course description
 本講義は、文字通り日本社会の一側面を考察していくことを目的とするものである。具体的には、日本の歴史のうち古代・中世という時代を取り上げ、現代の我々が暮らし、またその国号として現在も普遍的に使用されている「日本」という名称がいつ、誰によって、いかなる意味で定められたのかという問題について、まず最初に考えていきたい。次いで、古代から現代にいたるまで「日本」と密接な関係にある天皇のあり方を考究してゆくことにより、日本の古代・中世社会のありさまの一端を浮き彫りにしていくことを最終的な目標とするものである。
 講義における具体的な方法としては、「日本」国号の成立に関する問題等を把握した後、古代・中世前期(院政期・鎌倉期)を中心として、歴代天皇・上皇のうちの何人かの人物を取り上げ、その事績等がその後の歴史にいかなる影響を及ぼしていったのかという点について考えていきたい。一般的には、中世における天皇・朝廷は、武家政権におされ、その権力は弱体化したと理解されているが、はたしてその認識が正しいのか、その可否についても考察を加えたい。またあわせて、古代から中世前期における、天皇・皇族を含めた女性の果たした社会的な役割といった問題についても言及していきたい。
 現在往々にして、「織田信長に学ぶ部下の掌握法」「坂本竜馬に学ぶ国際認識」などといった、いわば現代というファクターを通した歴史認識を目にすることがある。しかしこれはあまり意味のある行為とはいえない。なぜならば、歴史にはそれぞれの時代ごとの社会背景・特性といったものが存在し、それを無視して歴史を直接的に現代社会の事情にあてはめても、これは無意味だからである。そこで本講義では、直接的に古代・中世という時代の息吹きを感じ取ることができる「史料」を用い、そこから当時の社会の様相を感じ取っていくこことしたい。「史料」とはまさに歴史を分析するための材料といってよいが、ややもすれば近寄りがたい印象を抱きやすい。しかし当時の人々の観念は、多くの場合現代人とは異なるものである。そのため、当時の「ナマ」の史料を現代語訳して理解の一助としながら、直接当時の社会を感じ取っていきたい。
 E・H・カーは「歴史は過去と現在との対話である」と述べたが、残念ながら往々にして「歴史は年号の暗記」としてとらえられ、過去からの一方的な発信となってしまっている。こうした単なる年号などにはとらわれることなく、古代・中世の社会が「日本」に何をもたらし、それが現在とどのように関わっているのかという点について理解するとともに、「平成」から「令和」への転換という、天皇および元号の代替わりを身近かに経験した事実を踏まえつつ、現在進行形で起きている様々な問題を考えるための一助としてもらえれば幸いである。

達成目標/Course objectives
日本の古代・中世の社会と天皇
テーマ「古代・中世社会における「日本」の意識と天皇に関する問題」
本講義では、「日本」という国号がいつ、誰によって、どのような経緯で命名され成立したのか、またそれと密接な関係をもった天皇・朝廷のあり方という問題につき、古代・中世前期の社会を中心に考察を加えていきたい。それにより、こうした問題が我々が暮らす現代の社会に対してどのような影響を及ぼしているのかといった点を理解することを最終的な到達目標としたいと考えている。

授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 【オンライン(オンデマンド型)での実施】
オリエンテーション(講義の目的、内容、講義の進行計画や、履修の際の注意事項等に関する説明を実施)
日本の祝日について
事前学習/Preparation 予めシラバスの内容を通読しておいてほしい。
事後学習/Reviewing 講義目的等の再確認と、日本の祝日の意味について考えて欲しい。
2
授業計画/Class 【オンライン(オンデマンド型)での実施】
「日本」と皇位継承意識の変化(1)「日本」国号の成立
事前学習/Preparation 「日本」国号の制定時期がいつのことであったのかにつき、自分なりに考えてみてもらいたい。
事後学習/Reviewing 「日本」国号の制定時期とその意味について、改めて考察してもらいたい。
3
授業計画/Class 【オンライン(オンデマンド型)での実施】
「日本」と皇位継承意識の変化(2)「日本」と女性天皇
事前学習/Preparation 日本史上における歴代女性天皇の存在につき確認しておくことが望ましい。
事後学習/Reviewing 「女性天皇」と「女系天皇」の相違等につき確認してほしい。
4
授業計画/Class 【オンライン(オンデマンド型)での実施】
「日本」と皇位継承意識の変化(3)東海の小帝国「日本」
事前学習/Preparation 古代「日本」の対外使節派遣の概略につき年表等で確認しておくことが望ましい。
事後学習/Reviewing 「日本」の対外意識の変化につき確認してほしい。
5
授業計画/Class 【オンライン(オンデマンド型)での実施】
「日本」と皇位継承意識の変化(4)「日本」の対外的変化
事前学習/Preparation 奈良時代の政策等につき、年表等で概略を確認しておくことが望ましい。
事後学習/Reviewing 奈良時代の皇位継承意識のあり方を通じ、「日本」の国家路線の変化につき確認してほしい。
6
授業計画/Class 【オンライン(オンデマンド型)での実施】
奈良時代末期の政治史と天智系天皇の復活
事前学習/Preparation 奈良時代末期の政治状況につき、年表等で概略を確認しておくことが望ましい。
事後学習/Reviewing 奈良時代末期の天皇のあり方や、天智系天皇の復活の意義につき確認してほしい。
7
授業計画/Class 【オンライン(オンデマンド型)での実施】
光仁天皇・桓武天皇の「新王朝」
事前学習/Preparation 奈良時代末期から平安初期の政治状況につき、年表等で概略を確認しておくことが望ましい。
事後学習/Reviewing 桓武天皇登場の歴史的意義につき再確認してほしい。
8
授業計画/Class 【オンライン(オンデマンド型)での実施】
「桓武王統」の苦悩
事前学習/Preparation 平安初期の政治状況につき、年表等で概略を確認しておくことが望ましい。
事後学習/Reviewing 平安初期の諸政策や抗争の問題点がどこにあったのかにつき、再確認してほしい。
9
授業計画/Class 【オンライン(オンデマンド型)での実施】
「院政」への志向と王統の分裂
事前学習/Preparation 資料集により、平安中期の皇統について確認しておくことが望ましい。
事後学習/Reviewing この時期になぜ「院政」が志向されたのか、また王統の分裂がもたらした社会的影響につき考えてみてもらいたい。
10
授業計画/Class 【オンライン(オンデマンド型)での実施】
白河法皇と院政(1)後三条天皇と「院政」
事前学習/Preparation 院政期の歴史の概略につき、年表等で確認しておくことが望ましい。
事後学習/Reviewing 後三条天皇が「院政」へと向かう意識がどこにあったのかにつき確認してほしい。
11
授業計画/Class 【オンライン(オンデマンド型)での実施】
白河法皇と院政(2)白河法皇と「光源氏」と保元の乱
事前学習/Preparation 院政期の歴史の概略につき、年表等で確認しておくことが望ましい。
事後学習/Reviewing 白河院政期の問題点と、保元の乱の原因につき再確認してほしい。
12
授業計画/Class 【オンライン(オンデマンド型)での実施】
後白河院政と平氏政権
事前学習/Preparation 平氏政権期の出来事につき、年表等で概略を確認しておくことが望ましい。
事後学習/Reviewing 平氏政権の誕生と皇室の内部抗争との関係につき、再確認してほしい。
13
授業計画/Class 【オンライン(オンデマンド型)での実施】
後鳥羽上皇と承久の乱
事前学習/Preparation 鎌倉前期の朝幕関係の概略につき、年表等で確認しておくことが望ましい。
事後学習/Reviewing 承久の乱における後鳥羽上皇の意識や、乱のもたらした社会的影響につき再確認してほしい。
14
授業計画/Class 【オンライン(オンデマンド型)での実施】
「両統迭立」と後醍醐の登場
事前学習/Preparation 鎌倉中・後期の朝幕関係の概略につき、年表等で確認しておくことが望ましい。
事後学習/Reviewing いわゆる「両統迭立」がなぜ生じたのか、またなぜ後醍醐天皇が討幕に邁進することとなったのかにつき再確認してほしい。
15
授業計画/Class 【オンライン(オンデマンド型)での実施】
「異形の王権」後醐醍と建武政権
事前学習/Preparation 南北朝初期の政治状況につき、資料集等で概略を確認しておくことが望ましい。
事後学習/Reviewing 建武政権の特異性につき再確認してほしいとともに、日本の古代・中世の天皇のあり方につき、改めて考えてもらいたい。
授業方法/Method of instruction
本授業はオンライン授業(オンデマンド型)で実施する。そのため、Course Powerを用いて授業全体の管理を行い、必要に応じて配布するプリント等についても、ここに掲載することとする。
また講義については、Webexを用いて実施する。講義内容等につき、質問などがある場合については、Course Powerの機能を用いてやり取りすることとしたい。この機能を用いた質問に関しては、遠慮なく行ってほしい。
また状況に応じ、自己学習のための課題を設定する場合にも、同様にCourse Powerの掲示板機能を用いて連絡することとする。
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 70% 授業で取り扱ったテーマに関連するレポートを、Course Powerを用いて提出してもらうこととする。その内容につき、レポートを執筆するうえでの目的意識が明確であるか、その内容の趣旨が論理的に展開しているかなどといった点を十分に考慮したうえでこれを採点し、これをもって成績評価全体の7割分として扱うこととする。
なお、レポートのテーマや締切日時・注意点などについては、後日Course Power上にて明示することとしたい。

2 平常点 In-class Points 30% 本授業はオンラインでの実施となるため、厳密な意味での出欠の確認は困難なものと思われる。
そのため、全15回の授業ごとに毎回、その回の授業内容に対する意見や感想、所見等を記してもらう形の簡単な小レポートを、Course Powerを用いて提出してもらうこととする。その小レポートの内容につき、毎回0~2点の間で採点を行い(最高点は2点、未提出の場合には0点。合計の最高点は、2点×15回=30点)、平常点として成績評価の一部とする。
なお今年度前期は、全体の授業開始が4月5日の月曜日である。本授業の実施は火曜日であるが、授業映像は各回、月曜日(授業実施日の前日)から翌週日曜日の7日間とする(第1回の授業であれば、4月6日(火)が本来の実施日であるが、授業映像の公開は4月5日(月)から11日(日)まで)。各回の小レポートの提出期限は、授業映像公開終了日翌日の月曜日とする(第1回授業であれば、4月12日(月))。
教科書/Textbooks
 タイトル
Title
出版社
Publisher
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1 『新詳日本史ー地図・資料・年表』 浜島書店 教材としては必要に応じてプリントを配布し、これを使用して授業を進めていくとともに、日本史図表(『新詳日本史』浜島書店)もあわせて使用したい。
参考書/Reference books
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1 必要に応じて、その都度指示することとする。
キーワード/Keywords
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