講義内容詳細:世界各地域の文学Ⅴ/世界各地域の文学C

戻る
年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 世界各地域の文学Ⅴ/世界各地域の文学C
英文科目名/Course Title (English) Regional Studies in World Literature Ⅴ/Regional Studies in World Literature C
学期/Semester 前期/通年 単位/Credits 2/4
教員名/Instructor (Japanese) 久野 康彦
英文氏名/Instructor (English) KYUNO Yasuhiko

講義概要/Course description
様々な角度から考えるロシア文学

 ロシア文学の代表的な作品を翻訳で事前に読んだ上で、作家や作品を概観し、テクストの分析や解釈を行います。これまでロシア文学をあまり読んだことのない人を受講者に想定していますが、必ずしもロシア文学に関する基礎的な知識を満遍なく教授する授業ではありません。実際にロシア文学の作品を日本語訳で読むことがまず要求されることであり、そしてその上で大学の授業という場においてどう文学作品を扱い論じるべきかを考える授業です。
 さらに授業で取り上げる作家・作品と何らかの関連を持った映画を併せて鑑賞することで、狭い意味での文学論・テクスト読解にとどまらない文学作品の表現の可能性も見てゆきたいと思います。

 今年度の前期の授業のテーマは「ロシア文学における《戦争》のテーマ」です。「戦争」はどの時代、どの国においても、参戦国の社会や経済に大きな影響を与え、その後の歴史の進路を変えてきました。しかし、他方では、経験した戦争の捉え方は時代や国によって大きく異なります。例えば、第二次世界大戦に関して言えば、日本とソ連は、ともにそこに参戦することによって甚大な被害を被りましたが、それでも「戦勝国」であるソ連と「敗戦国」である日本とでは、戦中の経験から戦後の戦争観に至るまで、大きな違いがあります。あるいは、海に囲まれた島国日本は、明治時代になるまで大規模な外国との戦争をほとんど経験してきませんでしたが、大陸の国ロシアは、それとは反対に、大きな対外戦争の連続によって歴史が作られていったといっても過言ではありません。文学は、そうした異なった戦争経験を持つ国々の、戦争の「捉え方」の違いや特色を理解するには、最適の素材であるといえるでしょう。
 今回の授業では、ロシア・ソ連の対外戦争の歴史を概観したのち、ロシアが関わった戦争を描いた4つの文学作品、すなわち、レフ・トルストイ「五月のセヴァストーポリ」(1855)、ガルシン「四日間」(1877)、クプリーン「ルイブニコフ二等大尉」(1906)、ショーロホフ「人間の運命」(1956)を取り上げ、ロシア文学において戦争はどのように表象されてきたかを考察してゆきます。

 講義の進め方としては、あらかじめ指定した小説を読んでもらい、続いて授業でテクストの分析・考察をします。そしてそれと併せて、ナポレオン戦争や第二次世界大戦など、ロシアが関わった戦争を描いたソ連・ロシア映画を鑑賞し、視覚芸術という側面からもロシアの歴史と戦争の理解を深めてゆくことを目指します。
達成目標/Course objectives
単にロシア文学に関する知識を受身の姿勢で学ぶというのではなく、受講者のそれぞれが翻訳などを通じて実際の作品を読み、ロシア文学について能動的に考察を行う姿勢を養うのが目標です。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 初回ガイダンス 【オンライン授業(オンデマンド型)での実施】
事前学習/Preparation シラバスを全部一読しておく
事後学習/Reviewing ガイダンスの内容を再確認(とりわけ授業に関する注意事項と単位認定の条件について)
2
授業計画/Class [講義]概論:ロシアの歴史における戦争
事前学習/Preparation 事典等でロシア・ソ連の歴史における戦争について簡単に調べておく
事後学習/Reviewing 講義の内容を整理し簡単なメモをとっておく
3
授業計画/Class 映画『アンドレイ・ルブリョフ』(1969、ソ連)鑑賞(1)
事前学習/Preparation 事前に配布した映画の案内のプリントに目を通しておく
事後学習/Reviewing 授業で鑑賞した映画の内容を整理し簡単にメモをとっておく
4
授業計画/Class 映画『アンドレイ・ルブリョフ』(1969、ソ連)鑑賞(2)
事前学習/Preparation 事前に配布した映画の案内のプリントに目を通しておく
事後学習/Reviewing 授業で鑑賞した映画の内容を整理し簡単にメモをとっておく
5
授業計画/Class 映画『アレクサンドル・ネフスキー』(1938、ソ連)鑑賞(1)
事前学習/Preparation 事前に配布した映画の案内のプリントに目を通しておく
事後学習/Reviewing 授業で鑑賞した映画の内容を整理し簡単にメモをとっておく
6
授業計画/Class 映画『アレクサンドル・ネフスキー』(1938、ソ連)鑑賞(2)
事前学習/Preparation 事前に配布した映画の案内のプリントに目を通しておく
事後学習/Reviewing 授業で鑑賞した映画の内容を整理し簡単にメモをとっておく
7
授業計画/Class 〔講義〕レフ・トルストイ「五月のセヴァストーポリ」の購読と解説
事前学習/Preparation 授業開始までに「五月のセヴァストーポリ」を一度通読する
事後学習/Reviewing 講義をふまえ「五月のセヴァストーポリ」について気になった箇所を読み返すこと
8
授業計画/Class 映画『戦争と平和』第一部抜粋(1967、ソ連)鑑賞
事前学習/Preparation 事前に配布した映画の案内のプリントに目を通しておく
事後学習/Reviewing 授業で鑑賞した映画の内容を整理し簡単にメモをとっておく
9
授業計画/Class 映画『国境の町』(1933、ソ連)鑑賞
事前学習/Preparation 事前に配布した映画の案内のプリントに目を通しておく
事後学習/Reviewing 授業で鑑賞した映画の内容を整理し簡単にメモをとっておく
10
授業計画/Class 〔講義〕ガルシン「四日間」の購読と解釈
事前学習/Preparation 授業開始までに「四日間」を一度通読する
事後学習/Reviewing 講義をふまえ「四日間」について気になった箇所を読み返すこと
11
授業計画/Class 映画『鶴は翔んでゆく』(1957、ソ連)鑑賞
事前学習/Preparation 事前に配布した映画の案内のプリントに目を通しておく
事後学習/Reviewing 授業で鑑賞した映画の内容を整理し簡単にメモをとっておく
12
授業計画/Class 映画『チェチェン・ウォー』(2002、ロシア)鑑賞
事前学習/Preparation 事前に配布した映画の案内のプリントに目を通しておく
事後学習/Reviewing 授業で鑑賞した映画の内容を整理し簡単にメモをとっておく
13
授業計画/Class 〔講義〕クプリーン「ルイブニコフ二等大尉」の購読と鑑賞
事前学習/Preparation 授業開始までに「ルイブニコフ二等大尉」を一度通読する
事後学習/Reviewing 講義をふまえ「ルイブニコフ二等大尉」について気になった箇所を読み返すこと
14
授業計画/Class 映画『人間の運命』(1959、ソ連)鑑賞
事前学習/Preparation 事前に配布した映画の案内のプリントに目を通しておく
事後学習/Reviewing 授業で鑑賞した映画の内容を整理し簡単にメモをとっておく
15
授業計画/Class 〔講義〕ショーロホフ「人間の運命」の購読と解説
事前学習/Preparation 授業開始までに「人間の運命」を一度通読する
事後学習/Reviewing 講義をふまえ「人間の運命」について気になった箇所を読み返すこと
授業方法/Method of instruction
講義または映画鑑賞
本講義は対面授業(通常型)で実施します。
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 70% 学期末レポート
通年科目の履修者の成績評価…前期レポート35%
2 平常点 In-class Points 30% 授業中に指示する小レポート(授業の内容に関連したもので、実施時期・回数は不定)
通年科目の履修者の成績評価…前期平常点15%
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
コメント
Comments
 
1 加賀乙彦編 トルストイ ポケットマスターピース 04 集英社 2016年 9784087610376 1430円(税込) (集英社ヘリテージシリーズ)
トルストイ「五月のセヴァストーポリ」収録
2 川村二郎、菅野昭正他編 集英社ギャラリー 世界の文学13 ロシアⅠ 集英社 1991年 ガルシン「四日間」収録
3 アレクサンドル・クプリーン著;紙谷直機訳 ルイブニコフ二等大尉―クプリーン短篇集 群像社 2010年 9784903619200 1980円(税込) (群像社ライブラリー)
クプリーン「ルイブニコフ二等大尉」収録
4 ショーロホフ著;米川正夫、漆原隆子訳 人間の運命 角川書店 2008年 (角川文庫)
ショーロホフ「人間の運命」収録
その他/Others
なお単位認定に際しては前期学期末レポート(通年科目の場合は、前期・後期の2つのレポートの両方)の提出が最低条件。未提出の場合は単位取得の意思のないものと見なし、その時点で単位は認定しませんので、あらかじめ了承のこと。
キーワード/Keywords
ロシア     ソ連     文学     映画     歴史     戦争