講義内容詳細:グローバル文学演習Ⅰ/グローバル文学演習

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) グローバル文学演習Ⅰ/グローバル文学演習
英文科目名/Course Title (English) Seminar in Global Literature Ⅰ/Seminar in Global Literature
学期/Semester 前期/通年 単位/Credits 2/4
教員名/Instructor (Japanese) 結城 正美
英文氏名/Instructor (English) YUKI Masami

講義概要/Course description
エコクリティシズムーー自然なき時代の野性

〈自然〉という言葉は、意味が曖昧だけれどもなんとなく内容を伝えているように思える便利な言葉――ウヴェ・ペルクゼンのいう「プラスチックワード」――である。ビル・マッキベン『自然の終焉』(The End of Nature)、ティモシー・モートン『自然なきエコロジー』(Ecology Without Nature)に言及するまでもなく、〈自然〉を素朴に措定することの不可能な時代に私たちは生きている。そうした自然なき時代において、野性(wildness)に着目する文学的動きがみられる。この場合の野性とは、山や森だけでなく都市も視野に入れた物理的環境における野性、動植物の野性、そして人間における野性、それらすべてを含むものである。
 人間の活動の影響が地球環境に隈なく及んだ「人新世」の現在、野性への着目は何を意味しているのだろうか。野性をよりどころとする思考は、私たちに何を示しているのだろうか。そもそも野性とは何なのか。本ゼミでは、文学作品の読解と関連事項の考察を通して、野性の現代的意義について考察する。
 前期は、Joanna Pocock, Surrender: The Call of the American West (2019)を講読する。Pocockは、ロンドン在住のアイルランド系カナダ人で、この作品は、アメリカ西部モンタナ州での滞在経験にもとづくトラベルライティングであり、ネイチャーライティングである。扱われているテーマは、資源開発と環境保護、再野生化 (rewilding)、エコセクシュアリティ、開拓者と先住民など、多岐にわたる。
 授業はディスカッション形式で進める。前期は作品の集中的読み込みを通して、受講生がそれぞれの視角から作品を分析し、自然なき時代の野性について考えを深めることを目指す。
達成目標/Course objectives
・作品を精緻に読むことができる。
・社会的文脈と関連づけて作品を読解することができる。
・作品を多角的・批判的な視点から分析することができる。
・作品分析を自分の言葉で表現することができる。
・学術的な体裁、形式、内容のレポートを書くことができる。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
グローバル文学特講(結城担当/エコクリティシズム)を履修済み、または今年度(金曜1時限)履修することが望ましい。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class ***第1週のみオンライン授業(オンデマンド型)***
イントロダクションーー自然、野性、人新世
Joanna Pocock, Surrender 概観
事前学習/Preparation シラバスを読んでおく。
事後学習/Reviewing 授業内容をふりかえり、Surrenderを読み始める。
2
授業計画/Class Surrender (pp 1-30) 講読(テーマ:ロンドンからモンタナへ)
事前学習/Preparation Surrender, pp 1-30を読んでおく。
事後学習/Reviewing 授業内容のふりかえり
3
授業計画/Class Surrender (pp 32-54)講読(テーマ:オオカミの絶滅と再導入)
事前学習/Preparation Surrender, pp 32-54を読んでおく。
事後学習/Reviewing 授業内容のふりかえり
4
授業計画/Class Surrender (pp 55-84)講読(テーマ:生と死、気候変動、ディストピア)
事前学習/Preparation Surrender, pp 55-84を読んでおく。
事後学習/Reviewing 授業内容のふりかえり
5
授業計画/Class Surrender (pp 103-128)講読(テーマ:Sacred Hoopにみる現代の狩猟採集的生き方)
事前学習/Preparation Surrender, pp 103-128を読んでおく。
pp 86-102は飛ばすが、できれば目を通しておく。
事後学習/Reviewing 授業内容のふりかえり
6
授業計画/Class Surrender (pp 129-168)講読(テーマ:再野生化という市民的不服従)
事前学習/Preparation Surrender, pp 129-168を読んでおく。
授業ではpp 169-181にも言及するので、できれば目を通しておく。
事後学習/Reviewing 授業内容のふりかえり
7
授業計画/Class Surrender (pp 182-219)講読(テーマ:水と鉱山開発、あるいは生命と経済)
事前学習/Preparation Surrender, pp 182-219を読んでおく。
事後学習/Reviewing 授業内容のふりかえり
8
授業計画/Class Surrender (pp 220-240)講読(テーマ:モンタナからロンドンへ、そして独りで西部へ)
事前学習/Preparation Surrender, pp 220-240を読んでおく。
事後学習/Reviewing 授業内容のふりかえり
9
授業計画/Class Surrender (pp 241-278)講読(テーマ:エコセクシュアリティ)
事前学習/Preparation Surrender, pp 241-278を読んでおく。
事後学習/Reviewing 授業内容のふりかえり
10
授業計画/Class Surrender (pp 279-311)講読(テーマ:生まれ直すということ)
事前学習/Preparation Surrender, pp 279-311を読んでおく。
事後学習/Reviewing 授業内容のふりかえり
11
授業計画/Class Surrender (pp 312-332)講読(テーマ:内なる野性と混沌)
事前学習/Preparation Surrender, pp 312-332を読んでおく。
事後学習/Reviewing 授業内容のふりかえり
12
授業計画/Class Surrender (pp 333-365)講読(テーマ:閾という野性)
事前学習/Preparation Surrender, pp 333-365を読んでおく。
事後学習/Reviewing 授業内容のふりかえり
13
授業計画/Class レポートのテーマの口頭発表
レポートのアウトライン(テーマと概要)提出
事前学習/Preparation レポートのテーマと概要を整理しておく。
事後学習/Reviewing 口頭発表で得られたフィードバックを参考にレポートを書く。
14
授業計画/Class レポートに関する議論
事前学習/Preparation レポートの草稿を仕上げる。
事後学習/Reviewing 得られたフィードバックを参考にレポート最終版に着手する。
15
授業計画/Class レポート内容の口頭発表
レポート最終版提出
事前学習/Preparation レポートの仕上げと口頭発表の準備
事後学習/Reviewing 今期ゼミのふりかえり
授業方法/Method of instruction
対面授業(通常型)
授業は、ディスカッションリーダーを中心に進める。ディスカッションリーダーの役割は次の通り。
(1) 担当箇所の要約とポイントを紹介する。
(2) 選定したディスカッショントピックについて議論を牽引する。
なお、上記(1)(2)の事前確認のため、授業前日までに教員と打ち合わせを行う。
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 50% ディスカッションへの参加をはじめとする授業への貢献
2 レポート Report 50% レポートのアウトライン提出、口頭発表、最終版提出
教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBNコメント
Comments
1 Joanna Pocock Surrender: The Call of the American West Anansi 2019 9781487007249 青山キャンパス購買会で購入できる予定です。
授業関連情報/Class-related information
 件名/Title内容/Contents備考/Memo
1
メッセージ/Message
地球環境問題はスケールが大きすぎて自分ごととして捉えにくいですが、文学を通して自分の頭で考えることで、思考の取っ掛かりがつかめてくると思います。本ゼミでは、地球環境問題を意識しながら作品を読みます。「自然との共生」を声高に叫ぶのではなく、それぞれが自分の頭で環境との関係を考えること。文学はそれを促してくれます。環境の問題に取り組みたい文学部生のみなさん、本ゼミで「取っ掛かり」をつかんでください。
キーワード/Keywords
環境文学 (environmental literature)     エコクリティシズム (ecocriticism)     野性 (wildness)     再野生化 (rewilding)     生存 (survival)     アメリカ西部 (the American West)     人新世 (the Anthropocene)