講義内容詳細:日本語教育特講Ⅰ

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 日本語教育特講Ⅰ
英文科目名/Course Title (English) Lecture on Japanese Education Ⅰ
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 田中 祐輔
英文氏名/Instructor (English) TANAKA Yusuke

講義概要/Course description
 現代に至るまでの日本語教育の歴史を概観するとともに、そこから見られる日本語教育の課題と展望について学ぶための科目です。
 近年、新在留資格「特定技能」の創設、「日本語教育の推進に関する法律」の成立など日本語教育に関わる大きな出来事が立て続けに起きています。現在の日本語教育は大きな転換期を迎えているとされ、日本語教育に関わる人々が未来の日本語教育を協働で考え構築することが求められているとされています。そうした中で日本語教育の「歴史」に思いを馳せることは大変重要です。なぜなら、私たちの日本語教育の実践、あるいは研究は、必ず何らかの形で過去から現在に至る人々の教育実践や学習の歩みと関わりを持つものであるからです。どのような教授法でも、どのような文法でも、どのような教材でも、過去から全く切り離された形で独立して成立することはあり得ず、先人たちの知見や経験、慣習、思想などから多分な影響を受けるものなのです。であるならば、これから展開される日本語教育について考える場合も、「私たちはどのような歩みを経て来たのか、なぜこうした教育が行われているのか」を理解する必要があると言えます。とりわけ、新たな教育内容や手法、さらには今後のビジョンを検討する際には、現行の教育が形成された過程を正確に理解していなければ、有効な変化を起こすことができずに、かけ声倒れに終わる可能性もあります。歴史的な考察は日本語教育の実践や研究に欠かすことができないと考えられるのです。
 日本語教育に関する社会的な合意形成をし、未来をともに構築するためには、今現在という視点のみでなく、過去も含めた通時的視点からの議論と考察を行うことが大切で、新たな時代の日本語教育もそこから拓かれてゆくものと考えられます。
 そこで、本科目では、日本語教育の歴史を振り返りながら、現在の日本語教育への示唆と、受講生自身の今後の実践と研究に役立つ知見、そして、日本語教育の将来ビジョン策定に資する指針を得ることを目標とします。
達成目標/Course objectives
1)現代に至るまでの日本語教育の歴史を理解することができる。
2)歴史を通して日本語教育の課題と展望について理解することができる。
3)受講生自身の実践と研究に歴史研究の手法と視点を役立てることができる。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class オリエンテーション【オンライン授業(オンデマンド型)】
事前学習/Preparation シラバスの確認
事後学習/Reviewing オリエンテーションで示された課題に取り組む
2
授業計画/Class 日本語教育史の意義と役割
・日本語教育の現代的課題
・社会的合意形成に不可欠な日本語教育史の観点と知見
・歴史的な考察がもたらす効果
事前学習/Preparation 日本語教育史の意義について予習
事後学習/Reviewing 自身の問題意識を歴史的視点から考察することの意義について考える
3
授業計画/Class 時代区分とその特徴(1)
・5つの時代区分
・記録に残る古代期の日本語教育
事前学習/Preparation 戦前までの日本語教育の時代区分に関する予習
事後学習/Reviewing 古代期の日本語教育に関する調べ学習
4
授業計画/Class 時代区分とその特徴(2)
・日本語教育の目的と担い手の変遷
事前学習/Preparation 戦後の時代区分に関する予習
事後学習/Reviewing 戦後の日本語教育の目的の変遷に関する調べ学習
5
授業計画/Class 歴史を把握する手法(1)
・各種年表と自身の研究テーマに基づく歴史的事実の調べ方
事前学習/Preparation 年表の種類を把握する
事後学習/Reviewing 年表相互の特色の違いについて考察する
6
授業計画/Class 歴史を把握する手法(2)
・各種図書館の特色と史資料
大学図書館・機関別図書館・都道府県立図書館・特殊図書館・議会図書館
・各種機関に保管されている日本語教育関連資料
放送局・出版社・新聞社・博物館・資料館・その他海外の機関
事前学習/Preparation 日本語教育に関する資料が保管されている機関を探す
事後学習/Reviewing 検索システムを用いて自らのテーマに関する日本語教育上の出来事について検索する
7
授業計画/Class 資料の利用申請・管理・公開・報告(1)
・歴史研究に関わる研究倫理と各種法令
・利用申請
事前学習/Preparation 歴史研究に関わる研究倫理と各種法令について予習
事後学習/Reviewing 申請フォーマットに基づき記入するアクティビティ
8
授業計画/Class 資料の利用申請・管理・公開・報告(2)
・資料の管理とアーカイブの構築
・公開手法の種類と留意点
事前学習/Preparation 資料の利用申請・管理・公開・報告について予習
事後学習/Reviewing 申請フォーマットに基づき記入するアクティビティ
9
授業計画/Class オラリティとリテラシーに基づく歴史研究の手法(1)
・インタビュー調査
・証言分析
・アーカイブスとコーパスの構築
事前学習/Preparation オラリティについて予習
事後学習/Reviewing アーカイブの閲覧
10
授業計画/Class オラリティとリテラシーに基づく歴史研究の手法(2)
・ドキュメント調査
・言説分析
・公式統計調査の二次分析
事前学習/Preparation リテラシーについて予習
事後学習/Reviewing 公式統計調査の二次分析に取り組む
11
授業計画/Class 日本人漂流民と日本語教育(1)
・ゴンザとソウザ
事前学習/Preparation ゴンザとソウザについて予習
事後学習/Reviewing 日本人漂流民についての調べ学習
12
授業計画/Class 日本人漂流民と日本語教育(2)
・アンドレイ・タタリーノフ
・大黒屋光太夫
事前学習/Preparation 大黒屋光太夫について予習
事後学習/Reviewing 大黒屋光太夫に関する作品に触れる
13
授業計画/Class ヨーロッパの東洋研究と日本語教育(1)
・ヨハン・ヨーゼフ・ホフマン
事前学習/Preparation ヨハン・ヨーゼフ・ホフマンの予習
事後学習/Reviewing ヨハン・ヨーゼフ・ホフマンの教材についての調べ学習
14
授業計画/Class ヨーロッパの東洋研究と日本語教育(2)
・レオン・ド・ロニー
事前学習/Preparation レオン・ド・ロニーの予習
事後学習/Reviewing 課題発表の準備
15
授業計画/Class 課題発表
事前学習/Preparation 課題発表の準備
事後学習/Reviewing 講評について振り返り
授業方法/Method of instruction
本講義は対面授業(通常型)で実施します。
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 50% 授業内の質疑応答やアクティビティへの参加態度などを評価します。
2 試験 Exam 50% 期末プレゼンテーションとして、本科目で学んだ歴史的な知見について、受講生自身の日本語教育実践、あるいは、研究といかに関わりを持つか、また、理論的枠組みをいかに活用することができるかに関するプレゼンテーション形式の試験を実施します。
メッセージ/Message
やむを得ない事情を除き、⽋席が3分の1(5回)を超えた場合は、成績評価の対象となりません。