講義内容詳細:東洋史特講(1)

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 東洋史特講(1)
英文科目名/Course Title (English) Lecture on Oriental History (1)
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 青木 敦
英文氏名/Instructor (English) AOKI Atsushi

講義概要/Course description
この授業は、南宋の法体系、つまり宋代北宋元豊以降敕令格式について理解を深める。それを元に『慶元条法事類』『清明集』など宋代の法制史料を実際に読み込む。実際には毎回出席を兼ねて、漢文訳・事項解説・疑問点整理などのレポートを、原則授業当日中に提出。原則、毎週提出物がある(受講者数による)。

講義に則した内容を反映させて、毎回の提出物・レポートを作成(評価対象)し、それにより唐宋の法律体系を、明清のそれと比較しつつ、理解するのが目的である。2020年度のこの授業は、数度課したレポートの1回が、内容(字数・指示に従ったか)により、受講者の1/4が不合格となっている。レポートは高度な内容を求められるので、それに対応して欲しい。

成績については出席も重視し、2度以上(4月の履修登録までの期間はカウントしない)欠席・または提出物の不提出があれば、不可になる(受講者数による)。



なお、現実にどのような授業運営が可能かは、受講者数などに大きく依存するため、授業体勢の構築状況に応じて、下記の授業回と内容、授業方法は、柔軟に対応させる。また、人数によりこの授業概要も変更を余儀なくされる。受講者数が少ない場合には、より詳細な評価が可能となり、1度あたりの意味がことなるため、レポート等の提出回数などが減る。

達成目標/Course objectives
唐の律令格式、ことに唐末五代から北宋にかけての「格」の果たした役割を理解し、また宋代元豊以降敕令格式についての移り変わりを理解するとともに、『慶元条法事類』『吏部条法』など宋代の法制史料を実際に読めるようになる。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
①日本語古文文法によって古典漢文訓読を行う能力があること。授業中、担当者は書き下しを発表する。
②宋代元豊以降敕令格式についての基礎知識を有すること。



授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 初回のみオンライン(オンデマンド)で行う。
一例としての下記の資料を読んでいくこの授業の授業計画などをも示すことがある。


『通考』19征榷考六「經總制錢」
四月、臣僚言、賦入之利莫大於雜税。茶鹽出納之閒、每貫增頭子錢五文、歲入不少。而財用司言、茶鹽已復鈔價、其頭子錢、難以增添、而諸路州縣出納、係省錢所收頭子錢、依節次指揮、每貫共收錢二十三文省、内一十文省、作經制起發上供、餘一十三文、並充本路州縣并漕司支用。今欲、令諸路州縣雜税出納錢、於每貫見收頭子錢上、量行增添、共作二十三文足、除漕司并州舊來合得一十三文省外、餘盡併入經制窠名帳内、起發補助軍需。尚書省又言、耆戸長雇錢并抵當庫椿四分息錢、轉運移用、錢勘合朱墨錢出賣、係官田舍錢及赦限内典賣牛畜 等印契税錢進獻納貼錢常平司七分錢茶鹽司袋息錢並令諸路州縣樁管應辦軍期而總 制司又言人戸税賦畸零如析居異財絹綿零至一寸一錢者亦收一尺一兩米零至一勺一 抄者亦收一升之類並與折納至於二廣福建江東西路免役一分寬剩錢若無災傷減閣並 令發付行在及兩浙西路役人雇錢除歲用應副外大軍支用

事前学習/Preparation 『文献通考』について調べておく。また上記の漢文を読めるように、辞書(漢和辞典が手元になければ、ネット検索)を見て、予習しておく。
事後学習/Reviewing 授業時間内に、教員の解説・資料を参考に、指示された数行の日本語訳(現代日本語訳・訓読)を当日中に、コースパワーで提出。
2
授業計画/Class 唐宋の法体系概観①
第1回め授業であつかった史料がいかなる意味を持つか、いか説明していきます。
また、前回履修しなかった人の爲に、もう一度前回の史料について説明します。その人たちは、授業時間内に、教員の解説・資料を参考に、指示された数行の訳(現代日本語訳・訓読)を作成します。
事前学習/Preparation 文献通考その他の宋代の諸史料について把握しておく。
事後学習/Reviewing 授業で取り上げられた部分についての書き下し、あるいは授業中示した課題(『慶元条法事類』について、など)を約500字程度にまとめて当日中に送信。
なお、次回以降の授業でも、このような小さなレポート形式の提出を行うが、詳細は授業で示す。

また前回受講しなかった人は、前回の分の訳(現代日本語訳・訓読)を作成し、当日中に提出。
3
授業計画/Class 唐宋の法体系概観②
事前学習/Preparation 五代の格敕などについて調べる。
事後学習/Reviewing 格敕などについてよくまとめる。
4
授業計画/Class 上記『文献通考』と対応する『慶元条法事類』場務式の読解
テキスト:某路提點刑獄司/今供申本路諸州軍某年某季應干收支經制錢物文帳本司攢類到下項須至供申者/一諸州軍数/某州/一收/經制錢若干/諸色頭子錢若干/省司諸色厤內應出納過錢物共計錢若干每一貫文省合收舊經制錢一十文省量添激賞錢一十文足/分撥漕司錢五文五釐省本季內收到錢若干/舊經制頭子錢收到若干/稅賦輸納收到錢若干…/官員請職田錢米收到錢若干(內職田若有係常平田土即于常平頭子錢開說)/錢若干貫伯收到錢若干/米若干每石價錢若干收到錢若干/應雜出納過錢物計錢若干本季內收到錢若干(謂酒稅楼店務及其餘倉場庫務應干出納錢物皆是)/錢若干貫伯收到錢若干/物計價錢若干收到錢若干
事前学習/Preparation 漢文の予習
事後学習/Reviewing 第1回授業と同様に、指定された部分について訳を作成し、当日中に提出。
5
授業計画/Class 元豊・煕寧改革について
事前学習/Preparation 王安石新法、新法などについて調べる(提出の方法などについては前回までの授業で指示)
事後学習/Reviewing 教員の指示に従い、当日中にレポート提出。なお、この形式でのレポート提出については、次週以降も続けるので、指示に従ってください。
6
授業計画/Class 元豊・煕寧時期の法制度の変化
事前学習/Preparation 天聖令など北宋前期の編敕から元豊敕令格式に至る変遷を予習する。
事後学習/Reviewing 王安石改革とはなんであったか、まとめる。
7
授業計画/Class 敕と令の関係
事前学習/Preparation 敕、令、格、式についてまとめる。
以下の史料を読んでおく。
『宋会要輯稿』職官56-26「官制別錄」大觀2年3月15日には 吏部狀、「準尚書省劄子、奉御筆、『寄禄官在神考時不分左右、曩雖釐正、猶有存者。若盡去之、則序爵制禄、等級差少、人易以及。可令有司條畫以聞』。付本部施行、謹具下項、一、元豐寄禄官格、開府儀同三司、特進、金紫光禄大夫、銀靑光禄大夫、光禄大夫、正議大夫、通議大夫、太中大夫、中大夫、中散大夫、朝議大夫、朝請大夫、朝散大夫、朝奉大夫、朝請郎、朝散郎、朝奉郎、承議郎、奉議郎、通直郎、宣德郎、宣義郎、承事郎、承奉郎、承務郎。一、紹聖二年給事、中書舍人看詳一項、寄禄官分左、右。竊見先帝以文散官定為寄禄法、寔一代之新制、而議者淺陋、妄加穿鑿、遂請分為左、右。元法本緣禄秩、不為流品、今合除去若謂正議大夫、光禄大夫元是六曹及左右轄、於轉法有未盡、合行完補、即乞存此三等分左、右外、餘並廢罷。仍朝議大夫、中散大夫亦依舊存左右字、以分雜出身及無出身人、依舊作兩資遷轉。一、紹聖三年十一月十四日、中書省勘會元豐四年正月九日中書省劄子、應大兩省待制已上並轉朝議大夫、中散大夫、中大夫三官。至元祐三年二月九日敕、寄禄官並置左、右字、因此許帶職人待制已上、職事官諫議大夫以上、自朝議大夫便轉中大夫、比其他出身人超越一官遷轉。近降紹聖二年三月二十六日敕、正議大夫、光禄大夫、銀靑光禄大夫分左、右、餘並廢罷外、仍朝議大夫、中散大夫亦依舊作兩資遷轉、其朝議轉中大夫一節亦合廢罷。奉聖旨依擬定、其已轉過之人更不追改。一、崇寧四年三月十九日、朝奉大夫、試中書舍人、兼直學士院林攄狀、承尚書省劄子、據吏部狀、勘會寄禄官分左、右字、係元祐年指揮、雖已焚毀不行、緣卻有紹聖二年内正議大夫、光禄大夫、銀靑光禄大夫幷朝議大夫、中散大夫分左右指揮、及臣僚上言欲依官制不分左、右字等、奉旨審覆省、寺、監諸司元祐法官、別立新法。今參酌脩立下條、
①「諸朝議、中散、正議、光禄、銀靑光禄大夫應轉官者、各以左右為兩資轉、先右而後左。有出身人、應轉朝議、中散大夫者、更不轉右、止作一官轉。即朝請大夫、至中散大夫、仍各理七年磨勘」、
右入『吏部考功令』(吏部はもと戸部に作る)。
奉聖旨依。一、大觀二年二月二十一日敕、中書省、吏部供到狀、檢會崇寧四年三月十九日敕條、即不該載帶職及兩制已上無出身人超轉之文、其元祐法帶職幷任諫議已上職事官轉左字指揮已焚毀下行事。檢會熙寧中書條、應帶館職及侍講、天章閣侍講、崇政殿說書並轉左曹。其無出身人帶上件職者、依進士帶職人例轉。今看詳脩立下條、
②「諸朝議、中散、正議、光禄、銀靑光禄大夫應轉官者、各以左右為兩資轉、先右而後左。有出身及無出身而見帶直祕閣已上職、或任諫議大夫已上、應轉朝議、中散大夫者、更不轉右、止作一官轉。即朝請大夫、至中散大夫、仍各理七年磨勘」。
右入『中書省吏部考功令』、衝改『崇寧四年三月十九日敕』全條不行」從之。
事後学習/Reviewing 自分の誤りを(自分のノートなどで)直しておく。
8
授業計画/Class 敕令格式の成立と展開
事前学習/Preparation 前週の授業中の指摘を生かし、上述の史料を読み直す。
その際、吏部考功令と中書吏部考功令の差異に注意する。

元祐時期において揺り戻しがなかったかどうか、検討する。
事後学習/Reviewing 元祐とはどういう時代であったか、振り返る。
9
授業計画/Class 唐律と北宋初期の『宋刑統』
また吏部考功令と中書吏部考功令の関係について。
事前学習/Preparation 宋刑統にあって唐律にないものを調べておく。
事後学習/Reviewing 宋刑統の特質とは何か、考える。
10
授業計画/Class 唐令と天聖令
事前学習/Preparation 唐令では行われていて天聖に行われなくなった法令について明らかにする。
事後学習/Reviewing 各種文献を探し、復習する。
11
授業計画/Class 『慶元条法事類』とは何か①

事前学習/Preparation 事類とは何か、五代から南宋に至る変遷を調べる。
事後学習/Reviewing 法典と事類の関係についてまとめる
12
授業計画/Class 『慶元条法事類』とは何か②
事前学習/Preparation 実際にどのような条文があるか、見ておく。
事後学習/Reviewing その訓読が出来るようにしておく。
13
授業計画/Class 法律条文史料としての『名公書判清明集』①
事前学習/Preparation 実際に『名公書判清明集』を読み込んでおく。
事後学習/Reviewing そこから条文を抜き出す。
14
授業計画/Class 法律条文史料としての『名公書判清明集』②
事前学習/Preparation 判語と条法事類に登場する法律条文を洗い出しておく。
事後学習/Reviewing 抜けを補う。
15
授業計画/Class 総まとめ
事前学習/Preparation これまでの授業で習ったことを全て頭に入れてくる。
事後学習/Reviewing テストで出来なかった事を再度復習する。
授業方法/Method of instruction
初回を除き、対面を基本とする。
通常のゼミ形式によって行う。しかし、参加者が20名以下の場合、各参加者との相談の上、月に数回をメドに、オンライン形式を取り入れる。

漢文読解と、それにまつわる諸事項の説明が主体。
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 30% 枚数および内容を重視する。受講人数による。
2 試験 Exam 60% 受講人数による
3 その他 Others 10% 出席点
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版年
Published year
 
1 青木敦 宋代民事法の世界 2014
メッセージ/Message
専門的な内容なので、受講にあたっては唐宋の法制史についての基礎知識、具体的には唐の律令格式、宋代の編敕、および元豊以降の敕令格式、条法事類などについての知識が必要です。単位を取るというより、最先端知識を身につける、という覚悟で履修すれば、得るところが大きいと思います。1つの基準として、上記第1回、第4回の史料が読めれば単位は取れる、と考えてみてください。
キーワード/Keywords
宋代     法制史