講義内容詳細:入門演習

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 入門演習
英文科目名/Course Title (English) Introductory Seminar
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 大沢 光
英文氏名/Instructor (English) OSAWA Hikaru

講義概要/Course description
  条例を創るという作業を通じて、法律学の視点から、社会的な問題を考え、論じ、発表する(“書く”ことを含む)訓練をします。 

(1)都道府県や市町村は条例を定めることができます。近年では、自治基本条例や議会基本条例といった、「大事なことなので条例で決めた」という趣旨の条例や、特産品の梅干しでおにぎりを食べよう、日本酒や焼酎で乾杯しようといった「特産品の消費をみんなで奨励しよう」という趣旨の条例など、必ずしも住民の権利を制限したり、義務を課したりする内容ではない条例が幅広く制定されるようになっています。もっとも、条例を通じてでなければ行うことができないと考えられているのは、住民の権利を制限し、義務を課す行政活動です。条例とは、住民の権利を制限し義務を課す行政活動を根拠づける規範である、ということをまずはしっかりおさえて置く必要があります(「“条例”による行政の原理」)。それゆえ、条例は、それを制定する必要性・正当性、つまり根拠づけがきちんとなければなりません(これを「立法事実」と言います)。演習では、皆さんが創ってみたい条例を自由に創っていただく予定ですが、どのような社会問題に対し、どのような立法事実があって、どのような内容の条例を創りたいのか(条例の目的)をしっかり考えていただきたいと思っています。といっても、いきなり一から創るのは難しいと思いますので、現在各地で作られている条例や裁判で争われた条例などをモデルにして、考えていきたいと思います。
 昨年度の演習では、現実の世界の条例などを参考にしつつ、eスポーツ推進条例、住みやすい街と持続可能な社会を目指すための条例(観光政策を推進する条例)、子どもの学習およびスポーツ・文化活動支援条例、要配慮者防災条例、プラスチックごみの削減に関する条例が制定されました。

(2)昨年度は次のような手順で演習を実施しました(皆さんの状況を見つつ、適宜修正します)。
 ①みなさんに、こんな条例を創ってみたい、あるいは解決したい政策課題について、どのような立法事実があるのかを調査したうえで提案していただきます。それらを検討して、2~4人から成るグループに分かれました。
 ②その後、グループごとに、改めて立法事実を調査し、先例や類似の条例、関係する裁判例や学者の議論などを調査して、条例の目的を実現するためにどのような手段(仕組み)を条例に置いたらよいのか、創った条例をいくつかの事例に当てはめてみて、目的を達成できるものになっているか、創ろうとしている条例によって生ずる法的な問題にはどのようなことがありそうか、それをどのように解決するかといった議論をしながら条例を練り上げていきます。条例は新たな制度を構築するものでもあるので、条例案だけでなく、それをどのように運用していくか、制度全体を構想してもらいました。
 ③条例を制定する前に必要な知識(条例とは何か、憲法や法律との関係はどうなっているか、条例が違憲・違法とされた場合はどのような場合か、といった基本的な事柄)については、各自でテキストを読み、レポートしてもらいました。
 ④グループ報告の機会として「議会」を開催し、そこでグループごとに条例案(条文と制度の内容についての資料)を提案していただき、全員で議論(審議)し、最後に投票をしました。毎回、修正すべき点が出てきましたので、議論を受けて修正案も提案していただき、条例を完成させました。
 ⑤最後に、各自、自分たちのグループが創った条例の意義と課題について、③で得た知識も引用しながら、詳細な報告書を提出してもらったほか、演習の成果として、各グループで条例の手引きも作成していただきました。

 こうした作業をする中で、議会資料・判例・法律文献等の法情報の探し方、法律文献や判例の読み方、テーマに沿って得た知識を整理し報告(発表)すること、法律の文言の解釈をすること、法律学的な議論をすること、整理した知識を文章にすること、といったことを学び、訓練します。

(3)上記④のグループ報告は後半に行います。時間があれば、ディベートも取り入れてみたいと思います。

(4)上記⑤に書いたように、グループで報告した内容について、最後に詳細な報告書を提出していただきます。その過程において、得た知識を整理し、それに基づいて論ずるという文章の書き方を学んでいただくことになります。
達成目標/Course objectives
 法律学の思考方法に慣れていただくとともに、学問をするための基本的な作法や力、すなわち、文献・資料の扱い方や発表の仕方、文献の読み方や文章の書き方等の基本を身につけることを目標にします。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
 受講生の皆さんには、基本的にグループで作業をしてもらいます。発表前にはサブゼミも行ってもらいます。
 ◎どんな条例を創ろうか、条例が必要になりそうな社会問題とはどのようなものか、どんな条例が創られているかなど、様々な情報を収集して、どのような条例が創れそうか・創りたいか、いくつか案を考えておいてください。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class ガイダンス、創りたい条例を各自発表する。
事前学習/Preparation 各地の条例で関心があるものを探したり、創ってみたい条例を考えてみる。
事後学習/Reviewing 創りたい条例に類似する条例を探してみる。
2
授業計画/Class 文献・資料検索の実習(図書館のオリエンテーションを受講)
事前学習/Preparation ガクモンノススメを読んでくる。
事後学習/Reviewing 特になし。
3
授業計画/Class 条例とは何かについて知る(判例や法律文献を全員で読む)、文献資料の調査を踏まえてグループ分けをする。
事前学習/Preparation テキストを読む。関心を持つ条例に関わるテーマについて文献調査を行う。
事後学習/Reviewing 講義内容を復習する。
4
授業計画/Class 立法事実を整理する(グループワーク)。
事前学習/Preparation 立法事実について調査し、関連するテーマに関する参考文献・資料を読んでくる。
事後学習/Reviewing 講義内容を復習する。
5
授業計画/Class 立法事実を整理し、条例案を検討する(グループワーク)。
事前学習/Preparation 論文・資料を探して読んでくる。
事後学習/Reviewing 講義内容を復習する。
6
授業計画/Class 条例案を検討する(グループワーク)。

事前学習/Preparation 関連するテーマに関する参考文献・資料を読んでくる。
事後学習/Reviewing 復習する。
7
授業計画/Class 中間発表:グループごとに中間報告をし、意見交換をする。
事前学習/Preparation レジュメや資料を作成し、プレゼンの準備を行う。
事後学習/Reviewing 議論を整理する。
8
授業計画/Class 条例案を検討する(グループワーク)。
事前学習/Preparation 文献資料の調査、理論的な問題点などを探る。
事後学習/Reviewing テーマについて理解を深めるとともに、演習内での議論を整理・復習する。
9
授業計画/Class 条例案を検討する(グループワーク)。
事前学習/Preparation 条例案を検討するための文献資料を読む。
事後学習/Reviewing 演習内での議論を整理・復習する。
10
授業計画/Class 成果発表その1:入門演習議会において、条例案を提案し、審議、投票を行う。
事前学習/Preparation 条例案提案のための準備を行う。
事後学習/Reviewing 演習内での議論を整理・復習する。
11
授業計画/Class 成果発表その2:入門演習議会において、条例案を提案し、審議、投票を行う。
事前学習/Preparation 条例案提案のための準備を行う。
事後学習/Reviewing 演習内での議論を整理・復習する。
12
授業計画/Class 成果発表その3:入門演習議会において、条例案を提案し、審議、投票を行う。
事前学習/Preparation 条例案提案のための準備を行う。
事後学習/Reviewing 演習内での議論を整理・復習する。
13
授業計画/Class 成果発表その4:入門演習議会において、条例案を提案し、審議、投票を行う。
事前学習/Preparation 条例案提案のための準備を行う。
事後学習/Reviewing 演習内での議論を整理・復習する。
14
授業計画/Class 成果発表その5:入門演習議会において、条例案を提案し、審議、投票を行う。
事前学習/Preparation 条例案提案のための準備を行う。
事後学習/Reviewing 演習内での議論を整理・復習する。
15
授業計画/Class 予備日
 成果発表その6:入門演習議会において、条例案を提案し、審議、投票を行う。
 改正後の条例の手引き作成のためのグループディスカッションを行う、など。 
事前学習/Preparation 条例案提案のための準備を行う。手引を作成するための資料等を作成する。
事後学習/Reviewing 演習内での議論を整理・復習する。
授業方法/Method of instruction
 授業計画の通りです。 進行計画は、皆さんの状況をみながら、適宜、変更していきます。
 Webex Teamsを利用して、グループごとに、レジュメ・資料の事前配布などを行います。中間発表・成果発表の際は、事前に配布されたレジュメ・資料を読んで、議論に参加してください。
成績評価方法/Evaluation
1 100% 文献調査・準備やグループワークへの取り組み度・議論への貢献度:40%、発表の内容:25%、発言回数:20%、報告書:15%
教科書/Textbooks
 著者名
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コメント
Comments
1 青山学院大学法学部・法学会 AOYAMA LAW ガクモンのススメ 1年次に配布されたものです。学生ポータル上でも期間限定で掲載されています。 その他、演習中に適宜紹介します。
メッセージ/Message
 演習内容からすると、多様な行政領域の法(例えば、社会保障法、環境法、都市法など)を参照する必要が出てくることに加え、行政組織内部の問題から憲法や政治の問題、さらには日本社会のあり方にまで考察が及ぶことになるでしょうから、こうした問題にまで視野を拡げて問題を考えることにチャレンジしようという意欲をもって受講していただきたいと思います。なお、「公共政策と法」(1年次~:前期)は、行政法現象から社会問題を考えるきっかけになると思いますので、受講しておいていただくと、演習への参加がよりスムーズになると思います。