講義内容詳細:労働法D

戻る
年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 労働法D
英文科目名/Course Title (English) Labor Law D
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 細川 良
英文氏名/Instructor (English) HOSOKAWA Ryo

講義概要/Course description
 「公務員(とりわけ国家公務員)には、労働関係法令が原則として適用されない」という説明がなされることが少なくありません。確かに、日本の現行法では、国家公務員法によって労働基準法は国家公務員には適用されないとされていますし、労働組合法が定める権利についても強い制限が課されています。
 しかし、公務員も憲法28条が定めている「勤労者」に含まれていることは否定されませんし、労働基準法は国や地方公共団体を適用対象に含めており、公務員に対する適用を除外しているわけではありません(地方公務員に対しては、労働基準法は原則として適用されます)。このように、公務員は、「労働法が適用されない」のではなく、その「職務の公共性という観点から適用について制約が設けられている」と理解すべきでしょう。
 本講義では、公務労働に対する労働法の適用のあり方について、公務労働の特殊性や近年の公務員制度改革の動向を踏まえつつ、考えていきたいと思います。
 なお、シラバスに記されている授業計画は、あくまでもシラバス入稿時点(2021年2月)での予定になります。公務労働をめぐる状況や、2021年度の講義の実施体制、講義の進行度合いや政策の動向などを踏まえて、講義の順序や内容について変化が生じる場合がありますので、承知しておいてください。
達成目標/Course objectives
概要にも記したとおり、本講義は、公務労働における労働法の適用の在り方を考えることを目的とします
 そこで、本講義では、公務労働に対する労働法の適用に関する大枠について解説します。
 その上で、公務労働において生じる様々な状況について、どのようなルールが適用されているのか、公務としての特殊性がどのように反映され、どのような問題を生じさせているのか、公務員制度改革などの最近の動向も踏まえながら、検討していきたいと思います。
 将来的に公務関係に進むことを考えている人に、公務員としての働き方について考えてもらうことはもちろん、行政の在り方に関心を持ち、考えてもらうことを目標にしたいと思います。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
事前の履修を義務付ける科目はありません。ただし、労働法についての基本的な知識を前提として有していた方が理解が進みやすいのは事実ですので、労働法A、労働法B、労働法Cの各科目を事前に、または同時並行で履修することを推奨します。
また、行政法に関連する領域の科目を履修することもあわせて推奨します。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 『ガイダンス~公務員と労働関係法令』

公務労働を考えるうえで、前提として理解しておく必要があるのは、「公務員に対して労働法は適用されるのか、されないのか」という問題です。この基本的な前提を理解するために、公務員に対する労働関係法令の適用についての概要を解説します。
*なお、本講義が予定通り「対面授業」で実施される場合であっても、この回のみ、「オンディマンド型」の遠隔授業で実施する予定です。
事前学習/Preparation 特にありません。公務労働、校務員、労働法に対する関心を持って講義に来てもらえればと思います。
事後学習/Reviewing 講義を聞いて感じたこと、疑問に思ったことをまとめてみて下さい。Course Power等を通じて提出してもらえれば、成績評価の際の加点事由とします。
2
授業計画/Class 『地方公務員への労働基準法の適用』

地方公務員は、一方では国家公務員に準拠するルールが適用されるとしつつ、他方では、労働基準法令が原則として適用されるとされています。この回では、こうした地方公務員に対する労働基準法令の適用関係のあり方について考えたいと思います。
事前学習/Preparation 事前に、参考文献を示しておきますので、目を通したうえで、分からないところや疑問に思うことをまとめておいて下さい。事前に担当講師に送ってもらえれば、可能な限り講義中に触れるようにします。また、これについても成績評価の際の加点事由とします。
事後学習/Reviewing 講義を聞いて感じたこと、疑問に思ったことをまとめてみて下さい。Course Power等を通じて提出してもらえれば、成績評価の際の加点事由とします。
3
授業計画/Class 『公務員の採用-地方公務員における変化を素材に』

少子化の進展に伴う人手不足が指摘される一方、人件費の削減の波がやってくるなかで、公共部門においても職員の採用の在り方に変化が生じていることが指摘されています。この回では、地方自治体における変化を素材に、公務員の採用システムについて考えてみたいと思います。
事前学習/Preparation 事前に、参考文献を示しておきますので、目を通したうえで、分からないところや疑問に思うことをまとめておいて下さい。事前に担当講師に送ってもらえれば、可能な限り講義中に触れるようにします。また、これについても成績評価の際の加点事由とします
事後学習/Reviewing 講義を聞いて感じたこと、疑問に思ったことをまとめてみて下さい。Course Power等を通じて提出してもらえれば、成績評価の際の加点事由とします。
4
授業計画/Class 『官僚の人事システム』

国家公務員については、民間とは異なる人事システムをとられているということが何となくイメージされているかもしれません。しかし、実際に国家公務員がどのような人事システムの下で管理されているのか、その実態は意外に知られていないのではないかと思います。この回では、日本の国家公務員の人事システムについて考えたいと思います。
事前学習/Preparation 事前に、参考文献を示しておきますので、目を通したうえで、分からないところや疑問に思うことをまとめておいて下さい。事前に担当講師に送ってもらえれば、可能な限り講義中に触れるようにします。また、これについても成績評価の際の加点事由とします
事後学習/Reviewing 講義を聞いて感じたこと、疑問に思ったことをまとめてみて下さい。Course Power等を通じて提出してもらえれば、成績評価の際の加点事由とします。
5
授業計画/Class 『官僚の出向人事』

国家公務員は、採用から退職までずっと霞ヶ関に引きこもってキャリアを積むのかと言えばそうではありません。多くの国家公務員は、そのキャリア形成の過程で、地方自治体を筆頭に、多くの期間に出向します。この回では、公務員の「出向」について考えてみたいと思います。
事前学習/Preparation 事前に、参考文献を示しておきますので、目を通したうえで、分からないところや疑問に思うことをまとめておいて下さい。事前に担当講師に送ってもらえれば、可能な限り講義中に触れるようにします。また、これについても成績評価の際の加点事由とします
事後学習/Reviewing 講義を聞いて感じたこと、疑問に思ったことをまとめてみて下さい。Course Power等を通じて提出してもらえれば、成績評価の際の加点事由とします。
6
授業計画/Class 『天下り』

公務員の天下りについては、しばしばメディア等からの批判の対象にさらされます。他方で、民間企業においても退職した労働者の再就職を援助することは珍しいことではありませんし、そもそも天下りにはどのような弊害があるのか、天下りの実態がどうなっているのかという点については、意外に知られていないではないでしょうか。この回では、「天下り」について、その実態と問題点を再検討してみたいと思います。
事前学習/Preparation 事前に、参考文献を示しておきますので、目を通したうえで、分からないところや疑問に思うことをまとめておいて下さい。事前に担当講師に送ってもらえれば、可能な限り講義中に触れるようにします。また、これについても成績評価の際の加点事由とします。
事後学習/Reviewing 講義を聞いて感じたこと、疑問に思ったことをまとめてみて下さい。Course Power等を通じて提出してもらえれば、成績評価の際の加点事由とします。
7
授業計画/Class 『公務員の再任用』

現在、民間企業においては、定年を60歳と定め、定年退職後に再雇用したうえで65歳まで継続して雇用するという実務が普及しています。公務員についても同様に定年制度が存在しますが、その後の雇用継続についてはどうなっているでしょうか。この回では、公務員の定年後の再任用について検討します。
事前学習/Preparation 事前に、参考文献を示しておきますので、目を通したうえで、分からないところや疑問に思うことをまとめておいて下さい。事前に担当講師に送ってもらえれば、可能な限り講義中に触れるようにします。また、これについても成績評価の際の加点事由とします。
事後学習/Reviewing 講義を聞いて感じたこと、疑問に思ったことをまとめてみて下さい。Course Power等を通じて提出してもらえれば、成績評価の際の加点事由とします。
8
授業計画/Class 『公務員制度改革(1)』

1990年代後半から始まった公務員制度改革の動きは、さまざまな曲折を経ながら、2014年に国会公務員法改正法という形で、一つの区切りを迎えることになりました。この回では、2014年に成立した公務員制度改革法の内容と、その経緯について解説したいと思います。
事前学習/Preparation 事前に、参考文献を示しておきますので、目を通したうえで、分からないところや疑問に思うことをまとめておいて下さい。事前に担当講師に送ってもらえれば、可能な限り講義中に触れるようにします。また、これについても成績評価の際の加点事由とします。
事後学習/Reviewing 講義を聞いて感じたこと、疑問に思ったことをまとめてみて下さい。Course Power等を通じて提出してもらえれば、成績評価の際の加点事由とします。
9
授業計画/Class 『公務員制度改革(2)』

2014年に成立した公務員制度改革に関する法改正は、公務員制度の在り方について大きな変化をもたらすものでした。この回では、公務員制度の改革における、公務員の人事管理のあり方に関する改革について考えてみたいと思います。
事前学習/Preparation 事前に、参考文献を示しておきますので、目を通したうえで、分からないところや疑問に思うことをまとめておいて下さい。事前に担当講師に送ってもらえれば、可能な限り講義中に触れるようにします。また、これについても成績評価の際の加点事由とします。
事後学習/Reviewing 講義を聞いて感じたこと、疑問に思ったことをまとめてみて下さい。Course Power等を通じて提出してもらえれば、成績評価の際の加点事由とします。
10
授業計画/Class 『公務員制度改革(3)』

2014年に成立した公務員制度改革に関する法律は、公務員制度の在り方に大きな変化をもたらす可能性を秘めています。この回では、今回の公務員制度改革による公務員の勤務条件決定をめぐる変化と将来的な展望について考えてみたいと思います。
事前学習/Preparation 事前に、参考文献を示しておきますので、目を通したうえで、分からないところや疑問に思うことをまとめておいて下さい。事前に担当講師に送ってもらえれば、可能な限り講義中に触れるようにします。また、これについても成績評価の際の加点事由とします。
事後学習/Reviewing 講義を聞いて感じたこと、疑問に思ったことをまとめてみて下さい。Course Power等を通じて提出してもらえれば、成績評価の際の加点事由とします。
11
授業計画/Class 『政治任用』

近年、「政治主導」という言葉に象徴されるように、政治のリーダーシップが強調されるようになり、それに伴って、日本の公務員の人事についてもいわゆる政治任用が多くみられるようになってきました。一方で、行政には中立性が求められるという観点からは、課題も指摘されています。この回では、公務員の政治任用の在り方について考えたいと思います。
事前学習/Preparation 事前に、参考文献を示しておきますので、目を通したうえで、分からないところや疑問に思うことをまとめておいて下さい。事前に担当講師に送ってもらえれば、可能な限り講義中に触れるようにします。また、これについても成績評価の際の加点事由とします。
事後学習/Reviewing 講義を聞いて感じたこと、疑問に思ったことをまとめてみて下さい。Course Power等を通じて提出してもらえれば、成績評価の際の加点事由とします。
12
授業計画/Class 『公務員と集団的労働関係』

公務員は労働組合を結成し、ストライキをすることができるのか。この問題は、現在でこそ正面から取り上げられることは少なくなりましたが、古くから存在するとても重要な問題です。この回では、公務員の組合活動に関する権利の在り方について考えてみたいと思います。
事前学習/Preparation 事前に、参考文献を示しておきますので、目を通したうえで、分からないところや疑問に思うことをまとめておいて下さい。事前に担当講師に送ってもらえれば、可能な限り講義中に触れるようにします。また、これについても成績評価の際の加点事由とします。
事後学習/Reviewing 講義を聞いて感じたこと、疑問に思ったことをまとめてみて下さい。Course Power等を通じて提出してもらえれば、成績評価の際の加点事由とします。
13
授業計画/Class 『地方公務員の組合活動と不当労働行為』

公務員の組合活動を厳しく制限する日本の法制のもとでも、労働組合の結成そのものが禁止される国家公務員とは異なり、地方公務員は労働組合を結成し、一定の範囲で組合活動を行うことが認められています。そして、近年、地方公務員の労働組合と自治体(というよりは労働組合を敵視する首長)との間での紛争が多くみられるようになっています。この回では、地方公務員の組合活動と、これに対する当局の介入の問題について検討します。
事前学習/Preparation 事前に、参考文献を示しておきますので、目を通したうえで、分からないところや疑問に思うことをまとめておいて下さい。事前に担当講師に送ってもらえれば、可能な限り講義中に触れるようにします。また、これについても成績評価の際の加点事由とします。
事後学習/Reviewing 講義を聞いて感じたこと、疑問に思ったことをまとめてみて下さい。Course Power等を通じて提出してもらえれば、成績評価の際の加点事由とします。
14
授業計画/Class 『非常勤公務員をめぐる労働問題(1)-非常勤公務員の賃金』

非常勤の公務員は、本来、公務員法で予定されていたものではなく、ごく例外的な存在です。他方で、近年は公共部門における非常勤職員の活用が大幅に広がっており、そのことが多くの問題や矛盾を引き起こしています。この回では、非常勤公務員をめぐる問題のうち、賃金などの待遇をめぐる問題について考えます。
事前学習/Preparation 事前に、参考文献を示しておきますので、目を通したうえで、分からないところや疑問に思うことをまとめておいて下さい。事前に担当講師に送ってもらえれば、可能な限り講義中に触れるようにします。また、これについても成績評価の際の加点事由とします。
事後学習/Reviewing 講義を聞いて感じたこと、疑問に思ったことをまとめてみて下さい。Course Power等を通じて提出してもらえれば、成績評価の際の加点事由とします。
15
授業計画/Class 『非常勤公務員をめぐる労働問題(2)-非常勤公務員の雇用問題』

近年、公共部門における非常勤職員の活用が広がっていることに伴い、多くの問題が引き起こされています。この回では、非常勤公務員をめぐる問題の中でも最も深刻な問題である、非常勤公務員の雇用喪失をめぐる問題について考えます。
事前学習/Preparation 事前に、参考文献を示しておきますので、目を通したうえで、分からないところや疑問に思うことをまとめておいて下さい。事前に担当講師に送ってもらえれば、可能な限り講義中に触れるようにします。また、これについても成績評価の際の加点事由とします
事後学習/Reviewing 講義を聞いて感じたこと、疑問に思ったことをまとめてみて下さい。Course Power等を通じて提出してもらえれば、成績評価の際の加点事由とします。
授業方法/Method of instruction
対面式の一般的な講義形式で実施します。現在のところ、講義の概要を記したレジュメを配布した上で、パワーポイントを用いた講義を実施する予定です。ただし、諸般の事情により大学から「オンデマンド型」の円買う授業での実施を支持される可能性があります。ご了承ください。
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 100% 現在のところ、期末に実施される定期試験のみで成績評価を実施する予定です。授業計画の欄に記してあるとおり、講義の事前・事後における任意のペーパーの提出を加点事由とする予定です。とはいえ、あくまでも「加点事由」です。成績評価の基本は、定期試験の評価によります。
教科書/Textbooks
 コメント
Comments
1 指定の教科書はありません。
講義の中で、適宜関連する条文を参照することがありますので、六法等を持参するなど、いつでも条文が参照できる態勢で講義に参加するようにしてください。なお、労働関係の法令集としては、『労働六法』(旬報社)が収録法令や参考情報が多くオススメです。とはいえ、一般的な六法をお持ちであれば、そちらを利用してかまいません。
メッセージ/Message
公務労働は、労働法の中でもややマイナーな領域に属するかもしれません。しかし、メディアなどで取り上げられることは多くないかもしれませんが、公務員制度改革に加え、公務における非正規労働問題など、公務労働をめぐっては現在さまざまな問題が浮かび上がり、改革の必要性に迫られています。将来的に公務員などの公共部門に進むことを考えている人はもちろん、行政のあり方に関心がある人など、幅広い人の参加をお待ちしています。