講義内容詳細:法学・政治学演習ⅡA

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 法学・政治学演習ⅡA
英文科目名/Course Title (English) Seminar (Law, Politics) ⅡA
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 松本 英実
英文氏名/Instructor (English) MATSUMOTO Emi

講義概要/Course description
演習テーマ「西洋法史におけるpractice」  西洋における弁論の伝統を通して広く法の歴史と現在を考察します。法廷弁論と西洋法の発展とは切っても切り離せない関係にありますが、多くの法廷弁論作品は日本ではあまり知られていませんし、法の考察の素材としても十分に研究されてきたとはいえません。
 例えば古代ギリシアの法廷弁論。二千三百年も前の昔だから、裁判も単純なのだろう、などと侮るなかれ。弁論を通して見えてくるものは、現代の国際ビジネスも顔負けの複雑な取引関係です。しかも、これをめぐる紛争の中で、現在私たちが用いている様々な法概念・法制度(あるいは類似するもの)が生みだされたり、生成途上であったりするようなのですから、弁論を読めば読むほど、知れば知るほど、自らの法の知識や理解の仕方を問い直され、これほどスリルと刺激に満ちたものはありません。公法とは私法とは何か、市民とは何か、貸借とは、信用とは何か、といった、法学入門で学んだ基本を、もういちど一から自分の頭で考え直さなければなりません。
 本演習では、いくつかの法廷弁論作品を読み、分析し、そこからゼミ生独自の展開を考えてもらいます。皆で演劇化するもよし、反対弁論を創作するもよし、アイデアを練り、様々な可能性に挑戦してほしいと思います。本演習テーマのタイトルにあるpracticeとは、第一に法廷での実践・実務である弁論を指していますが、同時に皆さんそれぞれのpracticeにつなげてほしい、という意味をこめています。
 本年度はギリシアの弁論作品(邦訳)から始める予定ですが、フランス語でフランスの法廷弁論を読もうという気概のある学生がいれば、近世以降の法廷弁論も演習の対象にしたいと思います。近代西洋法史を受講した人は、「西洋近代は古代から生まれた」という理解を踏まえ、古代法廷弁論から近代法廷弁論を介して日本法へ、というこの流れも捉え易いでしょう。とはいえ、近代西洋法史の受講が条件ではありません。
達成目標/Course objectives
日本法の土台となっている西洋法の淵源をたどり、日本法と比較する。歴史上に実際に生み出された弁論に直接触れ、その法的な意味を考える。

履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
民法をしっかり学んでおくこと。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class はじめに オンライン授業(オンデマンド型)での実施
昨年度の演習を振り返り、今後の進め方の詳細を決定する。
事前学習/Preparation Course Powerで本演習を確認し、お知らせメールが配信されるように設定を確認しておく。
事後学習/Reviewing 演習で紹介した文献、課題を読む。
2
授業計画/Class 卒業論文の方向性を探る(1)
事前学習/Preparation 課題文献(例:「混合法としての日本法の考察」(松本英実、2020))を読む。
事後学習/Reviewing 演習内容を振り返り、課題文献を読む。
3
授業計画/Class 卒業論文の方向性を探る(2)
事前学習/Preparation 課題文献(検討例:松本英実「ボワソナードとボギシッチ」(2020))を読む。
事後学習/Reviewing 演習内容を振り返り、課題文献を読む。
4
授業計画/Class 卒業論文の方向性を探る(3)
事前学習/Preparation 課題文献(例:「フランス古法の世界」(松本英実2020))を読む。
事後学習/Reviewing 演習内容を振り返り、課題文献を読む。
5
授業計画/Class 卒業論文の方向性を探る(4)
事前学習/Preparation 課題文献(例:ベイカー・葛西編『イギリス・コモン・ロー入門』(2020))を読む。
事後学習/Reviewing 演習内容を振り返り、課題文献を読む。
6
授業計画/Class 卒業論文の方向性を探る(5)
事前学習/Preparation 課題文献(デモステネス弁論集)を読む。
事後学習/Reviewing 演習内容を振り返り、課題文献を読む。
7
授業計画/Class 卒論構想発表
事前学習/Preparation 発表の準備。
事後学習/Reviewing 発表を批判的に分析する。
8
授業計画/Class 卒論準備:参考文献の検討
事前学習/Preparation 参考文献一覧を作成してみる。
事後学習/Reviewing 演習で紹介した文献を読む。
9
授業計画/Class 卒論準備:構成を検討する
事前学習/Preparation 卒論の目次を作成してみる。
事後学習/Reviewing 演習で紹介した文献を読む。
10
授業計画/Class 卒論準備:論文導入を検討する
事前学習/Preparation 論文の序文を書いてみる。
事後学習/Reviewing 演習で紹介した文献を読む。
11
授業計画/Class reflection2 レポート指示・相談
事前学習/Preparation これまでの演習内容を振り返り、課題文献を読む。
事後学習/Reviewing 演習内容を振り返り、課題文献を読む。レポート作成
12
授業計画/Class 卒論準備:論証の山場を検討する
事前学習/Preparation 文献・資料を用いた論証部分(資料の分析と評価・批判)を書いてみる。
事後学習/Reviewing 演習で紹介した文献を読む。レポート作成
13
授業計画/Class 卒論準備:結論を検討する
事前学習/Preparation 結論部分を書いてみる
事後学習/Reviewing 演習で紹介した文献を読む。レポート作成
14
授業計画/Class 卒論準備:表題を検討する
事前学習/Preparation 卒論のタイトルを熟考する。
事後学習/Reviewing 発表準備。これまでの検討事項をパワーポイントにまとめる。
15
授業計画/Class まとめ:卒論中間発表
事前学習/Preparation パワーポイント作成、疑問点、質問事項を明確にする。
事後学習/Reviewing 総復習、演習で紹介した文献を読む。レポート作成、提出。
授業方法/Method of instruction
本授業は原則として対面授業(通常型)で実施します。
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 70%
2 レポート Report 30%
教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
1 デモステネス 弁論集5 京都大学学術出版会 2019 9784814000999 5000円+税
参考書/Reference books
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1 フランソワ・アルトーグ著 ; 葛西康徳, 松本英実訳 オデュッセウスの記憶 東海大学出版部 2017.3 9784486019503 4800円+税 初版第5刷(2019)を入手されたい。 蔵書情報 / Library information
2 ラインハルト・ツィンマーマン著 ; 佐々木有司訳 ローマ法・現代法・ヨーロッパ法 信山社 2008.9 9784797261516 6600円+税 蔵書情報 / Library information
3 芥川竜之介作 河童 岩波書店 2013.4 9784000073615 800円+税 新潮文庫にもあります。 蔵書情報 / Library information
4 Antoine de Saint-Exupéry, avec le dessins de l'auteur Le petit prince Gallimard 1946. 2070105024 蔵書情報 / Library information
メッセージ/Message
法に対する歴史的な視点、比較の視点をもつきっかけとなるゼミにしたいと思っています。鍵はできるだけ生に近い文章に触れること、そして異文化にできるだけ直接触れることです。
その他/Others
サブゼミはありません。担当教員の関わる様々なプロジェクト、研究会等との連携をはかり、いろいろな機会を提供したいと思います。ぜひ積極的に参加して、刺激を受けてください。海外研修F(イギリス・セミナー)とも様々な機会をシェアしたいと思っています。 ちなみにゼミ募集の際に課したレポート課題は以下の通り。 ・   法における弁論あるいは弁論術の意味について論ぜよ
・   デモステネス『弁論集5』所収の「私訴弁論の世界」を読んで、論評せよ。
・   芥川龍之介『河童』の中で参照されるデモステネスについて、該当箇所を正確に引用したうえで分析せよ。*なお、本資料教材、リアルタイム型授業、オンライン型授業をダウンロードして、そのファイルをWeb上にアップロードし、多くの人が見ることができるようにすることは禁止します。
キーワード/Keywords
西洋法史     古代ギリシア     西洋古典学     弁論     レトリック     比較法     フランス法     イギリス法     古代ギリシア法