講義内容詳細:ビジネス・エコノミクスB

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) ビジネス・エコノミクスB
英文科目名/Course Title (English) Business Economics B
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 服部 圭介
英文氏名/Instructor (English) HATTORI Keisuke

講義概要/Course description
経営学と経済学との垣根は近年、急速に低くなっています。企業経営に重要な問題、例えば採用・報酬制度設計などの人事制度、マネジメント、リーダーシップや企業文化などの『企業の内側』に関する問題や、マーケティング・競争戦略、合併・提携、流通や取引慣行、市場や競争構造の分析など『企業の外側』に関する問題など、そのいずれの問題においてもゲーム理論やミクロ経済学などの「経済学」のツールを使った分析が使われるようになっています。この講義では、基本的なミクロ経済学とゲーム理論のツールを学習し、それらを使って企業内・外にみられる企業経営上重要な問題を読み解く力を付けることを目的とします。


ビジネス・エコミクス A・Bに共通するものとして、15回講義の最初の数回で、この講義で使用するミクロ経済学およびゲーム理論のツールを復習します。そこでは、社会やビジネスでの「合理的な意思決定」、競争市場と企業、ゲームによるビジネス環境の表現、均衡(ナッシュ均衡・サブゲーム完全ナッシュ均衡)概念などが含まれます。

ビジネス・エコノミクスBでは、企業の「内側」に関する諸問題を考えます。具体的には、交渉(Bargaining)の理論(最後通帳ゲーム、ルービンシュタインゲーム、ナッシュ交渉解)、企業の最適規模、ホールドアップ問題、採用に関する問題、給与設計、エイジェンシー問題、チームとリーダーシップなどの基礎理論を学習し、その後それらを経営・経済学的事象へ応用するという流れで学びます。
達成目標/Course objectives
本講義の達成目標は、
(1)ビジネスパーソンとして必要不可欠な「様々な市場環境における経営戦略」についての理解を深め、将来それを実践的に応用することができるようになること、
(2)経営学と経済学の共通集合を学習することで、経営学を捉える学問的視野を広げること、
(3)日々耳にする経営的課題や企業を取り巻くニュースに対して、理論的な視点から自らで解釈し、その発生メカニズムや解決策を考えることができるようになること、
です。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
履修条件はありませんが、ミクロ経済学(I・II)及びビジネス・エコノミクス A の履修を終えておくと、本講義内容をよりスムースに理解することができます。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class ■市場と競争:ビジネスの「前」に知っておきたいこと 【オンライン(オンディマンド型)】
本講義の受講に必要な経済学の基礎ツールである「需要」「供給」および(競争的)市場の基礎的な概念をおさらいします。
事前学習/Preparation 講義計画(シラバス)をよく読んでおいてください。
事後学習/Reviewing 配布資料にある練習問題を各自で解いておいてください。
2
授業計画/Class ■ゲーム理論の復習 I:人事部長 ゲーム理論を学ぶ 【対面授業】
本講義の受講に必要なゲーム理論のツールをおさらいします。具体的には、同時手番ゲーム、逐次手番ゲーム、ナッシュ均衡概念などを学習します。
事前学習/Preparation 配布資料の内容を各自で予習しておいてください。
事後学習/Reviewing 配布資料にある練習問題を各自で解いておいてください。
3
授業計画/Class ■ゲーム理論の復習 II:人事部長 ゲーム理論を学ぶ 【対面授業】
引き続き、本講義の受講に必要なゲーム理論のツールをおさらいします。具体的には、繰り返しゲーム、情報の非対称性、リスクなどの概念を学びます。
事前学習/Preparation 配布資料の内容を各自で予習しておいてください。
事後学習/Reviewing 配布資料にある練習問題を各自で解いておいてください。
4
授業計画/Class ■ 交渉の理論 I:交渉に強くなるためのイロハを学ぶ 【対面授業】
ここでは、交渉(Bargaining)を理論的に考えるための基本モデルである「最後通帳ゲーム」の仕組みを理解し、交渉力の源泉がどこから来るのかを、この理論を使って理解することを目的とします。
事前学習/Preparation 配布資料の内容を各自で予習しておいてください。
事後学習/Reviewing 配布資料にある練習問題を各自で解いておいてください。
5
授業計画/Class ■ 交渉の理論 II:交渉力は「忍耐強さ」 【対面授業】
ここでは、ルービンシュタインの交互提案ゲームと呼ばれる交渉の理論を学習し、交渉力と時間割引の関係を学びます。その後、ナッシュ交渉問題とよばれる交渉問題とその解放を学習し、これがルービンシュタインの理論とどのような関係があるのかを学びます。
事前学習/Preparation 配布資料の内容を各自で予習しておいてください。
事後学習/Reviewing 配布資料にある練習問題を各自で解いておいてください。
6
授業計画/Class ■ 交渉の理論 III:Knowledge is Power 【対面授業】
ここでは、交渉力を高めるための様々な要素である「アウトサイドオプション」や「独占力」、「知識や情報」について学習します。また、情報の非対称性がある交渉における「シグナリング」という問題も学習します。
事前学習/Preparation 配布資料の内容を各自で予習しておいてください。
事後学習/Reviewing 配布資料にある練習問題を各自で解いておいてください。
7
授業計画/Class ■企業と組織の境界:なぜ企業の規模はさまざまなのか? 【対面授業】
ここでは「企業がなぜ存在するのか」に関するロナルド・コースの議論から始まる様々な組織理論を学習します。また、最適な企業規模に関する簡単な理論と、ホールドアップ問題と呼ばれる議論を通じて、それらが企業の存在理由とどのような関係にあるのかを学びます。
事前学習/Preparation 配布資料の内容を各自で予習しておいてください。
事後学習/Reviewing 次回の中間確認テストに備えて前半のパートを総復習してください。
8
授業計画/Class ●●● 中間確認テスト:前半の総復習 ●●● 【オンライン(オンディマンド型)】
前半の講義内容を出題範囲とした中間試験をCoursePower上にて行います。
事前学習/Preparation 前半の講義内容の総復習をして、中間確認テストに臨んでください。
事後学習/Reviewing 確認テストにおいて、理解の足りなかったパートを必ず復習しておいてください。
9
授業計画/Class ■ 採用の経済学:どのような人材を、どのような方法で獲得するべきか? 【対面授業】
ここでは、採用(Recruiting)に関するいくつかの経済理論を学習します。具体的には、リスキーな人材の採用、採用に関するスクリーニング、そして応募者自身のシグナリングについて学びます。これらが現実の企業の採用システムとどのような関係があるのかを理解することができます。
事前学習/Preparation 配布資料の内容を各自で予習しておいてください。
事後学習/Reviewing 配布資料にある練習問題を各自で解いておいてください。
10
授業計画/Class ■労働者の動機付け I:従業員をサボらせないのは大変だ 【対面授業】
ここでは、プリンシパル=エージェントモデルと呼ばれる理論を学習し、労働者を動機付けするためのメカニズムについて学習します。具体的には、基本給と成果給の存在がどのように労働者を適切に働かせることができるのか、また、雇用主にとって望ましいシステムなのかを学びます。
事前学習/Preparation 配布資料の内容を各自で予習しておいてください。
事後学習/Reviewing 配布資料にある練習問題を各自で解いておいてください。
11
授業計画/Class ■労働者の動機付け II:従業員をサボらせないのは大変だ 【対面授業】
ここでは引き続き、プリンシパル=エージェントモデルと呼ばれる理論を学習し、労働者を動機付けするためのメカニズムについて学習します。具体的には、労働者を適切に働かせるための最適な契約が、労働者の危険回避性や成果の不確実性とどのような関係にあるのかを学びます。世の中にある様々な給与形態の裏にある根本的なメカニズムを知ることができます。
事前学習/Preparation 配布資料の内容を各自で予習しておいてください。
事後学習/Reviewing 配布資料にある練習問題を各自で解いておいてください。
12
授業計画/Class ■チームとリーダーシップ:リーダーの役割とは何か 【対面授業】
チーム生産やそれに付随する「ただ乗り」の問題、リーダーシップについて学習します。特に、チームタスクの性質によってリーダーシップの効果に違いがでることや、リーダーシップの効用を理論・実験的な観点から学習します。
事前学習/Preparation 配布資料の内容を各自で予習しておいてください。
事後学習/Reviewing 配布資料にある練習問題を各自で解いておいてください。
13
授業計画/Class ■ 経営者の資質と企業の社会的責任 I:利益を最大化する企業が良い企業? 【対面授業】
ここではマネージャー・CEOのインセンティブや代理人理論、そして企業の社会的責任(CSR/CSV)についての理論を学習します。最初に、意思決定の委任の基本理論を学習し、なぜ経営と所有が分離されることが必要とされるのかについて学習します。
事前学習/Preparation 配布資料の内容を各自で予習しておいてください。
事後学習/Reviewing 配布資料にある練習問題を各自で解いておいてください。
14
授業計画/Class ■ 経営者の資質と企業の社会的責任 II:利益を最大化する企業が良い企業? 【対面授業】
引き続き、マネージャー・CEOのインセンティブや代理人理論、そして企業の社会的責任(CSR/CSV)についての理論を学習します。具体的には、どのようなマネージャーに経営を任せることで、市場において競争優位が保てるのか、また、企業が利潤以外の社会貢献の動機を持つことにどのような意味があるのかなどを学びます。
事前学習/Preparation 配布資料の内容を各自で予習しておいてください。
事後学習/Reviewing 配布資料にある練習問題を各自で解いておいてください。
15
授業計画/Class ●●● 期末確認テスト:全パートの総復習 ●●● 【オンライン(オンディマンド型)】
これまでに学習した全パートの理解度を問う期末の確認テストをCoursePower上で行います。
事前学習/Preparation これまでに学習した全パートを総復習して、期末確認テストに臨んでください。
事後学習/Reviewing 事後学習はありません。
授業方法/Method of instruction
2021年度は、本講義は(基本的に)対面授業(2回のテストのみCoursePowerを利用したオンディマンド型)を実施します。

講義資料には、「練習問題」がいくつかあります。これを自主学習として、毎回次の講義日程までに、取り組んでください。練習問題の解答は、時期を見てCoursePowerに掲載します。
教科書を購入する必要はありません。資料は全てこちらが配布をします。

(新型コロナウィルス感染拡大などによって、大学本部の決定により講義形式の変更がなされる可能性があります。)
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 100% CousePower上でのテストの点数により、評価します。
具体的には
(1) 中間確認テストの正答率(得点)を全体の成績の 10%
(2) 期末確認テストの正答率(得点)を全体の成績の 90%
として、その得点が最終成績になります。
ただし、講義中や講義後などでのコメントや、講義資料の誤字脱字の指摘などを通じて、他の学生さんにも有益な影響を発揮していただいた方には積極的に加点をします。
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
 
1 エドワード・P・ラジアー(著) 樋口 美雄, 清家 篤(訳) 人事と組織の経済学 日本経済新聞社 2005 4532131618 4500
2 エドワード・P・ラジアー, マイケル・ギブス(著) 樋口 美雄(監訳) 人事と組織の経済学:実践編 日本経済新聞社 2017 9784532134709 4800
3 ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ (著), 奥野 正寛, 伊藤 秀史, 今井 晴雄, 西村 理, 八木 甫 (訳) 組織の経済学 NTT出版 1997 4871885364 6050
4 Richard B. McKenzie and Dwight R. Lee Microeconomics for MBAs: The Economic Way of Thinking for Managers Cambridge University Press 2016 1107139481
5 Thimothy C.G. Fisher, David Prentice, and Robert Waschik Managerial Economics: A Strategic Approach Routledge 2010 0415495172
メッセージ/Message
この講義では、若干の数学を使用します。簡単な微積分ができれば講義には問題なくついていけると思います(例えば f(x)=x2 の x についての微分 f'(x) を求められるなどのレベルで大丈夫です)。ただし、数学が苦手で全くできない方でも、理論から得られる結果やメッセージを理解できれば、楽しく受講することができると思います。
キーワード/Keywords
ゲーム理論     交渉理論     マネジメント     リーダーシップ