講義内容詳細:メディア概論

戻る
年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) メディア概論
英文科目名/Course Title (English) Overview of Media
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 本田 英郎
英文氏名/Instructor (English) HONDA Hideo

講義概要/Course description
本講義は、前期の「メディア・コミュニケーション論」の応用・発展編として組み立てられる。2021年度はとくに、メディアの歴史的・社会的な文脈を踏まえ、「戦争と平和」についての思索を深める。以下に詳述する。

もちろんメディアについて初めて学ぶ人にも開かれており、メディアについて社会に流通する常套句やイメージを排し、根源的に捉え直す。プロローグとして身近なトピックでもある「大学論」から出発する。現代において多様なメディアを通じて学ぶことと大学という場で学ぶことの差異について考える。以降、メディアと社会、メディアと政治、メディアと資本主義、メディアと戦争・平和、などの視点から現代のメディアに関わる諸問題について検討する。

全体に流れる通奏低音として、第一に「メディアの商業と倫理(良心)」についての考察を深める。報道や情報伝達においては、テレビも新聞も出版も、そしてネットメディアも、公共的・社会的な役割を演じながら、しかし人が見てくれなければならない、商業的に継続しなければならないという構造を有する(それがすべてではないが)。そのジレンマを21世紀のメディアはどう解消してゆけるのかについて探究を試みる。一例として、タックスへイヴン(租税回避地)の実態を暴いた『パナマ文書』を世に問うたICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)は、世界六十数カ国、200人近くのジャーナリストが共同で調査報道を行なう非営利団体であるが、このような非営利であり、国境を越えたヨコのネットワークの可能性が、商業性や、国家や政治にコントロールされやすいメディアの弱みを乗り越えられる可能性があるのだろうか。今後の新しいメディアの可能性について考察する。

第二に、「ネットメディアによって得られる情報の偶然性(脆さ)」について探究する。多くの人が検索の上位にある情報(株価のようにつねに変動してやまないにも関わらず)や、人々の視線が届きやすい位置にある広告的情報に即時的に依拠しがちであるが、なかには真摯な検証を欠いたコピペ情報もたくさんあり、私たちはそうしたメディアの傾向を信用していないにも関わらず依存しているという、矛盾した状態におかれている。簡単な処方箋はないが、ネットの検索をより多重化すること、ネットだけでなく古いメディアの良い点(悪い点も含め)からも学ぶこと(検証性や信頼性の高さ、多様性、時間をかけた独自の取材など)、生身の人間や場所のもつ情報を大切にすること、などを意識しつつ、これからのメディアの思想について展望する。

第三に、「戦争と平和をめぐる報道のあり方、テロ社会とテロとの戦いをめぐるメディアの姿勢」について検討する。国際社会の現実と、それを報道するメディア。この両者のあいだで、政治や社会を監視するはずのメディアがその役割を放棄し、同調を図らんとするとき、しかしそれに抵抗を試みる営みが存在する。一部のメディアの良心に加え、さらなる重要性を増す私たち市民の監視的役割、そして本学部の学びでもある芸術文化やフィクションのもつ可能性についても洞察を深める。
達成目標/Course objectives
メディアの振りまく情報には、真偽の定かでないものや情報なのか広告なのかが判然としないものが入り交じっている。また、大量の情報の生産、流通、消費の時代に生きていながら、私たちは情報との距離の取り方に難しさを感じてもいる。そのようななかで、情報をどのように受容していくかを多角的に考察しうる視線を養うのが、本講義の目標である。

メディアに関心をもつ方、情報社会に関わる洞察を深めたい方が、確かな眼差しを獲得しうるスキルを身につける。

前期の講義「メディア・コミュニケーション論」の視点をさらに深め、より多面的な思考と発信力を獲得する。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class (オンデマンドでの授業)プロローグ メディアと真実について あるテニスプレイヤーと歌手の物語
事前学習/Preparation (その都度、指南します)
事後学習/Reviewing (その都度、指南します)
2
授業計画/Class 世界は「私」以外の出来事で満ちている——メディアとはなにか
事前学習/Preparation (その都度、指南します)
事後学習/Reviewing (その都度、指南します)
3
授業計画/Class 序(2) 情報と学習の現在——メディアを媒介とした学び、大学での学び
事前学習/Preparation (その都度、指南します)
事後学習/Reviewing (その都度、指南します)
4
授業計画/Class 映像から受け取る現実とイメージ——「事実」「真実」「偽」 湾岸戦争を中心に
事前学習/Preparation (その都度、指南します)
事後学習/Reviewing (その都度、指南します)
5
授業計画/Class メディアと災い 命を守り、命を破るメディアの両義性
事前学習/Preparation (その都度、指南します)
事後学習/Reviewing (その都度、指南します)
6
授業計画/Class メディアと自然災害
事前学習/Preparation (その都度、指南します)
事後学習/Reviewing (その都度、指南します)
7
授業計画/Class メディアと記憶--キング牧師、グリーンデイ、坂本龍一
事前学習/Preparation (その都度、指南します)
事後学習/Reviewing (その都度、指南します)
8
授業計画/Class メディアの商業と倫理——ビジネスと良心のあいだの混濁する境界線
事前学習/Preparation (その都度、指南します)
事後学習/Reviewing (その都度、指南します)
9
授業計画/Class メディアと映画——チャップリンとヒトラー
事前学習/Preparation (その都度、指南します)
事後学習/Reviewing (その都度、指南します)
10
授業計画/Class メディアと映画(2)——チャップリンとヒトラー
事前学習/Preparation (その都度、指南します)
事後学習/Reviewing (その都度、指南します)
11
授業計画/Class メディアと映画(3)——フィクションとノンフィクションの境界
事前学習/Preparation (その都度、指南します)
事後学習/Reviewing (その都度、指南します)
12
授業計画/Class メディアと映像--マイケル・ムーア、米西戦争
事前学習/Preparation (その都度、指南します)
事後学習/Reviewing (その都度、指南します)
13
授業計画/Class メディアが振りまく虚構をはぎ取り、複雑な〈現実〉の襞にそっと手を添える——メディアと真実
事前学習/Preparation (その都度、指南します)
事後学習/Reviewing (その都度、指南します)
14
授業計画/Class 21世紀のメディアの困難と可能性、芸術文化の役割
事前学習/Preparation (その都度、指南します)
事後学習/Reviewing (その都度、指南します)
15
授業計画/Class エピローグ--生きた言葉の明晰さへ、スーザン・ソンタグ
事前学習/Preparation (その都度、指南します)
事後学習/Reviewing (その都度、指南します)
授業方法/Method of instruction
通常の対面式の授業です。
*第1週のみオンライン授業(オンデマンド型)で実施します。
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 100% 試験は実施しない。日常の講義に参加し、思考を真摯に深めたうえで、レポートを執筆する。
教科書/Textbooks
 コメント
Comments
1 その都度、配布する。
参考書/Reference books
 コメント
Comments
 
1 その都度、指南する。
メッセージ/Message
メディアの現状にシニカルになるのではなく、ささやかであれ自分ならどんな変化をきざすことができるのか、柔らかい感性でイマジンしてみましょう。