講義内容詳細:知的表現論

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 知的表現論
英文科目名/Course Title (English) Studies on knowledge Expression
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 南山 宏之
英文氏名/Instructor (English) MINAMIYAMA, Hiroyuki

講義概要/Course description
本講義は、次の3つの内容で構成されます。
シーズン1 表現することとは何か:「私」のアイデンティティとビジョン
シーズン2 表現で求められるスキル:情報デザインとブランディング
シーズン3   体験プレゼンテーション:あなたが組織のリーダーになったら

参加者1人ひとりに、自分が気になる企業や組織を決めていただき、その組織のリーダーという立場で、次の新しい組織の姿をプレゼンテーションしていただきます。
授業では、そのプレゼンテーション資料を作成するまでのプロセスに必要な、手法、概念を学びます。
時代がどのような大転換を起こそうとしているのか。そこに、表現者としての自分は、どう対峙していくのか。
企業コンサルティングの現場での知見を交えながら、講義を進めていきます。


本テーマに関係するwebサイト
リピンコット www.lippincott.com
アクサムコンサルティング www.axhum.co.jp

達成目標/Course objectives
表現することの意味を、授業での体験を通して、考え、学ぶ。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
a. 自分で考え、自分のものにしようとする方。
b. 社会に出て、自分の個性を活かそうとする方。
c. 連続して出席できる方。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 1-1. なぜ、「知的表現論」なのか?
本講義の目的と、講義の全体構成、授業の形式について皆さんと共有します。
各自の自己紹介と本講義の概要を確認したのち、E.H.エリクソンの「アイデンティティ・モデル」の簡単な説明を行います。

講義の全体構成は、次のように考えています。
シーズン1 表現することとは何か:「私」のアイデンティティとビジョン
シーズン2 表現で求められるスキル:情報デザインとブランディング
シーズン3   体験プレゼンテーション:あなたが組織のリーダーになったら

オンライン授業(オンデマンド型)
事前学習/Preparation 参考文献(テキスト、WorldBranding、Library 5.0など)の通読
事後学習/Reviewing 本講義の目的と、講義の全体構成、E.H.エリクソンの「アイデンティティ・モデル」の確認。
2
授業計画/Class 1-2. なぜ、コミュニケーションなのか?
自分自身をアイデンティティという視点からどのように説明することができるか。
E.H.エリクソンの「アイデンティティ・モデル」を使って、自分自身のアイデンティティを一人ひとり表現し、相互に意見を交わします。

「知的表現」と「コミュニケーション」が、「アイデンティティ」にどう関係するかを掘り下げて考えます。
組織(ex, 大学や企業、国家)がアイデンティティを形成するプロセスとその「要素と構造」とは何か。
アイデンティティが形成されるプロセスの中で、「表現とコミュニケーション」がどのように介在し、機能していくのか。自分自身のことや、自分と関係する様々な商品やサービスのブランド、好きな街や施設、働いてみたい企業や組織を考えます。彼らが「表現とコミュニケーション」をマネジメントすることで、「アイデンティティ」はどのように変わるのか。
実際の企業のブランディング事例を通して、「知的表現」と「コミュニケーション」と「アイデンティティ」の関係について共有します。
事前学習/Preparation 本講義の目的と、講義の全体構成、E.H.エリクソンの「アイデンティティ・モデル」の確認。
事後学習/Reviewing E.H.エリクソンの「アイデンティティ・モデル」を使って、自分自身のアイデンティティを表現できるようになること
3
授業計画/Class 1-3. なぜ、アイデンティティなのか?
自分が今、注目している企業(または組織)を選択していただき、「なぜその企業を選ぶのか」その理由と、その企業の魅力や固有性について、「自我アイデンティティ」と「人格アイデンティティ」という二つの側面から考察し、簡単に発表していただきます。
自分自身のアイデンティティと同じように、企業や組織のアイデンティティについてどう説明できるかを考えます。
彼らの魅力がどこにあるのか、どんな個性があるのか、なぜ惹かれるのか、どんなコンテンツ(例えば、製品やサービスの内容)とコンセプト(例えば、パーパスやビジョン)があるのか。E.H.エリクソンのモデルで解釈してみます。
そして、その先にあるビジョン(未来のあるべき姿)を構想することと、そのアイデンティティの関係について考えます。また、背景となっている時代の価値観の変化が、自分に、あるいは企業や組織のアイデンティティとビジョンにどう関係しているのかを考えます。なぜ、知的表現論にこのようなことが求められるのか。
それは、表現するためには、表現するに足る素材、コンテンツとコンセプトが必要だからです。
コンテンツなくして、表現はありません。
コンセプトなくして、表現は伝わりません。
表現のもととなるコンテンツとコンセプト構築のあり方の基礎を、このシーズン1で確認したのち、表現に必要な技術(シーズン2)に入っていきます。
世の中は、沢山の情報と表現に溢れています。
価値あるものとして関わってくる表現とは何か、表現者として自分が「表現すること」を通して、人をどのように動かすことができるのかを考えます。
事前学習/Preparation 自分が選択する組織の理念、活動、コミュニケーションについて、エリクソンモデルで読み解く
事後学習/Reviewing 自分が選択する企業の魅力や固有性について、「自我アイデンティティ」と「人格アイデンティティ」という二つの側面から考察し、プレゼンテーション資料の準備を行う

4
授業計画/Class 1-4. なぜ、コンセプトなのか?
自分が選択する組織の理念、活動、コミュニケーションについて、エリクソンモデルで読み解く。
自分が今、注目している企業(または組織)を選択していただき、「なぜその企業を選ぶのか」その理由と、その企業の魅力や固有性について、「自我アイデンティティ」と「人格アイデンティティ」という二つの側面から考察し、プレゼンテーションを実施します。
これまでのEHエリクソンの「アイデンティティの構造」を振り返り、それらを構成する「理念(パーパス、ビジョン、バリュー)」と、受け手としてのステークホルダーの「理解、共感、イメージ、想起」との関係性について考えます。それぞれの企業のアイデンティティを相互に見る中で、「コンセプト(理念)と表現」との関係性を考えます。また、その表現は、誰に対して伝えようとしているのか?
表現には、コミュニケーション対象者(ターゲット)が存在することを確認します。「彼らはどんな人なのか?」彼らを理解し、彼らの特性に対応する必要があります。コミュニケーションターゲットの設定の仕方や、私たちが生きている社会に共通する価値観の変化の捉え方で、パーセプション(認識や評価)は、大きく変わります。
そして、環境が変化する中で、自分のアイデンティティを源泉としながら、将来の絵=ビジョンを描くことを経験してみます。
自分の理念を設定(仮説です)することで、ビジョンを描き、具体的なアクションを策定します。
事前学習/Preparation プレゼンテーション資料の作成と提出
事後学習/Reviewing 自分の発表と他者の発表への評価
5
授業計画/Class 1-5. なぜ、ブランディングなのか
実際の企業ブランディング事例を紹介し、シーズン1(アイデンティティとビジョンのデザイン)を総括します。
また、シーズン2の目的と全体構成の確認を行います。

事前学習/Preparation 各自が想定する企業のアイデンティティについてプレゼンテーション資料を作成する。
事後学習/Reviewing 企業ブランディング事例の復習とシーズン2の目的と全体構成の予習
6
授業計画/Class 2-1. 情報デザインとなにか:理解へのアクセス
シーズン 2 の目的と全体構成について説明します。
シーズン 2 では、プレゼンテーション資料を作成し、実施にプレゼンテーションために必要な最低限の知識とスキルについて述べます。社会にでると、様々な場面でパワーポイントや映像をつかって、自分の考えや仕事上の戦略提案を行う機会がやってきます。それらの提案を、効果的に行うための方法について、5回にわけて説明します。次のような表現の方法・技術について言及します。

2-1. 情報デザイン:理解へのアクセス
2-2. コンテンツ(内容)とコンテクスト(文脈)
2-3. ロジカルシンキングとMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)
2-4. デザインシンキングと仮説創造のプロセス
2-5. シンボリックアウトプット

2-1. では、TED(Technology Entertainment Design)の提唱者であり、自らを情報建築家 information architect として、情報デザインの世界を拓いたリチャード・ソール・ワーマンを紹介します。知的表現とは、受け手の理解にアクセスするという考え方であり、そのための情報デザイン手法の基本を事例を使って説明します。
事前学習/Preparation テキストとリチャード・ソール・ワーマンへのヒアリング資料の予習
事後学習/Reviewing 「情報デザインとは何か」を事例をもちいて、人に説明できるようになること
7
授業計画/Class 2-2. コンテンツ(内容)とコンテクスト(文脈)とは何か
表現や実際のプレゼンテーション方法を「コンテンツ」と「コンテクスト(文脈)」の2つに分けて考えてみます。
現在は、2030年の第4次産業革命終結にむけて、産業やITの技術が凄まじい勢いで進化しようとしています。人工知能には、できることとできないことが明確にあります。人工知能がもっとも苦手なことは、表現の「コンテンツ(内容)」を創造することです。表現内容を創作し、それらを編集するのは人間です。
事前学習/Preparation テキストの予習
事後学習/Reviewing 「コンテンツ」と「コンテクスト(文脈)」を事例をもちいて、人に説明できるようになること
8
授業計画/Class 2-3. ロジカルシンキングとMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)とは何か
ロジカルシンキングは、筋道が明快な思考と表現を意味しています。
MECEとは、「表現内容に無駄な重複がなく、漏れもない」という意味です。
実際のプレゼンテーションでは、必要条件として、これらのことをクリアする必要があります。


事前学習/Preparation テキストの予習
事後学習/Reviewing ロジカルシンキングとMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)とは何か、事例をもちいて、人に説明できるようになること
9
授業計画/Class 2-4. デザインシンキングと仮説創造のプロセスとは何か
プランディングプロジェクトでは、横断的な現状把握(調査研究)を行い、整合分析、考察、洞察を重ねるなかから、方針仮説を策定します。
本論では、米国LIPPINCOTT社(CocaColaやStarbucksのブランディングで有名)のブランドコンセプトモデルを使って、一度、ブランドコンセプトを構築すること、そして、それを具現化することを学びます。
本講義では、実際のビジネスの現場における、戦略提案やデザイン提案の事例を紹介することで、それらのプロセスとポイントを説明します。
事前学習/Preparation テキストの予習
事後学習/Reviewing ある企業のブランドコセンプトを、人に説明できるようになること。
シーズン3の各自プレゼンテーションの構想
10
授業計画/Class 2-5. シンボリックアウトプットとは何か
我々は、表現をするうえで、レトリックを活用した表現をすることで、全体像の想起を促すことを行います。
たとえば、俳句や詩は、まさに言葉の選択と配列によって、レトリックを生み出し、ある世界観を浮かびあげる力をもっています。
ブランドネーミングやロゴタイプ、タグラインやスローガンも、同じ様に、一言で全体を表象し、人々を動かす力があります。
本講義では、これらのシンボリックアウトプットを生み出す方法について、実際の事例を上げながら学び、皆さん一人ひとりがシンボリックアウトプットができるようになるようにします。
事前学習/Preparation テキストの予習
事後学習/Reviewing ある企業のシンボリックアウトプットの事例を、人に説明できるようになること。
シーズン3の各自プレゼンテーションの構想
11
授業計画/Class 3-1. プレゼンテーションの準備:あなたが組織のトップになったら
実際にあなたが組織のリーダーになったら、その組織のコンセプト(ex. purpose パーパス)をどう策定し、どのようにステークホルダーの伝えるか。コーポレート・ブランディングの提案書をパワーポイントで作成してください。
内容は、次の項目を参考にお願いします。
多少異なっていても、構いません。

a. 現状認識
コーポレートブランドと企業名
企業理念とビジョン
主要な商品、事業
ブランドロゴ
(過去3年間の売上高と利益推移)
経営上の大きな課題

b. 戦略方針仮説
b-1. 提供価値 
 大切にしてきた価値
 コアコンピタンス
b-2. 期待価値 
 これからのコアとなる顧客の特徴
 彼らが期待する価値とは
b-3. ブランドプロミス(コンセプト)
 パーパス(Purpose)
 差異化要素(Differentiators)
 パーソナリティ(イメージ、情緒的価値)

c. ブランドボイス(新しいブランドの世界観)
 ブランドプロミスを一つのステートメントと写真で示してください。

d. 具体的な施策内容(新しいブランドの世界観を作り出すアクディビティ)
 商品
 広告・プロモーションなど
事前学習/Preparation 自分が働いてみたい業界、企業を特定し、企業概要を事前調査する。
事後学習/Reviewing 自分が働いてみたい業界、企業を特定し、上記a. b. c. d. を人に言葉で説明することができるようになること。
プレゼンテーション資料作成のための資料収集に入る。
12
授業計画/Class 3-2. 評価シートを作成する:評価項目と手法
プロジェクトをスタートさせる前に、組織では、事前に評価の方法と基準を設定することが一般的です。「評価クライテリア」とか「KPI(Key Performance Indicator 重要業績評価指標)」と言われるものです。
目標を設定し、あるいは、新しい目標を発見するために、より効果的で客観的な評価(好きとか嫌いといった主観的なものではない)方法を事前に設定します。目的とプロセスとその成果(プロフィットや価値)の一貫性を仮説として創出します。
評価指標は、PDCAを効果的に回していったり、組織運営のマネジメント・ガバナンスのための重要な仕組みとなります。もっとも、それらの評価システムそのものの妥当性、戦略性も常に監視する必要があります。
今回の皆さんのブランディング提案に対して、誰が、どのような評価を行ったのかを、授業中に確認し、それぞれの人のユニークな視点や評価方法、言葉による印象表現(定性的な評価)も、相互に確認することができればと思います。一緒に、クライテリアのあり方について考えてみましょう。

「ブランディングにおける評価クライテリア事例」
A. 意味クライテリア(25):
B. 機能クライテリア(25):
C. イメージクライテリア(25):
D. システム軸(25)
E. その他

「KPI(Key Performance Indicator 重要業績評価指標)事例」
A. 認知度と想起度(コアセグメント/一般)
B. 好感度(コアセグメント/一般)と知覚品質
C. PV数(ウェブサイトへのPage Viewなど)
D. ROI(Return on Investiment 「投下資本利益率」利益÷投資)
E. 売上と利益
事前学習/Preparation 自らのプレゼンテーションへの評価項目と方法を考えてみる。

事後学習/Reviewing 自らのプレゼンテーションへの評価項目と方法で評価してみる。
13
授業計画/Class 3-3. プレゼンテーションの実施 01
プレゼンテーション前半を実施します。
発表者は、事前にパワーポイントのデータをお送りください。
事前にアドバイスを行い、簡単な加筆修正を行います。
聴取者は、プレゼンテーションに対する評価・印象を、できるだけ詳しく記述し、南山までお送りください。
事前学習/Preparation 発表の準備
事後学習/Reviewing 発表の準備と評価シートの作成提出
14
授業計画/Class 3-4. プレゼンテーションの実施 02
プレゼンテーション後半を実施します。
発表者は、事前にパワーポイントのデータをお送りください。
事前にアドバイスを行い、簡単な加筆修正を行います。
聴取者は、プレゼンテーションに対する評価・印象を、できるだけ詳しく記述し、南山までお送りください。
事前学習/Preparation 発表の準備
事後学習/Reviewing 発表の準備と評価シートの作成提出
15
授業計画/Class 3-5. 知的表現論のまとめ
1人ひとりに簡単な質問を行い、その場で皆さんの回答を共有し、意見交換します。
皆さんが学んだことや、これからどう役にたてていきたいかを共有し、最終講義とします。
事前学習/Preparation テキストの復習と自分のビジョン仮説の策定
事後学習/Reviewing 自分のビジョンをプレゼンテーション資料にまとめ、人に説明できるようになる 
授業方法/Method of instruction
1回目の講義はオンライン授業(オンデマンド型)。
2回目以降基本は対面授業とする。
CoursePowerまたはSLACK(資料共有)を活用

一回の授業のプロセス:
1.基本概念の提示 (15分)
 テーマに関する理論とケーススタディ
  クイズまたはエクサイズの提示
2. 発表準備および発表 by 学生(30分)
 参加者各自の検討および資料作成
3. 発表者への質問と意見交換 by 学生(15分)
4. テーマに関する洞察 (15分)
5. 各会アンケート記入および提出
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 30% 各会の個別テーマ:各テーマに対する洞察力と表現力
2 試験 Exam 30% 課題プレゼン:課題(提案書)の洞察力および表現力(意味性、機能性、イメージ)
3 その他 Others 20% 各会のアンケート:回答内容(授業への要望や課題、アイデア)
4 平常点 In-class Points 20% 参加姿勢:出席率と参加意識
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
 
1 南山宏之 編 知的表現論 2021 テキスト AXHUM 2021年
2 南山宏之 著 @WorldBranding Committee WorldBranding 世界のブランド戦略:そのコンセプトとデザイン グラフィック社 2007年
3 南山宏之 著 Library 5.0の未来:価値創造型社会を先導する次世代型ライブラリーモデル 専門図書館協議会 「専門図書館300号」 2020年5月
キーワード/Keywords
知的表現     knowledge expression     アイデンティティ     ビジョン     情報デザイン     ブランディング     プレゼンテーション     E.H.エリクソン     アイデンティティ・モデル     コミュニケーション     コンセプト     理念     パーパス     バリュー     コンテンツ     コンテクスト     ロジカルシンキング     MECE     デザインシンキング     仮説創造     シンボリックアウトプット     リチャード・ソール・ワーマン     第4次産業革命     人工知能     SDGs     ESG     Society 5.0     LIPPINCOTT     レトリック     ブランドネーミング     ロゴタイプ     タグライン     評価クライテリア     KPI     PDCA