講義内容詳細:心の哲学

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 心の哲学
英文科目名/Course Title (English) Philosophy of Mind
学期/Semester 通年 単位/Credits 4
教員名/Instructor (Japanese) 古田 知章
英文氏名/Instructor (English) FURUTA Tomoaki

講義概要/Course description
「心身二元論」を巡る哲学的諸問題
  「心の哲学 I」(前期)のテーマ  デカルト的「心身二元論」の意義
  「心の哲学II」(後期)のテーマ  「日常性」における「心身二元論」の意義

「心」という概念は、哲学の歴史のなかで、その始まりから中心的な主題であり続け、「魂」、「意識」、「私」と言い換えられながら様々な哲学者によって多様な言説が生みだされてきた。そして、この過程を通して一貫するのは、「人間」の「身体的存在」という側面を意識したうえでの議論という点と、「身体(=物体)」と対置される「心」の、その内実のわからなさである。またこのような「心」の内実は、それを探究する者の、「心」に対しての各々に独特な思索の態度や方向性に応じて不思議な現れ方をする。
本講義では、現代哲学の先駆者であり、また、近代的「心身二元論」の立場から、「魂(=心)」と「私(ego)」についての思索を深めたデカルト、および、デカルト哲学を批判的に継承した様々な哲学者の言説を辿ることによって、参加者各自の、「心」を巡る研究者としての立場と、それぞれの日常を生きていくなかでの自分自身の「心」に対しての態度という両面について自ら考えていく。
このような見通しのもと、 「心の哲学 I」(前期)では、デカルト哲学を出発点とし、その前提ともなる「心」と「身体」との関係についての哲学的伝統、《コギト》の成立と、そのなかでの「心」と「身体」との関係、デカルト以降の議論に影響を及ぼす《コギト》のもつ両義性などの主題について、また、「心の哲学II」(後期)では、デカルトの《コギト》を批判的に継承したイギリス経験論や現代哲学に属する哲学者のデカルト解釈をもとに、日常生活の場面においての「心」の働きについて検討していく。
達成目標/Course objectives
本講義では、上記の方針のもと、デカルト形而上学、および、デカルト哲学に端を発する問題系をそれぞれ独自の特徴的な形で継承する、フランススピリチュアリスム、その系譜に属する現代フランス哲学、近代イギリス経験論といった哲学者の主要なテキストを中心に参照しながら、「意識」として現れる「内面性」と「日常的な生活」の基盤となる「身体的存在」という二つの側面をもつ「私」を巡る問題系を、「心身二元論」という観点から検討することを通して、自らの研究や生活に重ねながら、「心」についての探究を進めていく。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class ガイダンス【オンライン(オンデマンド型)】
事前学習/Preparation 自分にとっての「学問」と「生活の意味」についていろいろと考えてみる。
事後学習/Reviewing 今年度の全体の流れと内容の概観を確認しておく。
2
授業計画/Class 意識の哲学の歴史的意義 - ミシェル・アンリの指摘を手がかりに -
事前学習/Preparation 「身体」と「こころ」との関係についての、この講義での検討の方向性を確認しておく。
事後学習/Reviewing 「こころ」について語ることの意義に対しての自分の考えをまとめてみる。
3
授業計画/Class 意識の哲学の出発点としてのデカルト
事前学習/Preparation 「魂」=「こころ」においての、「精神性」と「身体性」という二つの側面の関係についての議論を整理しておく。
事後学習/Reviewing 各自の「意識の作用」と「社会的システム」との関係について、身近な事柄を参考にしながら確認する。
4
授業計画/Class デカルト哲学の概観
事前学習/Preparation 「意識の哲学」の時代的背景について整理しておく。
事後学習/Reviewing デカルトにとっての「形而上学」の目的と時代背景との関係について確認する。
5
授業計画/Class 『省察』における《コギト》(1) -「私」の現れ方 -
事前学習/Preparation デカルトの生涯を通しての学問の展開について整理しておく。
事後学習/Reviewing デカルトの「懐疑」の過程を自分に重ねて辿り直してみる。
6
授業計画/Class 『省察』における《コギト》(2) -「私の現れ」においての二つの意義 -
事前学習/Preparation 「懐疑」の過程とその成果について整理しておく。
事後学習/Reviewing 《コギト》の意義の二つの側面について、自分の日常に重ねて、自分の考えをまとめてみる。
7
授業計画/Class デカルトの《コギト》の本来的意義 - ミシェル・アンリの《コギト》解釈 -
事前学習/Preparation デカルトの《コギト》においての二つの意義について復習しておく。
事後学習/Reviewing ミシェル・アンリの《コギト》に関しての指摘と「生」の概念の内容について、自分の日常生活に重ねて確認する。
8
授業計画/Class デカルトにおける「身体」と「情念」との関係
事前学習/Preparation 今学期の最初に扱った「こころ」と「身体」との関係についての議論を復習しておく。
事後学習/Reviewing デカルトにおいての「情念」、「内的情動」、「身体」の意味と関係を確認する。
9
授業計画/Class メルロ=ポンティの批判についての検討(1) -「日常性」と「観想」の次元との関係 -
事前学習/Preparation これまでのプリントをもとに、「こころ」と「感情」との関係を整理しておく。
事後学習/Reviewing メルロ=ポンティの「身体」についての議論を確認する。
10
授業計画/Class メルロ=ポンティの批判についての検討(2) -「感情」の受動性の意味 -
事前学習/Preparation 前回のメルロ=ポンティについてのプリントを読み直しておく。
事後学習/Reviewing メルロ=ポンティにおける、「知覚」の成立と「身体」との関係についての議論を確認する。
11
授業計画/Class 「感情」に対してのスピノザ的立場 - 還元主義的発想 -
事前学習/Preparation スピノザの「無限」概念について整理しておく。
事後学習/Reviewing スピノザにおける「意志」と「感情」についての決定論的議論を確認する。
12
授業計画/Class メーヌ・ド・ビラン的立場 -「私」の超有機的なあり方 -
事前学習/Preparation デカルトとスピノザとの「感情」、「情念」についての立場の違いを整理しておく。
事後学習/Reviewing メーヌ・ド・ビランの「自然学」、「生理学」、「心理学」の関係を確認する。
13
授業計画/Class デカルトにおける「私」の基盤としての「内的情動」
事前学習/Preparation 前回扱ったメーヌ・ド・ビランのプリントを読み直して内容を整理しておく。
事後学習/Reviewing メーヌ・ド・ビランにおいての「存在感情」についての自分の考えをまとめてみる。
14
授業計画/Class 「私」の能動性について
事前学習/Preparation メーヌ・ド・ビランの「内的感覚」とデカルトの「内的情動」について整理しておく。
事後学習/Reviewing 「情念」、「情動」の「人間として生きること」における意義について、自分の考えをまとめてみる。
15
授業計画/Class 平常試験
事前学習/Preparation これまでのプリントを参考に、前期で検討した内容を整理しておく。
事後学習/Reviewing 前期で扱った内容を参考に、「還元主義的立場」と「超有機論的立場」についての、自分の考えをまとめてみる。
16
授業計画/Class 後期のイントロダクション【オンライン(オンデマンド型)】
事前学習/Preparation これまでのプリントを参考に、前期に扱った内容について確認しておく。
事後学習/Reviewing 「還元主義的」な議論の方向と「超有機的な領域」についての議論との関係を整理する。
17
授業計画/Class 「日常世界」における「私」のあり方 - 問題点の整理 -
事前学習/Preparation 前期に扱った、メーヌ・ド・ビランの「人間の学」について確認しておく。
事後学習/Reviewing 「意識の哲学」の意義、あるいは、「こころ」の独立性についての自分の考えをまとめてみる。
18
授業計画/Class 「人間」であることの出発点としての「よく生きること」への意識
事前学習/Preparation デカルトの「観想」とレヴィナスの「超越」の意味について確認しておく。
事後学習/Reviewing 自分にとっての「よく生きること」の意味について考えてみる。
19
授業計画/Class 生きることの基盤としての「身体」 - メルロ=ポンティにおける「理念的身体」
事前学習/Preparation 「人間」の「倫理的」というあり方についての前回の議論を整理しておく。
事後学習/Reviewing メルロ=ポンティの主張を手がかりに、「私」の「日常的なあり方」と「見えないもの」との関係について整理する。
20
授業計画/Class 実在と観念とのあいだの「中間的存在」としての「私」 - ベルクソンの「イマージュ」 概念-
事前学習/Preparation これまでに検討してきた理念としての「身体」の意味を確認しておく。
事後学習/Reviewing ベルクソンの「空間」概念について整理したうえで、日常においての「見えるもの」と「見えないもの」との関係についての自分の考えをまとめてみる。
21
授業計画/Class 「私」と「世界」との関係においての「従属性」と「主体性」
事前学習/Preparation ベルクソンの「精神」と「物質」の「中間的存在」としての「空間」概念の意義を確認・整理しておく。
事後学習/Reviewing ベルクソンの「生命」概念と、それに基づいた「世界観」について整理する。
22
授業計画/Class 「こころ」と「世界」概念との関係
事前学習/Preparation ここまでに検討してきた「こころ」、「身体」、「世界」概念の内容と、それらの関係について整理しておく。
事後学習/Reviewing 「世界内存在」というあり方について、自分の日常に重ねて確認する。
23
授業計画/Class 「私」の意識化 - 自らの意識の対象として現れる「自己」 -
事前学習/Preparation 今学期の最初に検討した「よく生きること」について復習しておく。
事後学習/Reviewing 「こころ」と「世界」との関係においての、「無意識的側面」と「意識的側面」の各々の内容と、それらの関係について、自分の日常に重ねて確認・整理する。
24
授業計画/Class 「私」の根源的なあり方としての「自我中心性」
事前学習/Preparation アンリにおける「生」と「知」との関係を整理しておく。
事後学習/Reviewing 「感受性」とその発展の意義について、自分の現在の状況に重ねて検討してみる。
25
授業計画/Class 「他者」の現れ - レヴィナスにおける「超越」と「他者」との共存 -
事前学習/Preparation これまでの「感受性」と「世界内存在」に関する議論を整理しておく。
事後学習/Reviewing レヴィナスの「自我中心性」と「全体性」の意味について、自分の日常に重ねて確認してみる。
26
授業計画/Class 「自己意識」から生じる地平 - 「倫理的存在」としての「私」-
事前学習/Preparation 前回に検討したレヴィナスについてのプリントを読み直しておく。
事後学習/Reviewing レヴィナスの「超越」についての自分の考えをまとめてみる。
27
授業計画/Class イギリス経験論における「人格」概念(1) - 出発点としてのロック -
事前学習/Preparation レヴィナスにおける「自由」と「責任」についての議論を整理しておく。
事後学習/Reviewing 自分にとっての「生命の質」について考えてみる。
28
授業計画/Class イギリス経験論における「人格」概念(2) - 「人格的同一性」に対してのヒュームの批判 -
事前学習/Preparation ロックの「人格的同一性」についての議論を確認する。
事後学習/Reviewing ヒュームにおいての「因果性」と「人格」に関しての議論を確認する。
29
授業計画/Class 「自己意識」と「人格」
事前学習/Preparation ヒュームの「人格的同一性への批判」を整理しておく。
事後学習/Reviewing ヒュームの議論を参考に、「他者」との関係についての自分の考えをまとめてみる。
30
授業計画/Class 全体のまとめ
事前学習/Preparation 今学期に扱った内容を、これまでのプリントをもとに整理しておく。
事後学習/Reviewing これまでに検討してきた内容のなかで関心をもった事柄を、自分の生活に重ねて検討してみる。
授業方法/Method of instruction
本講義は対面授業(通常型)で実施します。
ただし、制度上、前・後期のそれぞれ第1回目の講義のみ「オンライン授業(オンデマンド型)」となります。
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 70% 前・後期終了時のそれぞれに平常試験(レポート形式)を実施します。評価の割合は、35%ずつです。
2 平常点 In-class Points 30% 平常点は、毎回の授業終了後のレスポンスペーパーの提出と、受講態度で評価します。
教科書/Textbooks
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1 特に教科書は用いないが、各回の内容に関するプリントを配布する。
参考書/Reference books
 タイトル
Title
出版社
Publisher
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1 西洋哲学の知 白水社 哲学史および哲学の基本事項についての全般的な参考文献を二冊挙げておく。また、各回において扱う哲学者やテーマについては、適宜、個別に文献を紹介する。
2 原典による哲学の歴史 公論社
メッセージ/Message
毎回のレスポンスペーパーで自分の考えを積極的に示していくことを望みます。