講義内容詳細:薬理学

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 薬理学
英文科目名/Course Title (English) Pharmacology
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 小川 耕平
英文氏名/Instructor (English) OGAWA Kohei

講義概要/Course description
 臨床心理学を学び,実際に心理学を対人援助に生かすためには,近接する諸領域の学問についての十分な理解が欠かせません。心理学を専門とし,特に臨床心理士・公認心理師や心理専門職を目指す方には,精神医学を中心とした関連諸領域の学問を,より深く,統合的・有機的に理解することが求められます。
 一方,精神医学も生物学を基礎とした応用科学としての臨床医学の一部であります。本講義では,生物学的精神医学の実践的方法論としての精神神経薬理学を基礎から学びます。
 精神神経薬理学は,臨床精神医学という観点から見た精神神経薬理学は臨床精神医学における治療の中枢的手段という応用科学としての側面を持ちますが,一方で,学問体系の中のにおいては,主に中枢神経に作用する薬物を取り扱う薬理学の一分野として位置づけられます。そのため,精神神経薬理学を学ぶためには薬理学の基礎的な知識が必要です。
 しかしながら,薬理学もまた,「細胞生物学」「分子生物学」「生理学」「生化学」「解剖学」「組織学」「免疫学」「遺伝学」「病理学」など,基礎医学の諸領域を基盤として体系立てられ,あるいは相互に密接に関わり合っています。つまり,薬理学の理解には,基本的な生物学の知識と,それらの知見に基づいて体系立てられた基礎医学の諸領域,つまり人体の構造や機能と,その病理的な変化についての知識が幅広く必要なのです。
 本講義の前半は,精神神経薬理学を理解する基礎となる薬理学と,薬理学の理解に必要な生物学・基礎医学の知識を,初学者でも受講して理解ができる事を目指し,総論として新型コロナウイルスを例に挙げながら生物学・基礎医学について基本的な事項を学びます。
 本講義の後半では,臨床精神医学の治療論として,精神神経薬理学の各論を講義します。具体的には下記の計画内容に示した項目について学びます。
達成目標/Course objectives
 本講義の第1の目標は,生物学を基礎とした応用科学としての臨床医学である精神医学の,生物学的な基本知識の習得です。心身機能と身体構造及び様々な疾病や障害について理解するために必要な基礎医学の知識を深めます。幅広い内容を効率的に学ぶため,新型コロナウイルスを例にしながら,分子生物学など基礎医学を学びます。
 第2の目標は,精神医学における生物学的治療としての薬物療法の基礎的な知識を学びます。
 第3の目標は,こうした基礎的な知識を踏まえた上で,精神医学における薬物療法の実践方法の理解を深めることです。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
 本講義を受講するに当たり,特別な条件はありません。
 ただし,「人体の構造と機能及び疾病/心身医学」を受講される予定の方は,講義内容の重複を避けるため,本講義の受講を前提として「人体の構造と機能及び疾病/心身医学」においては精神疾患の薬物療法に関する内容を省略しています。そのため,「人体の構造と機能及び疾病/心身医学」を受講予定の方は,本講義を受講することを強く勧めます。
 また,心理専門職や対人援助職を目指す方が受講する場合には,「健康医学」,「スポーツ生理学」,「医療社会学」,「精神衛生」,「犯罪心理学」,「障害児・者の福祉」,「成人・高齢者保健」,「認知心理学」,「神経心理学」,「産業心理学」,「精神医学」,「精神分析学」,「脳生理学」,「障害児·者の医学」などの関連ある科目を履修し,深く理解することを強く求めます。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class オリエンテーション,総論(1)生物学を学ぶための「新型コロナウイルス」
【オンライン授業(オンデマンド型)】
事前学習/Preparation  特に必要ありません。講義の進め方,評価の方法などを説明します。また,講師への質問の仕方,連絡が必要な場合の連絡方法,参考文献や資料の配付方法など事務的な連絡を行います。その後,この講義を通して学ぶことを概観します。
 また,事前の学習方法についても教示します。心理学系の学部学生が求められる,医学全般および精神医学における生物学的知識についてを概観すると共に,必要な知識を身につけるためにはどのような学習をすればよいか,ということもここで示し,効果的・効率的な学習方法を示します。
事後学習/Reviewing  講義の全体像を概観し,イントロダクションとして講義を行ったことに対して質問があれば,2回目以降に回答いたします。
2
授業計画/Class 総論(2)新型コロナウイルス感染症の臨床と公衆衛生学的・疫学的知見
事前学習/Preparation  次のキーワード・専門用語や内容に関して分からないことを,参考資料等を参照しながら予習してください。
 なお,第2回講義から第5回講義までに,以下のキーワードについて学習してください。(講義に登場する順)

真核細胞     原核細胞     細菌     ウイルス     病原微生物     真菌     核酸     DNA     RNA     ゲノム     セントラルドグマ     メッセンジャーRNA(mRNA)     トランスファーRNA(tRNA)     リボソーム     コドン     ゴルジ体     カプシド     ヌクレオカプシド     エンベロープ     マイナス鎖RNAウイルス     ACE2受容体     (ウイルスの)変異     B細胞     中和抗体     遺伝子再集合     液性免疫     細胞性免疫     抗体     抗原     サイトカイン     ナチュラルキラー細胞     薬物動態学     薬力学     ワクチン     集団免疫     副反応     有害事象
事後学習/Reviewing  不明な点があった場合には,講師に質問をしてください。また,配布された講義資料で復習をしてください。
3
授業計画/Class 総論(3)新型コロナウイルスワクチンについてなど最近の話題
事前学習/Preparation 事前学習については第2回と同じ。
事後学習/Reviewing 事後学習については第2回と同じ。
4
授業計画/Class 総論(4)新型コロナウイルスから基礎医学(分子生物学・細胞生物学・免疫学・薬理学等)の理解へⅠ
事前学習/Preparation 事前学習については第2回と同じ。
事後学習/Reviewing 事後学習については第2回と同じ。
5
授業計画/Class 総論(5)新型コロナウイルスから基礎医学(分子生物学・細胞生物学・免疫学・薬理学等)の理解へⅡ
事前学習/Preparation 事前学習については第2回と同じ。
事後学習/Reviewing 事後学習については第2回と同じ。
6
授業計画/Class 精神神経薬理学総論Ⅰ 神経細胞の解剖学・電気生理学と情報伝達
事前学習/Preparation 事前学習については第2回と同じ。
なお,第6回講義から第7回講義までに,以下のキーワードについて学習してください。(講義に登場する順)

 神経細胞     ニューロン     電気生理学     情報伝達     化学的神経伝達     神経伝達物質     古典的シナプス性神経伝達     逆行性神経伝達     容量神経伝達     興奮・分泌結合     シグナル伝達     セカンドメッセンジャー     ジェネティクス     エピジェネティクス     トランスポーター     受容体     酵素     イオンチャンネル     薬物代謝     チトクロームP450
事後学習/Reviewing 事後学習については第2回と同じ
7
授業計画/Class 精神神経薬理学総論Ⅱ 向精神薬の標的・薬物動態学・薬物の代謝 
事前学習/Preparation 事前学習については第2回と同じ。
事後学習/Reviewing 事後学習については第2回と同じ。
8
授業計画/Class 精神神経薬理学各論Ⅰ:抗精神病薬
事前学習/Preparation 事前学習については第2回と同じ。
なお,第8回講義までに,以下のキーワードについて学習してください。

   向精神薬     抗精神病薬     アゴニスト     アンタゴニスト     パーシャルアゴニスト     ドパミン     ドパミン受容体     ドパミン仮説
事後学習/Reviewing 事後学習については第2回と同じ。
9
授業計画/Class 精神神経薬理学各論Ⅱ:抗うつ薬(抗うつ作用,抗不安作用,強迫に対する作用)
事前学習/Preparation 事前学習については第2回と同じ。
なお,第9回講義までに,以下のキーワードについて学習してください。
  
     抗うつ薬     セロトニン     ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)     モノアミン仮説
事後学習/Reviewing 事後学習については第2回と同じ。
10
授業計画/Class 精神神経薬理学各論Ⅲ:気分安定薬,精神神経薬理学各論Ⅳ:抗てんかん薬
事前学習/Preparation 事前学習については第2回と同じ。
なお,第10回講義までに,以下のキーワードについて学習してください。
  
気分安定薬の作用機序,抗てんかん薬の作用機序
事後学習/Reviewing 事後学習については第2回と同じ。
11
授業計画/Class 精神神経薬理学各論Ⅴ:ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬,精神神経薬理学各論Ⅵ:非ベンゾジアゼピン系睡眠薬と睡眠に関連する疾患の薬物療法
事前学習/Preparation 事前学習については第2回と同じ。
なお,第11回講義までに,以下のキーワードについて学習してください。
  
抗不安薬        GABA (γ-アミノ酪酸)        GABA受容体        ベンゾジアゼピン受容体     メラトニン     オレキシン
事後学習/Reviewing 事後学習については第2回と同じ。
12
授業計画/Class 精神神経薬理学各論Ⅶ:抗認知症薬
事前学習/Preparation 事前学習については第2回と同じ。
なお,第12回講義までに,以下のキーワードについて学習してください。

     抗認知症薬     向知性薬        アセチルコリン        コリンエステラーゼ
事後学習/Reviewing 事後学習については第2回と同じ。
13
授業計画/Class 精神神経薬理学各論Ⅷ:精神刺激薬と発達障害の薬物療法
事前学習/Preparation 事前学習については第2回と同じ。
なお,第13回講義までに,以下のキーワードについて学習してください。

   神経刺激薬        報酬系        ドパミン        ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)        ドパミントランスポーター
事後学習/Reviewing 事後学習については第2回と同じ。
14
授業計画/Class 精神神経薬理学各論Ⅸ:薬物依存・嗜癖精神神経薬理学各論Ⅹ:疼痛の薬物療法
事前学習/Preparation 事前学習については第2回と同じ。
なお,第14回講義までに,以下のキーワードについて学習してください。

   アルコール     薬物依存        断酒        節酒        オピオイド
事後学習/Reviewing 事後学習については第2回と同じ。
15
授業計画/Class 平常試験
事前学習/Preparation 試験に向けて学習をしてください。
事後学習/Reviewing 特になし
授業方法/Method of instruction
 基本的に講堂にて講義を行う予定です。
 ただし,新型コロナウイルスの流行状況で,別途大学からの指示があった場合には,オンラインでの講義に切り換える可能性があります。
 オンラインでの講義となった場合には,別途Course Powerにてお知らせいたしますが,Zoomを使いますので,オンライン講義に切り替わる案内がありましたら,速やかにZoomが利用できる環境を整えてください。(Webexではないのでご注意ください。)
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 100% 試験は60%以上の得点で合格とします。
ただし,試験の問題のうち,難易度が高く,正答率が著しく低い問題については,採点から除外するなど適宜調整を行います。
やむを得ない事情で講義を欠席をされる場合,講師までご連絡いただき,欠席される事情と,やむを得ない事情があることを証明する物をご提示ください。
 
教科書/Textbooks
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1 特に定めません。事前に講義資料を用意します。
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN 
1 Stephen M. Stahl Stahl's Essential Psychopharmacology (4th Edition) Cambridge University Press
2 Bruce Alberts ... [et al.] Essential cell biology Garland Pub. 1998. 0815320450 蔵書情報 / Library information
メッセージ/Message
 本講義は,精神医学の主たる治療法である薬物療法に関する基礎から応用まで幅広く理解を深めることを目標としております。心理学を用いて対人援助の実践を行う際には,精神医学の知識が必要不可欠です。その中でも,精神医学における薬物療法に関する知識は,最も重要な知識の一つと言えます。
 生物学的な知見が多く出てきますが,本質を損なわずになるべくわかりやすく説明するよう努めますので,将来,臨床心理士・公認心理師を目指す方には,「食わず嫌い」にならず,興味を持って受講していただくことを熱望します。
 また,難しそうな専門用語がたくさん出てきているように感じられるかもしれませんが,「食わず嫌い」にならないように,新型コロナウイルスを取り上げ,生物学的・基礎医学的な事項について平易な説明で行うように努めます。専門用語をあえて用いている場合は,講義の内容を正確に表現するためであり,受講する学生に難しさを印象づけたり,萎縮させるような意図は一切ありません。
キーワード/Keywords
真核細胞     原核細胞     細菌     ウイルス     病原微生物     真菌     核酸     DNA     RNA     ゲノム     セントラルドグマ     メッセンジャーRNA(mRNA)     トランスファーRNA(tRNA)     リボソーム     コドン     ゴルジ体     カプシド     ヌクレオカプシド     エンベロープ     マイナス鎖RNAウイルス     ACE2受容体     (ウイルスの)変異     B細胞     中和抗体     遺伝子再集合     液性免疫     細胞性免疫     抗体     抗原     サイトカイン     ナチュラルキラー細胞     薬物動態学     薬力学     ワクチン     集団免疫     副反応     有害事象     神経細胞     ニューロン     電気生理学     情報伝達     化学的神経伝達     神経伝達物質     古典的シナプス性神経伝達     逆行性神経伝達     容量神経伝達     興奮・分泌結合     シグナル伝達     セカンドメッセンジャー     ジェネティクス     エピジェネティクス     トランスポーター     受容体     酵素     イオンチャンネル     薬物代謝     チトクロームP450     向精神薬     抗精神病薬     アゴニスト     アンタゴニスト     パーシャルアゴニスト     ドパミン     ドパミン受容体     ドパミン仮説     抗うつ薬     セロトニン     ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)     モノアミン仮説     抗てんかん薬     抗不安薬     GABA(γ-アミノ酪酸)     GABA受容体     ベンゾジアゼピン受容体     メラトニン     オレキシン     抗認知症薬     向知性薬     アセチルコリン     コリンエステラーゼ     神経刺激薬     報酬系     ドパミントランスポーター     アルコール     薬物依存     断酒     節酒     オピオイド