講義内容詳細:社会科教材論A

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 社会科教材論A
英文科目名/Course Title (English) Materials for Teaching Social Studies A
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 益井 岳樹
英文氏名/Instructor (English) MASUI, Takaki

講義概要/Course description
中学校社会科は地理・歴史・公民の三分野から構成されていますが、それぞれの学習内容は本邦の公民として社会生活をおくる上で必要とされる基礎的知識として必須であり、その構成員として求められる考え方の基礎となるものです。本講義は、中学校社会科の授業担当者として、「社会科の教材とは何か」を端緒に、その選択・作成・提示・利用方法について学習を深め、生徒の教科学習に対する自発性や積極性を向上させるために、教員と教材の果たす役割について、講義と実践(仮)を通して自ら考え、反芻して、教科を通して生徒と向き合うことが出来る能力を獲得するためのものです。講義の内容は、生徒が社会科の授業内容を教材を通してどう受けとるかについて、教員を志す皆さん自らが考えを深める授業にしたいと考えています。
達成目標/Course objectives
習得内容は以下の五項目です。①中学校社会科で生徒が身につけるべき学習内容についての考え方 ②学習内容への生徒の興味・関心を喚起するための教材準備およびそれに基づく授業構築の方法 ③生徒が自発的に授業に関われるよう、教員が果たす役割とその準備(含「主体的、対話的で深い学習」) ④各種教材の授業内における利用方法とそこへの教員の関わり ⑤社会科三分野(地理・歴史・公民)の授業の教材作成と、その利用に必要な知識・技能・考え方
なお、これらが授業を行う上でなぜ必要なのか、また社会科の授業がその内容や構成によって、授業実施時点で、また将来の社会生活上どういった影響を生徒に与えるのかについても理解を深めて貰います。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 前期:第1回 授業計画と進め方、評価方法等の説明 -オンライン授業(オンデマンド型)での実施ー
事前学習/Preparation 実習予定年度に使用されることになる中学校社会科の各分野の教科書および資料集等について確認しておくこと(受講者各員が実習で赴く可能性のある各自治体(学校)で今年度使用されている教科書類の調査)
事後学習/Reviewing 事前学習で確認した教科書類の入手に努めること(全三分野)
2
授業計画/Class 前期:第2回 小学校課程の社会科、高等学校課程の「公共」「歴史総合」「地理総合」との違い
事前学習/Preparation 小学校課程の社会科関連の学習内容について見直しを行い、中学校社会科の延長線上にある高等学校の「公共」「歴史総合」「地理総合」を含めて学校教育において社会科関連科目がどのように扱われていたのかについて見直しておくこと
事後学習/Reviewing 授業内で扱った中学校社会科の学習内容が、小学校課程のどういった学習内容と結びつくかについて考え、それが社会生活を送る上で何と結びつくのか、また高等学校の「公共」「歴史総合」「地理総合」の学習内容にどう結びつくのかについて考察しておくこと
3
授業計画/Class 前期:第3回 学習指導要領から見る中学校社会科の教材に求められる役割
事前学習/Preparation 学習指導要領が目指す中学校社会科既習者に求められる能力と、実際の中学校卒業者が獲得している社会科学習内容の差違を認識し、それを補完する教材の役割について考察しておくこと
事後学習/Reviewing 宿題:授業中に提示された「対象」について、小学校までの学習で得られる認識とそれを補完する中学校学習内容とは何かについて考察し、その「対象」に対して義務教育課程修了者が獲得すべき考え方について、社会科教員として考える内容とは何かについて小レポートを二週間後に提出すること
4
授業計画/Class 前期:第4 -1回 学習内容への生徒の理解を促すには-地理的分野等-
事前学習/Preparation 学習内容についての調査と、それについて各分野の特性に応じた五分以内での口頭説明準備を行う(基本的事項について説明できるようにしておく)
事後学習/Reviewing 五分以内の口頭説明の発表の際に、再考を促された場合は指摘された内容を精査し、次回の発表の準備につなげること
5
授業計画/Class 前期:第4 -2回 学習内容への生徒の理解を促すには-歴史的分野等-
事前学習/Preparation 学習内容についての調査と、それについて各分野の特性に応じた五分以内での口頭説明準備を行う(基本的事項について説明できるようにしておく)
事後学習/Reviewing 五分以内の口頭説明の発表の際に、再考を促された場合は指摘された内容を精査し、次回の発表の準備につなげること
6
授業計画/Class 前期:第4-3回 学習内容への生徒の理解を促すには-公民的分野等-
事前学習/Preparation 学習内容についての調査と、それについて各分野の特性に応じた五分以内での口頭説明準備を行う(基本的事項について説明できるようにしておく)
事後学習/Reviewing 五分以内の口頭説明の発表の際に、再考を促された場合は指摘された内容を精査し、次回の発表の準備につなげること
7
授業計画/Class 前期:第5回 学習に役立つ教材選択およびその利用について(考え方と利用上の注意)
事前学習/Preparation 前回までのレジュメおよび口頭説明の内容を踏まえ、効率的に授業を進め、生徒の理解を促す教材とは何かについて考えてくること
事後学習/Reviewing 授業中に学習した教材とその利用には長所と短所があることについて理解を深め、教員としてその教材を授業に利用する理由について考えること
8
授業計画/Class 前期:第6回 主・副教材および補助教材の授業内における活用方法について
事前学習/Preparation 学習内容によっては、教科書と資料集・地図帳類が相互に補完を行いつつ、生徒の理解を促す例を見いだしておくこと
事後学習/Reviewing 学習内容に対して、既存の教材だけではなく、教員が投入する補助教材について考察し、その効果について自分なりに説明できるようにしておくこと
9
授業計画/Class 前期:第7回 教材研究の深化、教材提示の方法、授業方法の検討
事前学習/Preparation 旧来の教材研究方法を振り返ると共に、新しく登場した教材研究方法について認知し、それらを用いた教材研究が現在どうなっているかについて調べておくこと
事後学習/Reviewing 教材研究方法の変化が授業の進行や構築にどういった影響を与えたかについて、講義を通して学習したことを振り返り、これ以降の講義の中で行われる模擬授業にそれらをどう生かすかについて考察しておくこと
10
授業計画/Class 前期:第8-1回 教材から考える授業進行の検討について-地理的分野-
事前学習/Preparation 社会科の中で地理的分野が果たす役割と、義務教育課程で同分野に全球的内容が含まれてくる理由について考察してくること
事後学習/Reviewing 地理、歴史、公民の三分野の中で、地理的分野の学習が他の二分野の学習をどういう形で補助しているかについて講義内容に基づいて考察を深めること
11
授業計画/Class 前期:第8-2回 教材から考える授業進行の検討について-歴史的分野-
事前学習/Preparation 社会科の中で歴史的分野が果たす役割と、義務教育課程で同分野に全球的内容が含まれてくる理由について考察してくること
事後学習/Reviewing 地理、歴史、公民の三分野の中で、歴史的分野の学習が他の二分野の学習をどういう形で補助しているかについて講義内容に基づいて考察を深めること
12
授業計画/Class 前期:第8-3回 教材から考える授業進行の検討について-公民的分野-
事前学習/Preparation 社会科の中で公民的分野が果たす役割と、義務教育課程で同分野にて扱われる内容が日常生活に関わる内容から国際問題まで含まれてくる理由について考察してくること
事後学習/Reviewing 地理、歴史、公民の三分野の中で、公民的分野の学習が最終学年に設置されている理由と、他の学習をどういう形で継承しながら授業が構築されるのかについて講義内容に基づいて考察を深めること
13
授業計画/Class 前期:第9回 「知識」「考察力」「理解力」を育むための、社会科の授業における教材活用
事前学習/Preparation 社会科を暗記科目と考える中学生が持つ固定概念の払拭には 「知識」「考察力」「理解力」がバランス良く育まれなくてはならないことと、これらを育むためにどういった教材活用が教員として求められるかについて既習の学習内容から考察してくること
事後学習/Reviewing 講義をもとに、それまで各自が持っていた社会科の授業イメージと、望ましい社会科の授業イメージとの差について考え、既存の授業イメージには、生徒が 「知識」「考察力」「理解力」を育むためになにが不足していたのかについて考察しておくこと
14
授業計画/Class 前期:第10-1回 「主体的、対話的で深い学習」で利用する教材とその実践例について
事前学習/Preparation 「主体的、対話的で深い学習」を選択した場合、どういった授業構成やテーマ設定が準備しうるか、考えておくこと
事後学習/Reviewing 講義をもとに「主体的、対話的で深い学習」を実施する上で、教材および、その教材の利用方法がこの授業方法に適していたかどうかについて振り返りをすること
15
授業計画/Class 前期:第10-2回「主体的、対話的で深い学習」の実践とその考察
事前学習/Preparation 自分が受けた「主体的、対話的で深い学習」の実践型授業について説明できるよう準備しておくこと
事後学習/Reviewing 講義をもとに、それまで各自が持っていた社会科各分野の授業における「主体的、対話的で深い学習」のイメージと、望ましい授業イメージとの差異について考え、講義形式の既存の授業とこの新しいタイプの授業にはどういった違いがあるのかを考え、生徒が 「知識」、「考察力」、「理解力」を育むために教員が新しいタイプの授業でどういった役割が果たせるかについて考察すること
授業方法/Method of instruction
授業方法は「対面授業(通常型)」を採用します。初回の授業はオンデマンド型となります。対面授業は講義と実践が学習内容に応じて繰り返される授業です。実践は各人が提出・発表を行うものが中心となります。可能であれば班を編制し、それにもとづいた授業実践に関する資料を作成して貰いたいとおもいますが、各人で行う可能性もあります。
成績評価方法/Evaluation
1 その他 Others 80% 「授業資料作成」(複数回:随時)、「期末提出物(夏期課題)」の内容は、中学校社会科三分野の授業に始めて触れる生徒に、教科がどういう印象を与えるかという面から考察出来ているかどうかが重要となります。提出物に反映された学習内容を、教材を通して提供する側と受け取る側から見た違い、またその延長線上にある授業という場を共有した際に、繋がっていくことになる教材としての良し悪しについて教員と生徒という立場の異なる双方がどう見るか、まで考察を深められた作りになっているか、さらにはそれらが本講義の要である教材研究方法からみて、どういった完成度にあるかを成績判断の材料に用います。1:「授業資料作成」の作成物は細かく評価の対象とします。これに教員の評価が加算されます。2:「期末提出物(夏期課題)」の完成度も重視します。これらを合算して成績評価を行います(最終的に80/100として計算します)。
2 平常点 In-class Points 20% 受講態度および授業参加については、これらを総合的に判断して評価対象とします。授業参加については、どの程度、真摯にかつ意欲的に参加できているかを判断の基準とします。
教科書/Textbooks
 コメント
Comments
1 各自が中学校で教育実習を行うと仮定し、その際に使用する「地理的分野」、「歴史的分野」、「公民的分野」の教科書および副教材(資料集・地図帳等)の最新版(全分野)を準備しておいてください。4年生時に中学校に実習に赴くことを希望している方は、受け入れ予定の中学校で採用されているものを準備しておくと良いでしょう。
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
 
1 文部科学省 『中学校学習指導要領 社会編』(告示:平成29年3月)
2 文部科学省 『中学校学習指導要領解説 社会編』(平成29年6月)
メッセージ/Message
受講者は中学校社会科教職志望者と見なし、社会科担当教員として総合的な教育能力の中で教材についての考察、取得、表現、提供の4つの能力の獲得と向上を目指します。科目担当教員として必要とされる資質に関して、また社会科教育に関係する個別の事項については、講義の中で採り上げ指摘も行いますが、なによりも受講者が自助努力を重ねるとともに助け合って、生徒にとって最適な教材を利用した授業とは何かを模索し、それぞれの教員としての能力を高めてもらえるよう望みます。受講生は中学生期に「主体的、対話的で深い学習」を積極的に導入した授業を体験した可能性が低いかもしれませんが、今後の中学校社会科の授業は、生徒が自立的に活動する場であり、それに応じた授業内容やテーマをどのように提供できるかが、社会科教員としての必須能力となっていくことでしょうから、教材や授業方法の面でも事前に下調べをする心がけを忘れないようにして下さい。
その他/Others
個別の発表および提出物があります。また数名で班を構成して地理・歴史・公民の各分野の授業を担当する準備をしてもらいます。Bで実施することになる模擬授業の準備として、班ごとの教材研究を含めた学習準備を行い(学習指導案の準備)、実践的な活動としての模擬授業(授業ノートの作成等)準備を含みます。Aでは教材についての基本的な考え方とその内容についての学習がメインとなりますが、それらが座学においてのみではなく、実際に教壇に立って授業の中で生きてくるものとして昇華させるためには、授業を提供する側としての教材についての視点や考え方を学習してもらいます。これらの教材には、伝統的なものから、急速に導入が進むICTを利用したものまで多岐に亘りますが、最も効果的な学習環境の構築と学習内容の提供のために、担当する授業環境に応じて上手に使いこなし、また状況に応じて使い分けが出来るよう、その理念から使用方法に至るまでを学習します。
キーワード/Keywords
実務経験     観察     気づき     教材取得     教材作成     調査(実地、インターネット)     文献     見聞     中学社会科教材=日常生活