講義内容詳細:自己理解(総合科目)

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 自己理解(総合科目)
英文科目名/Course Title (English) Self-Understanding(Coordinated Courses)
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 藤谷 正太/坂本 秀人/壁谷 彰慶
英文氏名/Instructor (English) FUJITANI Shota/SAKAMOTO Hideto/KABEYA Akiyoshi

講義概要/Course description
三人の担当者が、全体の連関を考慮しながら、交替で優れた哲学的著作・哲学的問題を分析、検討する。  
達成目標/Course objectives
今年度は、自由に関する哲学(第1回~第5回)、近代性の鋭い分析で知られるゲオルク・ジンメルの代表的著作の読解(第6回~第10回)、および、現代科学によってもたらされた具体的な問題群(第11回~第15回)、の三つのパートに分けて授業を行う。各パートで扱われる話題を通して、自己と他者、個人と社会(国家を含む)の関わりを理解することを目標とする。それは自己自身をよりよく理解することに他ならない。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 第01回 【オンライン(リアルタイム型)で全回の授業は行われる】

■オリエンテーション(担当:壁谷彰慶)
 授業内容と進め方の説明 

■自由は哲学でどのように問われてきたか(1)(担当:壁谷彰慶)
 本題に入る前に、「自由」という言葉について、どのような意味で使われているのかを確認したうえで、哲学者がなぜその言葉を問題視していたのかを考えてみたい。
事前学習/Preparation 「自由」という言葉の意味について考えておこう。
事後学習/Reviewing 授業で配布された資料に目を通しておこう。
2
授業計画/Class 第02回 自由は哲学でどのように問われてきたか(2)(自由意志と因果性の問題)(担当:壁谷彰慶)

「自由」は当人には自明なことであっても、じっさいそれが成立していると言えるためには、さまざまなことの説明を要求している。たとえばある事柄が生じたことの「自由」が誰かにあると言えるためは、その事柄が当人のみによって開始されたことが要求されている。何かが生じるのに、当人以外のほかの要因の影響も受けているのならば、その要因が揃うまで待つ必要があり、その状態は「不自由」であるからだ。この回ではそうした原因の問い、つまり因果性の問いを中心に、伝統的に哲学で論じられてきた「自由」を概観する。
事前学習/Preparation 「自由に何かをする」という言葉から連想される事柄を、自分なりに列挙してみよう。
事後学習/Reviewing 講義内容について、納得する点と違和感を抱く点について確認し、その理由を明確にしよう。
3
授業計画/Class 第03回 自由は哲学でどのように問われてきたか(3)(自由意志と選択の問題)(担当:壁谷彰慶)

哲学者は「自由」をとくに「意志」と関連させて問うてきた。自由とは、「何をするかを自分で決める」ことでもあり、これは「意志」の制御に深く関わるからだ。これはまた、「何をするかを自分で<選ぶ>」という図式のもとで、「選択の自由」として主に考察されてきた。この図式は「能力」とも関連し、私たちの日常的な実感に即しているが、よく考えれば、「選択肢」「選ぶ」「能力」といったことについて、多くの難題を巻き込んでいる。こうした問題を紹介ながら、「自由」の問題の複雑さや哲学的考察の意義を確認する。
事前学習/Preparation 「選択」という言葉がどのように「自由」と関わるのかについて、自分で説明を準備してみよう。
事後学習/Reviewing 講義で取り上げた論点や難題について、自分なりの解答を考えてみよう。
4
授業計画/Class 第04回 自由と社会(1)(責任と自由の問題)(担当:壁谷彰慶)

自由」は、社会のなかで役割をもつ「責任」とも結びついている。責任とは、否定的評価(非難・叱責)や肯定的評価(賞讃)をある人に与えるさいの根拠であり、そこにはある事柄がその人によって世界に生じたことが意味されている点で、「自由」が読み込まれているからである。すると「自由」は、社会的な要請との関連で説明される側面ももつ。そこで、「責任」と「自由」の相関についての論点を確認し、伝統的な問題との関わりを考える。
事前学習/Preparation 「責任」という言葉が「自由」とどう関わるのかについて、自分で説明を準備してみよう。
事後学習/Reviewing 講義で取り上げた論点や難題について、自分なりの解答を考えてみよう。
5
授業計画/Class 第05回 自由と社会(2)(社会の中での自由)(担当:壁谷彰慶)

社会生活を営む限り、他者と共生するために個々人の自由はどこかで制限されなければならない。だが、何について、どの程度制限されるべきかについては多様な議論がある。個人に自由を認めれば、別の誰かの不自由を増す結果になり、平等な社会は遠のくかもしれない。しかし平等な社会の実現を重視するならば、誰かに不当なかたちで不自由を強いることになるのは当然なのかもしれない。政治哲学を中心に論じられているこうした論争を概観しつつ、これまでの授業内容を踏まえながら、個人の自由と社会の関係について考察する。
事前学習/Preparation 社会生活で「自由」がどんな場面で、何と対比され、どのような意味で使われているのかについて、自分で説明を準備してみよう。
事後学習/Reviewing 講義で取り上げた論点や難題について、自分なりの解答を考えてみよう。
6
授業計画/Class 第06回 ジンメルの思想と生涯  (担当:藤谷正太) 

本パートで取り上げるゲオルク・ジンメルとニーチェの思想の概略および彼らが生きた19世紀後半の時代状況を取り上げ、「生」や「社会」がなぜその時代の思想の対象になったのかを解説する。
事前学習/Preparation 「社会」という言葉からどのようなものをイメージするか考えてみよう。
事後学習/Reviewing 自分が普段どのような社会的相互作用を行なっているか考えてみよう。
7
授業計画/Class 第07回 ジンメルの流行論(1)  (担当:藤谷正太) 

ジンメルの流行分析を取り上げ、個人が持つ「自らの個性を発揮したい」、「集団に属していたい」という願望の混ざりあう場としての「流行」について考察する。
事前学習/Preparation 自分の身の回りでどんなものが流行しているか考えてみよう。
事後学習/Reviewing もう一度レジュメに目を通し、キーワードを覚えておこう。
8
授業計画/Class 第08回 ジンメルの流行論 (2)  (担当:藤谷正太) 

流行の舞台である「大都市」等に対するジンメルの分析を取り上げ、大都市に住む個人の心理状態や、個人と集団との葛藤について考察する。
事前学習/Preparation 大都市(ここではおよそ人口10万人以上の都市)での生活と小都市での生活にはどのような違いがあるか、考えてみよう。
事後学習/Reviewing 流行がなぜ大都市に顕著な現象なのか、考えてみよう。
9
授業計画/Class 第09回 ジンメルのニーチェ解釈 (1)  (担当:藤谷正太) 

ニーチェの道徳批判および近代社会批判に対するジンメルの分析を通して、19世紀に「個人」観がどのように変容したかを考察する。
事前学習/Preparation ニーチェの生涯とその思想について調べてみよう。
事後学習/Reviewing ニーチェの批判が現代社会についても当てはまるかどうか、考えてみよう。
10
授業計画/Class 第10回 ジンメルのニーチェ解釈 (2)  (担当:藤谷正太) 

引き続きジンメルのニーチェ解釈について取り上げ、個人が集団の中で果たすべき義務と責任、ニーチェが重んじた「人格の高貴性」について考察する。
事前学習/Preparation どういう人が高貴な人と言えるか、イメージしてみよう。
事後学習/Reviewing ニーチェの近代社会批判に関する一つの折衷案であるジンメルの主張が、ニーチェの言説に対して妥当性を持つか考えてみよう。
11
授業計画/Class 第11回 最新生命科学が変容させる個人と社会(生命倫理学とは何か)  (担当:坂本秀人) 

歴史的観点から現代科学がおかれた状況を理解した上で、量子情報理論、再生医療、人工知能といった最新科学が、従来の「国家」、「社会」、「個人」といった概念をどのように変容させるものか考察する。ここでは特に生命倫理の諸問題に焦点をあてる。
事前学習/Preparation 新聞の科学欄などを参考にしながら、私たちの社会を変革しそうな最新科学技術を調べてみよう。
事後学習/Reviewing 授業で紹介された諸問題に対して、自分ならどのような判断を下すか検討してみよう。
12
授業計画/Class 第12回 生物としての人間、群としての社会(動物行動学からみた個人と社会) (担当:坂本秀人)

自然科学にとって人間は自然物、すなわち生命の一部である。鳥類や昆虫、魚などの動物たちが描く個体と群の関係を分析することによって、人間における個人と社会の関係を探る。
事前学習/Preparation 参考文献であるコンラート・ローレンツの『攻撃』を読んでおく。
事後学習/Reviewing 自然界(生物界)の一部として人間を扱うことの可否について検討してみる。
13
授業計画/Class 第13回 環境問題から見る個と集団(生命起源論と個の起源) (担当:坂本秀人)

生命倫理学の主要課題である環境問題を切り口にするが、そこから生命科学の知見を参照しながら主体と環境の二分法という大きな問題を考える。ここでは、マイクロバイオームのような生命共生や、原始生命が真核生物などへの進化を経てどのようにして「個」という形態を得るようになったのか議論する。
事前学習/Preparation 高校の生物学の教科書を読んで、細胞の構造と、生物の「共生」について復習しておこう。
事後学習/Reviewing 科学的な観点から「個体」をどのように定義できるのか考えてみる。
14
授業計画/Class 第14回 個人という社会、社会という個人(ことばと意味の哲学) (担当:坂本秀人)

人工生命と群知能について解説し、これまでの議論とあわせて、科学が「個」と「社会」をどのようにとらえることができるのか再検討を加える。ここでは言語哲学にまで掘り下げて、「個」と「社会(集団)」または「部分」と「全体」の意味を考察する。
事前学習/Preparation 言葉の意味とは何か考えてみよう。たとえば、「生命」という語が何を意味しているのか深く考えてみよう。
事後学習/Reviewing あなた自身、すなわち「自己」とはいったい何を指し示しているのか、講義で紹介した事例を参考にしながら今一度考えなおしてみよう。
15
授業計画/Class 第15回 記号主義とは何か (担当:坂本秀人)

この回では、第三パートのまとめとして、言葉や概念、意味について記号主義という観点から概観する。
事前学習/Preparation パース、グッドマンといった記号学者について簡単に調べておく。
事後学習/Reviewing 私たちが普段使っている言葉や概念を支えているものが何か考えてみよう。
授業方法/Method of instruction
本授業はオンライン授業(リアルタイム型)で実施します。
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 100% 担当教員各パートごと、計3回の中間レポートで評価する。締め切り提出は各パート最終回の終了後一週間を予定している。
教科書/Textbooks
 
1
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
 
1 野矢茂樹 哲学の謎 講談社 1996
2 コンラート・ローレンツ 攻撃―悪の自然誌 みすず書房 1985
3 ゲオルク・ジンメル ジンメル・コレクション 筑摩書房 1999
メッセージ/Message



その他/Others
出席については、原則として成績評価に加点はしないが、レポート内容評価のために参考にする事がある。