講義内容詳細:ヨーロッパ史A

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) ヨーロッパ史A
英文科目名/Course Title (English) History of Europe A
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 信澤 淳
英文氏名/Instructor (English) NOBUSAWA Makoto

講義概要/Course description
イギリス史概観:苦難に立ち向かった国家・社会・人々の歴史を読む

 この授業では、日本と類似した環境や歴史を持つとされるイギリスの人々が、現在のパンデミックに至るまでさまざまな災厄とどのように向き合ってきたのか、その歴史に焦点を合わせて、【オンライン授業(オンデマンド型)】をおこないます。

 2019年末以来の新しい感染症の世界的な流行と、それ以前から地球を襲っている異常気象の連続は、人類全体を存続できるかどうかの瀬戸際に立たせています。しかし、人類が存亡の危機に直面するのは、これが初めて、というわけではありません。人類はこの地球上に姿を現して以来、様々な疾病や災害、あるいは人類自身が引き起こした戦乱などにより、幾たびも滅亡の瀬戸際に立たされてきました。それでも人類は、苦難に立ち向かい生き延びることを果たしてきたのです。ですので、過去の国家や社会そして人々がどのように、それらの苦難に立ち向かい生き延びてきたのかを、歴史を学ぶことを通じて知ることは、現在の苦難と向き合い、希望の光を灯し続けることに役立つように思えます。
 そこで、この授業では、イギリスの歴史の中で、国家や社会そして人々がどのように戦乱・疾病・災害などの苦難と立ち向かってきたのかを、ブリテン諸島の形成から現在までの歴史を辿ることを通じて、明らかにしてゆくことにします。イギリスの歴史をケーススタディの対象とするのは、イギリスが日本とユーラシア大陸を挟んで対照的な場所に位置する島国であり、1000年以上に渡って君主制が維持されているなど日本と類似した地理的・歴史的条件を持つこと、日本が明治以降の近代化のモデルとしてイギリスを選んできたこと、英語や通信・輸送技術を通じてグローバル化の基盤を形成した国であること、そして、国家・社会・人々が様々な苦難とどのように立ち向かってきたのかを伝える記録や史料が残されていて、その多くが日本語でも読めることからです。また、日本人たちが、イギリスの人々がどのように苦難に立ち向かっているのか、またそれについてどのように感じたのかを、日本語で記したものも、様々な形で残されているからです。

 また、この授業では、20世紀後半以降の現代を、地球環境に対して人類が長期的で決定的な影響を与えるようになった時代、「アントロポセン(人新世)」捉える見方や、2015年の国連総会で可決され2030年を達成目標としている「持続可能な開発目標(SDGs)」と、現在の苦難を関連付けて考えることも試みることにいたします。
 歴史は暗記事項や数字の羅列ではなく、勇気を涸らさないための源泉である、そう信じたいと思っています。

達成目標/Course objectives
1. イギリスの歴史を学ぶことを通じて、国家や社会がどのように形成され人々の生活とどのように関わってきたのかを学び、現在の苦難に直面している国家や社会と関わり行動するための手がかりを提供する。
2.一つの国の現在までの通史を学ぶことを通じて、物事を長期的な視野からじっくり捉えるスキルを養う。
3. イギリスと日本を比較することを通じて、一つの見方にとらわれずに、物事を多元的に複数の視点から捉える方法を身に着ける。
4. 過去のイギリスがこれまで様々な苦難とどのように立ち向かってきたのか、また現在のイギリスでそれがどのように認識され、そのことからどのような取り組みが生まれているのかを学ぶことを通じて、現在の日本が置かれている状況を見つめ未来を切り開くための手がかりをつかむ。
5. ヴァナキュラーな言語からグローバルな言語への英語の歴史的な歩みを学ぶことを通じて、グローバル化の進行の中での日本語の果たしうる役割について考えることができるようにする。
6. 地球が人新世(アントロポセン)を迎え、持続可能な開発というものを念頭において行動することが求められている中で、「より良い将来」を考えるためのツールを手にする。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
 相模原キャンパスの金曜2限の前期科目「歴史と人間(個別科目)」を今年度もしくは昨年度に履修していることが望ましいのですが、履修していなくても支障がないよう配慮することにします。
 なお、青山キャンパスの学生も履修できますが、90分ルールの適用により、青山キャンパスの金曜1限および3限の授業が履修できなくなる(青山キャンパスの金曜1限または3限を履修する必要がある場合はこの授業は履修できない)ので、ご注意ください。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 開講にあたって【オンライン授業(オンデマンド型)】
「オンライン授業」(オンデマンド型)でのこの授業の進め方や評価方法について説明します。また、この授業での学習の目的や目標、「イギリス」を取り上げる理由も明らかにします。そして、「イギリス」や「大英帝国」という表記が適切なのかどうかについて考えてみることにします。
事前学習/Preparation シラバスを読み、学習目標・授業計画・評価方法などを確認しておきましょう。また、教科書の2~6ページで「イギリス」がどのように捉えられているのかも、確かめておきましょう。
事後学習/Reviewing 教科書・教材・Course Powerでの議論を踏まえて、「イギリス」や「大英帝国」という表記が適切なのかどうか考えてみましょう。
2
授業計画/Class ブリテン諸島の形成からカエサルのブリテン島攻撃まで【オンライン授業(オンデマンド型)】
まず、ブリテン諸島がほぼ現在の地形となり、人々が暮らすようになるまでの経緯を明らかにします。次に、ブリテン諸島各地に巨石でストーンヘンジなどが作られたことの意味について考えてみることにします。そして、ローマ帝国のガリア総督カエサルによるブリテン島攻撃がおこなわれたころ、ブリテン諸島で暮らしていたのは、どのような人々であったのかについて説明します。
事前学習/Preparation 教科書の10~15ページを読んでおきましょう。
事後学習/Reviewing 教科書・教材・Course Power上での議論を照合しておきましょう。
3
授業計画/Class ローマ帝国の属州ブリタニアの時代【オンライン授業(オンデマンド型)】
カエサルのブリテン島攻撃からローマ帝国によるブリテン島征服の経緯をたどり、ローマ帝国の属州ブリタニア支配の仕組みを明らかにします。また、ローマ軍の侵攻という苦難に立ち向かった現地の人々の姿がローマの側のカエサル、タキトウスらの記述ではどのように受け止められているのかについても考えてみます。あわせて、ハドリアヌスの長城付近のローマの要塞であったウインドランダ遺跡から出土した木簡を手がかりに、属州ブリタニアの住民たちはローマ帝国の側からは日常的にはどのように捉えられていたのかもみてゆきます。
事前学習/Preparation 教科書の19~25ページを読んでみておきましょう。
事後学習/Reviewing 教科書・教材・Course Powerでの議論をもとに、ローマの支配がブリテン島にもたらしたものは何であったのか、考えてみましょう。
4
授業計画/Class 部族国家からイングランド王国の形成まで【オンライン授業(オンデマンド型)】
ローマ帝国のブリテン諸島からの撤退後のブリテン島南部にできた部族国家がイングランド王国に統一されていく経緯を整理していきます。また、ブリテン諸島へのキリスト教伝来のいきさつと、それが果たした役割についても明らかにしていきます。そして、伝説上のアーサー王と史実のアルフレッド大王の比較を夏目漱石の作品を踏まえながらおこない、王たる要件というものについても考えてみます。
事前学習/Preparation 教科書の25~34ページを読んでおきましょう。
事後学習/Reviewing 教科書・教材・Course Powerでの議論をもとに、王というものの存在意義について考えてみましょう。
5
授業計画/Class 海を挟んだ帝国からブリテン諸島の王国へ【オンライン授業(オンデマンド型)】
11世紀初頭のクヌート王が支配した北海を挟んだ帝国が、1066年のノルマンディー公ギョームのイングランド侵攻を経て英仏海峡にまたがるアンジュー帝国となった経緯を整理します。そして、その統治のしくみについて説明します。また、1066年の出来事を描いた「バイユーのタペストリー」を戦乱の中で倒れた人々への鎮魂と祈りの作品として読み解くことを試みます。手がかりに歴史研究で図像資料が果たす役割についても考えてみます。
事前学習/Preparation 教科書の35~53ページを読んでおきましょう。
事後学習/Reviewing 教科書・教材・Course Powerでの議論をもとに、「バイユーのタペストリー」の意味について考えてみましょう。
6
授業計画/Class 百年戦争からバラ戦争まで【オンライン授業(オンデマンド型)】
1337年の百年戦争の始まりから1487年のバラ戦争の終わりまでの出来事を整理します。そして、1348~50年のブリテン諸島での「黒死病」の大流行にイギリスの人々がどのように立ち向かったのか、「黒死病」の大流行の前後でどのような変化が起こったのかを、明らかにします。また、この時期を描いたシェークスピアの「史劇」が持つ意味についても考えてみます。
事前学習/Preparation 教科書の60~69ページを読んでおきましょう。
事後学習/Reviewing 教科書・教材・Course Powerでの議論をもとに、「黒死病」の流行が戦乱にどのような影響を与えたのか考えてみましょう。
7
授業計画/Class 長い16世紀のイギリス【オンライン授業(オンデマンド型)】
 1487年のヘンリー7世の即位から1625年のジェイムズ1世までの出来事を宗教政策の変遷に重点を置いて整理します。また、ヘンリー8世とエリザベス1世のイメージ戦略についても考えてみます。そして、ジェイムズ1世の治世イギリス史上の転機の一つとなっていることについて説明します。
事前学習/Preparation 教科書の73~112ページを読んでおきましょう。
事後学習/Reviewing 教科書・教材・Course Powerでの議論をもとに、エリザベス1世が理想の女王と捉えられた理由を考えてみましょう。
8
授業計画/Class 内乱から啓蒙の世紀へ【オンライン授業(オンデマンド型)】
 ピューリタン革命・王政復古・名誉革命を経てイギリスが財政軍事国家を確立していく過程を、フランスとの関係を念頭に置いて整理します。1665年のペストの流行と翌年のロンドン大火が人々にどのように受け止められたのかを、明らかにします。そして、イギリスにとっての「啓蒙」の意味を明らかにします。
事前学習/Preparation 教科書の115~74ページを読んでおきましょう。
事後学習/Reviewing 教科書・教材・Course Powerでの議論をもとに、1688年の革命のイギリス史上の意義について考えてみましょう。
9
授業計画/Class 諸革命の時代のイギリス【オンライン授業(オンデマンド型)】
 アメリカ独立革命・フランス革命・ナポレオン戦争にイギリスがどのように関わったのかを、整理します。また、イギリスで産業革命が起こった経緯とそれが人々の生活を明らかにします。そして、イギリスの西インド諸島での奴隷制とその廃絶運動の世界史的な意義について、活動家の一人、ザカリー・マコーリーとその家族に焦点を合わせて、考えてみます。
事前学習/Preparation 教科書の177~97ページを読んでおきましょう。
事後学習/Reviewing 教科書・教材・Course Powerでの議論をもとに、産業革命を「人新世」の始まりと捉えることができるのかどうか考えてみましょう。
10
授業計画/Class 国民国家イギリスの形成【オンライン授業(オンデマンド型)】
 19世紀のイギリスで、行政の近代化・公教育の実施、陸海軍の改革などが進行し、国民国家が形成された経緯を整理します。その一方で、社会改革が進まなかった理由も考えてみます。また、ロンドンの衛生問題やアイルランド大飢饉にイギリスの国家・社会・人々がどのように立ち向かい、何ができて、何ができなかったのかを、明らかにします。
事前学習/Preparation 教科書の200~25ページを読んでおきましょう。
事後学習/Reviewing 教科書・教材・Course Powerでの議論をもとに、イギリスでの初等教育法の成立が1870年までかかった理由を考えてみましょう。
11
授業計画/Class 植民地帝国としての「大英帝国」【オンライン授業(オンデマンド型)】
 イギリスが植民地帝国をどのようにして形成し、どのように統治したのか、植民地とされた場所の人々はどのように反応したのか、インドの事例をもとに整理します。岩倉使節団・夏目漱石・矢内原忠雄らがイギリスとその植民地支配をどのように捉えていたのか、これに対してイザベラ・バードらは日本を、どのように捉えていたのかを、明らかにします。そして、イギリスの植民地支配が地球環境に与えた影響についても考えてみます。
事前学習/Preparation 教科書の225~60ページを読んでおきましょう。
事後学習/Reviewing 教科書・教材・Course Powerでの議論をもとに、日本がイギリスを近代化のモデルとした理由を考えてみましょう。
12
授業計画/Class 二つの世界大戦とイギリス【オンライン授業(オンデマンド型)】
 第一次世界大戦の開戦から第二次世界大戦の前後処理までの間のイギリスでおこったことを整理します。また、第一次世界大戦の折のインフルエンザの大流行にイギリスがどのように対応したのかを、明らかにします。そして、2つの世界大戦を経ることで、イギリスの人々の生活や考え方には、どのような変化が起こったのかについて考えてみます。
事前学習/Preparation 教科書の260~82ページを読んでおきましょう。
事後学習/Reviewing 教科書・教材・Course Powerでの議論をもとに、イギリスで第一次世界大戦が「大戦争」と呼ばれている理由を考えてみましょう。
13
授業計画/Class 「大加速の時代」のイギリス【オンライン授業(オンデマンド型)】
 本国の第二次世界大戦の影響からの急速な復興と、植民地から独立した国々での開発の急激な進行が、「大加速の時代」を迎えた世界での経済成長をイギリスにもたらした経緯を整理します。そして、それがイギリスの人々の生活や文化をどのように変えたのかについて、考えてみます。一方、ロンドン・スモッグをはじめとする環境問題とイギリスの国家・社会・人々にどのように向き合ったのかを、明らかにします。
事前学習/Preparation 教科書の276~292ページを読んでおきましょう。
事後学習/Reviewing 教科書・教材・Course Powerでの議論を踏まえて、「人新世」をこの時期からと捉えるのが適切であるのかどうか、考えてみましょう。
14
授業計画/Class 帝国の遺産?【オンライン授業(オンデマンド型)】
サッチャー政権がフォークランド戦争をおこなった意味を「大英帝国」の遺産という観点から考えてみます。また、第二次世界大戦後のイギリスでの階級とブリテン諸島への移民が現代のイギリスにおいてどのように捉えられているのか、現在のオーラルヒストリーの成果をふまえて、整理していきます。そして、かつての植民地であったインドと現在のイギリスとの関係についても明らかにします。
事前学習/Preparation 教科書の292~300ページを読んでおきましょう。
事後学習/Reviewing 教科書・教材・Course Powerでの議論を踏まえて、長崎出身の日本人であるイシグロ・カズオさんが、イギリスに移住し、英語での著作を行い、ノーベル文学賞の受賞後、イギリス貴族に叙せられたことが持つ意味を考えてみましょう。
15
授業計画/Class 21世紀のイギリス【オンライン授業(オンデマンド型)】
 21世紀に入ってからのイギリスが、アメリカやEUとの関係、移民・難民問題、気候温暖化などとどのように向き合ってきたのかを、整理します。また、EU離脱の意味についても考えてみます。そして、イギリスが現在のパンデミックとどのように取り組んでいるのかを明らかにします。
事前学習/Preparation 教科書の300~302ページを読んでおきましょう。
事後学習/Reviewing これまでの授業を踏まえて、現在の苦難の中で、できることを考えてみましょう。
授業方法/Method of instruction
 この授業は、「オンライン授業」(オンデマンド型)で、おこないます。
 この授業では、教材の配布・小テストの実施・議論・質問への回答・レポートの提出と評価を、いずれもCourse Powerを用いて行います。
 なお、この授業は「オンライン授業」(オンデマンド型)のため、定期試験は実施しません。そのため、成績評価は、各回の授業でCourse Powerを使用しておこなう小テストの点数の合計、レポート、議論への参加状況などから判断した平常点の3者を総合しCourse Powerへのアクセス状況などによる補正を加えることでおこないます。(下の成績評価方法の項を参照。)
 
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 60% 「オンライン授業」(オンデマンド型)の授業のため、定期試験は実施しません。そのため、第2回授業からCourse Powerを利用しておこなう14回の小テストの点数を合計したもので評価を行います。
2 レポート Report 30% 教科書で言及されている作品などイギリス史に関連した作品の中から1点を選び、それを選んだ理由、選んだものの内容、作者の主張、それに対する感想または意見を2000字程度にまとめたレポートをWORD文書で作成し、13回目の授業の日までCourse Power上で提出していただき評価します。レポートは、添削を加え、コメントを付けて成績評価をおこなった後、Course Powerを使って返却します。
 なお、レポートを提出しない場合は、成績評価の対象外として扱いますので、ご諒承ください。
3 平常点 In-class Points 10% 各回の授業でのCourse Powerの掲示板や質問機能を利用した議論への参加状況をもとに授業での貢献度を判断し評価します。
教科書/Textbooks
 著者名
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タイトル
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出版社
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1 近藤和彦著 イギリス史10講 岩波書店 2013.12 9784004314646 940円+税 ブリテン諸島の形成から現在までのイギリスの歴史を新書版一冊で概説していて、著者の個性が極めて色濃く現れています。また、イギリス史を題材とした文学・映画・美術・音楽などへの目配りもきいています。「オンライン授業」での対話の素材としては、最適と思えますので、教科書とします。
参考書/Reference books
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1 井野瀬久美惠 [著] 大英帝国という経験 講談社 2017.12 9784062924696 1310円 (税別) イギリスは、帝国を持ったことでどのような経験をし、その経験からどのような「物語」と記憶が生まれ、現在のイギリスがそれらとどのように向き合っているのかが、語られている好著。 蔵書情報 / Library information
2 秋田茂著 イギリス帝国の歴史 中央公論新社 2012.6 9784121021670 880円+税 イギリス帝国の成立から現在への影響まで、アジアの視点からたどった問いかけの書。 蔵書情報 / Library information
3 小林恭子著 英国公文書の世界史 中央公論新社 2018.3 9784121506139 880円+税 夏目漱石のロンドンでの下宿の記録、タイタニック号からの救助を求める電報など英国公文書館が所蔵する史料を写真で紹介し日本語で説明するだけでなく、それらへのアクセス方法や関連するwebページの存在も明示している有益な一冊。 蔵書情報 / Library information
4 川北稔著 砂糖の世界史 岩波書店 1996.7 4005002765 760円+税 砂糖という甘い食材への人類の欲望が歴史にどのような影響を与えたのか、イギリスの奴隷貿易や奴隷制廃絶運動との関わりも含めて説いた名著。20年以上前に岩波ジュニア新書の一冊として出版された本ですが、今でも新鮮な刺激を与えてくれる本です。 蔵書情報 / Library information
5 W・A・スペック著 ; 月森左知, 水戸尚子訳 イギリスの歴史 創土社 2004.6 4789300277 2500円+税 イギリスで発行された通史を翻訳したもの、イギリスではどのようにイギリス史が理解されているのかを知るには役立ちます。 蔵書情報 / Library information
6 青木康 歴史総合パートナー 議会 清水書院 2018.8 9784038950886 1000円+税 イギリスを中心とし、日本の国会の歴史も視野に入れた、簡にして要を得た概観です。
7 山田英春写真・文 巨石 早川書房 2006.6 4152087404 3800円+税 ストーンヘンジを始めとするブリテン諸島の巨石の遺跡を美しい写真と的確な文章で紹介した一冊。 蔵書情報 / Library information
8 南川高志著 海のかなたのローマ帝国 岩波書店 2015.12 9784000268608 3000円+税 ローマ帝国がブリテン諸島をどのように認識し属州ブリタニアをどのように支配していたのかについての研究の新版。 蔵書情報 / Library information
9 江藤淳[著] 漱石とアーサー王伝説 講談社 1991.6 4061589733 960円 昭和の日本を代表する批評家の一人が夏目漱石及びアーサー王伝説と格闘した成果である博士論文の講談社学術文庫での復刻版。 蔵書情報 / Library information
10 アッサー著 ; 小田卓爾訳 アルフレッド大王伝 中央公論社 1995.9 4122024129 アルフレッド大王の在世中にラテン語で書かれた伝記と関連資料を原典から訳し膨大な注と解説を加えたもの。ペリカン・ブックスの英語版と比較してみると興味深い。 蔵書情報 / Library information
11 鶴島博和 バイユーの綴織 山川出版社 2015.8 978463640726 4960円(税込み) バイユーのタペストリーをカラー図版で紹介すると共に銘文と関連資料の照合を徹底しておこなった研究。
12 松田隆美編 書物の来歴、読者の役割 慶應義塾大学出版会 2013.10 9784766420913 3000円+税 美術史家金沢百枝氏による「バイユーのタペストリー」論が含まれている。図像を主体とすることで鶴島氏とは異なる解釈が導き出されている。 蔵書情報 / Library information
13 近藤和彦著 近世ヨーロッパ 山川出版社 2018.11 9784634349520 729円+税 近世ヨーロッパ史についての最新の見解がコンパクトに提示されている研究。 蔵書情報 / Library information
14 仲丸英起著 名誉としての議席 慶應義塾大学出版会 2011.4 9784766418330 4200円+税 エリザベス一世の時代のイギリス議会と議員の特色を分析した研究。 蔵書情報 / Library information
15 山本信太郎著 イングランド宗教改革の社会史 立教大学出版会 2009.3 9784901988148 3990円 教会巡察の記録などを手がかりにイングランド宗教改革の実体を明らかにしようとする社会史の試み。 蔵書情報 / Library information
16 シェリダン・ギリー, ウィリアム・J・シールズ編 ; 赤江雄一 [ほか] 訳 イギリス宗教史 法政大学出版局 2014.10 9784588371226 9800円+税 イギリス宗教改革の意義や革命期に宗教が果たした役割を考える上で示唆深い通史。 蔵書情報 / Library information
17 平田雅博著 英語の帝国 講談社 2016.9 9784062586368 1700円+税 イギリス帝国史研究の第一人者、イギリス帝国史関連の研究書の翻訳者として知られる本学史学科の平田先生によるイギリス帝国史の視点からの英語の歴史。 蔵書情報 / Library information
18 岩井淳著 ピューリタン革命と複合国家 山川出版社 2010.5 9784634349537 729円(税別) イングランドとクロムウェルの視点から語られてきたピューリタン革命を、革命期のイギリスをイングランド・ウェールズ・スコットランド・アイルランドの複合国家と捉える観点から再評価しようとする試み。 蔵書情報 / Library information
19 羽田正 [著] 東インド会社とアジアの海 講談社 2017.11 9784062924689 1280円+税 イギリス・オランダ・フランスなどの東インド会社の活動を日本との関係を視野に入れて物語った一冊。 蔵書情報 / Library information
20 薩摩真介著 「海賊」の大英帝国 講談社 2018.11 9784065137321 1950円+税 イギリスの「海賊」という存在を「略奪」や「海軍」との関係の視点からたどった通史。 蔵書情報 / Library information
21 ジョン・ブリュア著 ; 大久保桂子訳 財政=軍事国家の衝撃 名古屋大学出版会 2003.7 4815804656 4800円+税 17世紀後半から19世紀初頭のイギリスを財政軍事国家として捉えた研究。 蔵書情報 / Library information
22 リンダ・コリー著 ; 川北稔監訳 イギリス国民の誕生 名古屋大学出版会 2000.9 4815803870 6090円 名誉革命からナポレオン戦争にかけてのイギリスとフランスの間での抗争がイギリスの国民意識の形成にどのように作用したのかについての研究。 蔵書情報 / Library information
23 D・アーミテイジ著 ; 平田雅博 [ほか] 訳 独立宣言の世界史 ミネルヴァ書房 2012.3 9784623062072 3800円 アメリカ独立宣言が出された目的と独立宣言が出されたことが世界に与えた影響を明らかにしたグローバルヒストリーの好著。主な独立宣言の日本語訳や世界各地で出された独立宣言年表が付されているので有益。 蔵書情報 / Library information
24 青木康著 議員が選挙区を選ぶ 山川出版社 1997.1 4634481200 1832年の第一次選挙法改正以前のイギリスの庶民院議員選出の仕組みを通じて当時のイギリス社会の特色を明らかにした研究。 蔵書情報 / Library information
25 デイヴィッド・エルティス, デイヴィッド・リチャードソン著 ; デイヴィッド・ブライオン・デイヴィス序文 ; デイヴィッド・W・ブライト解説 ; 増井志津代訳 環大西洋奴隷貿易歴史地図 東洋書林 2012.6 9784887218017 9500円+税 奴隷貿易の実相を地図を用いヴィジュアルに示した好著。 蔵書情報 / Library information
26 オラウダ・イクイアーノ著 ; 久野陽一訳 アフリカ人、イクイアーノの生涯の興味深い物語 研究社 2012.8 9784327180553 3400円+税 奴隷商人により奴隷とされたイクイアーノが奴隷から解放され奴隷制廃絶運動に尽くすまでの経緯を物語った「自伝」。奴隷であった人たちが残したエゴドキュメントの貴重な日本語訳。 蔵書情報 / Library information
27 C.A.ベイリ著;平田雅博〔ほか〕訳 近代世界の誕生 上・下 名古屋大学出版会 2018.12 9784815809294 各4860円 フランス革命から第一次世界大戦までの時期に世界がいかにして近代世界に変容したのか、そしてその近代世界とはどのようなものであったのかを検証したグローバルヒストリーの名著の日本語訳。
28 長谷川貴彦著 産業革命 山川出版社 2012.11 9784634349544 729円+税 「産業革命」という概念がどのように形成され、現在ではどのように捉えられ論じられているのかを明確に説いた一冊。 蔵書情報 / Library information
29 角山栄著 産業革命と民衆 河出書房新社 1980.4 4309608906 産業革命の時代の社会と民衆の姿を具体的に明らかにした一冊。工場労働者がどこに住み何を食べどのようなタイムテーブルで働き、休日はいつでどのように過ごしたのかといった基本的なことがらが書かれいることも貴重。 蔵書情報 / Library information
30 君塚直隆著 ヴィクトリア女王 中央公論新社 2007.10 9784121019165 903円 ヴィクトリア女王の生涯とその生きた時代を鮮やかに描いた一冊。 蔵書情報 / Library information
31 田中彰著 岩倉使節団『米欧回覧実記』 岩波書店 2002.12 4006000928 1000円+税 岩倉使節団の旅について考える起点となる一冊。 蔵書情報 / Library information
32 金坂清則著 イザベラ・バードと日本の旅 平凡社 2014.10 9784582857542 880円+税 イザベラ・バードの『日本紀行』の完訳者による概観。先行する翻訳の問題点を指摘する部分の比重がおおきすぎるようにも思えるのだが、翻訳するということの意味を考える上で、貴重。 蔵書情報 / Library information
33 木畑洋一 帝国航路を往く 岩波書店 2018.12 9784000283854 2592円(税込み) イギリス帝国本国と世界各地を結ぶ帝国航路を19世紀半ばから20世紀半ばまでの日本人たちがどのように旅し、何を見たのかについての研究。
34 D. キャナダイン著 ; 平田雅博, 吉田正広訳 イギリスの階級社会 日本経済評論社 2008.3 9784818819979 3888円(税込み) イギリスの階級社会についての歴史的研究。 蔵書情報 / Library information
35 J・M・ウィンター著 ; 猪口邦子監修 ; 深田甫監訳 兵士と市民の戦争 平凡社 1990.8 4582495141 2800円 古い本ですが、第一次世界大戦が人々の生活にとってどのような意味を持ったのかについて多くの図版を使って物語った日本語で読める本としては、現在でも有益であると思えます。 蔵書情報 / Library information
36 水谷三公著 イギリス王室とメディア 筑摩書房 1995.9 4480857133 20世紀のイギリスがスキャンダルを乗り越えいかにして存続することを果たしたのか、メディアの果たし役割に注目した研究。文春学芸ライブラリーからの新版が2015.10に出ている。 蔵書情報 / Library information
37 小谷汪之著 インド社会・文化史論 明石書店 2010.9 9784750332642 4200円+税 イギリスの植民地支配がインド社会にもたらしたものについての実証的研究。 蔵書情報 / Library information
38 木畑洋一著 支配の代償 東京大学出版会 1987.4 4130250698 1800円 イギリスの植民地支配がイギリスにもたらしたものについての刺激的研究。 蔵書情報 / Library information
39 長谷川貴彦著 イギリス現代史 岩波書店 2017.9 9784004316770 780円+税 第二次世界大戦後のイギリス現代史についての最新の概観。 蔵書情報 / Library information
40 須貝信一著 インド財閥のすべて 平凡社 2011.9 9784582856040 760円+税 タタ財閥を始めとする現代インドの財閥の植民地時代からの歩みを概観した新書。 蔵書情報 / Library information
41 藤井毅著 歴史のなかのカースト 岩波書店 2003.4 4000268449 2600円+税 インドのカースト制度の歴史についての研究。イギリスの植民地支配の中でカースト制度が果たした役割がわかる。 蔵書情報 / Library information
42 オーウェン・ジョーンズ著 ; 依田卓巳訳 チャヴ 海と月社 2017.7 9784903212609 2400円+税 現代イギリス社会で進行している階級格差についての問題提起の書。 蔵書情報 / Library information
43 Junko Sakai Japanese Bankers in the City of London Routledge 2015.6 9781138863958 5259円(税込み) オーラルヒストリーの研究者酒井順子さんがロンドン駐在日本人銀行員とその家族に対して起こった聞き取り調査の成果をまとめた書。英語で書かれ2004年に刊行されてすぐにペパーバックになったものの新版。日本語版はまだない。
44 Stuart Hall Familiar Stranger; A Life between Two Islands Penguin Books 2018.4 9780141984759 1502円(税込み) カルチャー・スタディーズの思想家であるホールの生まれ故郷であるジャマイカと移民先であるイギリスでの経験に基づいた自伝的考察で遺著。
45 C.A.Bayly Remaking the Modern World 1900-2015 Wiley Blackwell 2018.9 9781405187169 3812円(税込み) 『近代世界の誕生』の続編で死の直前まで書き続けられていた現代史でありグローバルヒストリーをめぐる歴史的研究。
メッセージ/Message
 この授業は、「オンライン授業」(オンデマンド型)で行いますが、教科書と教材をもとに、Course Powerを利用して前向きな議論をおこなうことを通じて、皆さんが、この苦難の時代を生き延びてゆくための何かしらの手がかりを手にしていただくことを切望しているからです。
 現代は、新型コロナウィルス感染症の問題に限らず、地球と人類の将来に渡る存続が可能かどうかの瀬戸際にあるとされている問題が山積みになっている危機の刻であるとも言われています。環境問題であれ格差や差別の問題であれ、私たちの周りで不安を募らせる形で渦巻いています。
 日本とも繋がりが深く、日本と似ている点も多いとされているイギリスの国家・社会・人々が、どのように過去の戦乱・災害・疾病・差別などと向き合ってきたのかを、この授業で学び、考え、議論することを通じて、皆さんと共に、未来への明るい燭となるものを探したいと思います。
その他/Others
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