講義内容詳細:複素解析Ⅰ

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年度/Academic Year 2021
授業科目名/Course Title (Japanese) 複素解析Ⅰ
英文科目名/Course Title (English) Complex Analysis I
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 神谷 亮
英文氏名/Instructor (English) KAMIYA Ryo

講義概要/Course description
複素関数とは、複素数を変数とし、複素数値を返す関数のことである。複素関数に対しても極限を用いて微分可能性が定義されるが、特に各点で微分可能である複素関数を正則関数と呼ぶ。正則性は「各点で微分可能である」というだけの性質であるが、実数の場合と異なり実はとても強い条件であり、例えば短い曲線の上での関数の値だけから領域全体での関数の値が一意に定まってしまう。それにより、例えば指数関数や三角関数などはそれぞれただ一通りの正則関数に拡張されることもわかる。
関数の定義域を複素数の世界にまで拡げることにより、実数の世界でだけ考えていたときよりも関数の特性が明確になることも多い。例えば、べき級数の収束半径は、べき級数により定まる複素関数の特異点とべき級数の中心との距離に一致する。また、例えば煩雑であったり技巧的であったりした実関数の定積分の積分も、複素領域における特異点の情報を利用することにより、驚くほど簡単に計算できたりする。
この講義では、上に述べた性質を含む、複素関数の基本的かつ重要な性質学んでいく。
同時期に開講される「複素解析Ⅰ演習」とともに履修することを強く勧める。
達成目標/Course objectives
(1)有理関数、三角関数、指数関数をはじめ、基本的な複素関数の値や極限を計算できるようになる。
(2)正則性、複素線積分、孤立特異点、留数など、基本的な用語の定義を説明できるようになる。
(3)講義で扱う、正則性と関係する重要な性質(コーシー・リーマンの関係式、コーシーの積分定理、コーシーの積分公式、留数定理など)を理解し、具体的な設定のもとで使えるようになる。
(4)留数定理の利用、および三角不等式等による積分の評価により、実関数の積分を行えるようになる。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
(1)同時期に開講される「複素解析Ⅰ演習」とともに履修することを強く勧める。
(2)解析IA , IB, 解析学Ⅱの内容を仮定する。特に数列の極限や関数の極限と連続性、1変数の微分積分、偏微分、1変数のテイラー展開、べき級数の扱いについては、理解して使いこなせることが望まれる。
(3)解析学Ⅲで学ぶ線積分の扱いに慣れていることが望ましい。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 第一週のみ「オンライン授業(オンデマンド型)での実施」である。
複素関数論を学ぶための基本的な概念を理解することが目標。
複素数と複素平面、極形式、三角不等式、極限、複素関数の連続性と複素微分可能性、正則関数の定義を解説する。
事前学習/Preparation CoursePowerへの接続を確認する。4月1日までにCoursePowerに初回の講義資料をアップロードするので、初回講義前に入手しておくこと。また、上記履修条件に述べた概念のうち、自力で言葉の意味や概念を説明できないものについて、ノートにまとめ直しておく。
事後学習/Reviewing (1)用語の定義を説明できるようにする。
(2)定理の主張を説明できるようにする。定理の利用例を挙げてみる。
(3)定理の証明を自分で述べられるようにする。
(4)講義資料に記載の演習問題・および、複素解析Ⅰ演習の問題に取り組む
質問がある場合、随時メールしてよい。
2
授業計画/Class 正則性の定義を理解し、具体的な関数の正則性を調べられるようになることが目標。
正則性の定義の後、コーシー・リーマンの関係式の解説をし、その後で正則関数の例として、多項式関数、有理関数、指数関数、三角関数について述べる。
事前学習/Preparation 以前の内容の復習と演習。
事後学習/Reviewing 初回の「事後学習」欄を参照。
3
授業計画/Class 複素線積分の定義を理解することが目標。
正則関数の例の続きとして、対数関数、一般のべき関数について解説する。
また、曲線の定義と曲線に沿った複素線積分の定義を解説する。
事前学習/Preparation 以前の内容の復習と演習。
事後学習/Reviewing 初回の「事後学習」欄を参照。
4
授業計画/Class 実際に複素線積分が計算できて、自分で性質を調べられるようになることが目標。
複素線積分の基本的な性質を解説し、いくつかの基本的な関数および曲線に対して実際に複素線積分を計算することで、コーシーの積分定理への導入を行う.
事前学習/Preparation 以前の内容の復習と演習。
事後学習/Reviewing 初回の「事後学習」欄を参照。
5
授業計画/Class コーシーの積分定理がなぜ成り立つのかを概ね理解することが目標。
導関数が連続であり、さらに曲線が比較的扱いやすい場合に限定してコーシーの積分定理を証明する。
より一般的な場合の証明について、簡単に補足する。
また積分路の変更についても解説する。
事前学習/Preparation 以前の内容の復習と演習。
事後学習/Reviewing 初回の「事後学習」欄を参照。
6
授業計画/Class コーシーの積分定理について、主張を理解し、使えるようになることが目標。
前半ではコーシーの積分公式とその積分計算への応用について解説する。
後半ではべき級数の基本事項について解説する。
事前学習/Preparation 以前の内容の復習と演習。
事後学習/Reviewing 初回の「事後学習」欄を参照。
7
授業計画/Class べき級数に関する諸概念、およびべき級数で定義された関数が正則であることを理解することが目標。
複素数列、複素級数の収束と発散について述べ、べき級数の収束半径、べき級数の四則演算と微分・積分に関して解説する。
事前学習/Preparation 以前の内容の復習と演習。
事後学習/Reviewing 初回の「事後学習」欄を参照。
8
授業計画/Class 正則関数が各点を中心としてべき級数展開できることを理解することが目標。
正則関数のべき級数展開、一致の定理について解説する。また、一致の定理を利用した定義域の拡張(解析接続の原理)に関して解説する。
事前学習/Preparation 以前の内容の復習と演習。
事後学習/Reviewing 初回の「事後学習」欄を参照。
9
授業計画/Class 孤立特異点のまわりの関数の挙動をローラン展開を用いて扱えるようになることが目標。
孤立特異点におけるローラン展開、極と真性特異点について解説する。実際にどのようにローラン展開を計算するかについて、いくつか具体例を用いて解説する。
事前学習/Preparation 以前の内容の復習と演習。
事後学習/Reviewing 初回の「事後学習」欄を参照。
10
授業計画/Class 孤立特異点の情報がどのように複素線積分に影響するのかを理解することが目標。
極における留数の定義を与える。また、留数定理について解説する。
事前学習/Preparation 以前の内容の復習と演習。
事後学習/Reviewing 初回の「事後学習」欄を参照。
11
授業計画/Class 留数定理を使いこなせるようになることが目標。
留数定理を用いた複素積分の計算について解説する。
事前学習/Preparation 以前の内容の復習と演習。
事後学習/Reviewing 初回の「事後学習」欄を参照。
12
授業計画/Class 複素解析を利用して、有理関数の講義積分などの比較的簡単な実積分を計算できるようになることが目標。
留数定理をもとに、三角不等式などによる積分値の評価も利用して実積分を計算する方法を解説する。
事前学習/Preparation 以前の内容の復習と演習。
事後学習/Reviewing 初回の「事後学習」欄を参照。
13
授業計画/Class 複素解析を利用した実積分の計算法をより理解することが目標。
前回学んだことに加え、積分路の取り方を工夫するなどにより、より一般の実積分を計算する方法について解説する。
事前学習/Preparation 以前の内容の復習と演習。
事後学習/Reviewing 初回の「事後学習」欄を参照。
14
授業計画/Class 正則性により関数値がどのような制限を受けるか、理解することが目標。
コーシーの積分公式の応用例として、最大値の原理、リュービルの定理を学ぶ。リュービルの定理を用いて代数学の基本定理を証明する。
事前学習/Preparation 以前の内容の復習と演習。
事後学習/Reviewing 以前の内容の復習と演習。
15
授業計画/Class 講義の内容全体を整理する。また、試験の概要について、説明する。
事前学習/Preparation 以前の内容の復習と演習。
事後学習/Reviewing 初回の「事後学習」欄を参照。
それまでの演習でできなかったものを考え直す。
授業方法/Method of instruction
板書・プロジェクターの利用による講義形式。講義室での対面授業の予定。
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 70% 期末試験を行う。
2 レポート Report 30% 中間レポートを課す。
教科書/Textbooks
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1 利用しない。講義資料を適宜配布する。
参考書/Reference books
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タイトル
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出版年
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1 谷口健二,時弘哲治 複素解析 (理工系の数理) 裳華房 2013 4785315598 もう一方のクラスで使われるであろう教科書です。その他の参考書は講義資料内で随時紹介していきます。
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