講義内容詳細:文化としての科学・技術A

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 文化としての科学・技術A
英文科目名/Course Title (English) A Cultural Approach to Science and Technology A
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 岸田 一隆
英文氏名/Instructor (English) KISHIDA Ittaka

講義概要/Course description
 「通常型」の対面授業です。第1回のみ「オンデマンド型」のオンライン形式で行います。Course Power と YouTube を使用します。Course Power に記載の指示に従ってください。
 この講義では「人文系文化と科学系文化の分裂と両者のコミュニケーション」に関する話題について取り上げます。
 大学受験を通じて、私たちの多くは文系と理系に色分けされてしまいます。しかし、それはなぜなのでしょうか。同じ人間なのに、単純に2種類に区別される正当な理由などあるのでしょうか。そもそも、どうして文系科目に適性がある人と、理系科目に適性がある人がいるのでしょう。その差は何なのでしょうか。
 科学・技術の文化としての特徴は、それが「蓄積型文化」だということです。科学・技術は強い累積性を持ち、過去の知識の上に新しい知識を積み重ねるように進歩していきます。そのため、現代の物理学者の科学的認識の正確さは、アリストテレスはもちろん、ニュートンやアインシュタインの科学的認識よりも確実に上です。一方の人文系文化については、それが言葉で作られている以上、ある程度の累積性は持っているはずなのですが、科学・技術に比べて累積性は小さいものでした。そのため、現代の小説家の作品が、古代ローマの詩人ウェルギリウスの叙事詩よりも、文学的価値が上であるとは言い切れません。
 この講義の目的は、科学・技術の文化としての特徴をきちんと理解することによって、近現代になって深い溝が生じてしまった二つの文化の間をつなぐコミュニケーションについて自分の考えを持つことです。その目的のためにも、遠回りながら、人間の思考法の癖についても取り上げます。そして最終的には、「未来を選択するために科学・技術とどう向き合うか」について議論し、成熟した民主主義の姿を模索します。
達成目標/Course objectives
 この講義は以下の3つを目標にしています。
1 人間の特徴と科学・技術の特徴について深く理解する
2 科学コミュニケーションについて自分なりの考えを持つ
3 人類文明の未来について総合的な意見を述べる力を養う
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
なし
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class この講義の概要:オンライン授業(オンデマンド型)での実施
2
授業計画/Class 二つの文化(科学コミュニケーションの歴史)
3
授業計画/Class 二つのコミュニケーション(情報伝達と共感・共有)
4
授業計画/Class 人は生まれながらにして文系(人間の社会性)
5
授業計画/Class 物理学的世界の深奥(人間の論理性)
6
授業計画/Class 人間の限界(進化による考え方の形成)
7
授業計画/Class 手引きの科学から説明の科学へ(合理と神秘の間に揺れてきた歴史)
8
授業計画/Class 急成長期の始まり(技術の累積性と近代科学革命)
9
授業計画/Class 科学への向き合い方(文と理の分裂の地域差)
10
授業計画/Class 新しい時代に向けて(科学コミュニケーションの現代的意義)
11
授業計画/Class 第三の方法へ向けて(共感・共有のための可能性)
12
授業計画/Class STAP騒動(共感・共有の危険性)
13
授業計画/Class 成熟した新時代のために(リベラルアーツによる精神の自立)
14
授業計画/Class 世界を変えられるか(グローバル・ルールとローカル・デザイン)
15
授業計画/Class 〈自由討議〉あなたは科学・技術をどう考えるか
 
事前学習/Preparation  拙著『科学コミュニケーション』を、あらかじめ読んでおくことをお勧めします。この本の内容と順序にほぼ準拠して、講義を進めます。本の内容に関する事前の質問も受け付けます。もう一つの参考文献『エネルギー文明論』の中には、コミュニケーションに関する興味深い実例が示されています。併せてお勧めします。
事後学習/Reviewing  講義の事後学習としては、ややハードルの高い課題を提示します。あなたが文系なら理系の友人を、あなたが理系なら文系の友人を探してください。そして、考え方の差異が明らかになるいくつかの問いを発して、議論してみましょう。なお、学期末試験では、事後学習の成果を問う問題も出題します。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 試験 Exam 80% 定期試験は小問と論述問題で構成されています。
2 平常点 In-class Points 20%
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
 
1 岸田一隆著 科学コミュニケーション 平凡社 2011.2 9784582855739 760円+税 蔵書情報 / Library information
2 岸田一隆著 「青学発」岸田教授のエネルギー文明論 エネルギーフォーラム 2019.12 9784885555053 1500円+税 蔵書情報 / Library information
メッセージ/Message
 講義で提供したいのは情報や知識ではありません。枠組みです。それは情報・知識をどこに位置づけるのか、それを判断するための地図です。リベラルアーツ(教養)を学ぶことの意味とは、多様な枠組み・物差し・価値観を身につけることであり、それはあなたの生きる力そのものに結びつきます。
 一方、細かな情報や知識は自分自身で手に入れようと努力することが大切です。それには、事前学習と事後学習と質問が欠かせません。
 毎回の授業の中で質問コーナーを設けます。出席カードに記入された質問を、次の授業で回答します。どんな質問でもかまいません。積極的に参加してください。また、講義の改善を目的に「無記名アンケート」を行う予定です。
その他/Others
 火曜日3限をオフィスアワーとして、学生の質問や相談を受け付ける時間にあてます。気軽に研究室を訪ねてください。