講義内容詳細:現代社会と教育人間学A

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 現代社会と教育人間学A
英文科目名/Course Title (English) Modern Society and Human Education A
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 秋山 茂幸
英文氏名/Instructor (English) AKIYAMA Shigeyuki

講義概要/Course description
 教育人間学とは、教育のことがらに関して何か考えるとき、学問の壁にこだわらず、哲学、歴史学、社会学、心理学などなど、必要とあれば何でも持ってきて使う「何でもあり」の便利な学問(総合の科学)です。ですから、この授業は何かの「学問を学ぶ」というよりも、いろいろな「学問を使って」教育に関する様々な問題について考察していきます。もしくは、教育という営みを手がかりにして人間と社会に関する素朴な「問い」について、たくさん考えていきたいと思います。考えるべきテーマは、いじめ、体罰、学歴競争、格差社会、子どもの貧困、教育の無償化、少年犯罪、学級崩壊、道徳の教科化、いのちの教育、早期の英語教育、特別支援教育などなど・・・現在ホットに議論されている問題や現政権の教育改革に関する時事的な問題など、私やみなさんの生活や経験、興味関心に根ざしたものなら何でもありです。
 授業は前期と後期それぞれ独立しながらも、同じ「問い」を角度や切り口を変えて二つの学期にまたがって扱うこともあります。そのなかでも前期では、特に教育と人間に関する問題に焦点をあてながら、教育の基本的な第一歩目の「問い」について考えていきたいと思います。
 ところで、みなさんは、これまでとても長い時間「教育」を受けてきたと思います。その意味で、教育はみなさんを創ってきた極めて大きなファクターであるといえます。したがって教育について考えることは、みなさんの「これまでの人生を振り返ること」であり、それをベースにして「これからの人生のビジョンを描くこと」につながる営みです。自分がどんな人間であり、これからどのような人生を歩みたいのか、この授業がそういった問題を考える一つのきっかけになってくれればと思います。
達成目標/Course objectives
(1)教育学、発達論、人間学、人間形成論の歴史的・原理的な基本的事項を説明できる。
(2)近代教育学の理論を出発点とし、脱学校論や反教育学の議論(ポストモダン、ポストコロニアリズムを基礎とした教育学の理論)への変遷を理解し、教育に関する未来のビジョンを描くことができる。
(3)心の教育、いのちの教育、道徳教育、宗教と教育といったテーマについて、基礎的な知識を身につけ、自分の考えを表現できる。
(4)自らの被教育体験を足場の出発点としながら、それを相対化・対象化しつつ社会歴史構造的な一般の文脈から捉えなおし、さらに再び三人称的な一般論を自らの問題として一人称化していくような、演繹と帰納の循環に参入できる。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
なし
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class ※「オンライン授業(オンデマンド型)での実施」(Course Powerをご確認ください)
教育原理論:教育って結局のところオトナによる強制・支配ですか?
2
授業計画/Class 教育意味論:教育はあなたを「幸せ」にするでしょうか?それとも教育と「幸せ」はまったく関係ありませんか?
3
授業計画/Class 教育目的論:何のために勉強するのでしょう?そもそも教育の目的、人生の目的って何でしょう?
4
授業計画/Class 教育と格差・子どもの貧困:この格差社会の中で「落ちこぼれる」のは自己責任ですか?環境や周りのせいにするのは「言い訳」ですか?
5
授業計画/Class 教育における排除と包摂:「みんな」のために腐ったミカンは排除すべきでしょうか?
6
授業計画/Class 学歴社会論:企業が本当に学歴不問、人物本位の採用をしだしたら大学なんかに来たりしない?
7
授業計画/Class 競争の理論:グローバル競争の時代、やっぱり教育に競争は必要ですか?勉強は他人に勝つためにやるものですか?今の日本の「競争のルール」は公平ですか?
8
授業計画/Class 選抜・配分の理論:何でも「見える化」の今の時代、そもそも人間って数字で評価できますか?AO入試や面接など選抜の方法はいろいろありますが、数字で評価できないものをいかに公平に評価しましょうか?
9
授業計画/Class 若者の人間関係論:「個性が大事」とか「個性を育てろ」とか、「個性」を煽りすぎじゃないですか?個性を伸ばすことと協調性を養うことは両立可能でしょうか?
10
授業計画/Class いじめ問題:いじめは「犯罪」ですか?学校に警察をどんどん介入させるべきですか?「いじめ」と「いじり」の境界線は?
11
授業計画/Class 体罰と指導死:体罰は「絶対悪」ですか?「言ってもわからない子ども」にどう指導しますか?体罰と指導、しつけと虐待、暴力と愛、境目はどこにありますか?
12
授業計画/Class 道徳教育論:あなたは「これが良い生き方だから、あなたもこのように生きなさい」と誰か(子ども)に押し付けることができますか?それが出来ないなら、みんなバラバラに自分勝手な価値観で生きていけばよいですか?
13
授業計画/Class 教師論1:教師は、相談しやすい兄姉のような「友達教師」であるべきですか?それとも、規律や秩序を大切にする厳しい「管理教師」であるべきですか?
14
授業計画/Class 教師論2:教育ってサービス(ビジネス・商品)ですか?子どもや保護者は「お客さま」ですか?教師はサービス提供者でしょうか?高い学費を払っている学生に教員は「いらっしゃいませ」と言うべきですか?
15
授業計画/Class 教育の社会化?理論:トラブルやリスクを回避するために、教師はもう勉強だけ教えていればいいのであって、学習指導以外の仕事はカウンセラーや法律家、部活の外部指導員、警察官などに外注して任せるべきですか?
 
事前学習/Preparation 事前に提示した資料を読み込み、コメントを掲示板に投稿する。
事後学習/Reviewing 授業で提示された関連情報などにアクセスしたり、参考文献を図書館などで手に取り、授業の理解を深める。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
補足事項/Supplementary notes講義、グループディスカッション、プレゼンテーションの三つを軸に展開します。
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 100% 1.各回の掲示板に記入するコメント(60%):以下の観点から評価します。
・読解力:授業内容を理解したうえで、文献の主旨や資料の要点を正確に把握しているか
・オリジナリティ:自分の中にオリジン(源)がある主張を自分の言葉でできているか
・説得力:自らとは異なる意見を持つ他者を可能限り説得できるような根拠・論拠が提示できているか
・表現力:ひとりよがりにならず、メッセージが受け取り手にきちんと届くように論述できているか

2.授業への参加度(40%):以下の観点から評価します。
・ディスカッションやプレゼンテーションそして授業全体に対して主体的に参加しているか
・グループ・ワークにおいて、対話的・協調的な態度・志向性が見られるか
・自らが問いを発見し考えていくといったような「能動的に学ぶ姿勢」があるか
・プレゼンテーションにおいて、「他者に自分の意見を伝えたい」という積極的な意欲を持ち、自らの主張がわかりやすく示されているか

教科書/Textbooks
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1 特に用いない。授業内でプリントを配布。
参考書/Reference books
 著者名
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タイトル
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出版社
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出版年
Published year
ISBN価格
Price
 
1 西平直著 教育人間学のために 東京大学出版会 2005.4 4130513109 2600円 蔵書情報 / Library information
2 汐見稔幸 [ほか] 編著 よくわかる教育原理 ミネルヴァ書房 2011.4 9784623059263 2800円+税 蔵書情報 / Library information
3 堀尾輝久著 教育入門 岩波書店 1989.1 4004300541 620円 蔵書情報 / Library information
4 大田堯著 教育とは何か 岩波書店 1990.1 400430105X 620円 蔵書情報 / Library information
5 教育思想史学会編 教育思想事典 勁草書房 2017.9 9784326251223 7800円+税 蔵書情報 / Library information
6 佐藤学ほか 岩波講座 教育 変革への展望 全7巻 岩波書店 2016
メッセージ/Message
授業とは本来、参加者間で即興的に織り成す作品です。もしくは、すべての行動が予め計画されパッケージ化されたような旅行ではなく、偶然の出会いによってこそ豊かさをふくらませる旅と言えるでしょう。セレンディピティを大切にするような授業にしていきたいです。
その他/Others
毎回、事前に検討予定文献を読み込んで来ることが授業参加の前提です。