講義内容詳細:キリスト教概論Ⅱ

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) キリスト教概論Ⅱ
英文科目名/Course Title (English) Introduction to Christianity Ⅱ
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 河野 克也
英文氏名/Instructor (English) KAWANO Katsuya

講義概要/Course description
 キリスト教は過去2000年の間、地中海世界から始まって世界中に政治的・経済的・文化的な影響力を広げていった。国際化がますます加速するなか、キリスト教が文化や民族のアイデンティティーにおいてどのような位置を占めているのか、なぜそうなのかを理解することは重要であろう。そこで、このコースの第一部では、現代の小説や映画などポピュラー・カルチャーにおいて様々に描かれて(あるいは歪曲されて)いるキリスト教の描写を手がかりに、キリスト教と文化の関わりについて批判的に考察する。第二部では、具体的に複数の聖書箇所を歴史的・文学的に読むことを通して、聖書の使信が現代社会に対して投げかけているチャレンジを浮き彫りにすることを試みる。特に、旧新約聖書を貫く社会的弱者に向けられた神の愛を辿るとともに、旧新約聖書の中から法に関連するテクストを取り上げ、その具体的な分析を通して、聖書における義/正義の概念の現代的意義を検討する。
達成目標/Course objectives
 履修者は、キリスト教概論Ⅰの履修を通して習得した、キリスト教の経典(正典)である旧新約聖書についての基礎的な理解を土台としつつ、より具体的に聖書全体を貫く思想内容を把握することが期待される。第一部においては、キリスト教に対する一般的な誤解やステレオタイプに対して、正確な歴史理解に基づいた批判的理解を獲得することを目指す。第二部では、貧しく抑圧された人々を選ぶ神という聖書の神理解が、具体的に社会的正義への関心として展開されていることを確認し、その視点を現代の様々な不正義に対する批判と、さらに正義の実現のためのヴィジョンとして獲得することを目指す。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
キリスト教概論Ⅰ
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class オリエンテーション
 シラバスをもとに、クラスの目的、評価方法、授業計画など、この科目の全体について説明をする。その際に、参考文献などについても説明する。また、この科目の全体を貫く問題提起をし、クラスの方向づけを行なう。さらに、聖書について簡単に概要を説明する。

事前学習/Preparation キリスト教概論Ⅰで学んだことをある程度振り返り、概論Ⅰの履修を通して自分のキリスト教に対する考えや理解がどのように変わったかを考えてみる。
事後学習/Reviewing 配布されたシラバスをもとに、講義の全体像を把握する。
2
授業計画/Class (第1部:ポピュラーカルチャーとキリスト教)
●新約聖書の時代:『ユダ福音書』とグノーシス主義【イスカリオテのユダの実像?】
 近年発見・公開された『ユダ福音書』をめぐって、様々な評価がなされている。はたしてユダはイエスを銀貨30枚で神殿当局に売り渡した裏切り者か、それとも弟子の中で唯一イエスを理解し、その信頼に応えた真の弟子か?『ユダ福音書』の記述から何を読み取るべきか、グノーシス主義の背景を踏まえて考察する。 
事前学習/Preparation *課題図書 各福音書および使徒言行録におけるイスカリオテのユダに関する記述(マルコ3:13-19//マタイ10:1-4;ルカ6:12-16、ヨハネ6:60-71、マルコ14:1-50//マタイ26:1-56; ルカ22:1-53; ヨハネ12:1-8; 13:1-34; 18:1-14、マタイ27:1-10//使徒1:12-26)。『地の塩、世の光』「4. イエス・キリスト」、「6.福音書記者ヨハネ」。
*辞典項目『岩波キリスト教辞典』「ユダ(イスカリオテの)」「グノーシス」、Wikipedia(英語版が充実):「イスカリオテのユダ」「ユダの福音書」。 *ナショナルジオグラフィック ニュース:「ユダの福音書」の持つ意味
事後学習/Reviewing コースパワーにアップロードする資料、および講義スライドのPDFに目を通し、授業内容を振り返る。
3
授業計画/Class ●初代教会の時代(1):『ダ・ヴィンチ・コード』とキリスト論
 ダン・ブラウンによる小説『ダ・ヴィンチ・コード』の出版および映画化によって、歴史のイエスとマグダラのマリアの関係に関心が集まった。また、初期キリスト教の成立過程についても、イエスを神とする信仰が皇帝の圧力によって成立したとするブラウンの主張の歴史的真偽をめぐって論争が繰り広げられた。迫害される少数者であった初期キリスト教が、コンスタンティヌス帝による公認を経てローマ帝国の唯一の公認宗教へと変貌する過程で、キリスト教にどのような変更が生じたのか、小説で争点とされたポイントを辿りつつ確認する。

事前学習/Preparation *課題図書 マグダラのマリアに関連する福音書箇所(マルコ15:33-16:8//マタイ27:45-28:20;ルカ23:44-24:12; ヨハネ19:17-20:18、ルカ8:1-3)。
*辞典項目『岩波キリスト教辞典』「マリア(マグダラの)」。
*事前に映画『ダ・ヴィンチ・コード』を観るか、小説を読んでおくと、話がわかりやすいと思います。
事後学習/Reviewing コースパワーにアップロードする資料、および講義スライドのPDFに目を通し、授業内容を振り返る。
4
授業計画/Class ●初代教会の時代(2):『アレクサンドリア』と史料問題
 映画『アレクサンドリア』は、紀元5世紀初頭にエジプトのアレクサンドリアで起こった女性哲学者・数学者ヒュパティアの虐殺事件を描く。映画では当時の総主教キュリロスに責任を負わせ、異教徒を迫害するキリスト教の残虐さを描いているが、はたしてこの理解は正確だろうか? キリスト教がローマ帝国の唯一の公認宗教となり精力を拡大する中、長くアレクサンドリアを拠点としてきたユダヤ教徒との対立や、学問の中心として繁栄してきたアレクサンドリアの異教の伝統への対応など、時代背景を睨みつつ考える。
事前学習/Preparation *課題図書 使徒18:24-28。
*辞典項目『岩波キリスト教辞典』「アレクサンドリア」「新プラトン主義」。Wikipedia(英語版が充実):「アレクサンドリア(映画) = Agora (film)」「ヒュパティア」「ネオプラトニズム」。
*事前に映画『アレクサンドリア』を見ておくと、話がわかりやすいと思います。
事後学習/Reviewing コースパワーにアップロードする資料、および講義スライドのPDFに目を通し、授業内容を振り返る。
5
授業計画/Class (第2部:現代社会において聖書を批判的に読む)
●出エジプトとヨベルの年:解放の神・契約の神
 聖書全体を貫く神のイメージは、弱者を憐れみ解放する神である。古代イスラエル宗教の原体験は、エジプトでの奴隷生活からの解放の出来事(出エジプト: Exodus)であった。この経験が神理解を決定的に性格づけ、神との契約が神の民イスラエルを根本的に性格づける。さらに神による救済のイメージは、この出エジプトを原型として拡大していく。この奴隷解放のヴィジョンは、現代社会に何を問いかけるだろうか?

事前学習/Preparation *課題図書 出エジプトの出来事に関する箇所(出エジプト1:1-4:17; 6:1-13; 11:1-10; 12:29-42)、神との契約に関する箇所 (出エジプト19:1-20:-21; 24:1-11)、契約内容・法に関する箇所 (出エジプト22:20-26; 23:4-9; レビ記19章; 申命記24:5-22)、ヨベルの年に関する箇所 (レビ記25章)、およびヨセフ物語(創世記37; 39-41; 46-47章)。『地の塩、世の光』「2. モーセ」。*辞典項目『聖書神学事典』「贖い」「十戒」「法」「ヨベルの年」、『キリスト教平和学事典』「解放の神学」「契約」「正義」。
*副読本 『シャローム・ジャスティス』第4章。
事後学習/Reviewing コースパワーにアップロードする資料、および講義スライドのPDFに目を通し、授業内容を振り返る。
6
授業計画/Class ●預言者の問題提起:平和のヴィジョン
 キリスト教の歴史(特に西洋のキリスト教)は、戦争を起こし侵略し抑圧した支配者の歴史として浮かび上がる。それは「平和を実現する人々は幸い」と語り、敵を愛することを教えまた実践したイエス・キリストのヴィジョンとは、ほど遠いものである。イエスの平和のヴィジョンを旧約聖書の預言者の伝統に遡り、そこから私たちの生きる現代社会に対する問題提起を読み取りたい。

事前学習/Preparation *課題図書 平和に関する箇所 (イザヤ1:1-2:22; 8:23b-9:6; 11:1-12:6; 52:1-12; ゼカリヤ9:1-10; マルコ11:1-11)、戦争と不正義の批判・裁きに関する箇所(サムエル記上8:1-22; イザヤ13:1-14:23; 31:1-9; 58:1-14; アモス5:1-27; 8:1-14; 黙示録18:1-24)。『地の塩、世の光』「3. イザヤ」「6.黙示録のヨハネ」。
*辞典項目『聖書神学事典』「怒り」「主の日」、『キリスト教平和学事典』「イエスの平和思想」「軍備」「十字軍」「戦争とキリスト教」「平和・平和主義」。
*副読本 『シャローム・ジャスティス』第7章、第8章。
事後学習/Reviewing コースパワーにアップロードする資料、および講義スライドのPDFに目を通し、授業内容を振り返る。
7
授業計画/Class ●パウロの異邦人宣教(1):民族主義の克服
 イエスの平和のヴィジョンは、パウロを経由して民族主義の克服へと展開される。イエスを信じる群れに後から加わった異邦人(非ユダヤ人)クリスチャンに対して、ユダヤ人との同化を要求する強硬派に抗して、パウロは無割礼の異邦人クリスチャンを擁護し、教会におけるユダヤ人と異邦人の和解・一致に命を賭した。キリスト教会はこのパウロの遺産を継承するはずだが、現実には多くの場合、民族対立に巻き込まれている。あらためてイエスからパウロへと辿り直しつつ、果たして宗教改革の信仰義認論がパウロを正確に提示しているかどうかも、併せて検討したい。

事前学習/Preparation *課題図書 民族主義の克服に関する箇所(イザヤ19:1-25; 56:1-8; ヨナ3:1-4:11; ルカ9:51-55; 10:25-37; 17:11-19; ローマ1:1-4:25; 9:1-36; ガラテヤ3:26-29; エフェソ2:11-22)。『地の塩、世の光』「5. パウロ」。
*辞典項目『岩波キリスト教辞典』「エスノセントリズム」「ナショナリズム」、『キリスト教平和学事典』「エスニシティ」「ナショナリズム」。
事後学習/Reviewing コースパワーにアップロードする資料、および講義スライドのPDFに目を通し、授業内容を振り返る。
8
授業計画/Class ●パウロの異邦人宣教(2):格差との闘い
 パウロによるイエスの平和のヴィジョンの展開は、民族主義の克服に限定されるものではない。教会内に無批判に持ち込まれていた身分や貧富の格差をパウロは徹底的に批判し、神のもとにある平等を実践するよう説いた。この精神は聖書全体を貫いている。社会が身分的・経済的格差を拡大させるのに対して、教会は格差を克服させる福音を説き、それを目に見える形で実践するものである(はずだ)。

事前学習/Preparation *課題図書 マタイ6:19-24;1コリント1:26-31; 11:17-34; フィレモン1-25 (cf. 1コリント7:17-24); ヤコブ2:1-17; 4:13-6; 1ヨハネ3:16-18。『地の塩、世の光』「16.マーティン・ルーサー・キング」。
*辞典項目『岩波キリスト教辞典』「キリスト教社会主義」、『キリスト教平和学事典』「社会主義」「『障害者』との共生」「人権とキリスト教」「奴隷制」「被差別部落問題」「貧困」。
事後学習/Reviewing コースパワーにアップロードする資料、および講義スライドのPDFに目を通し、授業内容を振り返る。
9
授業計画/Class ●信仰義認論の功罪:初期ユダヤ教の法思想
 近年日本でもにわかに注目を浴びるようになった「パウロ研究の新しい視点」(NPP)は、紀元1世紀のユダヤ教理解を劇的に改善したE.P. サンダースの研究が発端となっている。サンダースが初期ユダヤ教の「宗教の型」として提示した「契約遵法主義」の検討を通して、同時代のユダヤ教の法思想を辿りつつ、パウロとユダヤ教に共通する神理解を探りたい。さらに「キリストの真実/信実/信仰」をめぐる問題も、併せて検討したい。


事前学習/Preparation *課題図書 ガラテヤ1:1-4:20; ローマ1:1-3:31; フィリピ2:1-18; 3:1-4:1。辞典項目『聖書学用語辞典』「初期ユダヤ教」「パウロ研究」「ラビ文献」「ラビ・ユダヤ教」。
事後学習/Reviewing コースパワーにアップロードする資料、および講義スライドのPDFに目を通し、授業内容を振り返る。
10
授業計画/Class ●旧約聖書の法思想:神の聖性・憐れみ深さを生きる
 旧約聖書に記されている出エジプトとシナイ山での契約及び律法授与の物語は、イスラエルをエジプトの奴隷の家から導き出した神の憐れみ深い解放の業を物語る。この憐れみ深さを自らのものとして引き受けて、共同体/社会を形成することを神の前に誓ったのがシナイ契約であり、その社会の雛形を示したのがモーセ律法である。パウロと1世紀のユダヤ教から、あらためて時代を遡って、旧約聖書の法思想を確認したい。

事前学習/Preparation *課題図書 出エジプト記19:1-24:18; レビ記19:1-37; 申命記16:18-20; 17:2-13; 19:1-21; 21:1-22:29; 23:16-25:16、列王記上3:1-28。辞典項目 『聖書神学事典』「十戒」「法」、『聖書学用語辞典』「契約遵法主義」「契約の書」「決疑法」「十戒」「神聖法集」「人道法」「断言法」「法典」。
*副読本 『シャローム・ジャスティス』第6章。
事後学習/Reviewing コースパワーにアップロードする資料、および講義スライドのPDFに目を通し、授業内容を振り返る。
11
授業計画/Class ●新約聖書の法思想:ルカ福音書の譬え物語から
 ルカ福音書に記されているイエスの譬え物語から、裁判ないし法に関連したものを二つ取り上げる。一つは「やもめと裁判官」の譬え、もう一つは「ファリサイ派の人と徴税人」の譬え。神による正義の裁きは、抑圧された者にとって救いとなる。では、神による正義の裁きは、何を基準とするのだろうか? 神による正しい裁きを救いとする考えは、地上の悪しき王に対する批判の根拠となるとともに、正しい裁き主としてのメシアの到来を待ち望む信仰へと収斂されて行った。このメシア思想を、新約聖書のイエス像の背景として探る。

事前学習/Preparation ルカ18:1-8, 9-14、詩編35編; 72編; イザヤ32:1-8、エゼキエル34章、マタイ12:15-21; 18:10-14; 25:31-46。

事後学習/Reviewing コースパワーにアップロードする資料、および講義スライドのPDFに目を通し、授業内容を振り返る。
12
授業計画/Class ●史的イエスをめぐる法的状況(1):安息日論争の真の争点
 新約聖書には、イエスと宗教指導者(ファリサイ派/律法の専門家)の論争が複数記されている。特に、労働が禁じられている安息日に癒しを行ったイエスに対する激しい非難が際立っているが、果たしてそれは律法解釈をめぐる論争だったのだろうか? それとも、自らを神と等しくしたイエスの存在に対する敵意からくる、著しく偏った攻撃だったのだろうか? いくつかの箇所を検討しつつ、新約聖書のキリスト論を探る。

事前学習/Preparation *課題図書 マルコ2:1-3:6, 20-30; 7:1-23; ヨハネ5:1-47; 9:1-41。
*副読本 『シャローム・ジャスティス』第9章。
事後学習/Reviewing コースパワーにアップロードする資料、および講義スライドのPDFに目を通し、授業内容を振り返る。
13
授業計画/Class ●史的イエスをめぐる法的状況(2):イエスの裁判と十字架
 キリスト教は、イエスの十字架を救済の出来事として理解する。しかし歴史的には、イエスの十字架は当時パレスチナを統治していたローマ帝国による処刑であった。ローマに反逆した者を見せしめとして社会的に抹殺することで、ローマは反逆を企む者たちを萎縮させたのである。そのローマ側の事情に加えて、ユダヤ側にも、イエスの処刑を望む事情があった。何れにせよ、イエスの十字架刑は不当な裁きによる不当な処刑であった。神によるイエスの復活は、この権力者による不当な処刑を覆す、神によるイエスの承認・復権である。贖罪について考えるに先立って、まずは十字架刑を歴史的に正確に理解する必要がある。
事前学習/Preparation *課題図書 マルコ14:26-16:8//マタイ26:31-28:10//ルカ22:39-24:12//ヨハネ18:1-20:10; 使徒2:14-42; 3:1-26。
事後学習/Reviewing コースパワーにアップロードする資料、および講義スライドのPDFに目を通し、授業内容を振り返る。
14
授業計画/Class ●贖罪論をめぐる諸問題:法的説明の功罪と修復的正義
 前回に引き続き、イエスの十字架刑を扱うが、ここでは十字架を救済の出来事として説明する後の教理的整理をめぐる諸問題に目を向けたい。イエスの十字架がどのように救済の出来事となるかを説明する神学の分野を「贖罪論」と呼ぶ。カンタベリーのアンセルムスによって導入された法的説明の「充足説」は民事訴訟のモデルを当てはめたものだが、宗教改革者ジャン・カルヴァンは、それを刑事訴訟のモデルに先鋭化して「刑罰代償説」として整備した。果たしてその説明は、現代もなお説得力を持つものだろうか? それとも、神を暴力的存在として歪めてしまったとの批判(特にフェミニスト陣営から)が、真理をついているのだろうか? 今日、刑事司法の分野で注目されている「修復的正義/司法」の視点から、贖罪論を改めて検討してみたい。
事前学習/Preparation シラバスに指定された「課題図書」(聖書箇所、『地の塩・世の光』の指定部分、辞典項目)に目を通し、授業の主題について事前理解を得ておく。
*副読本 『シャローム・ジャスティス』第5章。
事後学習/Reviewing コースパワーにアップロードする資料、および講義スライドのPDFに目を通し、授業内容を振り返る。
15
授業計画/Class ●まとめ:信仰の合理性
 最終回は、キリスト教信仰の合理性について考えてみたい。日本では、特に1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件(カルト集団による無差別テロ)の影響もあり、「宗教は怖い」という感覚が強い。この感覚は、遡ればキリシタン禁制期の凄惨な迫害と、キリシタン排除のために作られた檀家制度によって醸成されたものでもある。特定の宗教にコミットすることが「狂信的」で「カルト的」という誤解に対して、キリスト教信仰は(そして伝統的な宗教もまた)合理的な営みであることを理解することは、グローバル化する世界において宗教とテロとを短絡的に結びつける誤謬を避けるために、極めて重要だと考える。

事前学習/Preparation シラバスに指定された「課題図書」(聖書箇所、『地の塩・世の光』の指定部分、辞典項目)に目を通し、授業の主題について事前理解を得ておく。
事後学習/Reviewing コースパワーにアップロードする資料、および講義スライドのPDFに目を通し、授業内容を振り返る。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
補足事項/Supplementary notes 授業の方法については、初回(コース全体のオリエンテーション)のみオンデマンド方式になります。
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 60% ①授業へのレスポンス(15回)
 講義内容に関して、また課題図書の内容に関して、学んだ点や疑問点を所定の用紙1枚に簡潔にまとめ、講義終了時に提出してください。授業へのレスポンスは、毎回の授業への積極的な取組みの判断材料として評価します。
 初回は概論1を履修したことを踏まえて、現在キリスト教についてどのように考えているか、またこれまでのキリスト教との関わりや、概論2の講義に期待することなどを書いてください。初回のみオンデマンドですので、コースパワー上に設定した提出先に、直接入力で提出してください。
2 レポート Report 40% ②学期末のタームペーパー (Term Paper)
 課題は講義⑨までに出題します。A4サイズ5枚程度(5,000-6,000字)にまとめて、指定期間中にコースパワー上に提出してください。
*提出ファイル名:学生番号+ローマ字氏名+TermPaper
*縦置き・横書き:1,000-1,200文字/頁、MS明朝体等で10-11ポイント程度(参考値)
*直接引用はカギ括弧「」で示し、丸括弧()か、脚注で出典を明記すること
*要約する場合は、該当部分の終わりに丸括弧()か、脚注で出典を明記すること
教科書/Textbooks
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1 聖書協会共同訳 小型 日本聖書協会 2019 482021344X 3,300 翻訳テクストとしては、聖書協会共同訳を使用しますが、すでに持っている聖書があれば、新共同訳(日本聖書協会)でも、新改訳2017(新聖書刊行会、2017年)でも構いません。聖書の理解を深める資料付きのものとしては、新共同訳聖書『バイブルプラス』(The Bible +)がおすすめです。バイブルプラスの利点は、巻頭・巻末にあるカラー資料がついている点です。また同じく横組みの新共同訳聖書『ハンディーバイブル』にも当てはまりますが、巻末の白黒の付録が充実しています。*バイブルプラスのカラー資料部分は、独立して出版されていて入手可能ですので、聖書協会共同訳聖書と併せて持っておくと便利だと思います。
2 青山学院宗教センター編 地の塩・世の光:人物で語るキリスト教入門 教文館 2006 4764272539 付属のCD-Romも活用してください。
参考書/Reference books
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1 ペリー・B. ヨーダー著 ; 河野克也, 上村泰子共訳 シャローム・ジャスティス いのちのことば社 2021.8 9784264042884 2300円+税 この本は、学期末のタームペーパーのための参考図書の1冊です。同時に、コース全体の理解を助けるための「副読本」として位置づけてあります。少しずつ読み進められるように、講義第2部において、具体的に関連する章を指定しておきました。 蔵書情報 / Library information
2 クリス・マーシャル著 ; 片野淳彦訳 聖書の正義 いのちのことば社 2021.2 9784264042402 1300円+税 2月20日に出版になります。訳者は、日本で修復的正義の実践に取り組むとともに、著者と同じ米国インディアナ州のアナバプテスト・メノナイト聖書神学校の平和学修士過程で学んだ理論家でもあります。学期末のタームペーパーの参考図書とする予定です。 蔵書情報 / Library information
3 ハワード・ゼア著 ; 西村春夫, 細井洋子, 高橋則夫監訳 修復的司法とは何か 新泉社 2003.6 4787703072 2800円 かなり内容の濃い本です。よりコンパクトなものとしては、同著者による『責任と癒し:修復的正義の実践ガイド』(築地書房、2008年)もありますが、入手困難なようです。 蔵書情報 / Library information
メッセージ/Message
キリスト教概論Ⅰを通して、すでに一定程度の理解を持っていることを前提に授業を進めます。授業は講義が中心になりますが、事前に課題図書を読み、一定の知識を習得した上で、内容理解を深める形で進めていきますので(反転授業)、事前の予習を心がけてください。講義では、スライドによる資料提示を行い、講義後にスライドPDFをコースパワー上で提供するようにいたします。内容としては、巷で話題になった小説や映画も取り上げますし、また皆さんの関心とも関わる社会的正義の問題を集中して取り上げます。ぜひ興味をもって授業に取り組んでください。
*授業中の私語は、周囲への迷惑になるので厳に謹んでください。
その他/Others
*欠席は3回まで:4回以上欠席の場合は「欠席 X」という最終評価になります。
 事情があって欠席した場合の救済措置として、前年度の講義動画を提供し、後日視聴してレスポンスをコースパワーの所定の提出先に直接入力で提出するように設定します。

*礼拝レポート
 なお、大学礼拝については、課題として成績評価の対象とはしませんが、説教内容の要約と説教に対するレスポンスを、A4サイズ1枚(1,000文字程度)にまとめて、指定期間中にコースパワー共通教材ページの提出先に提出してくだされば、僅かながらボーナス点を差し上げます(現時点では1回1点を考えています:数多く提出しても大した加点にはなりませんが、成績のためではなく、魂の養いのために、ぜひ礼拝動画をご覧ください)。
 提出する場合は、礼拝に関する基本情報(礼拝の日付、説教者名、聖書箇所、説教題)を忘れずに明記してください。
*提出ファイル名:学生番号+ローマ字氏名+Chapel+通し番号