講義内容詳細:科学・技術の視点(個別科目)

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 科学・技術の視点(個別科目)
英文科目名/Course Title (English) Perspective of Science and Technology (Independent Courses)
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 千葉 淳一
英文氏名/Instructor (English) CHIBA Junichi

講義概要/Course description
地球の歴史/科学の歴史/科学と社会・市民

前半:地球の科学―地球と生命の歴史・自然災害・地球温暖化問題について―

 みなさんは地球の大きさを実感していますか?地球は私たち人間の時間・空間スケールとはかけ離れた大きさを持っていることはお分かりでしょう。でも地球は宇宙から見たら本当に小さな存在と考えることもできますね。そして、今や人間社会は地球全体の環境を変化させるほどの影響力を持つに至りました。ただし、生物が地球の環境を激変させた(それまでの環境を破壊した)事例は過去にもありました。その結果人類が地球上に誕生することができたと言うこともできます。地球の歴史及び現在の地球の状況に関して、最新の科学的知見を紹介して行きますが、事項や数値を記憶していただく必要も、そのつもりもありません。まずは地球に関する実感を持っていただき、地球との付き合い方を考えていただきたいと思います。地球環境問題に関する独自のオピニオンを持ち、それを論理的に表現できるようになることが目標です。


後半:科学とは何か

 科学(とその成果および科学者)は、みなさんが今どうすべきか?という問いに対して答えを出すことは、本来できません(答えを与えているように見えることも多いですが、本当は「そう見える」だけなのです)。とはいえ現代社会で科学を完全に無視して生きていくことも危険です。後半の講義では、科学とはどういう性質を持っているのか、どの程度の真実を明らかにしているものなのか、科学者の言っていることはどの程度信じられるのか、ということをみなさんと一緒に考えて行きたいと思います。こちらでも「どの学者がどういうことを言っている」とか、「何年頃どのような科学的進歩があった」といった知識を記憶していただくつもりはありません。みなさんがこれから科学的知見をどのように人生に生かしていくか?ということを体得していただくことを目標とします。
達成目標/Course objectives
テーマ1:地球の歴史から温暖化を考える。

到達目標1:地球の時間・空間スケールを実感する。また、地球環境問題に関する独自のオピニオンを持ち、それを表現することができる。

テーマ2:科学という営みの持つ性質を知る。

到達目標2:科学を盲目的に信頼せず、科学の成果を正しく利用し、科学政策に関する独自のオピニオンを持ち、それを表現することができる。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class イントロダクション 地球の変動①(大陸移動説)オンライン(オンデマンド型)
講義全体のねらいの説明。地球に関する基本情報の確認をする。その後ウェゲナーの大陸移動説について説明する。
2
授業計画/Class 地球の変動②(プレートテクトニクス説①)
いったん葬り去られてしまった大陸移動説がどのように復活したのか、海洋低拡大説から現代のプレートテクトニクス説を説明する。
3
授業計画/Class 地球の変動③(プレートテクトニクス説②)
現代の地球で起こっている変動をプレートテクトニクス説で説明する。
4
授業計画/Class 地球の変動④(プレートテクトニクス説③)
日本列島の生い立ち、弧状列島の一生をプレートテクトニクス説に基づいて説明する。
5
授業計画/Class 地球の変動⑤(プルームテクトニクス説)
プレートテクトニクス説は、地球表面で起こる現象を説明するのに最適な理論だが、地球内部、地球体積の大部分を占めるマントル以深で何が起こっているかの説明はできない。これを補うプルームテクトニクス説を紹介する。
6
授業計画/Class 地球環境の変動①(色々な環境変動要因)
今日、人為的な地球温暖化の進行が問題とされている。地球環境を「守る」という言葉が使われることも多い。しかし、地球環境は地球の誕生以来大きく変化してきた。さまざまな地球環境の変動要因を紹介し、地球環境を「守る」べきかどうかを考える。
7
授業計画/Class 地球環境の変動②(生命の発生、シアノバクテリアによる地球汚染)
生命はどのように発生し、どのように進化してきたのか。生命の起源に関するさまざまな学説を紹介する。また、25億年前に起こった地球全体の環境汚染事件について説明する。
8
授業計画/Class 生命の歴史(生命の進化)
生物はどのようなメカニズムで進化するのか。進化のメカニズムに関しても本当にさまざまな学説がある。現在の進化生物学を解説する。
9
授業計画/Class 地球温暖化をどう考えるか
先に説明した白亜紀の地球温暖化イベント、および25億年前の地球汚染事件は何を意味するのか?我々はどう考えるべきなのか?担当者の見解を紹介する。
10
授業計画/Class 科学とは何か①
科学の成果とはいったいどこまで真実なのか?そもそも科学とは何か?「科学」という言葉の定義は何なのか?「正統な科学」と「疑似科学」の境目は何なのか?「科学」という言葉が指し示すものを、その「手法」から探っていく。
11
授業計画/Class 科学とは何か②
「科学」に特有な手法はなく、無理に科学を定義すると色々な学問が「科学」でなくなってしまう。そこで「科学とは何か?」に答えるために、まずは古代から近代までの科学史を概観する。
12
授業計画/Class 科学とは何か③
「科学とは何か?」という問いに答えようとしてきた科学史家、科学哲学者、科学社会学者の考えを紹介する。科学とは合理的認識のチャンピオンか?はたまた単なるカルト宗教か?
13
授業計画/Class 科学のスキャンダル
STAP細胞事件とはなんだったのか。科学の品質管理システムはどういう事態に弱いのか。そしてその弱点を補ったものはなんだったのか。非専門家はこの事件をどう活かすことができるのかを考える。
14
授業計画/Class 情報リテラシーと科学
新型コロナウィルス感染症に関しては、様々な不確実情報が流布されている。本感染症のほか、東日本大震災や熊本地震の時にも様々な不確実情報、特にそれらの事象全体あるいは一部が、特定の国家、組織等の陰謀であるかのような不確実情報が流布された。こう言った不確実情報に接した時、どうしたら真偽を見分けることができるのか。ぶっちゃけた言葉で言うと、デマに引っ掛からないために、何ができるか、考える。
15
授業計画/Class 科学とどのように付き合うか
現代の社会においては「科学の成果」が会社・自治体・国など大きな組織を動かすための合理的根拠として用いられることが多くなっている。しかし、多くの人の人生に関わる大きな政策決定を「科学」に任せてもよいのか?また、科学の成果とはそこまで確実なものなのか?水俣病、地震予知、狂牛病などについて、行政と科学と企業の関係について考える。
われわれ市民一人ひとりは科学の成果とどう向き合い、どのように利用し、どのように人生の選択に用い、また、自分の考え方、世界観に反映させていくのか?
 
事前学習/Preparation 足利事件について各自概要を知っておくこと。
事後学習/Reviewing 講義内で指示
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 レポート Report 100% 2回のレポートで評価します。

レポートの評価のポイントは、

 ① その時点で得られる様々な科学情報の信頼度を自分なりに評価しているか?

 ② ①に基づいて自分なりのオピニオンを確立することが出来ているか?

 ③ 自分のオピニオンの根本にある価値観を自覚できているか?

の3点です。もちろん論理的であること、明確であることは必須です。

また不正な引用(コピー&ペースト)には厳正に対処します(即座に不合格とします)。

教科書/Textbooks
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1 特定の教科書は使用しません。
参考書/Reference books
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1 参考文献等は講義時に紹介します。
メッセージ/Message
本講義は知識の切り売りを目的とはしておりません。講義時間内は聞くことに徹して、手っ取り早く科学の知識を吸収しようとお考えの方は、期待はずれに終わると思います。知識階級としてふさわしい能力・・・それは現代においては、知識そのものではなく、情報を吟味する能力と、論理的思考力、そしてそれを合理的な文章で発信する能力です。そう言ったものを身につけるために、積極的な方の履修をお待ちしております。