講義内容詳細:グローバル文学演習Ⅰ/グローバル文学演習

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) グローバル文学演習Ⅰ/グローバル文学演習
英文科目名/Course Title (English) Seminar in Global Literature Ⅰ/Seminar in Global Literature
学期/Semester 前期/通年 単位/Credits 2/4
教員名/Instructor (Japanese) 結城 正美
英文氏名/Instructor (English) YUKI Masami

講義概要/Course description
このゼミでは環境文学(映画を含む)を扱います。気候変動にみてとれるように、人間の活動が地球環境そのものを変えている現在、私たちの言動すべてが環境の問題につながっていると言っても間違いではありません。環境の問題の範囲は実に広いのです。

環境文学にみられる多様なテーマのなかで、2022年度のゼミは「人型ロボットとの未来」に焦点をあてます。

「ロボット」という語は、チェコスロバキアの作家カレル・チャペックの戯曲 『R.U.R.』(1920年)が初出で、この作品以降、ロボットものは人類殲滅のシナリオを発展させてきました。潮目が変わるのはアイザック・アシモフ『われはロボット』(1950年)で、この小説で「ロボット工学の三原則」(第一条、ロボットは人間に危害を与えてはならない。〔…〕第二条、ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。〔…〕第三条、ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。)が示されると、人間とロボットの共存に関心が向けられるようになります。そして、21世紀に入って人型ロボットの開発が本格化するにつれ、人間とロボットを対立的にとらえる見方は退き、人間とロボットの相互関係にもとづく新たな社会を模索する動きが生まれました。

ロボットをめぐる想像力やロボットへの態度は、自然と生じたわけではなく、チャペックやアシモフの作品をはじめとする文学や映画によってかたちづくられたと言えます。人型ロボットとの未来を考える際にも、文学や映画は重要な参照点となります。

以上を念頭におき、前期は、人間と人型ロボットとの関係を描いたKazuo Ishiguroの小説Klara andthe Sun (2021)を講読します。人型ロボットKlaraを語り手とするこの小説では、ロボット(小説ではAF=ArtificialFriendと呼ばれます)が人間よりも人間らしく感じられる場面が少なくありません。技術を介して生が営まれている現在、「人間らしさ」とは何なのか、幸福とは、社会とは何なのか。人間によって造られたKlaraの「価値観」を読み解きながら、考えていきましょう。
達成目標/Course objectives
・作品を精緻に読むことができる。
・社会的文脈と関連づけて作品を読解することができる。
・作品を多角的・批判的な視点から分析することができる。
・作品分析を自分の言葉で表現することができる。
・学術的な体裁、形式、内容のレポートを書くことができる。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
グローバル文学特講(結城担当/エコクリティシズム)を履修済み、または今年度(金曜3時限)履修することが望ましい。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class (April 5) イントロダクション(オンデマンド型)
2
授業計画/Class (April 12)Klara and the Sun, Part 1
3
授業計画/Class (April 19) Klara and the Sun, Part 2
4
授業計画/Class (April 26) Klara and the Sun, Part 2 (cont)
5
授業計画/Class (May 10) Klara and the Sun, Part 3
6
授業計画/Class (May 17) Klara and the Sun, Part 3 (cont)
7
授業計画/Class (May 24) Klara and the Sun, Part 4
8
授業計画/Class (May 31) Klara and the Sun, Part 4 (cont)
9
授業計画/Class (June 7) Klara and the Sun, Part 5
10
授業計画/Class (June 14) Klara and the Sun, Part 6
11
授業計画/Class (June 21) Klara and the Sun ふり返り
12
授業計画/Class (June 28) レポートに関するグループディスカッション
13
授業計画/Class (July 5) レポートアウトラインの口頭発表
14
授業計画/Class (July 12) レポート内容の口頭発表
15
授業計画/Class (July 19) レポート内容の口頭発表(cont)
 
事前学習/Preparation 授業で論じる範囲をあらかじめ読んでおく。
ディスカッションリーダー担当回は、スライドやハンドアウトを準備する。
事後学習/Reviewing 授業でのディスカッション内容をふりかえり、テクスト分析を深める。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 40% ディスカッションリーダーとしての役割、授業への参加・貢献
2 レポート Report 60% レポートの口頭発表を含む
課題(試験やレポート等)に対するフィードバックの方法/Feedback methods for assignments (exams, reports, etc.)
レポートアウトラインと口頭発表にコメントしますので、レポート執筆の参考にしてください。
レポート最終版はコメントを記して返却します。
教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
コメント
Comments
1 Kazuo Ishiguro Klara and the Sun Faber and Faber 2021 AGU Book Cafeに発注してあるので、4月に入ったらそこで購入してください。
メッセージ/Message
地球環境問題はスケールが大きすぎて自分ごととして捉えにくいですが、文学を通して自分の頭で考えることで、思考の取っ掛かりがつかめてくると思います。
本ゼミでは、地球環境問題を意識しながら作品を読みます。「自然との共生」を声高に叫ぶのではなく、それぞれが自分の頭で環境との関係を考えること。文学はそれを促してくれます。環境の問題に取り組みたい英米文学科のみなさん、本ゼミで「取っ掛かり」をつかんでください。
キーワード/Keywords
環境人文学 (Environmental Humanities)     環境文学 (environmental literature)     エコクリティシズム (ecocriticism)     人新世 (the Anthropocene)     AI     Kazuo Ishiguro     SDGs     gender