講義内容詳細:フランス文化研究Ⅱ

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) フランス文化研究Ⅱ
英文科目名/Course Title (English) Research in French Culture Ⅱ
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 軍司 泰史
英文氏名/Instructor (English) GUNJI Yasushi

講義概要/Course description
 皆さんはこれまで、小説や映画、ニュースあるいは旅行などを通じてフランスを理解し、それぞれにフランス観を持っていると思います。でも例えば、フランスの高校生がどのような勉強をして大学へ進学するかご存じでしょうか。この講義では、フランス人の日常生活や社会の成り立ち、政治・経済の仕組みなどをテーマ別に概観しながら現代フランスへの理解を深めます。
 フランスは「理念国家」と呼ばれることがあります。18世紀のフランス革命や人権宣言以来の理念、例えば自由、平等、博愛や人権、ライシテ(非宗教性)などが理想や規範として掲げられ、人々の意識に浸透しています。政治や社会が大きく動く際にも、参照されます。
 こうした姿勢は、フランスの社会や文化の魅力の源泉となっています。一方で、現在では政治的、社会的にさまざまなあつれきを生む背景ともなっています。
 フランス語の習得や現代フランスを理解するためには、この理念、つまりフランスに特有な発想や世界観を知ることが欠かせません。
 前期は主に、フランスの歳時記や教育、食文化、メディア、映画、フランスにおける日本文化など身の回りのことを中心に講義します。後期は女性運動や少子化対策、死刑廃止、フランスのイスラム教徒、移民の状況など個別テーマを深めます。フランスと他の欧州諸国、フランスと日本などを比較しつつ、世界におけるフランスの立ち位置についても理解できるようにします。
 私は1995年~99年、2008年~12年の2度にわたり、共同通信のパリ特派員を務めました。現在も編集委員として主に欧州情勢をウォッチしています。取材や現地での生活を基に、できるだけリアルなフランスを見つめていきます。
 講義ではフランスの新聞・雑誌などの記事を適宜使用します。また、後期には受講生をグループ分けし、現代フランスを理解するのに不可欠なテーマについてグループ発表をしてもらいます。なおフランス関連のニュースに対応して、授業の順番や内容が一部変更になることがあります。
 一連の講義が終了した際に、これまでフランスに抱いていたイメージが変わり、より多角的な理解ができていることを願っています。
達成目標/Course objectives
 フランスの政治、社会、文化への理解を深め、フランスから伝わるニュースを分析する能力を高める。フランス語の新聞や雑誌、ネット情報などを読んで実情が把握できることが目標となる。
履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
 フランス語の基礎的な知識。自分がフランスの何を知りたいかを事前に考えておいてほしい。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class 【初回のみオンライン授業(オンデマンド型)】後期のオリエンテーション。授業の進め方、授業で扱う各テーマの概要について全般的に説明し、グループ分けのアンケートを行う。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 授業で聞いた各テーマのうち、自分が調べてみたいもの、関心があるものを5つ選び、順位付けをする。それをミニレポートの形で提出する。
2
授業計画/Class 【全体講義】フランス現代史①ドゴールの時代。第2次大戦終結から第4共和制、植民地の独立、ドゴール再登場と第5共和制、5月危機、ドゴール退陣までを扱う。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、渡邊啓貴著「フランス現代史」、小田中直樹「フランス現代史」などを参照。
3
授業計画/Class 【全体講義】フランス現代史②ポンピドー、ジスカールデスタン、ミッテラン時代のフランス。栄光の30年、石油危機、移民問題の始まり、社会党大統領の時代。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、ジスカールデスタン著「権力と人生―フランス大統領回想録」、フランツオリヴィエ・ジスベール著「大統領ミッテラン」「神なき死 ミッテラン最後の日々」、ミシェル・ヴィノック「ミッテラン―カトリック少年から社会主義者の大統領へ」などを参照。
4
授業計画/Class 【全体講義】フランス現代史③シラク大統領からマクロン大統領まで。冷戦終結後の欧州と欧州統合、グローバル化の進展、さらにその後のユーロ危機、連続テロ、ポピュリスムの時代を概観する。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、軍司泰史「シラクのフランス」、アラン・バディウ「サルコジとは誰か」、アンヌ・フルダ著「エマニュエル・マクロン フランス大統領に上り詰めた完璧な青年」、尾上修悟「社会分裂に向かうフランス」などを参照。。
5
授業計画/Class 【グループ発表】フランスの女性運動。フランス革命と女性、参政権の獲得、中絶合法化からパリテ法まで。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、シモーヌ・ヴェーユ著「シモーヌ・ヴェーユ回想録 20世紀フランス、欧州と運命を共にした女性政治家の半生」などを参照。
6
授業計画/Class 【グループ発表】フランスの少子化対策。フランスでは子供の半数以上は、未婚の両親から生まれてくる。合計特殊出生率1・9の背景には何があるのか。家族制度、手当、結婚のあり方などを探る。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには中島さおり著「なぜフランスでは子供が増えるのか フランス女性のライフスタイル」、浅野素女著「フランス家族事情 男と女と子どもの風景」などを参照。
7
授業計画/Class 【グループ発表】死刑廃止をめぐって。フランスはミッテラン時代に死刑廃止を決めた。EU諸国の中ではかなり遅い国の一つ。背景に何があったのか。その後の死刑廃止を巡る賛否は。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、ロベール・バダンテール著「死刑執行」「そして、死刑は廃止された」などを参照。
8
授業計画/Class 【グループ発表】移民のフランス。フランス人の3~4人に一人は祖父母のいずれかが外国人とされる。移民は、どこからやって来たのか。歴史的な経緯と現代社会の実像を探る。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるにはミュリエル・ジョリヴェ著「移民と現代フランス」、ミシェル・ヴィヴィオルカ著「レイシズムの変貌」、森千香子著「排除と抵抗の郊外」などを参照
9
授業計画/Class 【グループ発表】イスラムのフランス。フランスはライシテ(非宗教性)の国家とされる。ライシテとは何か。なぜ、イスラム過激派の標的となるのか。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、伊達聖伸著「ライシテから読む現代フランス―政治と宗教のいま」エマニュエル・トッド著「シャルリとは誰か」、内藤正典著「ヨーロッパとイスラーム」などを参照。
10
授業計画/Class 【グループ発表】独仏関係と欧州統合。100年間で3度戦火を交えた独仏両国が、対立から和解へと進んだ歴史の背景になにがあったのか。欧州統合の歴史は。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、松井道昭著「独仏対立の歴史的起源」、ロベール・フランク「欧州統合史のダイナミズム」、チャールズ・グラント著「EUを創った男 ドロール時代十年の秘録」、金丸輝男編「ヨーロッパ統合の政治史」などを参照。
11
授業計画/Class 【グループ発表】過去と向き合うフランス。第2次世界大戦でナチスドイツに占領されたフランスは、ドイツのかいらい政権の下、ユダヤ人迫害にも加担した。現代のフランスは当時の罪とどのように向き合っているか。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、渡辺和行「ナチ占領下のフランス」、桜井哲夫「占領下パリの思想家たち」、軍司泰史「シラクのフランス」などを参照。
12
授業計画/Class 【グループ発表】フランスの社会運動。労働者のストやデモがなぜ盛んなのか。有給休暇や35時間労働が制度化された歴史的な経緯は。国境なき医師団(MSF)、国境なき記者団(RSF)などの団体は、どのようにして育ったか。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、大村敦志著「フランスの社交と法」、国境なき医師団編「国境なき医師団は見た 国際紛争の内実」、ロベール・メナール著「闘うジャーナリストたち 国境なき記者団の挑戦」などを参照
13
授業計画/Class 【グループ発表】ポピュリスムをめぐって。2017年や2022年の大統領選で、極右「国民戦線(FN)」のマリーヌ・ルペン党首が決選投票に進んだ。フランス政治の周縁から中心部へ躍り出たFN(現・国民連合(RN))とはどのような団体なのか。伸張するポピュリスムの実態を追う。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、畑山敏夫著「現代フランスの新しい右翼:ルペンの見果てぬ夢」、軍司泰史著「シラクのフランス」などを参照。
14
授業計画/Class 【グループ発表】フランスとテロリズム。テロの語源は、フランス革命にさかのぼる。2015~16年にテロを相次ぎ引き起こしたイスラム過激派の実像とは。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 理解を深めるには、ふらんす特別編集「シャルリ・エブド事件を考える」、白水社編「パリ同時テロ事件を考える」エマニュエル・トッド著「シャルリとは誰か」、国末憲人「テロリストの誕生」などを参照。
15
授業計画/Class 後期のまとめとレポートの説明。
事前学習/Preparation フランスの最新ニュースをウォッチする。
事後学習/Reviewing 授業での説明を受けて、レポートに取り組む。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
補足事項/Supplementary notes対面授業(通常型)で実施。
後期は受講生をテーマ別にグループ分けし、それぞれグループ発表をしてもらいます。発表をもとに、こちらから補足説明します。
第1回授業「オリエンテーション」で、発表してもらうテーマの概要説明、自分が調査・発表したいテーマに関するアンケートを行います。
第2~4回授業は、フランス現代史に関する全体講義を行います。グループ発表のヒントとなる素材が、この講義の中にも含まれています。
グループ発表は第5回授業から約10回分あります。オリエンテーションで実施するアンケートに基づいて、各テーマに受講生を割り振ります。第2回講義の冒頭でグループ分けを発表します。
オリエンテーションでは、各テーマごとに調べてみるべきキーワード及び参照すべき論文や文献のURLを教えます。文献の購入が不可能な場合でも、これらをたどることで各テーマが調べられるようにします。

活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 20% グループ研究発表と授業内小レポート、通年科目履修者の成績評価方法・・・10%
2 レポート Report 70% 期末レポート、通年科目履修者の成績評価方法・・・35%
3 その他 Others 10% 参加態度、積極性、貢献、通年科目履修者の成績評価方法・・・5%
課題(試験やレポート等)に対するフィードバックの方法/Feedback methods for assignments (exams, reports, etc.)
授業内容に関する疑問点は、毎回のミニレポートで質問して下さい。次の授業の冒頭で、皆さんの質問にまとめて答えます。
教科書/Textbooks
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1 講義は毎回スライドに基づいて行う。スライドは印刷し全員に配布する。これとは別に、受講生がグループ発表で作成したスライドや資料も印刷し配布する。
参考書/Reference books
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBN価格
Price
 
1 渡邊啓貴著 フランス現代史 中央公論社 1998.4 4121014154 920円 蔵書情報 / Library information
2 小田中直樹著 フランス現代史 岩波書店 2018.12
3 軍司泰史著 シラクのフランス 岩波書店 2003.9 4004308534 700円+税 蔵書情報 / Library information
授業関連情報/Class-related information
 件名/Title内容/Contents備考/Memo
1 メールアドレス t25017@aoyamagakuin.jp
メッセージ/Message
 グループ作業とプレゼンテーションを採用した理由は、「自分で調べてみる」「他の人に分かるように説明する」という手順が、テーマについての関心と理解を飛躍的に高めるためです。
 フランスの日常や身の回りのテーマを説明した前期に比べて、後期は今まさにフランスが直面する政治的、社会的課題を扱います。ハードルが上がります。簡単ではありませんが、こうしたテーマを自分で調べた経験は、達成感やさらなる関心につながるでしょう。
 スライドの作成などで困難がある場合は、遠慮なく相談して下さい。
 そのほかグループ発表の準備で分からないこと、理解が難しい部分があれば、メールなどでの質問も受け付けています。発表の準備段階から、私とやりとりを重ねることで、理解を深めていきましょう。
その他/Others
共同通信のパリ特派員として約8年間の在仏経験のほか、現在も年1~3回、フランス出張で取材を重ねており、フランスで何が起きているかを分析する講義に生かしていく。出席については、授業内の貢献度、参加度として扱う。
キーワード/Keywords
実務経験