講義内容詳細:日本語教育特講Ⅱ

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 日本語教育特講Ⅱ
英文科目名/Course Title (English) Lecture on Japanese Education Ⅱ
学期/Semester 後期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 田中 祐輔
英文氏名/Instructor (English) TANAKA Yusuke

講義概要/Course description
 現代に至るまでの日本語教育の歴史を概観するとともに、そこから見られる日本語教育の課題と展望について学ぶための科目です。
 近年、新在留資格「特定技能」の創設、「日本語教育の推進に関する法律」の成立など日本語教育に関わる大きな出来事が立て続けに起きています。現在の日本語教育は大きな転換期を迎えているとされ、日本語教育に関わる人々が未来の日本語教育を協働で考え構築することが求められているとされています。そうした中で日本語教育の「歴史」に思いを馳せることは大変重要です。なぜなら、私たちの日本語教育の実践、あるいは研究は、必ず何らかの形で過去から現在に至る人々の教育実践や学習の歩みと関わりを持つものであるからです。どのような教授法でも、どのような文法でも、どのような教材でも、過去から全く切り離された形で独立して成立することはあり得ず、先人たちの知見や経験、慣習、思想などから多分な影響を受けるものなのです。であるならば、これから展開される日本語教育について考える場合も、「私たちはどのような歩みを経て来たのか、なぜこうした教育が行われているのか」を理解する必要があると言えます。とりわけ、新たな教育内容や手法、さらには今後のビジョンを検討する際には、現行の教育が形成された過程を正確に理解していなければ、有効な変化を起こすことができずに、かけ声倒れに終わる可能性もあります。歴史的な考察は日本語教育の実践や研究に欠かすことができないと考えられるのです。
 日本語教育に関する社会的な合意形成をし、未来をともに構築するためには、今現在という視点のみでなく、過去も含めた通時的視点からの議論と考察を行うことが大切で、新たな時代の日本語教育もそこから拓かれてゆくものと考えられます。
 そこで、本科目では、日本語教育の歴史を振り返りながら、現在の日本語教育への示唆と、受講生自身の今後の実践と研究に役立つ知見、そして、日本語教育の将来ビジョン策定に資する指針を得ることを目標とします。
達成目標/Course objectives
1)現代に至るまでの日本語教育の歴史を理解することができる。
2)歴史を通して日本語教育の課題と展望について理解することができる。
3)受講生自身の実践と研究に歴史研究の手法と視点を役立てることができる。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class オリエンテーション【オンライン授業(オンデマンド型)】
事前学習/Preparation シラバスの確認
事後学習/Reviewing オリエンテーションで示された課題に取り組む
2
授業計画/Class 鎖国中の日本語教育(2)
・鎖国中の対外的窓口
・出島の日本語学習
・カール・ペーテル・ツンベルク
・フィリップ・フランツ・バルタザール・フォン・シーボルト
・琉球と蝦夷地での学習
事前学習/Preparation 鎖国中の4つの対外窓口の予習
事後学習/Reviewing シーボルトの日本研究についての調べ学習
3
授業計画/Class 開国後の日本語教育(1)
・ペリーが学んだ日本事情
事前学習/Preparation 開国後の日本語教育について予習
事後学習/Reviewing 作成された教科書の閲覧
4
授業計画/Class 開国後の日本語教育(2)
・外交官や通訳、宣教師、商人の日本語学習
・ジェームス・カーティス・ヘボン
・ラザフォード・オールコック
・アーネスト・メイソン・サトウ
・ウィリアム・ジョージ・アストン
・バジル・ホール・チェンバレン
事前学習/Preparation 外交官と通訳による日本語学習の予習
事後学習/Reviewing 外交官や通訳の作成した日本語教材の分析
5
授業計画/Class 明治期から戦時期までの日本語教育(1)
・日本国内の組織的日本語教育と教材
・松田一橘・松宮弥平
事前学習/Preparation 明治期の日本語教育の予習
事後学習/Reviewing 松宮弥平の日本語教材の分析
6
授業計画/Class 明治期から戦時期までの日本語教育(2)
・国定教科書
事前学習/Preparation 国定教科書の種類に関する予習
事後学習/Reviewing 各種国定教科書の特徴と違いについて考察
7
授業計画/Class 明治期から戦時期までの日本語教育(3)
・日露戦争と留学生教育
・清国留学生と嘉納治五郎・宏文学院と松本亀次郎
事前学習/Preparation 日露戦争と留学生数との関わりについて予習
事後学習/Reviewing 嘉納治五郎に関する資料をもとにした考察
8
授業計画/Class 明治期から戦時期までの日本語教育(4)
・国際学友会
事前学習/Preparation 国際学友会の予習
事後学習/Reviewing 国際学友会の日本語教科書の分析
9
授業計画/Class 日本語教科書の古代から戦時期までの歴史(1)
・世界で最古の教材とベストセラー教材
・宣教師のための日本語教材
・日本人漂流民の手による日本語教材
事前学習/Preparation 最古の教材の予習
事後学習/Reviewing ベストセラー教材の特徴分析
10
授業計画/Class 日本語教科書の古代から戦時期までの歴史(2)
・ヨーロッパ諸大学における日本語教材
・戦時期の日本語教材
事前学習/Preparation 欧州における日本語教育史の予習
事後学習/Reviewing 大戦期における日本語教材の分析
11
授業計画/Class 日本語教科書の現代史(1)
・戦後の日本語教育の流れと時代区分
事前学習/Preparation 終戦直後の日本語教育の予習
事後学習/Reviewing 長沼メソッドの分析
12
授業計画/Class 日本語教科書の現代史(2)
・復興期の教科書
・確立期の教科書
・成長期の教科書
・転換期の教科書
事前学習/Preparation 戦後日本語教科書の予習
事後学習/Reviewing 戦後日本語教科書の時代区分ごとの特徴分析
13
授業計画/Class デジタル歴史学(1)
・新たな記録と研究手法の登場
・各種技術と応用事例
事前学習/Preparation アーカイブの予習
事後学習/Reviewing 映像アーカイブを用いた分析
14
授業計画/Class デジタル歴史学(2)
・デジタルがもたらす可能性
事前学習/Preparation デジタル歴史学の予習
事後学習/Reviewing 期末プレゼンテーションの準備
15
授業計画/Class 期末プレゼンテーション
事前学習/Preparation 期末プレゼンテーションの準備
事後学習/Reviewing 講評について振り返り
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class 対面授業 / Classes in-person
実施形態/Class Method 通常型 / regular
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 50% 授業内の質疑応答やアクティビティ(指定教科書を利用した課題)への参加態度・パフォーマンスなどを評価します。
2 試験 Exam 50% 期末プレゼンテーションとして、本科目で学んだ歴史的な知見について、受講生自身の日本語教育実践、あるいは、研究といかに関わりを持つか、また、理論的枠組みをいかに活用することができるかに関するプレゼンテーション形式の試験を実施します。
教科書/Textbooks
 著者名
Author
タイトル
Title
出版社
Publisher
出版年
Published year
ISBNコメント
Comments
1 田中祐輔 『現代中国の日本語教育史』 国書刊行会 2015 9784336059420 第1回の授業までに丸善雄松堂(青山学院大学7号館 AGU Book Café)などで購入し、授業時にお持ちください。
メッセージ/Message
やむを得ない事情を除き、⽋席が3分の1(5回)を超えた場合は、成績評価の対象となりません。