講義内容詳細:各国経済論AⅠ[オンライン][金曜日開講・時限不定]

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年度/Academic Year 2022
授業科目名/Course Title (Japanese) 各国経済論AⅠ[オンライン][金曜日開講・時限不定]
英文科目名/Course Title (English) Economic Surveys of Advanced Countries AⅠ[Online]
学期/Semester 前期 単位/Credits 2
教員名/Instructor (Japanese) 桑原田 智之
英文氏名/Instructor (English) KUWAHARADA Tomoyuki

講義概要/Course description
本講義は、英国経済のみならず、日英両国の経済関係や関連する経済政策、英国経済の動向が我が国や日本企業に与える影響等に対する理解を深めること等を狙いとして、英国の新たな対外アプローチイニシアティブであるグローバルブリテンの下、日英包括的経済連携協定(日英EPA)発効等の状況も踏まえながら、英国の経済政策、通商政策、産業政策、金融業をめぐる動向、労働・移民政策、食料安全保障政策、日本企業をめぐる諸課題などを包括的に講義します。

これにより、英国を取り巻く経済事象について、多角的な観点から、これらに対する政策措置等とともに学ぶことで、経済動向や物事の動きについて本質の理解に近づくことができるよう授業を行いたいと思います。

(2022年度後期に開設される「各国経済論A II」においては、この前期の講義内容を踏まえて、国内における世論の二分、EUからの離脱に至った英国について、経済政策・情勢・課題の背後に存在する、歴史的な背景、従前の政権による政策運営・制度の変遷、対外経済関係の推移等を取り上げます。ただし、前期「各国経済論A I」のみでの履修も十分に可能です)

達成目標/Course objectives
・英国経済のみならず、日英両国の経済関係や関連する経済政策、英国経済の動向が我が国、日系企業に与える影響等に対する深い理解を持つ。
・本講義における学習や思考をめぐらすことで、グローバル化の進展する経済社会において、経済学を通じて、日本国内のみならず我が国を取り巻く世界の動向や時代の動きの本質を論理的に理解し、現実の様々な問題に応用できる人材となる。

履修条件(事前に履修しておくことが望ましい科目など)/Prerequisite
欧州や世界の経済情勢について、新聞、雑誌などの様々な媒体を通じた情報に関心を一層寄せていただき把握・吸収していただき授業に臨まれると効果的な学習が可能になると考えます。
授業計画/Lecture plan
1
授業計画/Class ガイダンス、英国経済概況 【オンライン授業(オンデマンド型)での実施】
 ・英国経済の特徴・盛衰、経済指標
 ・マクロ経済政策の転換と構造改革
 ・EC加盟と貿易
事前学習/Preparation 田中ほか(2018)第11章の関連箇所、講義教材に目を通して、概要を理解して下さい。
事後学習/Reviewing  戦後英国経済の各期における特徴、マクロ経済政策の推移、EC加盟が貿易に与えた影響についてポイントを整理して下さい。
2
授業計画/Class 英国の国内経済・社会問題
 ・英国の実体経済、社会
 ・経済指標・金融指標
 ・ソーシャル・ケア、医療問題
 ・住宅問題、教育問題
 ・移民
事前学習/Preparation 尾上(2018)第5章(国内経済問題、社会問題)・第7章(緊縮財政と社会問題)の関連箇所、講義教材に目を通して、概要を理解して下さい。
事後学習/Reviewing  英国が抱える、厳しい財政状況と、ソーシャル・ケア、医療等の社会問題の双方について理解を深めて下さい。
3
授業計画/Class 英国の労働市場、労働・移民政策
 ・EU域内の労働力移動、モビィティ促進政策
 ・中東欧諸国の新規加盟と労働力移動
 ・英国における新たな移民政策
 ・英国の労働市場
事前学習/Preparation 尾上(2018)第3章(移民問題)・第5章(移民問題)、田中ほか(2018)第8章3の関連箇所、講義教材に目を通して、概要を理解して下さい。

(参考文献)
 ・須網、21世紀政策研究所(2018)第5章
事後学習/Reviewing  講義を踏まえて、EU離脱後の英国の新たな移民政策が英国労働市場に対して与えている影響について、ポイントを整理して下さい。
4
授業計画/Class グローバル・ブリテン -英国の新たな対外的な通商政策-
 ・対世界貿易の変化
 ・英国の新たな通商政策、その経済へのインパクト
 ・CPTPP、英米FTA交渉、対インドFTA交渉
 ・英国の対中関係
   ・「Made in the UK, Sold to the World」
事前学習/Preparation 講義教材に目を通して、概要を理解して下さい。

(参考文献)
 ・庄司(2019) 第1章、第3章、第5章
事後学習/Reviewing  「Made in the UK, Sold to the World」のスローガンに象徴される英国の新たな対外的な通商政策について、講義を踏まえ、ご自身として見通しを整理して下さい。
5
授業計画/Class 新たな英国とEUの関係
 ・関税同盟、単一市場からの離脱
 ・英国・EU通商・協力協定(UK-EU Trade and Cooperating Agreement)
 ・EUとの経済関係変化による具体的影響
 ・連合王国内の4構成国
事前学習/Preparation 田中ほか(2018) 第2章1・2、第3章2・3の関連箇所、講義教材に目を通して、概要を理解して下さい。

(参考文献)
 ・庄司(2019) 第1章、第2章
事後学習/Reviewing  講義を踏まえて、英国による関税同盟、単一市場からの離脱、英国・EU通商・協力協定締結・発効により、EU離脱前に比べて英国の通商条件にどのような変化が生じているか整理して下さい。
6
授業計画/Class 日英包括的経済連携協定 (UK-Japan Comprehensive Economic Partnership Agreement)と日英経済関係
 ・日英EPAの位置付け・概要、日英の貿易上の位置付け
 ・日英EPAの概要
  ・関税分野(鉱工業品、農林水産品)、原産地規則とサプライチェーン
  ・金融サービス、デジタル貿易(電子商取引)
 ・日英EPA協定発効後の活用状況
事前学習/Preparation 講義教材に目を通して、概要を理解して下さい。
事後学習/Reviewing  講義を踏まえて、発効した日英包括的経済連携協定(日英EPA)が、日英両国の企業等においてどのように活用されているか整理して下さい。
7
授業計画/Class 英国の財政政策・金融政策
 ・世界金融危機前後の英国のマクロ経済運営
 ・緊縮政策(キャメロン政権の経済政策)
 ・ジョンソン政権のマクロ経済運営
     ・積極財政への転換
   ・コロナ禍におけるマクロ経済政策運営
   ・BoEによる政策金利引き上げ等を通じた物価上昇への対応等
事前学習/Preparation 尾上(2018)第1章、講義教材に目を通して、概要を理解して下さい。
事後学習/Reviewing  英国のマクロ政策(財政・金融政策)運営は、世界金融危機、EU離脱、コロナ禍、コロナ後に向けた物価上昇等に対応した政策運営が図られてきました。講義内容を踏まえて、これら大きな経済社会情勢への変化に対する英国のマクロ経済運営についてご見解を整理して下さい。
8
授業計画/Class 英国金融業の過去と現在
 ・金融に目配りする理由、直接金融と関節金融、ネットワーク外部性、英国における投資銀行等
 ・英国金融業の歴史と現在(ビックバン以前、ビッグバン、世界金融危機への反省と対応)
事前学習/Preparation 講義教材に目を通して、概要を理解して下さい。

(参考文献)
 ・渡部(1998)第4章、第5章
事後学習/Reviewing  講義を踏まえて、英国金融業の変化と発展についてポイントを整理して理解を深めて下さい。
9
授業計画/Class 英国金融業の優位性に係る考察
 ・ロンドンの金融市場としての優位性
 ・EU離脱のシティに対する影響と考察
事前学習/Preparation 尾上(2018)第5章(金融サービス業)・第6章(ルールの同等性問題等)の関連箇所、講義教材に目を通して、概要を理解して下さい。

(参考文献)
 ・庄司(2019)第3章
 ・須網、21世紀政策研究所(2018)第8章
事後学習/Reviewing  講義を踏まえて、EU離脱による英国内金融業、金融機関への影響について、ポイントを整理して下さい。
10
授業計画/Class 授業内報告とそれに基づくディスカッション(1)
 ・要約等を行っていただく文献は、講義序盤で別途提示し、受講生の皆様の希望を踏まえて決定します。
事前学習/Preparation ・報告担当の受講生は、報告準備を行って下さい。
 (報告準備で困った際は、講師にご相談下さい。)
・それ以外の受講生は、授業内で議論できるように、文献に目を通して下さい。
事後学習/Reviewing  報告とディスカッションの内容のポイントを、各自で整理して下さい。
11
授業計画/Class 英国の自動車産業
 ・英国の自動車産業、自動車市場概況
 ・英国の「グリーン産業革命」と新たな自動車政策の方向性
 ・英国の自動車産業をめぐる前向きな環境
事前学習/Preparation 尾上(2018)第5章(国内産業問題)の関連箇所、講義教材に目を通して、概要を理解して下さい。
事後学習/Reviewing  講義を踏まえて、英国の「グリーン産業革命」やEU離脱が、現地英国に立地する日系自動車企業に対して与えている影響について、ポイントを整理して下さい。
12
授業計画/Class 授業内報告とそれに基づくディスカッション(2)
 ・要約等を行っていただく文献は、講義序盤で別途提示し、受講生の皆様の希望を踏まえて決定します。
事前学習/Preparation ・報告担当の受講生は、報告準備を行って下さい。
 (報告準備で困った際は、講師にご相談下さい。)
・それ以外の受講生は、授業内で議論できるように、文献に目を通して下さい。
事後学習/Reviewing  報告とディスカッションの内容のポイントを、各自で整理して下さい。
13
授業計画/Class 英国の食料安全保障政策
 ・英国農業法2020に基づく新たな農業政策の展開 -環境重視と生産性向上の両立
 ・英国食料安全保障報告書2021
   ・サプライチェーン強靭性に係る検討
   ・環境、労働力確保問題、サイバー攻撃等
事前学習/Preparation  田中(2018)第3章1、尾上(2018)第5章(国内産業問題)の関連箇所、桑原田(2019)に目を通して、概要を理解して下さい。
 英国の食料安全保障報告書2021につきましては、2022年5月に講師が文献を公表予定です。公表後に再度教材をご連絡します。
事後学習/Reviewing  講義を踏まえて、英国の食料安全保障確保におけるポイントについて整理して下さい。
14
授業計画/Class 授業内報告とそれに基づくディスカッション(3)
 ・要約等を行っていただく文献は、講義序盤で別途提示し、受講生の皆様の希望を踏まえて決定します。
事前学習/Preparation ・報告担当の受講生は、報告準備を行って下さい。
 (報告準備で困った際は、講師にご相談下さい。)
・それ以外の受講生は、授業内で議論できるように、文献に目を通して下さい。
事後学習/Reviewing  報告とディスカッションの内容のポイントを、各自で整理して下さい。
15
授業計画/Class 講義全体のまとめ
事前学習/Preparation 前期全体の講義を通じて、その内容を振り返り、第15回目の講義で質問を行うことができるよう準備して下さい。
事後学習/Reviewing  講義全体を振り返り、将来の学習の発展や、社会的活動に向けて、活用したい内容を整理してください。
授業方法/Method of instruction
区分/Type of Class オンライン授業 / Online
実施形態/Class Method オンデマンド型 / on-demand
補足事項/Supplementary notes・講義、授業内報告(プレゼンテーション)(希望者のみ)、QAシート記入を組み合わせて、双方向性を確保しながら授業を展開します。

・授業で使用する教材(講義資料と講義動画)は、毎週金曜日17時までにCourse Powerへのアップロードを行います。授業の中でも画面上に投影しますので、必ずしもプリントアウトしていただく必要はありません。

・質問やお答えについては、メールやCourse Powerを活用して行うことを考えています。
活用される授業方法/Teaching methods used
成績評価方法/Evaluation
1 平常点 In-class Points 40% ・各授業において、理解度を確認するために、簡潔なQAシートをお配りします。
・授業における積極的な貢献(発言、質問等)を歓迎します。
これらから平常点を総合的に評価します。
2 その他 Others 60%
学生の皆様は、授業内報告の実施、又は、最終レポートの提出、いずれかを選んでください。
いずれも選んでいただいても、評価は公平に行われます


(授業内報告)
・課題文献(10ページ前後)の要約等を報告していただきます。(質疑応答を含めて30分程度を想定)
・複数の課題文献の候補を提示します。
授業内報告の評価は、構成、論理展開の明瞭性、発表内容の熟度、発表スタイル等から総合的に評価します。

(最終レポート)
・複数提示するテーマから、1つ選んでレポートを提出して下さい。
・記述の分量は、図表、引用等を含めてA4で3枚程度を予定しています。
最終レポートの評価は、構成、論理展開の明瞭性、記述内容の熟度等から総合的に評価します。
課題(試験やレポート等)に対するフィードバックの方法/Feedback methods for assignments (exams, reports, etc.)
・QAシートについては、その後の講義等において回答をお伝えしフィードバックを行う予定です。
・授業内報告に対しては講義内・講義後に講師からご報告へのコメント等を行い、平常点と合計して最終成績として評価の開示を行います。最終成績に占める割合は授業内報告が6割、平常点が4割です。
・最終レポートについては、平常点と合計して、最終成績として評価の開示を行います。最終成績に占める割合は最終レポートが6割、平常点が4割です。
教科書/Textbooks
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1 尾上 修悟 BREXIT 「民衆の反逆」から見る英国のEU離脱 -緊縮政策・移民問題・欧州危機 明石書店 2018 9784750346182 2,800円+税
2 田中素香ほか著 現代ヨーロッパ経済 第5版 有斐閣アルマ 2018 9784641221086 2,800円+税 関税同盟・単一市場の制度面、EUの共通政策、英国経済の変遷等にも言及。
3 桑原田 智之 英国のEU離脱と農業分野における諸課題, 国際貿易投資研究所『世界経済評論』Vol.63 No.2,pp.67-80 文眞堂 2019 0488132X 1,200円+税 英国の農業分野について、農業政策、労働、通商面におけるBrexitの影響に言及。
参考書/Reference books
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出版年
Published year
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1 庄司 克宏 ブレグジット・パラドクス: 欧州統合のゆくえ 岩波書店 2019 9784000613323 2,100円+税 英国・EUの将来関係、従前の交渉推移、国家主権等にも言及。
2 須網 隆夫, 21世紀政策研究所 (編集) 英国のEU離脱とEUの未来 日本評論社 2018 9784535587359 2,000円+税 主権のあり方、単一市場、金融、労働・移民等、幅広く言及。
3 伊藤 さゆり EU分裂と世界経済危機 イギリス離脱は何をもたらすか NHK出版 2016 9784140884980 740円+税 英国のEU離脱による、日本・日本企業へのインプリケーションにも言及。
4 渡部 亮 英国の復活 日本の挫折- 英国のビッグバンから何を学ぶのか ダイヤモンド社 1998 9784478260456 1,980円(税込) 1986年の英国のビッグバン以降10年余りの英国の変革に係る検証。主に金融業について言及。
授業関連情報/Class-related information
 件名/Title内容/Contents備考/Memo
2 講師website https://www.maff.go.jp/primaff/about/kenkyuin/kuwaharada_tomoyuki.html 研究内容も掲載しています。
メッセージ/Message

学生の皆様の興味、関心、向上心を刺激できますよう工夫して取り組みます。

英国経済、世界経済に関心を持つ学生の皆様すべてを歓迎いたします。履修登録に当たりまして、事前に確認しておきたいことがあられる場合は、どうぞE-mailでご連絡下さい。

その他/Others
 
 講師は、農林水産省、財務省、内閣官房、在外公館、民間企業(トヨタ自動車)等で、経済政策の企画・実施等に多様な観点から幅広く携わってきました。現在は、本学での教務に加え、農林水産省農林水産政策研究所で、英国の農業政策、通商政策、労働政策等の研究を行っています。また、英国の大学院において、国際貿易、国際金融等の研究を行いました。これらの実務経験を活かして、本授業においては、国内外の政策当局間の議論等を通じて得た感覚なども踏まえながら、多様な観点から英国の経済政策、経済情勢等を取りあげ、学生の皆様への講義を行いたいと考えています。

(講師略歴)
https://www.maff.go.jp/primaff/about/kenkyuin/kuwaharada_tomoyuki.html

・QAシート提出等を通じて、毎回出席を確認することを予定しています。(授業回数の3分の2以上の出席を行っていただかないと単位付与が困難になります)
 ・特別の配慮が必要な方は、事前に、お気兼ねなく、ご相談下さい。
 ・緊急の状況に直面した際は、心配せず、安全の確保等を最優先にし、可能となった時点で講師に連絡下さい

(※受講生数等状況に応じまして、授業計画などの調整を行わせていただく可能性があります)。
キーワード/Keywords
英国     イギリス     グローバルブリテン     Global Britain     Brexit     ブレグジット     EU     欧州     ヨーロッパ     TPP     経済政策     経済     実務経験